2019/07/24追記
 
公式サイトを立ち上げました。ぜひどうぞ。

 序
 参議院選挙が終わり、2日が経ちました。「表現の自由を守る」と訴える山田太郎氏が「戦闘力53万」の予告通り、53万票を超える票を得て比例当選したことで、氏と支持者がさらに勢いづくことが予想されます。
 しかしながら、私はこのムーブメントを違和感を持って受け止めていました。おそらくそうした違和感を持った人は少なくないのではないでしょうか。

 違和感の正体、その最大のものは、氏が自民党から出馬したことにあるでしょう。自民党は知っての通り、2012年に公表した改憲草案では広範な権利の制約を可能とする「緊急事態条項」を含め、権利を「公共の福祉」のために利用することを求めた第12条を「常に公益及び公の秩序に反してはならない」へ書き換えています。権利の擁護を理解しているとは思えません。

 山田太郎氏は自民党を内側から変えると主張しますが、果たしてどれだけ可能でしょうか。よしんば氏の思惑通り、「表現の自由に関しては」自民党を変えられたとしても、その他の権利が侵害されてしまえば、結果として表現の自由も棄損される結果となるでしょう。そのような権利を制約する法案に、比例代表として当選した山田太郎氏が賛成する可能性は低くないでしょう。

 さらに問題なのは、山田太郎氏とその支持者が、「漫画やアニメ」といったいわゆる「オタク文化」の自由を擁護しようと試みる一方で、それ以外の表現の自由については極めて冷淡な態度をとってきたことです。

 そのことは、2016年当時総務相だった高市早苗氏が、放送局が政治的な公平性を欠くと判断した場合、放送法4条違反を理由に電波停止を命じる可能性へ言及した件で「放送法176条の業務停止や74条の電波停止の条項についてはどの様な場合執行できるのかは曖昧だから過度になる必要はないと思います」(参考)と発言したことによく表れています。

 ある表現の自由について冷淡であることは、結局のところ、その自由が制約された口実をもとにほかの自由も制約されることにつながるのでないかと思われます。

 個々の論点はさておくとしても、山田太郎氏を中心に「オタク」が「表現の自由」を守るというムーブメントが巻き起こり、それが「オタク代表」であるかのように扱われるのはやはり違和感があり、忸怩たる思いでもあります。

 そのような思いをTwitterで発言したところ、一定の賛同を得ることができました。山田太郎氏に違和感を覚える、表現の自由を守りたいと考える人々の受け皿が必要ではないか。そこで、私新橋九段はここに、「真に表現の自由を守るオタク連合(仮)」の立ち上げを提言します。

 なお、これはあくまで試案の段階です。なので、皆さんの意見をもとにブラッシュアップできればと思います。

 中心的な方針
 「真に表現の自由を守るオタク連合(仮)」は以下の方針を取ります。
・「オタク文化」に限らない広い範囲の表現の自由の擁護
・憎悪表現(ヘイトスピーチ)の実行力ある規制
・「オタク文化」関連産業における労働問題の解消
 以下でそれぞれ説明しましょう。

 「オタク文化」に限らない広い範囲の表現の自由の擁護
 第一に、「真に表現の自由を守るオタク連合(仮)」は表現の自由を擁護することを目的とした繋がりです。そしてオタクの繋がりです。
 しかしながら、我々が守るべき表現の自由は、「オタク文化」に留まりません。

 我々は「オタク文化」の自由のほかに、報道や論評(とりわけ権力批判)の自由、芸術作品の自由、ダンスのような身体表現の自由、タトゥーを彫る自由など、あらゆる表現の自由を擁護します。
 それは、一部の表現の自由を擁護したところで、それ以外の自由が制限されてしまえば、結局のところ守ったはずの一部の自由も十全に活用できないからです。

 仮に、「オタク文化」の自由を守った一方で「政権批判」の自由を失ったとしましょう。一見すると「オタク文化」は自由を謳歌できるように見えますが、このような状態では漫画の内容が少しでも「政権批判」にかすっただけで制限される恐れがあります。重要なのは、「政権批判」にかすったかどうかを判断するのは作者や読者ではなく、権力者であるという点です。
 ある表現を自由に行うためには、結局それ以外の自由も確保されていないければいけないのです。

 憎悪表現(ヘイトスピーチ)の実行力ある規制
 表現の自由を擁護しながら、一方でヘイトスピーチ規制を求めるというのは矛盾しているように見えるかもしれません。ヘイトスピーチをあくまで表現と捉えれば、それは表現規制に他ならないのかもしれません。

 しかし、マイノリティを侮辱し傷つける憎悪表現を野放しにすることは、マイノリティの表現の自由をかえって抑圧することに繋がります。表現の自由を十全に擁護するためには、他者の権利を侵害するような表現は許してはいけません。

 ヘイトスピーチは問題だが、規制をすべきではないという主張もあります。理想を言えばその通りでしょう。規制をすることなく、ヘイトスピーチを根絶できればそれに越したことはありません。

 しかし、現在の社会情勢を見る限りでは、そのような理想が実現する可能性は限りなく低いと言わざるを得ません。であれば、マイノリティの権利を守るために、次善の策として実行力のあるヘイトスピーチ規制を求める必要があります。

 これは、「表現の自由を擁護する」と主張する人々の少なくない数が、他者の権利を侵害する表現をも「表現の自由」として擁護することがあることとも関係しています。「真に表現の自由を守るオタク連合(仮)」がそのような立場をとらないことを明確にするためにも、ヘイトスピーチ規制を求めることは必須でしょう。

 「オタク文化」関連産業における労働問題の解消
 これは直接的に表現の自由に関係しているわけではありません。しかしあえて入れました。
 2017年に「クローズアップ現代+」が報じたように、アニメ制作現場では労働基準法に反するほどの劣悪な労働環境がまかり通っていることがままあります(参照)。日本全体の労働環境を考慮すれば、このような事情はほかの「オタク文化」関連産業でも同様と考えるべきでしょう。

 アニメや漫画といった表現は、その表現を行う者がいなければなりたちません。製作者が劣悪な労働環境を強いられる環境では、仮に表現そのものが自由であったとしても、表現を十分に行うことができません。

 このような問題に対して、オタクの繋がりである「真に表現の自由を守るオタク連合(仮)」が冷淡でいいはずはありません。オタクとして声をあげていくためにも、この問題の解消を訴えなければいけません。

 なぜ「真に表現の自由を守るオタク連合(仮)」というネーミングなのか
 「真に表現の自由を守るオタク連合(仮)」はまだ仮称の段階ですか、このネーミングには意味があります。最終的にどのようなネーミングになるとしても、以下に述べる考えは反映した形にしたいと考えています。

 まず、「真に」表現の自由を守るという点に意味があります。前述のように、山田太郎氏を中心とするムーブメントでは、表現の自由が極めて限定的に捉えられているきらいがあります。
 そのような見方を否定し、狭まってしまった表現の自由概念をもとある形に戻すには、「真に」表現の自由を守ると訴える必要があると考えています。

 そして、「オタク」であることに意味があります。
 山田太郎氏を中心とするムーブメントを担ったのは、オタクを自認する人々でした。しかしながら、オタクはそのようなムーブメントに賛同する人ばかりではありません。表現を愛するものとして「オタク文化」以外の表現も擁護する、そうした立場をとるオタクがいることを可視化するために、我々は「オタク」の繋がりである必要があります。

 私自身、漫画やアニメ、ゲームは好きですが積極的にオタクを自認しては来ませんでした。それは、オタクを自認する集団が、ときに厄介な言動で注目を浴び、到底賛同しえないイデオロギーのもとに徒党を組む人々だったからです。

 しかし、だからこそ、ここであえて、我々は表現を愛する「オタク」であることを前面に押し出さなければなりません。オタクという言葉、そして存在を「表現を愛する者」として確立しなければなりません。そのために、オタクであることを強く主張しなければなりません。

 連合は何をするのか
 こうして勢いよくぶち上げたものの、次に何をすればいいのかというところは決まっていないのが正直なところです。なにせ発起人たる新橋九段はこういう運動を組織したこともなければ参加したこともない、ないないづくしなのですから。

 とりあえず、この試案を正式に固め、連合への参加表明をできるサイトなりを立ち上げる方向で準備を進めることにします。参加者の人数や実態を可視化する必要があるでしょう。そのあとのことは、正式に立ち上がってからにしましょう。

 連合は主に、真に表現の自由を守ってくれると信頼できる政党ならびに候補者の情報を集めてまとめることと現状の表現規制議論の監視を中心に動ければと考えています。

 参加者は何をすればいいのか
 では、仮に参加したとして、参加者は何をすればいいのでしょうか。
 「真に表現の自由を守るオタク連合(仮)」はオタクによる緩やかな繋がりです。最低限求めるのは、普段から表現の自由を守るために情報を収集し発信すること、そして有権者であれば選挙の際、真に表現の自由を守ってくれると信頼できる政党ならびに候補者へ投票することです。

 そしてできれば、地方選や国政選挙の際に、信頼できる党や候補者を手伝ってほしいと思います。
 実際に選挙事務所へ赴き、ボランティアをするというのはハードルの高いことかもしれません。しかし、「真に表現の自由を守るオタク連合(仮)」はネットを中心とする緩やかな連合です。それはつまり、参加しやすい反面実体を伴わない看板倒れに終わる危険性を秘めているということでもあります。

 山田太郎氏の53万票を考えれば、我々は少数派でしょう。「圧力団体」にはなりえません。だからこそ、地道な力を集めて表現の自由を守る人々を後押しし、確実にその問題に注目する層がいることをアピールしなければなりません。

 連合が動き出せば、選挙活動のボランティアへ参加しやすくなるような情報提供をできればと考えています。

 求む同志!
 「真に表現の自由を守るオタク連合(仮)」に参加する条件は2つだけです。表現を愛するオタクであること、真に表現の自由を守ってくれると信頼できる政党ならびに候補者を応援することです。オタクであるかどうかは自認で構いません。

 選挙権の有無、年齢、居住地、国籍その他は一切問いません。表現の自由を守るために繋がりましょう。

 そしてお願いしたいのは、プロアマを問わない創作者、特にコミックマーケットへの参加経験がある人が連帯してくれることです。私もアマチュアの表現者ですが、創作者にとって表現の自由は命綱です。ぜひ、守るために立ち上がりましょう。