「A型の日本人とA型のブラジル人とA型のロシア人とA型のイタリア人が同じ性格なわけないだろう」血液型性格診断に対する不満爆発…だが諦めていく流れへ-togetter
 発端は上掲のまとめです。
 やり取りをしていく中で、向こうが「血液型と性格に関連があると言っている論文はたくさんあるぞ!」と以下のブログを示してきました。
 次には、代表的な論文をいくつか引用しておきます。
 専門的な内容なので、理解するのが難しいかもしれません。
 簡単に解説しておくと、これらの論文で、「血液型ステレオタイプに合致するような自己評価が認められた」「血液型の主効果が認められた」「血液型の交互作用が有意だった」というのは、性格の自己報告で血液型本に言われているとおり統計的な差が出たということです。なお、1.2.と6.は2005年より前の論文です。

1.山崎賢治・坂元章(お茶の水女子大学) 血液型ステレオタイプによる自己成就現象-全国調査の時系列分析- 日本社会心理学会第32回大会発表論文集 【1991年】 →血液型と性格の自己報告との間の相関は、弱いが認められた。さらに、一般の人々の性格の自己報告は、大学生の血液型ステレオタイプに合致していることがわかった。
http://www010.upp.so-net.ne.jp/abofan/sakamoto.htm
http://www.bunken.org/jssp/conf_archive/detail.php?s=1991-Z-0288[本文なし]

2.白佐俊憲 血液型性格判断の妥当性の検討(2) 北海道女子大学短期大学部研究紀要【1999年】→結果は、「血液型と性格とは何らかの関係がある」、「血液型によって性格特徴が異なる」、「四つの血液型には特徴的な性格傾向がある」などという説を、非常に漠然とした弱い関係のものとしてではあるが、支持するものであった。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006603993

3.山岡重行(聖徳大学) 血液型性格項目の自己認知に及ぼすTV番組視聴の効果 日本社会心理学会大会第47回大会発表論文集 【2006年】→高受容群では11項目で血液型の主効果が認められ、低受容群でも2項目で血液型の主効果が認められた。
http://www.bunken.org/jssp/conf_archive/detail.php?s=2006-E-0375

4.久保田健市(名古屋市立大学) 潜在的な血液型ステレオタイプ信念と自己情報処理 日本社会心理学会大会第48回発表論文集 【2007年】→特性語の種類の主効果(F(1,32)=9.80, p<.01)と特性語の種類×参加者の血液型の交互作用(F(3,32)=3.22, p<.05)が有意だった…定義づけ課題の結果についても,同様の2要因分散分析を行ったところ,特性語×参加者の血液型の交互作用が有意だった
http://socio-psych-ncu.cocolog-nifty.com/blog/files/bp_jssp48.pdf

5.工藤恵理子(東京女子大学)自分の性格の評価に血液型ステレオタイプが与える影響 日本心理学会第73回大会発表論文集 【2009年】→全体として、血液型ステレオタイプに合致するような自己評価が認められたhttp://www.psych.or.jp/meeting/proceedings/73/contents/poster/detail/1pm042.html

6.山岡重行(聖徳大学)血液型性格判断の差別性と虚妄性(自主企画(2)) 日本パーソナリティ心理学会第18回大会発表論文集【2009年】→山岡は、1999年から2009年にかけて大学生を対象に血液型性格の調査を行っている(有効回答数=6660)…血液型項目を用いて自己評定をさせると多くの項目で血液型による有意差が見られる
http://ci.nii.ac.jp/naid/110007674296

7.Sakamoto, A., & Yamazaki, K. (2004) Blood-typical personality stereotypes and self-fulfilling prophecy: A natural experiment with time-series data of 1978-1988. Progress in Asian Social Psychology, 4, 239-262.【2004年】→This indicates that blood-typical personality stereotypes actually influenced the personalities... このことは、血液型ステレオタイプは現実に個人の性格に影響していることを示している... 【1.の再分析】
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/advpub/0/advpub_85.13016/_article/references

8.Beom Jun Kim, Dong Myeong Lee, Sung Hun Lee and Wan-Suk Gim (2007) Blood-type distribution; Physica A: Statistical and Theoretical Physics 373( 1), 533-540 【2007年】
→ A psychological implication for the case of B-type males is also suggested as an effect of a distorted implicit personality theory affected by recent popularity of characterizing a human personality by blood types.
[大意]MBTI検査では、ただ1つB型男性を除いては血液型による差がなかった[=B型男性には血液型本に言われているとおりの差が出た]。これは、血液型ブームによる歪みが現れたものと考えられる。http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0378437106006327
 「統計的に差がある」という論文-ABO FAN
 こちとら心理学者です。論文を示されただけではいそうですかと引き下がるわけがありません。
 なのでめんどくさいなと思いつつ読んでみました。

 結論から言うと、これらすべての論文を「血液型と性格に関連がある」と解釈するのは明らかな誤読です。
 以下で、すべての論文についてコメントしながら明らかにしていきます。

 1.山崎賢治・坂元章(お茶の水女子大学) 血液型ステレオタイプによる自己成就現象-全国調査の時系列分析- 日本社会心理学会第32回大会発表論文集 
 7.Sakamoto, A., & Yamazaki, K. (2004) Blood-typical personality stereotypes and self-fulfilling prophecy: A natural experiment with time-series data of 1978-1988. Progress in Asian Social Psychology, 4, 239-262.

 これは(多くの発表論文集がそうであるように)内容が詳しくわかりませんが、7の論文と同じものだと考えられます。

 そもそもこの山崎・坂元論文は、血液型と性格に関連があるというよりも、血液型ステレオタイプに影響され、そのステレオタイプ通りの性格に自信を認知することを検討しているものです。ですから、この論文を引用して、あたかも血液型が原因となって正確に影響する根拠であるかのように論じるのはただの誤読です。そのことは当人も、論文の内容を解説するページを作っていることから明らかだと思いますが……。

 仮に、血液型が原因となって性格に影響するのであれば、その効果がA型のみでみられる、しかもある時代から後にのみ見られるのはおかしなことです。すべての血液型、すべての時代で見られなければいけません。

 ちなみに、この論文は血液型ステレオタイプによって人がその通りの性格だと自分を認知するという、いわゆる自己成就の根拠としても弱いと言わざるを得ません。なぜなら、ステレオタイプと性格の関連はなぜかA型でしか見られないからです。自己成就があると主張するのであれば、A型のみでそれが起こる理由も論じなければ不足です。

 2.白佐俊憲 血液型性格判断の妥当性の検討(2) 北海道女子大学短期大学部研究紀要
 これに関しては、まさしく『心理学にも統計学にも明るくない人が心理学の論文を読むうえで気を付けるべきこと』で論じたことのある、数うちゃあたるの実践といえましょう。

 というのも、この論文は血液型1つにつき17項目、計68項目もの性格を尋ね、全てを一回一回分析するという暴挙に出ているからです。多重比較を考えないとしても、68項目全てに危険率5%の分散分析を行えば、一度もミスを犯さずに検定できる確率はたったの3%(計算にミスがなければ)。こんなものは信頼できる検定といいません。

 そして案の定、O型性格17項目のうち、実際にA型の人が一番当てはまると回答したのはわずか2項目に過ぎません。ちなみに、A型では7項目、B型で8項目、AB型では2項目です。しかも、この項目はその血液型がほかの3つのどれか1つでも有意に大きければよしとカウントしていて、たとえばO型の2項目はA型よりも多いだけで、B型とAB型との間に有意差はありません。

 最大限好意的に解釈し、ステレオタイプ的な性格の中にも強固に認識されているものとさほどではないものがあると考えたとしても、もし血液型が性格に影響するのであれば、もっと多くの項目で頑健な差が出るべきところです。差が出た項目が3分の1未満では話になりません。

 3.山岡重行(聖徳大学) 血液型性格項目の自己認知に及ぼすTV番組視聴の効果 日本社会心理学会大会第47回大会発表論文集
 例によって発表原稿なので詳しくはわかりません。ただ、血液型性格診断をよく受容しているものとそうでないもので差があるというのは、自己成就の存在を示唆するものであるとはいえましょう。裏を返すと、血液型が性格の原因であるという説の反証です。

 4.久保田健市(名古屋市立大学) 潜在的な血液型ステレオタイプ信念と自己情報処理 日本社会心理学会大会第48回発表論文集
 これに至ってはそもそも「血液型と性格の関連」を調べたものですらありません。これは従来のステレオタイプ研究の手法を用い、血液型ステレオタイプもまた、自己の情報処理に影響を与える可能性があることを示しているだけです。

 5.工藤恵理子(東京女子大学)自分の性格の評価に血液型ステレオタイプが与える影響 日本心理学会第73回大会発表論文集
 これも「血液型と性格の関連」を直接調べたものではありません。血液型性格診断が正しいと思っている人ほど、自身の性格を血液型性格診断と同じだと考えることが示されており、自己成就の存在を示唆するものです。

 6.山岡重行(聖徳大学)血液型性格判断の差別性と虚妄性(自主企画(2)) 日本パーソナリティ心理学会第18回大会発表論文集
 もう企画書であって、分析などが細かく書いてあるものですらなくなりました。こういうのを普通エビデンスとは呼びません。回答者が6600名と膨大であることから、些細な差が有意差として検出された可能性があります。

 しかも、「血液型項目を用いて自己評定をさせると多くの項目で血液型による有意差が見られる」と書かれている直後に「しかし,血液型性格の知識があり信じている群とあまり知識が無くあまり信じて いない群に分けると後者では有意差が見られない」とあり、これも自己成就の存在を示唆するものです。後者の文章をカットして前者の文章だけ引用するのは都合のいい切り取りというものでしょう。

 8.Beom Jun Kim, Dong Myeong Lee, Sung Hun Lee and Wan-Suk Gim (2007) Blood-type distribution; Physica A: Statistical and Theoretical Physics 373( 1), 533-540
 これを「血液型と性格に関連がある」根拠にするのは噴飯物といえましょう。なぜなら、引用した当人も「MBTI検査では、ただ1つB型男性を除いては血液型による差がなかった」と理解しているからです。当然、血液型が性格の原因となるのであれば、B型以外でもその差が出るべきです。

 しかも、差があるといっても検査で取りあげた4つの側面のうち1つだけ、かつB型男性でのみ差があったというものです。つまり、ほぼ差は出ていません。大量に分析を行ったことにより偶然有意差が出た可能性を排除できません。

 このように、ブログで引用されていた論文のすべてが、血液型と性格の関連を示すエビデンスとしては極めて弱いものでした。しかもその大半が、血液型と性格の関連を直接検討したものではなく、血液型ステレオタイプが自分の性格の認識に与える影響を調べたものでした。後者の研究をしているのに、あたかも前者の研究をしている、しかも肯定的な示唆を得たかのように引用されるのは、研究者の名誉にとっても不都合なものでしょう。

 ここからはおまけです。引用した上掲記事には続きがあり、別の英語論文も根拠として提示しています。そのうち、全文を入手できたものを読んでみました。

 Shoko Tsuchimine, Junji Saruwatari, Ayako Kaneda, Norio Yasui-Furukori (2015) ABO Blood Type and Personality Traits in Healthy Japanese Subjects, Plos One. 
 これはまとめでも取り上げられていたものです。性格検査の7つの下位因子について1つだけ有意差を認め、しかも効果量は極めて小さいものでした。もし血液型と性格に本当に関連があれば、よりたくさんの因子でより大きな差が出てしかるべきなので、この有意差は偶然の産物でしょう。

 Fatemeh Beheshtian, Roghayeh Hashemi and Zolfaghar Rashidi (2015) The Five Personality Factors over the Students with Four Blood Types. 
 5つの性格特性について、経験への開放性と良心性に有意差があります。前者はOが低くABが高い、後者はAが低くてOが高いとなっています。
 これだけ見ると、いかにも血液型と性格に関連がありそうです(5つのうち2つにしか関連がないとしても)。ですが、次の論文を引用すると一気に怪しくなります。

 Mohammad Sharifi, Hamza Ahmadian and Ali Jalali (2015) The relationship between the big five personality factors with blood types in Iranian university students. 
 これは前掲の論文と同じ性格検査を用いて調査をしています。その結果、有意差があったのは外向性と経験への開放性でした。この時点で結果が一貫していません。また、経験への開放性の差というのは、A型がAB型よりも高いというもので、前掲論文と一致した結果というわけでもありません。

 血液型が性格に影響するのであれば、同じ性格検査で調査したならば、同様の結果が得られていなければおかしいはずです。つまり、この2つの調査は追試に失敗したことを意味し、血液型と性格に関連がないことを強く示すものです。

 これだけ論文を読み、その全てで関連があるとは言えない結果が得られている以上、やはり血液型と性格に関連はないと考えるべきでしょう。