この件です。
 このツイート自体は、引用元の発言からもわかるように、「創作中での加害は加害に当たらない、わけないだろ」という主張の例え話として挙げたものです。

 もちろん、この例えには後述するような問題があるわけですが、しかしこれを読んで並みの想像力があれば「オタクをダサく描かれるだけでもちょっと不快なのだから、女性に加害を煽るような描き方をすればその非ではないだろう」と演繹的に理解できると思いました。

 しかし、その認識は甘かったようで……。

 こういうレベルのリプライがわんさか来ます。
 今回のお話は、ミラーリングに関して、「自身に当てはめて問題がない」と思えるような場合でも、ほかの属性に関してはそうとは限らないのはなぜかという点です。

 状況が違いすぎる
 その理由の最大のものは、オタク(男)と女性ではそれを取り巻く状況に大差があるということです。

 オタクはなぜか自身をそう認識していないようですが、性差別問題に関して言えば男性なのでマジョリティ側です。女性は言うまでもなくマイノリティ側に当たります。

 このような状況において、それぞれが悪く描かれるとどういう影響があるでしょうか。

 まず、マジョリティ側です。マジョリティは悪く描かれても、さほど影響を受けません。何せ数が多く、権力を持っているからです。本当に不愉快だとなればその表現に反発して潰すこともできます。また、悪く描かれた属性を大多数が持っているので「いうても実際は違うよね」とみんなで確認しあえます。権力があるので、その悪く描かれたイメージを鵜呑みにした誰かに攻撃されても、いろいろな方法で反撃できます。

 マイノリティは、このすべてがひっくり返ります。少数で権力を持っていない以上、悪いイメージが流布しても反発することが難しく、またそのイメージを覆すことも難しくなります。心理学的には、人は外部の集団の特徴を画一的に認識する傾向があるのでなおさらです。攻撃されてもその攻撃が悪行としてまともに扱われない可能性があることは、種々の性犯罪事例からも明らかです。

 そもそも内容も違いすぎる
 また、わかりやすい例として出しましたが、「オタクがダサく描かれる」のと「女性が差別的に描かれる」のは中身にも大差があります。

 オタクがダサく描かれても、せいぜい馬鹿にされるくらいで済みます。しかし、実際に行われている「女性差別的描写」というのはそのレベルではなく、覗きや痴漢といった性暴力をちょっとした冗談であるかのように描かれるといった、「加害を否定しない」という水準にあります。

 オタクでさらに正確に例えるなら、オタクをパシリに使ったり暴力をふるっていじめる描写が「軽い冗談」として描かれているようなものです。しかも社会の状況の中で、例えばイジメ被害を訴え出ても「オタク趣味があるやつが悪い」と取り合ってもらえないという事態が起こっている中で、そういう表現が頻繁に流布しているというのが例えとして正しい状況です。
 男性は想像がしにくいと思われるので、状況を変えて考えてみよう。例えば、あなたは日本人である(日本人でないなら、任意の民族が入れられる)。ただし、周りに日本人がほとんどいないような国に住んでいる。さて、あなたはその国のコンビニに行くと以下のような見出しの踊る雑誌をいつも目にする。

「生意気日本人を血祭りにあげる!」
「日本人3時間ぶっ続け拷問SP」

 そして実際に、被写体として日本人が暴力を振るわれており、それを娯楽としてその国のマジョリティが買うのである。

 さらに言えば、この国では日本人が暴行にあっても警察がまともに動かない。被害を訴えても「お前が挑発したからだろう」とか「隙があったに違いない」などと言われて門前払いされてしまう。そうして被害に泣き寝入りした日本人の話を、あなたはよく聞く。
 2-1 なぜ性暴力表現が現在の人権侵害なのか-性暴力表現を公から追放する論理
 まぁ、その辺のことは上のように書いたんですがね。ここでは人種差別で例えていますが、議論の関連性は明白であり、日本人をオタクへと入れ替えれば理解は容易であるはずです。
 もっとも、反応を見る限りそもそも読めてないんだと思いますが。
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