何言ってんだこいつ。
 というわけで今回の話は、犯罪心理学のド素人武田邦彦氏が得々と語るあほみたいな主張を否定しておきます。 

 誘導型性欲?
 さて、武田氏は「男性の性欲は誘導型性欲である」という前提で話を進めています。氏曰く、男性の性欲というのは、女性の性的魅力によって誘発されるものであるというのです。

 しかし、特にそうであるというエビデンスは示されていません。まぁ、動画はどこかの講演の転載なのできっかりとしたエビデンスを示すようなものもないのでしょうが、簡単なエビデンスもありません。「生物学的にはこうなっている」といえば実際にそうなるわけではありません。百歩譲って生物全体にそういう特徴があったとして、人間に当てはまるということは示されていません。

 このようなエビデンスなき「誘導型性欲」タームがなぜ出てくるのでしょう。
 武田氏の議論を聞いていればわかるように、この言葉は結局のところ、性的関係における男性の責任を免責するためのものです。「男性は誘導型性欲なんだから、女性に誘導されないとダメなんだ。だから誘導しない女性に責任があるんだ」という流れです。

 実際に、動画についたコメントやツイートを見る限りではそういう機能を持った言葉となっていることは確かです。

 しかし、そもそも男性が誘導型性欲であるという主張自体怪しいものですし、万が一そのことが本当だったとしても、夫婦関係の維持から性犯罪までその原因は性欲だけではなく、男性にはその関係はまずいものにならないようにする義務があるわけですから、「誘導型性欲だから~」などというのは愚にもつかない言い訳にしかなりません。

 もう一方の動画のほうは、そもそもなんで「ポルノで育った男が女性を深く愛せない」のか何度聞いてもよくわかりませんでした。エビデンスももちろんないです。以上終わり。

 「素人」が「専門家ぶる」弊害
 某ネット詭弁家がネット放送とはいえ番組に出るというニュースが先日弊TLを駆け巡りましたが、それに限らず日本は全体的に「専門知」を愚弄する傾向にあります。素人が専門家であるかのような扱いを受けてしまうのもその一面です。

 武田氏は著名な工学者でしょうが、あくまで専門は工学です。生物学であるとか、心理学に関しては素人もいいところです。
 まぁ、通常、ある分野での専門教育を受けた者は、ほかの分野においても「全くの素人」よりはましな見識を示す可能性のほうが高いのですが、あくまで可能性でしかないことは氏が身をもって体現してくれました。

 武田氏はあくまで工学者であり、メディアも工学者として扱えばいいところ、「評論家」なる曖昧模糊とした肩書を使用して「全体的になんか詳しい人」みたいな扱いをしたあたりが、氏の勘違いロードの始まりなのでしょう。工学以外では素人同然の知識しかないのに、まるで自分があらゆることの専門家になった気になってでたらめをベラベラ喋り、周囲もそれをありがたがって拝聴するという知的退廃の血の池地獄が完成するというわけです。

 人の心のことを知りたいならば心理学者に聞けばいいのです。少なくとも、武田氏のようなでたらめを吹聴することはありません。
 もっとも、心理学者の見識は「それを聞きたい人」にとって心地いいものではないでしょうが。