今回の記事評はナショナルジオグラフィックの特集です。特集といっても「まるごと一冊」の看板に偽りなく、全部女性関連の記事で占められていました。
 通常、記事評は雑誌の中のさらに特定の記事に焦点を当てて論じるのですが、今回はナショナルジオグラフィック11月号全体を概観し、個人的に注目した部分をピックアップしようと思います。

 思わぬ機会:ルワンダの女性たち
 1つ目は『女性たちが作る新生ルワンダ』と題された記事です。
 ルワンダはご存じの通り、ルワンダ大虐殺の起こった国です。その虐殺から生き残った人々の多くは女性であり、女性が活躍できる国づくりはルワンダ復興の急務でした。

 記事で言及されているように、ルワンダの女性の地位向上は「思わぬ機会」だったわけです。
 しかし、外形上女性が活躍できる仕組みが出来上がったからと言って、人々の精神までついてくるわけではありません。ルワンダはアフリカ諸国の中でも特に女性の国会議員の割合が高い国ですが、一方でそのような国会議員を務める女性は家庭内での地位が著しく低いこともあるようです。つまり、外では地位が高くとも、その意識改革は家庭内に及んでいないというわけです。
 そのような観点から、ルワンダは次の改革のために試行錯誤を繰り返しているところです。

 思わぬ機会を得て仕組みを整えたが、人々の考え方が古いまま、というのはなんだか鏡を通して日本を見ているような気分にさせられます。日本も太平洋戦争の敗戦から民主主義を「思わぬ機会」として得ましたが、人々の精神がその民主主義に追いついているかというと微妙なところがあります。

 夜を取り戻せ:インドの女性たち
 犯罪学者的には、インドに注目した記事『インド 安全に暮らす権利』も興味深いものがありました。やはりこれもよく知られた事件ですが。かつてインドでは2012年、バスに乗っていた女性が集団でレイプされ、外へ捨てられるという事件が起こりました。この事件をきっかけに、インドの女性たちは声を上げていきます。

 顕著な運動の1つが、#TakeBackTheNightと呼ばれるものです。これは夜を取り戻せの名前の通り、危険な場所となってしまった夜道、そこを歩いていただけで非難される場所となった夜道を取り戻すため、勇気ある女性たちが連帯して夜道を歩きました。また、気候ゆえに戸外で寝ることを好むインドの人たちらしく、安全に野宿する権利を取り戻そうと#MeetToSleepという活動で、女性が団結して野宿するという活動もあったようです。

 本誌に掲載された情報によると、夜に道を一人で歩くことに不安を感じる人々は、発展途上国で多くなっています。このような場合、遠方からの通勤や通学が困難となり、女性の社会進出が遅れることとなります。

 本誌はここで取り上げた以外にも、各分野で活躍する女性のインタビューなど、多種多様な情報が掲載されています。ナショジオだけあって写真も豊富、デザインも秀逸とあって、ぜひ一読したい内容といえるでしょう。