九段新報

犯罪学オタク、新橋九段によるブログです。 日常の出来事から世間を騒がすニュースまで犯罪学のフィルターを通してみていきます。

在日・外国人

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詳しくは以下の記事をご覧ください。
http://blog.livedoor.jp/kudan9/archives/55214570.html

【記事評】 怒りを抑えられない「韓国人という病理」10人に1人は治療が必要(週刊ポスト2019年9/13号)

 週刊ポストが炎上しています。
 まぁ、このご時世に『厄介な隣人にサヨウナラ 韓国なんて要らない!』などという特集を組めば必定というものでしょう。

 私としては、この特集のうち『怒りを抑えられない「韓国人という病理」10人に1人は治療が必要』に注目しました。かつて『精神科医が「火病」をスティグマに使うとは……。』でも触れたように、差別したいマイノリティを精神病であるとスティグマを張るというのはレイシズムでは典型的な手法です。

 韓国人の10人に1人は治療が必要?
 記事では、大韓神経精神医学会が発表したという論文を引用し、韓国人の10人に1人が突発的な怒りを抑えられない病であると主張しています。(なおこの元の記事は『韓国の成人の半分が憤怒調節障害、どのように怒りを堪えるか-中央日報』と思われる)

 10%というといかにも割合として多く、韓国人が危険な民族であるかのような印象を持つかもしれません。しかしこれは、数字のトリックというべきでしょう。

 というのも、どんな国であっても、何らかの精神疾患に罹患する確率は10%以上存在するものなのです。例えば、Kesslerらが2007年に発表した "Lifetime prevalence and age-of-onset distributions of mental disorders in the World Health Organization’s World Mental Health Survey Initiative."という論文は、日本人の15%以上が何らかの不安障害に罹患する確率があると指摘しています。

 どのような精神疾患に罹患しやすいかはそれぞれの文化によるでしょうが、10%というのはその文化でメジャーな精神疾患の罹患率としてはさほど大きくないというのが正しい印象であると思います。

 また、記事では具体的な犯罪を挙げて、怒りの爆発がいかにも犯罪につながっているかのように論じていますが、これも不適当というべきでしょう。犯罪というのは反社会的な行動の極致であり、精神疾患がどこまで攻撃行動につながるかの指標としては取りこぼしが多くあいまいです。犯罪の認知件数は警察の姿勢や社会の風潮によって大きく前後するものであり、仮に認知件数が少ないからと言って直ちに安全な国であるということにはなりません。

 また、日本のように、うつ病のような攻撃性が自己へ向きやすい精神疾患が多い国では、必然として他者へ攻撃を向けることは少なくなり犯罪としても出てこなくなるでしょうが、だからと言ってそれが「日本人は精神的に安定した民族である」という結論につながるわけでもないでしょう。

 誤解なんてどこにもない
 週刊ポスト9月13日号掲載の特集『韓国なんて要らない!』は、混迷する日韓関係について様々な観点からシミュレーションしたものですが、多くのご意見、ご批判をいただきました。なかでも、『怒りを抑えられない「韓国人という病理」』記事に関しては、韓国で発表・報道された論文を基にしたものとはいえ、誤解を広めかねず、配慮に欠けておりました。お詫びするとともに、他のご意見と合わせ、真摯に受け止めて参ります。(『週刊ポスト』編集部)
 週刊ポスト9月13日号掲載の特集について
 この特集に関して、週刊ポストは上のような謝罪文を出しています。「誤解があった」という典型的な「謝罪未満」文といえるでしょう。

 今回の騒動に関して、読み手側に一切の「誤解」はありません。週刊ポストが韓国差別をしたいんだという意図と内容を正確に読み取ったうえで批判しています。
 もし、批判者側の読解が「誤解」であるといいたいのであれば、どこがどう誤解で、真意がどこにあるのかをはっきりと説明すべきでしょう。それもなしに「誤解」だといいつのるだけでは、反論になっていません。

 もっとも、言葉を使って商売をする人々が、活字にした文章で「誤解を招いた」などというのはかなり恥ずかしいことですが。


内閣府政府広報室のやばい意見集

 みんな覚えているかな?
 昨年9月、クラウドワークスというクラウドソーシングサイトで「共産党に票を入れる人は反日」というようなブログ記事を書けば一件につき800円の報酬をもらえる案件が募集されていることが判明して度肝を抜かれたよね。
(中略)
 これね、日本政府の公式ウェブサイトで日本国民の意見として公開されているんだよ。
 韓国のことを「反日を国是のようにする体質」とか言い出したかと思うと、「国内にいる在日と呼ばれる方々が嫌われるのも同じ理由」とか「かの民族」とか、差別的な言動が含まれているよね。
 こういうことを言う日本人がいるのは知っているけどさ、政府が公式ウェブサイトに公開していいようなもんじゃないよ。
 「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(ヘイトスピーチ解消法)」が2016年6月に施行されたわけだけど、その内容や目的を考えると明らかに不適切だよね。
 差別デマを拡散する内閣府のプロパガンダ装置-ロジ・レポート
 これの件です。
 排外主義というのは往々にして排斥したい対象を犯罪者のように扱うこととセットなので、犯罪がらみのものもあるかなぁと思って調べてみたらビンゴでした。
 なので今回は、引用元のブログが引用していないコメントを探りつつできれば犯罪学の視点から突っ込みを入れていきましょう。
 なおコメントは全て平成28年度の部分からとってきています。

 外国人差別と同居するコメント群
外国人の犯罪について 移民反対
 警察庁国際管理官が公表しておられる様に、外国人の犯罪に関し、余りにも検挙数が多すぎる。安易な観光客の受け入れは、犯罪の温床になりやすい。通称の使用禁止と実名の報道を求めます。背乗りなどを防ぐ為にもマイナンバーカードが海外に渡らない様に注意して下さい。
 (滋賀県 中村 隆宏 男性 40代 無職、その他)
 平成28年度分の意見等 > 危機管理・防災 > テロ対策 > 外国人の犯罪について 移民反対
 警視庁の統計によると、平成27年の時点で来日外国人の検挙人員は6千人ちょっと、一般刑法犯に占める割合はわずか2%未満です。これを多いと判断する基準では、外国人による犯罪は一生減少しないでしょう。
米国同様、犯罪歴のある外国人を強制送還すべき
 トランプ次期米国大統領が、犯罪歴のある移民を祖国に強制送還することを発表しました。こうした政策こそ日本は米国に倣って導入すべきです。日本では犯罪を犯した外国人を強制送還するどころか、日本人を殺害するような凶悪犯罪でも日本人容疑者に比べて刑が軽かったり、ペルー人による日本人6人殺人事件のように、心神耗弱だなんだと被害者にも日本の国益にも何の得にもならない理由をつけて裁判すら開始しない。その間の拘留費用は日本国民の税金という有様です。英国のEU離脱投票をはじめ、欧州でも今や自国第一主義、行き過ぎた人権主義や寛容な政策が招いた治安の悪化や社会不安に国民が憤慨し、自国民の保護を優先し、自国の利益に沿わない外国人には厳しく当たる政治家が選ばれる潮流となっています。日本にも不法滞在外国人や犯罪歴のある外国人が溢れ、国民が安全に暮らす権利という大切な日本人の人権が侵害される前に、彼らを追放すべきです。
 (東京都 女性 30代 専門・技術職)
 平成28年度分の意見等 > 危機管理・防災 > テロ対策 > 米国同様、犯罪歴のある外国人を強制送還すべき 
 外国人が日本人に比べて刑が軽いというエビデンスは特にないでしょう。法心理学の知見を援用すれば、むしろマイノリティは刑が重くなる危険性すらあるといえましょう。加害者の人権を守ることを「国益にならない」というのは、そりゃそうでしょうとしか……。
入国管理と国籍表記について
 最近、特定の国籍を有する者の犯罪が際立っているようですが、即刻、ビザ無し渡航を取り止めるべきですし、犯罪を犯した者は例外無しで遅滞なく国外退去させなければなりません。日本国政府は日本国民を守ってしかるべきではないでしょうか。また、国籍表記もできれば帰化三世まで、最低でも帰化一世は○○系日本人とすべきです。帰化したとはいえ、出生国を背負っているのですから、その尊厳は大切にしてあげなければなりません。いずれにしても外国人にばかり気遣いして、日本国民を不幸にする政治や行政であってはいけません。
 (千葉県 男性 50代 管理職)
 平成28年度分の意見等 > 危機管理・防災 > テロ対策 > 入国管理と国籍表記について 
 日本人を守れというその口で、同じ日本人となったはずの帰化人を差別する矛盾。この人は外国人にばかり気遣いして日本国民を不幸にしているらしい日本がある世界線からの来客です。
日本人へのヘイトスピーチを規制せよ
 日本人による対韓国朝鮮への合法デモが問題になってますが、妨害派の違法行為はメディアであまり取り上げられないようです。テレビ・新聞の情報を鵜呑みにされている人は真実を知らないかもしれません。私はデモに参加していますが、妨害派の発言やプラカードはデモ参加者への誹謗中傷ばかりで、挑発行為も多くみられます。また、デモ終了後もデモ参加者を恫喝する、さらに、デモ開始前にデモ主催者一人を大人数で取囲んで動けないようにして罵声をあびせすなど、やりたい放題です。こういった日本人へのヘイトスピーチを規制すべきです。
(東京都 男性 50代 販売・サービス・保安職)
 平成28年度分の意見等 > 警察関係 > 治安 > 日本人へのヘイトスピーチを規制せよ
 日本人へのヘイトスピーチなる用語を使用する人が例外なく不勉強であることを示すコメントです。既存メディアへの不信も加えてよくこんな短文に要素を詰め込めたものだと感心してしまいます。一般市民を装っていますが文章からわかるようにレイシストの一員です。
外国人犯罪は受け入れた組織の責任も明確にすべき
 外国人が殺人やテロなど重大な犯罪を犯した際には、国や企業など外国人を受け入れた組織の責任を明確にする法整備が必要です。ドイツでは「寛容な難民政策」により性犯罪や殺人、テロが発生し治安が大幅に悪化、一般市民は安心して街を歩けないほどの状況です。これは政府による自国民の生存権の侵害ですが、難民を歓迎する政府や企業、団体は誰も責任を取らず、ドイツ国民だけが苦難に喘いでいます。自国民の犯罪の場合、社会が人を育てたという考え方が通用しますが、外国人は違います。元々倫理観や善悪基準などが明らかに違う外国人を進んで受け入れたのは政府や企業であり、万が一国民の人権がそれによって危機に陥った場合は、自己責任でというのはあまりにも身勝手です。具体的には犯罪被害者となった国民への賠償は外国人を受け入れた企業や団体が行う。政府は速やかに情報公開を行い、外国人受け入れ政策の是非について国民に信を問うなど責任を取るべきです。
 (東京都 女性 30代 専門・技術職)
 平成28年度分の意見等 > 警察関係 > 治安 > 外国人犯罪は受け入れた組織の責任も明確にすべき
 ドイツが暗黒街であるかのような書きぶりですが実際には違います。詳しくは『ケルン集団暴行事件を考える』『続・ケルン集団暴行事件を考える』を参照してください。なるほど、社会的な責任を受け入れ団体に転嫁することで直接的にではなく間接的に外国人を差別するというのは名案です(褒めてはいない)。

 沖縄への蔑視
 広報室のコメントで犯罪関連のものを漁っていると、下手すると中国韓国への差別的視点よりも沖縄に対するそれのほうが強いのではないかという気すらしてきます。おそらく、デモをする権利への無理解と「国防に大切な基地へ反対するなんて!」という「義憤」がブーストをかけているのかもしれません。
大阪府警機動隊員の暴言問題について
 もちろん、差別的な暴言は許されざることですが、そのような暴言を吐くに至った経緯、そもそも大阪府警機動隊員がなぜ沖縄にいるのかといった観点では一切報道されていない。しかしながらいわゆる「基地反対派」の人たちの数々の脅迫暴行等の不法行為は有名です。沖縄の警察は見て見ぬふりをしているらしい。それ故に大阪から機動隊員を呼ばざるを得ないのではないか。日本は法治国家です。沖縄県警が不正な対応をしているのであれば、県警本部長等の責任者を更迭するなど、ぜひ綱紀粛正をはかって頂きたい。
 (東京都 男性 50代 販売・サービス・保安職)
 平成28年度分の意見等 > 警察関係 > その他 > 大阪府警機動隊員の暴言問題について
 基地反対派の不法行為は有名らしいのですが、結構不起訴になっているような。あと国家権力である警察とあくまで一般市民(プロ市民だろ!とかそういう話ではなく)である反対派を同じ基準で扱う無茶も考えてほしいところですね。
全国の警察の協力で沖縄を浄化する
 沖縄では正義が通りにくい。暴力まがいや暴言などで脅かしながら基地移転に反対している一部の左翼思想者(議員も多く関わっている)と、日本の弱体化を狙う外国人(中国人・韓国人)が声を大にして基地反対運動を繰り広げているにもかからわず、その実態はメディアで報道されず、市民を守ろうとする機動隊が一言言い返しただけで、メディアは取り上げバッシングが始まる。今はネットが普及し、沖縄の実態が動画で可視化され始めているため、そのバッシングも弱くなったが、今まではもっと酷かった。左翼勢力が警官の家族にまで脅すなどということもあり、沖縄では警察も動けない。こんな卑怯で陰湿な県にしたのは誰か。勿論左翼と売国勢力だが、それを許してきたのは政府である。沖縄は非常にどす黒い。徹底的な洗い出しを全国の警察の力で行い、市民が住みやすい、意見を言いやすい県へと変わるべきであろう。
 (大阪府 女性 50代 専門・技術職)
 まるで沖縄県自体が暴力団であるかのような物言いです。これをそのまま掲載する意味を広報室は考えなかったのでしょうか。大阪府在住という情報で「お前が何を知ってんねん」感も満載。

 もうちょっと勉強してほしいコメント群
成人年齢を引き下げるのなら18歳の犯罪も成人と同じ
 来年に成人年齢20歳を18歳に引き下げる案がありますが、18歳の犯罪も成人と同等に扱うべきだと要望します。今年の参議院選挙から18歳も投票ができるようになりました。権利ばかり与え、罰則は少年法の規定のままになっていたらおかしいと思いますので、成人年齢の引き下げると同時に少年法の改正にも着手してもらいたいです。先日も河川敷で複数の少年らの暴行によって、一人の少年が亡くなる事件がありました。川崎市で起きた事件と同じで、あれから何も変わっていません。彼らには罪の意識が薄いように感じられます。厳罰化の方向にすべきだという国民の声は多数です。
 (愛知県 女性 30代 無職、その他)
 平成28年度分の意見等 > 警察関係 > 非行防止 > 成人年齢を引き下げるのなら18歳の犯罪も成人と同じ
 18歳成人にしたら犯罪もそのように扱うべきなのはその通りかもしれませんが、厳罰化したら何とかなるというのは大間違いです。暴行くらいの犯罪であれば少年犯罪として扱われるほうがはるかに大ごとで犯罪者にとっては厄介ですし、そもそも殺人事件は原則として逆送され、最高刑期などを除けば成人と同じように扱われます。あと犯罪に対する責任は権利の代償ではありません。
高齢者の運転免許返納制度
 年齢で一律に運転免許返納にすべきではないだろうか。能力に個人差があることは承知しているが、例えば家族が危険を感じても当時者に理解してもらうのは難しい。
 (兵庫県 女性 40代 専門・技術職)
 平成28年度分の意見等 > 警察関係 > 交通安全 > 高齢者の運転免許返納制度
高齢者の自動車運転
 高齢者による自動車事故が相次いでいます。やはり、高齢者の運転は制限すべきではないでしょうか。交通の問題がありますが、その結果、運転する高齢者より若い人、特に児童の怪我や死亡事故はゆるせません。一概に決めつけることはできませんが、車を持つ余裕があるなら、タクシーを利用するなどの金銭的な余裕もあると思います。人生の終盤に、自分より若い人を殺傷する事の意味を、もっと、啓蒙するべきと考えます。
 (京都府 男性 60代 管理職)
 平成28年度分の意見等 > 警察関係 > 交通安全 > 高齢者の自動車運転
高齢者免許
 高齢者の自動車事故が多発する中、先日87歳の高齢者男性が事故で児童の命を奪ってしまった。高齢者の寿命、運動能力は高くなっているが、認知症の割合も高くなっているので危険極まりない。来年の3月にこれらに対しての改正があるらしいが、認知症検査や運転能力でなく年齢で確実に免許を返還にしてもらいたい。運転する側からは迷惑だろうが、被害者の気持ちや今後事故を減らすほうに考えてもらいたい。
 (埼玉県 女性 40代 主婦・主夫)
 平成28年度分の意見等 > 警察関係 > 交通安全 > 高齢者免許
 犯罪とはちょっと違いますが、単純明快な規制を求める声が多いのも気にかかります。元来運転もその人の行動の自由の1つであり、それを年齢という理由だけで奪ってしまうのは問題があるでしょう。とりわけ、地方では交通機関が貧弱なままであり下手すると大げさでなく本当に生存権に関わりかねない提案です。
男=悪・犯罪者の広告はもうやめよう
 絵画等を用いた犯罪防止を呼び掛ける広告には、犯罪者を男性として描いているものがよくある。既に1年以上前だが、新聞掲載の政府広報ですら、児童ポルノ単純所持禁止(個人的には「単純所持」への罰則には反対だが)の加害者が男性として描かれていた。仮に男性の犯罪者が多いとしても、犯罪者の絵を男性として描くのは良くない。なぜなら男性=悪のイメージを植え付け、痴漢冤罪のように男性への冤罪を招いたり、うっかり女性トイレに間違って入ったり、善意で迷子の少女に声を掛けたりした男性まで捕まってしまうような騒ぎも聞いているから。こんな極端な事が起きるのは「男性=悪」の先入観が蔓延しているからではないか。そのため、特に犯罪防止広告に男性を加害者犯人として描くのをある程度規制するとか、あるいはそういう描き方をするのを自然にやめていく様な風潮を作ってほしい
 (福岡県 男性 30代 無職、その他)
 平成28年度分の意見等 > 警察関係 > 防犯 > 男=悪・犯罪者の広告はもうやめよう
 最近よく見る感じのあれです。でも犯罪者の大半は男なので、実際に即した描写なんですよね。むろん、ダーティーオールド仮説の世にステレオタイプな描写は逆効果なのでやめるべきですが。
暴力的精神疾患者と性犯罪の再犯者にチップを
 先日相模原市の重症養護施設で痛ましい殺人事件が起こりました。背筋が凍るような残虐な事件でした。新聞報道では異常な精神の持ち主で、精神鑑定で刑の可否が決まるでしょうといわれています。最近こうした犯罪が多いように思います。さらに事前に防止できなかったのか口惜しさがあります。性犯罪も同様に感じられます。米国ではこうした人物にはチップを挿入しているそうですが、社会が歪んで多様な人物がいる昨今は、こうした方法もいいのではないかと思います。法制化の方向で考えていただきたい。
 (兵庫県 刈谷 昌道 男性 70代以上 無職、その他)
 平成28年度分の意見等 > 警察関係 > 防犯 > 暴力的精神疾患者と性犯罪の再犯者にチップを
 おぉ、この時代にメーガン法の話を聞けるとは!って感じのコメントです。メーガン法については『【書評】性犯罪者から子どもを守る』『日本にメーガン法は必要か』を参照のこと。性犯罪者の中に精神障害者が加わるというのが世相を反映していて興味深いですね。

 差別にまみれたコメントを垂れ流す意味
 このようなコメント群は、一部は関係省庁の返答を加えられますが大多数がただ掲載されているだけの現状です。無知から生じる、現状に対する誤った認識をしているコメントをそのことを指摘しないまま掲載するのも誤った印象を再生産するだけで問題ですが、さらに問題なのは明らかに差別的なコメントをそのまま掲載していることでしょう。
 引用元のブログも指摘しているように、このコメントはただ掲載しているだけではなく、不適切であれば掲載しないと断ったうえで載せているものです。つまり政府広報室はこれらのコメントが不適切でないとお墨付きを与えたうえで垂れ流しているわけで、これでは差別思想に是認を与えるだけの役割しか果たしていないことになります。

 しかし不思議なことに、極端な意見は必ずと言っていいほど右側からのもので、「市民を弾圧する警察は糞だ!死ね!」みたいな方向性の極端なコメントは探した限りでは見られませんね。
 あと大量にある犯罪に対する誤解コメがそのまま放置なのも座りが悪いので、時間があるときに一斉に指摘していきたい気も。大変でしょうけど。

韓国人は火をつける国民性? 「事例」をかき集める記事にご注意を

 この前、たまたまコンビニで雑誌を眺めていたら『実話BUNKA超タブー』のVol.32の表紙に『韓国すぐ放火する!?国民性』という見出しを見つけました。
 この雑誌、花見客の女性を盗撮したような写真を掲載し『素人娘お花見エロ画像』と題しながら『貧困問題&セクハラ騒動は総スルーの沖縄選挙事情』なんて記事も書いているあたりお察しなのですが、犯罪学ブログとしては見逃せないということで読んでみました。
 まぁ結果としては、いろいろと疑問のある記事でしたので順にみてみましょう。

 韓国の放火は多いのか?
 まず、記事は統計的な話題を取り上げます。日本に比べて韓国は放火が多いぞ!という話です。日本と比べて放火が少ない国のほうがかなり少ない気がしますがそれは置いておきましょう。
 記事によれば、人口10万人あたりの韓国の放火件数は日本の10倍近い!怖い!だそうです。記事では両国の件数は公式統計を利用しているようです。日本の統計は日本語なので容易にアクセスできるとして、問題は韓国の統計です。
 話の大前提として、実話タブーに記事を書く人間が韓国語で公式統計を読み解くという高度な作業をこなすことができるとは思えません。可能性としては日本語でアクセスできる何らかの情報を参照したというのが一番ありえそうです。大穴では英語でアクセスしたという可能性ですが、少なくとも私が四苦八苦試行錯誤した範囲では見つかりませんでした。英語だと旅行者向けの情報はたくさん出てくるのですが、放火までフォローしているものは見つかりません。
 日本語の情報をあれこれ検索しているといくつかそれらしいサイトは見つかります。例えば『韓国朝鮮と日本』というサイトでは韓国最高検察庁犯罪統計を引用したとして10万人当たりの放火の件数が日本の10倍近いことを示しています。また『目覚めよ!日本人。』は『困った隣人韓国人の急所』という書籍を参照したとして数値も全く同じの指摘をしています。本書は最高検察庁2011年犯罪統計を引用しているとしているらしく、日本語でこの統計を閲覧することは不可能であることから韓国人は放火が多いという言説の大元の出どころはこの本でしょう。もっとも、記事の出どころはわかりませんが。
 しかし日本建築学会の学術講演の資料というPDFを発見しまして、不可解なデータも見つけました。この資料によると、韓国の2006年の放火件数は3414件、2010年の日本の件数は5612件と大差はありません。そもそもこの数字は記事が指摘する7000件前後という数字とかけ離れています。放火件数が数年で倍増するとは思えませんが、資料の指摘する出火原因の分類の変化が一因かもしれません。あるいは出火原因の統計と犯罪としての放火の統計の差異かもしれません。
 結局のところ、韓国の公式統計にアクセスしないことにはわからないことが多いので、この辺韓国語や韓国の司法行政に詳しい人の補足が欲しいところですね。

 公式統計は信用できるか?
 ここで犯罪件数の国際比較に関して一般論。上掲のサイトがブリタニカの数字も出していたので私も図書館で見てみました。そこで意外な事実が判明。
 日本は世界でも有数の犯罪極小国家ですが、それよりも安全な国が実はちらほらと見つかります。どこだと思いますか?
 例えば中国です。2016年のブリタニカによると10万人当たりの殺人の届け出の数が日本1件に対し中国は0.2件、傷害は16件対5.2件という感じです。「日本スゴイ!」な人たちにとってはなかなか衝撃的なデータでしょう。
 どうしてこうなるのか。国際比較で気を付けなければいけないのは犯罪の定義の差異ですが、もう一つ気を付けるべきなのがこのデータがおそらくその国家の警察業務を記録した作業統計を参照しているであろう点です。犯罪の届け出件数というのはその国での犯罪の実態というよりは警察の働きを表したものです。日本でも桶川ストーカー事件以前はそうでしたが、警察は往々にして被害届を受理せずに拒絶するという対応をとることがあります。このような傾向は警察の人数が足りない途上国や行政のやる気がない国でも起こりうる現象です。つまりその国の背景が大きく左右される数値なので、比較には不適切です。
 もしどうしても件数の国際比較をしたいのであれば、国際的な被害実態調査のデータを用いるのが一番ですが、放火までフォローしているものは少ないでしょう。

 実例を集める無意味さ
 記事の大半は「韓国ではこんなとんでもない放火が!」の羅列となっています。この文章を無批判に読めば確かに韓国人やばいなという結論に至ってしまうのでしょうが、それはあまりにもメディアリテラシーに欠ける態度です。
 犯罪者というのはその社会の数パーセント、非犯罪者と地続きであれある程度は極端な要素を内包する人々です。そんな犯罪者の起こした事例から読者受けする事件をピックアップして記事にするというのは、要するに極端な事例からさらに極端な事例を引っ張り出しているというわけで、これをその社会一般に当てはまる特徴であると考えるのは無理があります。その理論を認めるのであれば「オウムの事件があったから日本人はすぐに新興宗教にはまってテロを起こすヤバい奴だ」という認識もまた認めなければいけないということになります。
 記事を読む限り最も古い事例では2003年のものが引き合いに出されています。年に何千件と起こる放火を、15年近く遡れば一つ記事に仕立て上げることのできる奇妙な放火の事例なんていくらでも見つかるでしょう。しかし、そのような事例をいくら集めてきても全体を論じることはできないのです。

九段新報過去記事で振り返る安倍政権の5年間

 衆議院総選挙が今度の日曜日に近づいています。今回は九段新報の今までの記事を振り返りながら、安倍政権が主に犯罪分野でどのような姿勢をとってきたかを明らかにしていきます。
 というのも、期せずして九段新報が始まったのは第2次安倍政権スタートの半年後である2013年9月。以降の歩みはほとんど安倍政権を批判したりひっぱたいたりという中にありました。まぁこれは安倍政権というよりもそれを支持する立場に立つ産経新聞を批判していたら自然とそうなったという感じが強く、直に政権批判をすることはあまりなかったと思いますが。
 というわけで、話題をわかりやすくするために分野別に過去記事をまとめつつ振り返りましょう。
 なお同様のコンセプトの記事には『自民党を支持するべきではない犯罪学的な理由』があります。

 大臣のあれこれ
 松島みどり新法務大臣の発言を見る
 続・松島みどり新法務大臣の発言を見る
 山谷えり子国家公安委員長とは何者か
 このブログが直にとりあげた大臣は2名。1人は法務大臣の松島みどり氏、もう1人は国家公安委員長の山谷えり子氏です。ちなみにこの記事を書いているときに調べたら、過去記事のタイトルが「山谷」ではなく「山村」になっていました……。おいおい。
 松島氏に関しては、刑務所における受刑者への宗教的配慮、つまり宗教上の理由で食べられないものに配慮することを「逆差別でずるい」などと表現していたことがきっかけで取り上げました。議事録を調べるとほかにも、犯罪者の人権が二の次三の次だとか、韓国人は危ないだとかとてもではありませんが法務大臣とは思えない発言がぼろぼろ出てきます。最終的にはうちわというある意味ではどうでもいい理由で法務大臣を辞任しています。
 とはいえ、後述の山谷氏が強烈すぎるせいなのか私自身はそこまで松島氏を強く批判はしていません。確か逆差別云々に関しては撤回してますし、出所した元受刑者の就労が重要であることを理解しているのは評価できます。
 問題はどちらかといえば山谷氏のほうです。記事にも書きましたが、氏は排外主義団体である在特会と近しく、思想もそちらの方向へ偏っています。また謎理論による中絶反対、性教育反対という極右の見本のようなイデオロギーの持ち主といえます。特に性教育に関しては「過激な性教育・ジェンダー教育実態調査プロジェクト・チーム」事務局長として活動、異常な性教育が行われていると虚偽の報告をするといった行為を行いました。
 大臣という要職につく人間は、いわばその政権の主義主張をある程度は反映していると考えるべきです。この2人を要職につける政権の姿勢は、人権の基礎を理解できていないという疑念を抱かせるに十分なものです。

 性教育
 なでしこアクションよ、それじゃあ性暴力の予防は無理だ
 清く美しい家庭はどうか知らないが性犯罪者は待ってくれないよ?
 前述の山谷氏の話に関連して、性教育の話も上げておきましょう。日本の性教育は遅れていると指摘される渦中にあって、政府は何を思ったか女性手帳を配って計画的な妊娠出産を促そうというあらぬ方向へ突っ走っていきました。選択的夫婦別姓すら認めず、子供を産み育てやすい環境を整える気が一切ないが故の小手先です。
 安倍晋三と性教育というと、これは安倍政権下の話ではないものの真っ先に思い起こされるのが七生養護学校事件です。これは独自の手法を用い知的障害のある子供たちへ性教育を行っていた七生養護学校へ自民党会派の都議が押し入り妨害を働いたり、教材を押収するなどした事件です。これを契機として誕生したのが前述の「過激な性教育・ジェンダー教育実態調査プロジェクト・チーム」であり、この座長を務めたのが安倍晋三でした。政治家であれば政治の教育への不当な介入を批判すべきところ、むしろ嬉々として自身のイデオロギーを押し通すきっかけとしたのでした。
 このような姿勢は、女性手帳を巡る騒動などを見る限り現在の安倍政権にも引き継がれているとみていいでしょう。

 相模原大量殺人事件
 相模原の大量殺人について
 「措置入院でなぜ防げなかったのか」が無意味なわけ
 相模原の犯人が○○であることは事件と関係ないよ?
 相模原の事件では、犯人が首相と衆議院議長あての手紙をかつて持参し、その中で罪を許してもらうように依頼していたことが明らかになっています。これだけであれば犯罪者の妄言と退けることもできますが、実際に事件後首相は特段何も声明を発していません。いつもは「国民を守る」と血気盛んであるにもかかわらず、実際に国民が傷つけられた大事件であったのにかかわらずです。
 その後の政府の対応は、措置入院を見直すという明後日の方向へ向かいました。記事中でも指摘していますが、相模原の事件は措置入院をいくら厳しくしても防げなかった公算が高いものです。入院したあとに正常の範疇へ回復した犯人を入院しておく理由はなく、これを防ごうと思えば正常な人間でも怪しければ病院のベッドへ括り付けろという話になります。
 これも結局は、政権が5年間で振りまいてきた差別の行き着いた先なのでしょうか。

 沖縄と米軍基地
 沖縄と米兵のレイプ
 沖縄・元米兵の殺人事件で同じ詭弁を繰り返す人々
 やっぱり地位協定は破棄すべき
 宮古島市・石嶺かおり市議への辞職勧告は異様 反発に見る「性犯罪不安へのバッシング」
 沖縄・米兵の性犯罪もセカンドレイプの対象になる国
 沖縄ヘイトクライムと政府の姿勢
 政府の姿勢を犯罪と絡めて最も批判したのは、もしかすると沖縄での様々な事件での記事だったかもしれません。沖縄が理不尽な犯罪に苦しむとき、その陰には常に政府の影があったとみていいかもしれません。あまりにも事例が増えたために「米軍の犯罪」というタグを追加したくらいです。
 沖縄の事件が深刻化する背景には、やはり日米地位協定があります。地位協定自体は他国へ軍隊が赴く際に結ばれるごく一般的な協定であったとしても、沖縄においては過度に乱用されている印象があります。沖縄にある米軍基地が国防上重要であると考えるのであれば、政府は沖縄の負担を軽減し持続可能を高めるべきでしょうが実際には放置を決め込んでいます。政府が適切に対応すれば防げたダメージも多くあったことは想像に難くありません。
 その姿勢が支持者に伝わったのでしょう、沖縄を取り巻くデマとヘイトには目を疑うものも多くあります。その代表的な扇動者が百田尚樹と橋下徹というわけです。
 自分たちで下地を作っておきながら、いざ事件が起こるとさも沖縄に原因があるように扇動する。国土を明け渡し同胞を貶めることで成立する保守政治とはいったい何なのでしょうか。

 外国人実習生
 「人」を取り締まっても意味がないことの好例
 政府は外国人に技能を学んでもらうという名目で低賃金労働者を受け入れる「技能実習制度」を導入しています。その労働環境たるやブラック企業が白く見える惨状であり、当然の帰結として失踪者が大量に出てくることとなります。
 そのため安倍政権は制度の適正化名目でいろいろと小手先の変更をしているようですが、元々の制度に無理があるので焼け石に水という状態です。まぁ、日本人がきちんとした労働環境で働けていない社会で外国人がどうなるかなんて言うまでもないことですが。
 なお記事ではいかにも治安に悪影響があるかもしれないという風に描かれていますが、皮肉というかなんというか、その可能性はないに等しいのも事実です。外国人だから危険だろうというのは安直に過ぎます。

 朝鮮学校と韓国人関連
 「ウヨマゲドン」はジェノサイドの予兆である 大げさでも何でもなく
 (特定の)外国人排斥を煽る産経の靖国神社報道の異常さ
 【靖国爆発シリーズ続報】警視庁「韓国人関与ない」VS産経「犯人は韓国人」
 新・外国人の犯罪は多いのか検証してみた
 差別主義者は無限の証明を要求する
 ヘイトスピーチ規制の理念法すらまともに作れないのか
 第二次安倍政権で最も後退したものは人権と平等思想ですが、その悪影響をもろに受けたのが在日コリアンや韓国にルーツを持つ(とされた)人々です。その悪化ぶりは、民主党政権時代の東日本大震災で流れたデマが「外国人犯罪の横行」だったのに対し安倍政権の熊本地震では「朝鮮人が井戸に毒」にまで変化したことに表れてます。
 その差別主義の極点がウヨマゲドン、去年7月に在日コリアンが在留資格を失うとするデマが流れ入管に通報が殺到した事件であり、別の側面が一応は全国紙である産経新聞が靖国放火事件の犯人を特定前から外国人であるかのように報じた事例です。また政府による差別の最たる例が朝鮮学校の補助金排除でしょう。
 世間に差別が蔓延するとき、これを押しとどめるのも政府の仕事ですが、政府が実際に行ったのは防ぐどころかこれを煽るということでした。野党に法案を提出され、これが可決するのが癪に障ったのか急造でヘイト防止法案を作り上げますが、国連などの使用する一般的な定義ではなく「日本以外の国または地域の出身者で適法に居住するものを、排除することを扇動する不当な差別的言動」という珍妙な定義を示す始末です。

 こうしてみると、安倍政権の問題点の多くは人権の軽視と差別主義に貫かれていることがわかります。これは絶望的なことですが、一方では希望かもしれません(小池新党のことではなくて)。ヘイトスピーチ研究の多くが、ヘイトスピーチはネット上のごくわずかの勢力によってなされていることを明らかにしています。これらの差別的な政策も同様だとすれば、そのごくわずかの勢力が結集しているのであろう安倍政権を追い落としさえすれば状況は好転する可能性があるということでもあります。

上野発言の前提 移民・難民の増加→治安の悪化は必然なのか

 ちょっと時節の遅れた感もありますが、中日新聞に載ったフェミニズムの権威である上野千鶴子氏のインタビュー記事が批判を呼びました。インタビュー記事ということで、まとめ方がまずかったのではという推測もありましたが、移民連の公開質問への回答から考えてそうではなさそうです。
『中日新聞・東京新聞』2/11付け「考える広場 この国のかたち 3人の論者に聞く」における上野の発言、
「平等に貧しくなろう」
に対して、移住連こと特定非営利活動法人移住者と連帯する全国ネットワーク・貧困対策プロジェクトから公開質問状を受け取りました。
(中略)
 日本の人口推計によれば2060年の人口推計は8674万人、人口規模1億人を維持しようと思えば1.3千万人の社会増(移民の導入)が必要となります。つまり40年間にわたって毎年およそ30万人、中都市の人口規模にあたる外国人を移民として迎えることを意味します。現在の1億2千万規模を維持したいなら3千万、およそ半世紀後に人口の1-3割が外国人という社会を構想するかどうかが問われています。
 出生率を政治的にコントロールすることはできないし、すべきではありませんが、移民は政治的に選択することができます。2000年代に入ってから経団連は「移民1000万人時代」(これまで「外国人」という用語を使い、「移民」と言ってきたことがなかったので、驚きでした)をうたい、政府は家事・介護労働市場への外国人の導入を検討しています。今のところいずれも及び腰ですが、この先、「この国のかたち」をどうするかについて、政策が提示されれば、わたしたち有権者も、それに対して賛否の判断をしなければなりません。
 現実には日本にはすでに相当数の外国人労働者が入ってきており、外国人労働力依存の高い業種があること、その外国人労働者が技能実習生制度等のもとで不当な取り扱いを受けていること、外国人の犯罪率は人口比からいうと日本人よりは低いこと…等はデータから承知しております。
 ですが、移民先進国で現在同時多発的に起きている「移民排斥」の動きにわたしは危機感を持っておりますし、日本も例外とは思えません。これから先、仮に「大量移民時代」を迎えるとしたら、移民が社会移動から切り離されてサバルタン(引用者注:権力構造から疎外された人々)化することや、それを通じて暴動やテロが発生すること(フランスのように…と書けばよかったんですね、事実ですから)、ネオナチのような排外主義や暴力的な攻撃が増大すること(ドイツのように)、排外主義的な政治的リーダーが影響力を持つようになること(イギリスのように)、また移民家事労働者の差別や虐待が起きること(シンガポールのように)などが、日本で起きないとは思えません。(なお移民国家であるアメリカとカナダは国の来歴が違うので、比較対象にするのは困難です。)それどころか移民先進国であるこれらの諸外国が直面している問題を、日本がそれ以上にうまくハンドリングできるとはとうてい思えません。それはすでに移民先進国の経験が教え、日本のこれまでの外国人への取り扱いの過去が教える悲観的な予測からです。
 人口減少か大量移民か? ちづこのブログNo.113-WAN
 これらの発言、見解に関してはフェミニズム、移民問題の観点などから上野氏の回答を掲載したサイトでも優れた批判(『移民問題は、「選択の問題」か?--上野さんの回答を読んで 岡野八代』など)がなされているのでそちらに譲るとして、この記事では上野氏の主張の前提となっている「移民(あるいは難民)が増えると治安が悪化する」という主張が、果たして本当に上野氏の主張する通り自明であるかという議論をします。

 前提
 まず議論の前提として、移民・難民の増加が社会に影響を与えるという話をするときには、3つの段階があります。この3段階を整理して理解しないと「移民や難民の増加が治安に影響する」という言説を適切に解釈できません。
 なおここでの議論では移民と難民を「何らかの理由で日本に入流する外国人」として同様に扱います。
 3つの段階の1つ目は「単に人口が増える」というものです。移民や難民が日本に来れば人数が増えるのは当たり前です。
 2つ目の段階は「経済的・社会的資本に乏しい人が増える」段階です。移民・難民として日本に来る事情を考えると、金銭面で困難を抱えている人は少なくないでしょう。また新天地にやってくる以上社会関係資本も少なくなりがちです。
 3つ目の段階は「特定の民族的ルーツを持つ外国人が増える」段階です。これは難民を受け入れた結果中東の人が増えるとか、そういう話です。

 1段階目
 わざわざ移民・難民の増加を3つの段階に分けるのは、彼らの増加が治安に影響を与える、つまり彼らの増加のために犯罪も増加するという上野氏の主張、あるいは移民排斥論に典型的な議論を精密に考察するためです。
 まず、移民や難民を受け入れればその国の人口が増えます。これが1段階目です。
 人口が増えれば、その増えた人々の犯罪率がどうであれ犯罪の絶対数は増加します。人が増えているのだから当たり前です。故に、第1段階に注目する限り「移民・難民の増加が犯罪を増加させる」という言説には意味がありません。別に移民や難民でなくとも人が増えれば犯罪も増えるからです。

 2段階目
 しかし、そんな間抜けな理由で移民や難民を排斥する人は多分いないでしょう。なので、2段階目からの話が重要になってきます。
 2段階目、つまり「経済的・社会的資本に乏しい人が増える」段階です。犯罪学的にはこのような資本に乏しい人が犯罪に走りやすいことが知られているので、このような層が増えることで犯罪が増加するというのはいかにもありそうなことです。
 では、これを理由に移民や難民の流入を禁じることに意味があるのでしょうか。恐らくないでしょう。というのも、別に移民や難民が入ってこなくても政府が無能なら「経済的・社会的資本に乏しい人が増える」ということは起こりうるからです(ていうか今まさに起こっている)。逆に言えば政府が有能でそのような境遇にある人の問題を解決できるのであれば、このような理由で犯罪が増えることもないでしょう。
 要するにこの理由によって増減する犯罪というのは第1段階で述べたものと同様に移民や難民の有無にかかわらないものであって、これを理由に移民や難民の入流を阻止しようというのは理屈が通りません。

 3段階目
 最後が、「特定の民族的ルーツを持つ外国人が増える」段階です。これは「韓国人は犯罪者ばかりだ!」みたいなヘイトスピーチを想像してもらうとわかりやすいでしょう。
 この理屈が科学的に証明されていないことは既に述べてきました。というか、人種間よりも人種内での差の方が大きいと今では言われているので、あまり意味のある比較ではないような気もしますが。

 これはすでに起きている
 既に批判者の多くが指摘していることですが、上野氏の見解において一番の問題点が、移民関連の問題が日本でも「起きうる」という認識です。
 いや、既に起きているのです。
 とっくの昔に排外主義の差別主義者が国や地方の首長になり、ネオナチと思想を同じくするヘイト団体は大手を振るって道を歩き、外国から来た実習生という名の労働者が虐待されているのです。日本で虐げられた彼らによるテロが発生していないのは全くもって幸運としか言いようがない状況でしょう。それともテロを起こさせないくらい徹底的に虐げたんでしょうか。
 このような状況下で、氏が言うように移民や難民がサバルタン化したとして、その責任は彼らに帰せられるものなのでしょうか。このような社会を形作った我々にこそ帰せられる問題でしょう。
 多くの批判者が主張するように、この問題は「移民・難民問題」というよりは我々の問題であり、その面では「日本人問題」と言った方が正確かもしれません。我々の問題を立場の弱いマイノリティに押し付けるかたちで脇に置いておくという手法は、それこそ性差別問題で女性が男性にされてきたことの焼き直しであるはずですが。

前科ある不法移民300万人強制送還がやばい訳

 さっそくトランプの話題ですが。
 トランプ次期米大統領は、200万~300万人の不法移民を公約通りに米国外へ強制送還する方針を強調した。CBSテレビが13日、トランプ氏のインタビューを伝えた。大規模な強制送還は内外に波紋を広げそうだ。
(中略)
 国内の不法移民はヒスパニック(中南米系)を中心に1100万人を超える。トランプ氏は、強制送還されるのは「犯罪者や犯罪歴がある者、ギャングのメンバー、麻薬密売人だ」と説明。ほかの不法移民に対しては、新政権が国境管理を強化した後に「決定」を行うと述べた。決定の具体的内容は明らかではない。(共同)
 強制送還の対象は「犯罪歴のある不法移民」、300万人規模-産経新聞
 通常の推論能力をもってすれば、この300万人強制送還がいかに無糖滑稽な計画かわかるはずですが、それとは別に、前科を理由に不法移民を強制送還するのはいろいろとヤバイ理由があります。

 300万人強制送還は無理
 まず、300万人強制送還が不可能であるという話から試算してみましょう。
 仮にこの300万人をトランプの任期8年以内に強制送還するとします。すると、この8年間1日たりとも休みなく働いたとしても1日に1027人は処理しないといけないことになります。飛行機には詳しくないんですが、日本で運行している旅客機の中でも最大クラスのエアバスでも座席数は200を超えないようです。つまり1日にエアバスを5機以上飛ばさなくてはいけません。雨天等で運行できない日があればより大変なことになります。
 また、例えば東京管区の府中刑務所の定員は3000名以下。アメリカでも1つの刑務所の定員は大差ないようですから、不法移民を送還までの間どこかに集めようと思ったら3日で1つの刑務所が潰れる計算になります。
 また、送還までにかかる手間も莫大です。その人が本当に送還の対象になるのか確かめ、当人をとっ捕まえてきてとなると、かなりの数の公務員を増やしてもやはり不可能でしょう。少なくとも現場の大混乱は避けられません。
 こうして考えてみると、300万人強制送還が如何に無糖滑稽な計画であるかがよくわかると思います。ちなみに、日本にも似たようなことを言って結局できず、大失敗した政治家がいます。消えた年金記録5000万件を1年以内に照合すると言い切った当時の安倍首相その人です。

 遡及適用にあたる
 仮にアメリカ人のスーパーパワー的なサムシングによってこれが可能になったとしましょう。しかし、やはり大きな問題が次から次へ出てくることになります。人道上の問題が一番大きいのですが、トランプを支持してしまう人間には効果がないと思うので、割愛させていただきます。
 この強制送還の大きな問題の1つは、罪刑法定主義を木端微塵に粉砕しかねないということです。どういうことかというと、既に前科を持っている、つまり過去に罪と量刑の決定した人々に更なる罰則である強制送還を後付けで課すことはまずいということです。後付けでいくらでも刑罰を追加で課すことができるのであれば、法律によって罪と罰を規定するという仕組みが無意味になります。
 これが、法律制定後に有罪となった移民を強制送還するという形なら、まだこの問題は起こりません。

 弾圧がヤバイ
 犯罪者を強制送還というと真っ当に聞こえますが、どの犯罪者を強制送還するかによっては一気にいろいろな弾圧の手段ともなりかねないというやばさも存在します。
 例えば日本では、デモの参加者などが警察に公務執行妨害で逮捕されることは日常茶飯事です。所謂当たり公防とか転び公防とか言われるものです。デモで逮捕者何人みたいな報道を聞く限り、その辺の事情は外国でも大差ないのだろうと推測できます。
 仮に強制送還の対象が、ありとあらゆる犯罪の前科を持つ移民であるならば、このような公務執行妨害でも強制送還に追い込むことが可能になります。なので、移民たちは転び公防されそうなデモなどには怖くて近寄ることもできず、彼らの表現の自由は著しく阻害されることとなります。
 もっと極端な事例を考えるならば、とにかく移民の跡をつけまわして、何らかの逮捕可能な行為を見つけ出してきて捕まえて強制送還ということも可能になりうるということです。こうなると移民は外を安心して歩くこともできなくなるでしょう。
 また移民の少年による犯罪も強制送還の対象となるならば、少年だけでなく家族も結局は帰国を余儀なくされることとなります。あるいは、帰国のための費用を賄えない場合、年端もいなく子供だけ強制送還というアムネスティがブチギレそうな事態にもなりかねません。さすがにそこまでたがが外れることはないとは思いますが、なにせあのトランプですから、油断が出来ません。

 逆に犯罪被害が増える?
 しかし、前科のある不法移民を強制送還すれば犯罪は減るのでしょうか。私の推測では、それはないだろうと思います。
 確かに前科のある不法移民を強制送還すれば、彼らによる再犯の可能性は0になるでしょう。しかし根本的な解決にはならないでしょう。彼らが犯罪を犯すことになった原因は何1つ、本当に掛け値なしに何1つ解決されていないからです。この原因が解決されない限り、原因は犯罪者という結果を生み続けます。どんな犯罪者でも初犯者である時があるのです。
 むしろ、強制送還という罰則は治安に悪影響を与える可能性もあります。犯罪学では野蛮化という現象が知られています。これは、厳しい罰則を逃れるために結局もっと重い罪を犯すようになるという現象で、例えば飲酒運転の発覚を恐れて事故の被害者を放置して逃げるといったことがこれに当たります。
 捕まったら強制送還という後のない罰則は、犯罪者に絶対に見つかりたくないという思いを起こさせます。そうすると、犯罪者は証人を殺そうと画策することになります。また、どんな犯罪でも捕まれば強制送還という上限目いっぱいの罰則は、裏を返せばここからどんな重い罪を犯しても罰の重さが変わらないと解釈され、さらなる罪を誘発しかねません。
 逆に、真に犯罪の原因である要因に働きかければ、より効果的に犯罪を減らすことが出来ます。犯罪の原因は突き詰めれば移民でもアメリカ人でも同じです。つまり、原因にきちんと働きかければ犯罪者の国籍を問わず犯罪を減らすことができる可能性があるのです。

 結局のところ、300万人強制送還は犯罪対策としてはスケープゴートにしかならず、現状を悪化させることはあっても好転させることはないでしょう。まあ、いろんな意味でトランプとその支持者らしい考え方だとは思いますが。
 AP通信は14日、トランプ次期米大統領の新政権で外交を担当する国務長官候補にニューヨーク市のジュリアーニ元市長が浮上したと報じた。エネルギー長官には米国の「石油王」と称されるハロルド・ハム氏らの起用を検討している。
 ジュリアーニ元市長、国務長官候補に浮上 AP通信報道
 ちなみに、ニューヨークでゼロトレランス政策を主導したジュリアーニの名前があります。ゼロトレランスは、割れ窓理論に基づくと称する、実際には無関係な非寛容政策であり、効果があったと一部ではみなされていますが実際には政策ではない要因で犯罪が減少したという見方が支配的な、要は禄でもない治安対策でした。外交担当なので治安対策に噛んでくる心配はないと思いますが、注意しておこうと思います。

「人」を取り締まっても意味がないことの好例

 産経新聞に以下のような記事がありました。
 働きながら技術を学ぶ「技能実習制度」で来日した外国人の失踪が昨年5800人を超え、過去最多に上ったことが30日、法務省への取材で分かった。全体の約半分が中国人で、現行制度成立後の統計によると、平成23年からの5年間で計1万人超が失踪している。多くが不法滞在となっているとみられ、国内の治安にも影響を与えかねないことから、捜査当局は警戒を強めている。
 法務省によると、昨年失踪した技能実習生は5803人で、これまで最も多かった一昨年の4847人を約千人上回った。失踪者数は23年に1534人だったが年々増加しており、5年間で4倍弱となった。
 昨年の失踪者を国別にみると、中国が3116人で最も多く、ベトナム(1705人)、ミャンマー(336人)と続いた。中国人実習生の失踪は26年には3065人で、2年連続で3千人を突破。23年から5年間の累計は1万580人となった。
 技能実習生の摘発も絶えず、26年の摘発者数は全国で961人に上り、25年の約3倍に急増。期間を越えて国内に居続ける「不法残留」や、実習以外の仕事をする「資格外活動」などの入管難民法違反罪が約4割を占める。空き巣などの窃盗罪で摘発されるケースも多い。一方で、実習生は人件費が日本人と比べて安いことから、労働条件の悪い人手不足の現場に投入されるケースが続発している。
 こうした状況の中で政府は、受け入れ企業・団体の監視態勢強化▽対象職種の介護分野への拡大▽滞在期間の延長-などを盛り込んだ外国人技能実習制度の適正化法案と入管難民法改正案を国会に提出。今月25日の衆院本会議で可決されており、今国会中に成立する見通しだ。
 消えた中国人 5年間で1万人超 昨年の失踪外国人が最多 治安に影響も-産経新聞
 いかにも産経らしいというべき、問題点がさっぱりわかっていないような記事ですが、これはある意味、治安対策で「人」ばかりを取り締まっても大した意味がないことの好例と見ることが出来ます。

 根本の原因はどこにあるか
 外国人実習生失踪の根本原因は、彼らの労働環境の劣悪さにあることは論を待たないでしょう。こんな滅茶苦茶な職場やめちまえ!というのは、過労死まで辞めずに働くよりもむしろ健全な反応であるとすらいえます。そのことを「適正化法案」として分野の拡大や期間の延長を盛り込んでしまうような政府がわかっているとは到底考えられません。労働環境の悪さ「一方」程度の言及に留める産経もわかっているかは怪しいものですが。
 1年間に5千人も現れる失踪者を減らしたければ、そもそも失踪しなければならない労働環境をどうにかするしかありません。このような人数を1人ずつ見つけて連れ戻すのは不可能でしょう。

 治安に影響があるか
 産経がこの記事を「事件・疑惑」に分類していることからも明らかなように、治安への影響を懸念する人は少なくないようです。
 しかし現状、治安への影響はごく一部でしょう。そのことは産経自身が証明してくれています。
 外国人技能実習生の失踪が過去最多を記録したことが30日、法務省への取材で判明した。特に目立つのは中国人の失踪。日本での中国人の経済活動が活発化したことで、不法滞在者の職探しが容易になったことが失踪者増を下支えしているとみられる。関係者は「失踪者の受け皿が多様化しており、中国人同士が『横の連携』を取って仕事を見つけている」と危機感を募らせる。
(中略)
 こうした状況を受け、在日中国人社会の中で、不法滞在者のためのセーフティーネットも構築されつつある。現在、顔写真貼付の必要がない国民健康保険証の貸し借りが横行。中国人実業家は「特別永住者の資格を持つ知人の料理店主は、不法滞在者に保険証を貸し出すのを商売にしている」と証言した。
 止まらぬ不法滞在者が観光客向けガイドや民泊ビジネスに…失踪最多で中国人ビジネスが拡大-産経新聞
 産経はいかにも悪いことのように書いていますが、治安面から言えばこのような事態はむしろ歓迎すべきかもしれません。政府の無能から生じた失踪者を受け入れてくれているわけですから。
 職がなくなれば、食うにやまれずといった犯罪は確かに増加するでしょう。しかし誰かが彼らを雇って生活を成り立たせてくれれば、そのような犯罪は防げます。不法と言えばそれまでですが、ただ働いているだけならば犯罪を犯されるよりだいぶましなはずです。
 どちらかと言えば、政府が自身の無為無策を棚に上げて、実習生の労働環境はそのままに不法労働の取り締まりにばかり熱心になった時にこそ、治安への悪影響を危惧すべきでしょう。飢え死にするくらいなら盗みをしようという人は必ず出てきます。

 不法滞在者増加などと煽られると、なんとかしなきゃという思いが沸いてくると思いますが、実際には彼らをコツコツ捕まえて強制送還というのはあまり現実的ではありません。こんなにわかりやすく不法滞在者になる原因があるのであれば、それをどうにかするほうが効果的だといえます。 

相模原の犯人が○○であることは事件と関係ないよ?

 凶悪犯罪といえばこれだろうという、もはや恒例行事となった感もある報道やデマが相次いで出ているので、それらをまとめておこうと思います。

 犯人は在日じゃないし、だったとしても関係ない
 いつも通り、証拠のないデマですが。
 流石に元となったFacebookのページは削除されています。しかし、このデマが「パヨク」の自作自演だというポストを、有名な極右活動家のテキサス親父が投稿し、産経社員が共有するという展開まで現れる始末でして。
 こう言うデマには引っかからないで下さいね。
 パヨクの罠ですから。
 相模原の殺害事件の犯人を在日だと暗に書いていますが、完全にパヨクの自作自演です。
 引っかからないようにご注意下さい。
 「やっぱり犯人は在日だった」などと言うと、「デマをネトウヨが拡散してる!」「見てみろよ!また、ネトウヨがヘイトスピーチしてる!」と攻撃の材料にされますよ!
  砂山綱彦Facebook
 しかし、このようなどこの馬の骨ともわからないTwitterアカウントの「証言」を信じる人々が、南京大虐殺や慰安婦問題で「証言は証拠にならない」と主張していた人々と面白いように被るというのはなんとも示唆的です。
 在日コリアンにまつわるデマに関しては以下の記事などで指摘していますが、よしんば犯人は在日コリアンだったとして、それを直ちに民族性なるものに一般化できないということも合わせて指摘しておきます。もしそうなら、例えば政治家の汚職事件が起こった際には「日本人は金に汚い民族だ」と主張しなければ整合性が取れないはずですが、そういう主張をしている人は見ませんね。

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 しかし、自分たちが流したデマを左翼の仕業だとスムーズにロンダリングする手腕には脱帽せざるを得ません。こういう、不都合な行為を外集団に切断して自分たちは無謬であることを装う姿勢こそが、在日コリアンに凶悪犯を押し付けるデマの根源ですから、このような発言が飛び出すのも必然と言えるでしょう。

 犯人が生活保護受給者であることは関係がない
 相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」で19人が刺殺された事件で、元職員の植松聖(さとし)容疑者(26)=殺人などの容疑で送検=が、同市から生活保護を受給していたことが1日、関係者への取材で分かった。借金があったとの情報もあり、神奈川県警津久井署捜査本部は経済的困窮が犯行の背景にあった可能性も視野に入れ、事件の全容解明を進める。
 植松聖容疑者、生活保護を受給 知人「数百万円を借金、遊興費に」-産経新聞
 言うまでもないことですが、彼が生活保護受給者であることと今回の事件には関連がないでしょう。貧困が事件の一因となった可能性はありますが、そうであればむしろ生活保護はその一因を減じる可能性もあったと評価すべきです。生活保護受給者へのバッシングが日常となっている現状において、見出しに記述して報じることに意味があるとは思えません。
 また、上述の在日デマに絡めて、在日特権の存在が証明されたかのようにはしゃぎまわるネトウヨの姿も確認できますが、デマを元にした論証によって在日特権自体が虚構であることが証明されてよかったなと思います。

 父親も関係ないだろう
 相模原市の障害者施設で入所者が刃物で刺されて19人が死亡、26人が重軽傷を負った事件で、逮捕された植松聖容疑者の父親が「息子がとんでもないことをしてしまいました。申し訳ございませんでした」とするコメントを、勤務先の学校の保護者向けの説明会に寄せました。
 植松容疑者の父親は東京都内の学校で教員を務めていて、2日開かれた保護者向けの説明会にコメントを寄せたということです。
 コメントは校長が父親から電話で聞き取ったということで、「息子がとんでもないことをしてしまいました。申し訳ございませんでした」と話していたということです。
 保護者からは「子どもに事件のことをどのように説明すればいいか分からない」などといった意見が出たということです。
 学校では2学期が始まる前に再度、保護者向けの説明会を開くことにしています。
 障害者殺傷 容疑者の父「息子がとんでもないことを」-NHKNewsWeb
 いい加減、成人した子供の行為の責任を親がとる必要がないということを周知すべきでしょう。そんなことは当たり前じゃないかと思うかもしれませんが、しかし日本では当たり前にはなっていません。
 自民党の憲法草案では、家族が助け合うことを義務化していますし、そうでなくとも親の貧困や介護は子が面倒を見ろと求められる時代です。子が親に責任を持つことを求められるということは、裏を返せば親も成人したこの責任を持つことを求められるということです。一方が一見してもっともらしくても、そこから導かれる普遍的な原則がとんでもない可能性は十分あります。

 母親が漫画家であることも関係がない
 母親が発表していたと思われる漫画作品を、本誌は入手した。1990年代に発行された月刊ホラー漫画雑誌に掲載されたもので、読者から募集した恐怖体験を漫画にした作品だ。
 ある少女が母親の実家に泊まると、枕元に女性が現われる。「真っ赤なワンピースを着た血まみれの女の人が……」というフレーズとともに、肩や額から血を流している女性が、ニヤッと笑いながら少女を見つめ、次の瞬間フッと消え去ってしまう……という内容だ。
 相模原45人殺傷事件「容疑者の母」は血まみれホラー漫画家-女性自身
 もはや犯人に関わることは全て犯罪の原因と言わんばかりの報道です。
 この報道がいい加減なものであることは、多くの人が気が付いたでしょうが、他の場面では果たしてどうだったでしょうか。つまり、これ以外の、上述の報道を鵜呑みにして肯定したり、あるいはほかの事件で「これだから最近の若者は」「これだから老人は」といった安直な一般化や切断処理を行っていなかったでしょうか。
 そのような報道の受容の仕方こそが、このような報道を生み出す下地になっているのです。「犯人は○○!」という報道がウケるなら、○○の中身を変えたものもウケるだろうと考えるのはある意味当然です。このような安易な報道によって自分の関係する属性が貶められたくなければ、報道を受容する我々の側は、そのような安直な報道はどのような形であっても不要であると示すことが必要です。

続・ケルン集団暴行事件を考える

 前回記事(ケルン集団暴行事件を考える)で紹介したブログに5つ目の記事が出ていました。今回の事件における、犯人のプロフィールに関する続報です。

 手段としての犯罪
 目立つのはモロッコ人とアルジェリア人の多さである。彼らは既に2011年から主にスリ、窃盗犯として警察からマークされる存在になっており、ドイツに不法滞在する者の中でもとりわけ高い犯罪率を示している。その理由として、彼らの多くが金を稼ぐために家族から送り出された若者であり、そのような若者がヨーロッパ各地からデュッセルドルフ・ケルン周辺に集まり仲間を難民収容所からリクルートしているという。
(中略)
 記事で引かれているWDRの放送では犯罪学者が、これまで発表された事実からして今回の犯行が性的な目的よりも物品を標的として行われており、被害者に触ることはそれで被害者の注意を引くための典型的な手口であるとコメントしており、警察のスリ担当班、モロッコ人コミュニティの人間も同様の見方をしているとして、内務省の性的な目的がメインの新しい現象であるという見解に疑義を呈している。
 ケルン集団暴行事件 日本の報道を検証する(5)-Fondriestのブログ
 記事と報道を読むと、事件が11時間という長い時間の中で行われたこと、そして、女性の体を触るといった性犯罪が窃盗の手段として利用されていることがわかります。
 性犯罪と聞くと、性欲に駆られた男性が……というイメージが強いかもしれませんが、単純に他の目的を果たすための攻撃の一形態として扱われる場合もあります。今回であれば、スリをするために被害者の気を引く必要があり、そのために体に触るなどしたのでしょう。背中に辛子をつけて……というのと発想は同じだと思います。
 また、記事では犯人の中にモロッコ人とアルジェリア人が多いことを指摘しています。彼らには難民認定を受けにくく、公的な援助も受けられないという背景があるようです。細かいことはわかりませんが、祖国での貧困が故に営利目的でドイツに渡って犯罪を犯しているという事情もあるのでしょう。だとすれば「彼らが性的犯罪を犯すという例は殆ど知られていない」という指摘も筋が通りますし、少なくとも彼らの民族性や文化を安易に性犯罪に結び付けて解決する問題でもないことは明らかです。
 また、モロッコやアルジェリアは北アフリカにあり、今問題となっている中東とは距離があります。私は国際政治に詳しくないですし、具体的な統計を見ない限り断言はできないのですが、モロッコ人やアルジェリア人の犯罪と中東問題とを結び付けて考えることにも意味はないかもしれません。

 性犯罪と移民の関係
 ところで、そのブログ筆者さんから前回の記事にこんなご質問をいただきました。
 新橋さんへ
 ブログ更新しました。容疑者のプロフィールについての分析の報道です。
 それと間違いなく私よりお詳しいと思うので教えていただきたいのですが、マーンだけでなく他のドイツ在住ジャーナリストのこの問題に関する記事でも、難民における男性の割合の高さをこの事件の直接ではないにしろ原因としてあげ、遅かれ早かれ起こるはずだった、というような記述を見るのですが、そのような見解を支持するような研究はあるのでしょうか。
 私の知る限り、性犯罪は単なる性欲が原因ではなく被害者を貶め権力を振るう事に目的があり、また集団レイプの場合には、それに参加する事で加害者間における「仲間意識」を強化する役割がある、ということだったと思うのですが。ドイツの報道でもエジプトの広場で起きた集団暴行(これの動画がケルンのものとして捏造され拡散されています)の説明として、女性にお前は価値がないのだということを知らしめるため、と説明されてました。
 移民における男性率の高さと性犯罪に関連があるかといえば、あると思います。というのも、性犯罪加害者の大多数は男性であり、人口が増えれば当然犯罪者の数が増えることを考えれば、移民として大量に男性が流入すれば性犯罪自体は増えるでしょう。
 しかしこれは、移民に限らずあらゆる人間で起こりうる現象です。ドイツ在住ジャーナリストがどのような意図でそのようなコメントしたかはわかりませんが、それに対しては「人が増えれば犯罪も増えるよそりゃぁ」と返せば十分でしょう。
 男性率の高さに注目するところから、移民がパートナーを見つけることが出来ずに欲求不満になり云々というストーリーを思い描いているのかもしれませんが、性犯罪が単に性欲だけでなく支配欲や、女性という総体への復讐心などに動機づけられることを考えればそこまで単純ではありません。性犯罪者には妻子持ちが少なくないことも犯罪学ではよく知られていることです。第一、パートナー不足が原因であればそれは移民に特有の問題でもないでしょうし。
 また、集団強姦の場合ですが、仲間意識の強化という機能もあると思います。無論これも移民に限らず起こり得る現象です。ちなみに、集団強姦の加害者はその集団から抜けさせるとほとんどの場合で再犯をしないと指摘する専門家もいます。
 もっとも、性犯罪の動機は想像以上に複雑で、加害者本人も自覚していない場合が少なくないことは念頭に置かなければなりません。
 少なくとも、特定の民族や人種、文化と性犯罪の多さや特異性などと結び付ける研究は私の知る限りありません。

ケルン集団暴行事件を考える

 時機を逸した感はあるのですが、大晦日にドイツで発生した集団暴行事件についてです。
 日本の報道では、この事件が移民によるものとセンセーショナルに報道されたこともあって、ネット上の記事のコメント欄(大みそかの独ケルン駅集団暴行・窃盗、被害は500件以上に-Yahoo!ニュース)を見ると、しっかり反移民的な世論形成に利用されていることがわかります。
 大晦日という時期でなければ、もっと反応は大きかったでしょう。

 日本の報道における誤り
 さて、この記事を書こうと思った理由ですが、以下のようなブログ記事の存在を知ったからです。
 ケルン集団暴行事件 日本の報道を検証する(1)
 ケルン集団暴行事件 日本の報道を検証する(2)-Fondriestのブログ
 以下続くようです。(1月28日現在4つ目の記事まで出ています。)
 ここでは、日本の報道における誤りをわかりやすく指摘しており、事件の状況を掴むのに最適です。詳しくはその記事を参照していただきたいのですが、日本の報道における基本的な誤りとしては、①犯人は1000人もいない。1000人の群衆を背景に複数の事件が起きたというだけ(なぜかBBC記事の翻訳でも丁寧に誤訳されている)。②移民排斥を恐れ報道を自主規制したわけでもない。ということをあげています。

 本当に移民は関係したか
 しかし4日に報道されたのち、このような続報も出ています。
【AFP=時事】(更新)ドイツ西部ケルン(Cologne)で新年行事中に起きた女性を狙った暴力事件について、地元ノルトラインウェストファーレン(North Rhine-Westphalia)州当局は11日、容疑者のほぼ全員が「外国出身者」だったと発表した。
 ラルフ・イエーガー(Ralf Jaeger)州内相は、事件の初期捜査で明らかになった内容を公表。「目撃者らの証言や(地元)警察の報告、連邦警察の調べによれば、一連の事件を起こした容疑者のほぼ全員が外国出身者だったことが示唆される」と述べた。この中には、最近ドイツに入国した難民も多く含まれているという。
 独ケルンの暴行事件、容疑者ほぼ全員が外国出身 州内相-Yahoo!ニュース
 これを見た人は、事件の犯人の大半が移民であるように受け止めるでしょう。現に、コメント欄ではそのような反応が見られました。しかしこのような解釈は2つの理由で早計です。
 まず第1に、容疑者はあくまで容疑者であり、犯人であると確定しているわけではないということです。移民(風の人)がこのような犯罪に関わっているというステレオタイプが、取り締まる警察の側にあれば、実際には関係していない移民も逮捕されている可能性は十分にあります。
 第2に、あくまで逮捕された人間や目撃証言に登場するのが移民だという話であり、移民ではない犯罪者が見逃されている可能性があるからです。上述のように、移民が犯罪に関わるというステレオタイプがあれば、そればかりに目が行って、ドイツ人犯罪者への注意が相対的に向かなくなるということは十分に考えられます。
 無論、これだけ大勢容疑者がいれば、移民だっていくらかは関わっているでしょうが、それをすぐさま移民の犯罪性に結び付ける議論はすべきではありません。

 移民に犯罪性があるか
 上掲記事『Fondriestのブログ』において、「レイシストによって盛んに引用されている職業デマゴーグ」とまで表現されている川口マーン惠美の記事には以下のような記述があります。
 しかし、11月にパリで起こった無差別テロの犯人8人のうち、少なくとも2人は難民としてEUに入ったことが明らかになっている。
 また、若い独身男性がこれだけ増えると、セクシャルな問題が起こるという懸念も、すでに以前から指摘されていた。
 たとえば70年代、大量の貧しい出稼ぎ外国人労働者が、狭い宿舎で暮らしていたことがあった。そのころ、多くのドイツの街に新たな売春施設ができたという。需要と供給の問題だが、性犯罪を防ぐためには有効だ。ドイツでは売春は職業として認められている。
 この解決法の是非は横に置いておくが、同じ状況が出来ようとしている今、犯罪学の学者の間には、現実問題として、性犯罪を警告している人たちがいたのだ。彼らに言わせれば、ケルンの事件は起こるべくして起きたのである。
 ドイツの「集団性犯罪」被害届は100件超!それでもなぜメディアは沈黙し続けたのか?タブー化する「難民問題」-現代ビジネス
 しかしこれは実に怪しい記述と言わざるを得ません。まともな犯罪学者なら、人種間より人種内のDNAの差の方が大きいとすら言われる現在の知見を無視して、人種や民族性と犯罪性を安直に結びつけません。
 もっとも、原典では性犯罪加害の大多数を占める男性の人口が増えること、移民が抱える貧困等の問題を放置したまま受けれることによって生じる軋轢などが下敷きにあってなされた発言なのかもしれませんが、川口が自説に都合のいいように換骨奪胎していることは間違いないでしょう。
 日本では警察OBであるというだけの、犯罪学の素人が犯罪学者面することもままありますし、ドイツでも同様であればこのようなことをいう「犯罪学者」が登場する可能性はあり得ますが。

 2016/01/28追記
 ブログ筆者であるFondriestさんからコメント欄で以下のようにご指摘を頂きましたので掲載します。
 はじめまして。
 取り上げてくださってありがとうございます。Part4をお読みになられたら、なぜ私が「職業デマゴーグ」という強い表現を使用したかご理解できるはずだと思います。
 因みに引用されているマーン記事ですが、ドイツには売春に関するきちんとした統計がないようですし、売春施設の増加を外国人労働者に帰する事はまずデマだとと思います。常識的に考えて他の社会的要因(経済発展等)の方が決定的でしょう。
 また、これまた彼女特有の曖昧な書き方ですが、ドイツで売春が合法化されたのは2002年で70年代とは無関係です。この人は万事この調子で直接の指示関係なしに情報を並列してミスリードを狙うとともに言い訳できるようにしています。
 ケルンの件について、被害届、容疑者についてのデータが出てきているので追々記事にする予定です。
 実際、Part4では川口が元のドイツ語記事を歪曲し、短い記事の中に矛盾する情報をいくつも入れるということも行っていることを指摘されています。川口はそのような記事で金を儲けているのですから「職業デマゴーグ」という評価は全く正しいわけです。レイシスト呼ばわりしないだけまだ優しいくらいです。

 ではどうすべきか
 犯罪学の基本に則って考えれば、移民の民族性や人種に犯罪の原因を求めることは不可能です。移民受け入れによって犯罪が増加したとすれば、それは単に人口の増加や、貧困など犯罪にコミットしやすい外的要因を持った人々の増加によると考える方が妥当です。
 そうはいっても、イスラムのような封建的な文化が性犯罪の原因となっていると考える人がいるかもしれません。
 この仮説の真偽は定かではありません(おそらく、さほど影響はないのではないか)が、仮にある程度正しいとしても、では犯罪に繋がるその習慣を正そうなどと短絡的に考えるのは止めるべきでしょう。
 というのも、ある程度正しいにしても、それを何の配慮もなく報じれば結局差別的な反応を引き起こすだけだからです。また、安易な「指導」は、移民に対する同化政策に繋がる恐れもあります。
 しいて、何か対策するとすれば、移民に出身国と今いる国の文化や制度面の違いを教えることで、移民たちがその国に馴染むのを手助けする、程度になると思います。 
犯罪心理学者(途上)、アマ小説家。カクヨム『アラフォー刑事と犯罪学者』『生徒会の相談役』『車椅子探偵とデスゲームな高校』犯罪学ブログ『九段新報』など。質問はhttps://t.co/jBpEHGhrd9へ
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