九段新報

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心理検査

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【心理テストスレイヤー第2弾】パーソナリティ障害を適当心理テストのネタに使うなよ

 ドーモ、ミナサン。心理テストスレイヤーです。
 前回(とは言っても半年も前、ドーモ、心理テストスレイヤーです。を参照)、「MIRRORZ」とかいうサイトのいい加減な心理テストを批判しました。しかし批判したとは言っても、適当なものを心理テストと言っていること以外にとりたてて論難するような問題がなかったらしく(というのも、そんな昔のこと覚えてない)、かなりマイルドで抽象的な批判に落ち着いています。
 しかし、今回何故か再燃した「MIRRORZ」には大きな問題を含んだ心理テストが存在していたので、今回こそは徹底的に叩いておこうと思います。

 ロールシャッハのパチモンみたいなやつ
 まず最初にTwitterでまわってきたのが、インクの模様診断とかいうやつです。ロールシャッハテストを彷彿とさせるインクの染みを提示して、性格を判定するのらしいのですが、診断結果からしてあやふやで、何とでも解釈できそうな言葉の羅列になっています。
 試しに、風という診断結果を引用してみます。
あなたは他の人から見ると常にインスピレーションを与え、刺激となっている存在です。
周りにこのタイプの人がいると、知らず知らずに多くの影響を受けます。
しかし、なかなか他人にはコントロールすることの難しい風のような性格です。
 占いの結果というのは、解釈や判定が読み手にゆだねられる文章や、誰だって人から言われれば否定しないだろうこと、あるいは誰にでも当てはまることから構成されています。
 この文章で言えば、あなたは刺激になっていると言われれば誰だって悪い気はしないでしょうし、周りに影響を与えているかとかコントロールしにくいかというのは本人にはわからないことなので勝手に自分に都合のいいように判定できてしまえます。
 ロールシャッハのパチモンと言いましたが、実際のロールシャッハテストで使われている図版は当然使用されていません。もし使用したら著作権的にもそうですが、今後の心理臨床に大打撃を与えることになるでしょう。
 投影法の検査は、あまり深く考えずにイメージを引き出すことが重要なのであって、見たことのある図版ではその意味をなさないからです。ロールシャッハテストの図版には解釈法に長年の蓄積があり、拡散してしまったからと言っておいそれと変えることもできません。

 ユングはそんなこと言わない
 今度はユング的性格類型診断とかいうのです。私は臨床分野の人間ではありませんし、ユングにも詳しくはないのでここで挙げられている性格の分類が正しいかには立ち入りません。この診断が、1つ1つの診断は見られるけど、全体としてどのような構造になっているのか明らかでないという都合もあります。
 しかし、この診断がトンデモであることは常識のある人ならすぐにわかります。何故なら、この診断は8つの色から提示された言葉のイメージにあうものを選択するという方法で性格を判定しているからです。色のイメージと性格に関連がなさそうなのは明らかです。
 確かにユングは神話のモチーフなど、人のイメージに関する考察を多く残しています。が、色から性格がわかるとまでは言っていません。
 もっとも、あくまでユング「的」だからという言い逃れをするつもりかもしれませんが。

 パーソナリティ障害をだしにする
 このサイトにある心理テストの中で最悪なのが、 【反社会的人格障害】こっちもヤバい!「ソシオパス診断」とかいうものです。やばいのはそっちだっつーの、と言いたくなるほどです。
 このページにある説明文下部に、「☆他の「障害診断」は、こちら」などという不穏な文言があったのでリンクを踏んでみると出るわ出るわ、自己愛性パーソナリティ障害に社会不安障害(SAD)、サイコパスが並んでいます。ピーターパンシンドロームもあり、パーソナリティ障害と説明されていますが精神医学の正式な用語ではないのでこれは間違っています。ここからもこのサイトのいい加減さがわかるでしょう。
 各々の診断がいい加減であることは改めて言う必要はないでしょう。パーソナリティ障害にせよ不安障害にせよ、専門医の診断が必要な疾患(パーソナリティ障害は正確に言えば精神疾患と健康の間にあるものと定義されるが)であり、軽々しく適当に誰それが障害だなんだというべきものではありません。
 医学的なものに置き換えれば、「こんな症状があったらインフルエンザかも?伝染病診断!」なんて言っているようなものなのですが、なかなかこのいい加減さが伝わっていないように思います。
 このようないい加減な心理テストでパーソナリティ障害がわかるなどと豪語するのは、手かざしでがんが治ると言っているのと同じ程度に害悪です。精神疾患の概念が正確に理解されず、誤った状態で世間に認知されるのは、結果的にその病に苦しむ人を専門医から遠ざけることになりますし、精神障害者の社会受容にもマイナスです。

 最悪に重ねて最悪なのが、このサイトが広告収入と運営会社のPR目的でこのような診断をいくつもリリースしているということでしょう。つまり、この企業は精神疾患というセンシティブな問題を会話のネタ程度の考え消費することを促す、モラルもへったくれもない会社だということです。
 このような会社に対しては、それこそ不買運動とかでもって対抗したいのですが、コンテンツ企業相手では難しいでしょうね。とりあえず、抗議の意味も込めて問い合わせをしておくことにします。

 付記:MIRRORZへの問い合わせ全文
  はじめまして。このサイトの心理テストを拝見し、その一部に問題を感じましたので問い合わせさせていただきます。
 問題のある心理テストというのは、「障害診断」というカテゴリでくくられた心理テストのうち、自己愛性パーソナリティ障害、反社会性人格障害、社会不安障害、サイコパスを診断するとしている心理テストです。
 これらの障害はDSMなどで明確な診断基準の示されている精神疾患です。このような簡易的で妥当性の担保されていないテストで診断できると謳うのは、これらの疾患に対する誤解や偏見の促進に繋がると考えられます。
 一応、診断の説明には「障害の資質を持っているか診断する」などと、直接診断を下すものではないと仄めかされていますが、利用者に伝わっているとも考え難く、またこれらの心理テストが持っている問題を免責することにはならないと思います。
 このサイトは、あるいはこのサイトの運営企業はこのような心理テストは問題ないと考えているのでしょうか。もしそうなら、なぜ問題がないと考えているのかお教えいただきたいと思います。

ドーモ、心理テストスレイヤーです。

 前回までのあらすじ
 邪悪なサイコロジストソウルをその体に宿した心理テストスレイヤー=シンバシクダンは今まで数多くの心理テストを「Twitterに蔓延るトンデモ心理テスト 前編」とかで葬ってきた。
 しかし、1匹いれば30匹いるのが心理テスト。今日も心理テストスレイヤーの殺戮の日々が過ぎ去っていく……。

 心理学のプロって誰なのか
 冗談はさておき、本当にこの手のデマはしつこいものです。
 今回槍玉にあげられる不幸なサイトは「MIRRORZ」。「あなたの心を映し出すメディア」らしいですよ。
 このサイトの説明にはこう書かれています。
 MIRRORZ(ミラーズ)は『心』をテーマにしたコンテンツを提供する「あなたの心を映す心理メディア」です。 忙しい日々の中で置き去りにされている自身の『心』に目を向け耳を傾けるお手伝いをする目的で立ち上げられました。
 『心』のスペシャリスト達によって作成・監修されたオリジナルの心理テスト/診断/占い等を通して、あなたの潜在意識や現在の心理状況を知ることができます。これらのコンテンツは定期的に追加されるので、サイトを訪問する度に『心』に関する最新のコンテンツにアクセスできます。もし「こんなコンテンツが欲しい!」というものがあれば、こちらよりリクエストを送っていただければ可能な限り対応いたします。
 心理テストで出た結果は是非TwitterやFacebook等でシェアしてみてください。あなたがシェアした結果が誰かの『心』に何かを映し出すかもしれません・・・
 ほう。心のスペシャリストというくらいなのだからさぞかしすごい人が作ってるんだろうなぁ……なんてことがある訳がありませんね。だいたいこのスペシャリストとやらの名前がただの1人も紹介されてませんし、仮に臨床心理士とかならアッピルのためにそう書けばいいので、あえてぼかしているということはそうですらないということでしょう。
 そもそも心理テストと占いを同列に書く時点で疑いの目を向けるべきですね。

 投影法の心理検査
 占いまがいの心理テストと臨床場面で使われる心理検査の違いは、ずばりちゃんと作っているかどうかです。
 つまり、心理検査は多くの人々を対象に測定をしてみて、標準化して少なくとも日本人の誰にやっても信頼のおける結果になるように作られています。
 それだけ手間のかかる検査ですから、大抵の場合検査に使う調査用紙はただではありません。金がかかります。あと著者の名前もばっちり書いてあります。心理検査を作るというのは大きな業績でもありますし、何より著者の著作物ですので。
 なので、ネットで見かける無料の、著者不明の心理テストなるものは大体ガセネタだと思ってかまいません。
 それと、心理検査と心理テストを見分ける方法がもう1つあります。それは、大抵の心理テストは投影法という方法にのっとって作られているということです。
 心理検査にもいくつか種類があり、その1つが投影法です。投影法はその名の通り、測定したいものが別の質問の答えに投影されていると考える方法です。バウムテストとかが有名でしょう。
 多くの心理テストでは質問と結果との間に開きがあります。そうでないと何を聞いているか予想できてつまらないからでしょう。しかしこれこそが、ほとんどの心理テストが心理学的に何ら根拠のない証拠となっています。
 まず、投影法の検査に対する回答を解釈するにはそれなりに訓練を積まなければいけません。素人が一朝一夕にできる類のものではありません。だから回答者にそのまま解釈を丸投げするような検査はあり得ません。
 また、そもそも本当にその質問の答えに心理が投影されているかという問題と、投影されていたとしてその解釈で正しいかという問題もあります。古典的な心理検査であるロールシャッハテストでも疑問が挟まれ批判的にみられるくらいですから、どこの馬の骨が作ったかわからない心理テストの信頼性など塵みたいなものです。

 楽しければいいのか
 こういうことを書くと「楽しむ分にはいいじゃないか、いちいち目くじらを立てるな」と言われそうですが、その思考回路こそ私がもっとも批判したいものなのです。
 楽しいからなんて理由である学問の知見を軽視する人は、いずれ他の理由で別の分野の知見も軽視するようになることは火を見るよりも明らかです。ちょうど江戸しぐさとか水からの伝言が流行ったのと似たパターンですね。ただ楽しみたいなら心理テストなんかを使わなくてもいいわけで、どっかでそういった知見を軽視する態度を形成しているのではないでしょうか。
 心理テストが他に比べて厄介なのは、それが既知の心理的問題の判断基準や、目に見えないうえに日常生活に密接に関わる心理という要素の判断基準であると騙る点にあります。今回の記事を書くきっかけとなったのはサイコパス診断を騙るものでしたが、本来サイコパスの検査はきちんと構造化されたものが存在しこんなクソみたいなテストでわかる訳がありません。結果の出し方からいって、検査を受けた人を多かれ少なかれサイコパスの枠にはめようとしているようですし。検査としての信頼性は皆無でしょう。
 

ニコニコアンケート基礎調査の作りが雑

 以前から思っていたのですが、ニコニコ動画のアンケートの作り方は雑だと思います。11月21日から24日にかけて行われたニコニコアンケート基礎調査の結果がやっと出たので、今回はこのことについて、どこが雑だったのかとかどういうアンケートがよいのかといった話をしていきたいと思います。

 フェイスシート
 通常(心理学や社会学のアンケート調査の場合ですが)質問紙の一番最初にフェイスシートというものがつきます。これにはどんな目的で調査をしていて、何にどうやってデータを使うのかなどが書かれています。
 さて今回のニコ動のアンケートの場合ですが、私の記憶ではこれに該当するものがありませんでした。つまりデータをどのように活用するのかとかほとんど明示せずに協力しろと言ってきたわけです。
 今までのアンケートの実施状況を考えれば、おおよそ見当のつくことではあるのですが、個人情報をどのように処理するのか全く示さないのは問題があるでしょう。特に今回の場合は選挙区をはっきりさせるために大まかな住所まで聞いてきていましたから。もっともその選挙区のデータもどのように活用されたのかわからないので、何が目的だったのかもわかりません。

 好きな国と嫌いな国
 質問項目に関しては、単純なものが多かったために特に問題があるようなものは少なかったと思います。しかしよく見てみれば作りが甘いというか、雑なものが見受けられます。
 その1つが好きな国と嫌いな国を聞くものです。
Q7 環太平洋諸国のうち、一番好きな国はどこですか。(国名の順番は太平洋の北から時計回りです)
Q8 環太平洋諸国のうち、一番嫌いな国はどこですか。(国名の順番は太平洋の北から時計回りです)
 選択肢は両方とも上から順にカナダ、アメリカ、メキシコ、チリ、オーストラリア、インドネシア、シンガポール、マレーシア、ベトナム、中国、台湾、韓国、北朝鮮、ロシア、その他でした。
 しかしよく考えればわかるように、環太平洋諸国で一般に馴染みが深い国というのは限られています。アメリカと中国からロシアまでくらいでしょうか。それ以外の国に何か思い入れがある人というのは限られていることが容易に想像できます。
 そして実際に結果はその通りになりました。好きな国ではアメリカがトップに、次いで台湾、意外にもカナダが3番目でしたが5番目のオーストラリア以降はシンガポールがわずかに5%を超える程度でした。
 嫌いな国ではよりはっきりします。韓国、中国、北朝鮮の順に票が集中したためでしょう。知っている国が限られる場合のような項目の作り方をすれば、回答が不必要に偏るのは自明です。
 この質問の問題点はもう1つあります。この質問に対して「好きな(嫌いな)国がない」人が回答する先がないという問題です。「その他」に回答すれば選択肢以外のどこかの国が好き(嫌い)だというニュアンスになるので、回答に困ることになります。結果として適当な国に回答するか、違和感を覚えつつその他に回答することになり、結果に余計なバイアスがかかることになります。

 ちなみにこのような質問項目の問題点などもあり(後述する「世論」の問題もありますが)、結果から「世論はこの国を好いている(嫌っている)」という結論を下すのは控えるべきでしょう。特に嫌いな国についての結果をみて「嫌いな国が安定の3国www」とか言うのはあほの丸出しと言って過言ではありません。あの選択肢の中で嫌いという感情を抱けるのは、悪いところまでしっかり報道されがちな隣国になる可能性が高いですし、ニコニコ動画の風土を考えれば当然の結果と言えます。(とはいえ、現在の社会情勢から考えれば全国で同じ質問をしても同じ結果になる蓋然性は高いが。)

 未成年が選挙に行くの?
Q13 あなたは来月の衆議院総選挙で投票に行きますか。
  この質問に対する回答が年代別で出ていましたが、何とも間抜けな状況になっています。
 というのも、選択肢には「未成年なので投票できない」というものがあるにも関わらず10代以下の回答者がこれを選択した割合が68.5%にすぎません。しかも逆に20代以上がこの選択肢を選んだ割合が常に数%存在するという有様です。
 まあデータの整理の上で機械的に並べただけだと思いますが、もしも解釈にまでこのデータを使ってきたらドワンゴは担当者を更迭すべきでしょうね。
 しかし逆に言えば、この項目は妥当性尺度として使えます。
 妥当性尺度というのは、回答者の回答がどの程度信頼して良いものなのか判断するための尺度です。一般にアンケートでは、回答者が真剣に答えたのか適当に答えたのか判断がつきづらいです。そこで心理検査に使われる質問紙のいくつかは、この妥当性尺度を入れてどの程度回答者がきちんと答えたのかの参考にすることがあります。
 妥当性尺度にはほとんどの人が特定の回答をすると考えられる質問が使われます。例えば「あなたは嘘をついたことがありますか?」なら殆どの人が「はい」と回答するので、これに「いいえ」と答えた人は適当に回答しているか、正直に回答していないかのどちらかだと考えられます。こういった項目をいくつか用意しておいて、多くの割合で期待される回答をしなかった場合は結果の解釈を保留するなりします。
 今回のアンケートでは、10代が「未成年なので投票できない」と答えなかったり、20代以上がそれに回答したりすればその人はきちんと回答していないと予測できます。そういった人の回答はデータに余計なバイアスを与えるだけなので除くとよいでしょう。

 結果の解釈で気をつけること
 データを整理して、いざ解釈をしようとするにあたっても注意しなければならない点は多そうです。
 まず回答者の偏りです。ニコニコ動画でアンケートをすれば当然10代から20代の若者が多くなるだろうと予測されます。逆に50代以上は微々たるものでしょう。
 男女比もある程度偏っている可能性があります。恐らく男性の方が多いでしょう。しかし目立っていないだけで、目につく以上に女性の利用者は多いようなのでどの程度なのかはわかりません。案外差はなかったりして。
 こういった偏りが予測されるデータの解釈には回答者の内訳が必須ですが、何もわからない状態です。データの整理時にいくらか補正はしているようですが、具体的にどんな計算をしたのかわからないので何とも言えません。
 データの大きな偏りが予測される以上、これを「世論」と表現するのは妥当ではないでしょう。せいぜい「ニコニコユーザーの傾向」がいいとこです。ネットではマスコミの世論調査は不人気ですが、あれはかなり慎重にサンプリングされているので回答者には大きな偏りがないと予測できます(もっとも質問文や結果の解釈がちゃんちゃらおかしいときはあるのですが)。

 どうやら28日にニコ生でこの調査の解釈をするようなのでちょっと見てみようと思います。それに問題ありなら、また記事でも書いて突っ込むことにします。

教員採用試験に心理検査、何が問題か

今朝の毎日新聞のニュースです。
 2013年に行われた教員採用試験の適性検査を巡り、山梨県や山形県など少なくとも4自治体の教育委員会が、性的指向や宗教についての質問を含む心理テストを使用していたことが毎日新聞の全国調査で分かった。使用自治体はいずれも、合否の参考や人事配置の参考にしていると回答したが、このテストに関しては、公務員の採用試験での実施例が人権侵害にあたるとして12年6月の衆院法務委員会で質疑があり、滝実法相(当時)が「認識が薄かった」と釈明するなどした経緯がある。不適切な質問の削除など改善の動きもみられるが、教員採用の現場で、差別につながりかねない検査が行われていた実態が浮かんだ。

 教員採用:性的指向や宗教質問 心理テスト、4自治体使用-毎日新聞
 今回は採用試験で心理検査を使うことの問題についてです。ただし私は別に心理検査に詳しいわけじゃないので、そこは割り引いて聞いていただければ。

 ミネソタ多面人格目録(MMPI)とは
 そもそも今回問題になった心理検査『ミネソタ多面人格目録』とはどういったものなのでしょうか。
 この心理検査は1943年にアメリカで開発され、63年に日本語版が完成、93年に新版が作成されました。
 検査の方式は質問に3択で回答するというもので、バージョンによるようですが550項目あるようです。その回答からその人の性格の傾向、例えば過度に健康を気にするとか疑心を持ちやすいとかを明らかにすることが出来ます。

 ミネソタ多面人格目録を使うことの問題点
 記事も指摘していることですが、この検査を教員採用試験に使用することは大きな問題があります。それはこの検査に性的指向や宗教観を尋ねる項目が含まれているからです。
 臨床場面ではこういった情報も必要になる場合はあるでしょう。その性的指向や宗教観が不適応の一因になっている可能性がありますし、それを知ることが出来ればクライアントに必要な援助を行うこともできるからです。
 しかし人をふるいにかける採用試験で使用することには別の意味が生じます。同性愛指向や特定の宗教観を発見してその人を採用からはじくことが出来るからです。使っている自治体は「総合的にみて参考にしている」というかもしれませんが、本当にそうしているのか、性的指向や宗教観に関わる項目だけ抜き出して利用しているのかはわかりません。

 採用試験に性格検査を使うことの問題点
 しかし採用試験に心理検査を使うことの問題はMMPIに限ったものではないと思います。
 性格を明確にする検査を人事配置に利用するということは、担当者は「この人格がこの役割に合っているに違いない」と考えているはずです。しかし本当にそうかはわかりません。几帳面な性格は細かい事務仕事に向いているかもしれませんが、大雑把な性格の方が細かいことに囚われずに効率的に仕事を片づけられるかもしれません。それに言うまでもないことですが、そもそも仕事の成績は人格だけに左右されるわけはありません。
 一つの心理検査で性格を完全に把握できると考えていそうなところも問題でしょう。心理検査は多面的な性格のほんの一部分を明らかにするにすぎません。検査のあくまで参考です。それを採用に使用する人間が把握しているとはとても思えません。もし把握していたら採用に使おうとは考えないでしょうから。
 採用試験を通して、ある性格が望ましいという社会合意が作られていく可能性があるのも問題です。性格というのは多面的で、その人が置かれている状況にも大きく左右されます。なにより中々自分では自覚しにくく、変えにくいものです。そういうものにランク付けがされて、場合によっては劣等のスティグマが貼られるというのはグロテスクなことだと思います。

 心理検査への誤解と性格そのものへの誤解、そして性格に対して不明確で恣意的な価値づけがなされることが心理検査を採用試験に使用することの問題点です。これは大学入試を学力ではなく人間力基準にしようとする昨今の傾向と同根かもしれません。
 多様な子供を指導する教員の方こそ多様であるべきだと思うのですが、この調子だと画一的な、それこそみんなで手をつないでゴールのような教育はまだなくなりそうにはなさそうです。 

【書評】診断名サイコパス―身近にひそむ異常人格者たち

 今回は犯罪学の古典的な1冊です。サイコパス、その名前は聞いたことは当然あるんですが今まで具体的にどんなものかはよくわかってなかったんですよね。

 そもそもサイコパスとは何か
 著者によればその人物がサイコパスか否かを見分けるにはサイコパスチェックリストというものを使用するそうです。このリストには「口達者で皮相的」とか「自己中心的で傲慢」といった特徴が連ねてあります。しかしこれがどの程度出たらサイコパスなのかとかそういった細かい基準は明らかにされていません。まあ一般書でそこまで踏み込むのを期待するのも無理な話ですが。
 詳しく調べてみると、このリストを使用して半構造化面接(一部だけ方法や質問順序が決められている面接)を行って評価するようです。
 まあ要するにザックリいえば共感能力の低く反社会的な人間で、特に先天的な脳の器質的障害によるものを指すみたいです。
 注意が必要なのは、当然ですがサイコパスだからと言って犯罪をするという訳でもなく、理解不能な犯罪を起こしたからと言ってサイコパスだとは限らないということでしょう。少なくとも自分が理解できないと思っている犯罪の説明にぴったりだからと言って安易に使用することは避けた方がよいキーワードではあると言えるでしょう。

 サイコパステストに意味はあるか
 まあ無いってわかってて言ってるんですがね。
 サイコパステストというのはネットの与太話の1つで、「あなたはある人を恨んでいます。 その人の家に忍び込み、その人を殺しました。 そして、無関係な子供とペットも殺しました 。なぜ?」 という質問に普通の人は「現場を見られた 犬が吠えると面倒 残されると可哀想だから」と答えるけど「あの世で再会させてあげようとした」と答えたらサイコパスみたいなあれのことです。もっと知りたかったらググればうんざりするほど出てくると思います。
 上述したようにサイコパスか否かは面接を長々やってようやくわかることですし、こんな質問でわかったら苦労もないというのが本音でしょう。
 これらの質問が大きく誤解しているのは、常人に理解できない回答をしたりとか、犯人の目線に立って回答したらサイコパスだと思っていることでしょうか。サイコパスはその共感能力の欠如と反社会性に特徴づけられるので理解できるとか犯人の目線に立つとかいったこととは直接は関係ないでしょう。

 隣人はサイコパスか
 この本のサブタイトルにあるように、サイコパス関連の話になると何故か結構「貴方の友人や隣人もサイコパスかもしれない」的な煽りが見かけられます。きっと不安を煽った方が注目されるからなんでしょう。
 でははたしてあなたの隣人はサイコパスなのでしょうか。もしそうだったらどうすればいいのでしょうか。
 知り合いがサイコパスか否かに関しては、これは恐らくわかりようがないでしょうし、仮にわかったとしてもそれでその人物の厄介さが変わるわけでもないので気にする必要がないと思います。その厄介さに理由が付けば自分を納得させられるかもしれませんが、だったら別に「彼は平成生まれだから」とかでもいいわけなのでやはり意味はないでしょう。
 仮に知り合いがサイコパスだったとして、特別な対策もやはりないでしょう。彼にうんざりしているならとっくの昔に傍を離れているでしょうし、サイコパス特有の口八丁で騙されているなら疑いもしませんし聞く耳も持たないでしょうから。 

 この手の診断名というのは、カウンセリングなどに有効であっても素人が知ることには大した意味がない場合がほとんどです。十中八九異常さの説明としての地位にピタリをはまって濫用されることになるでしょう。
 サイコパスに関しては、そんなのがあるんだ程度の理解で十分かなとおもいますね。

 ロバート・D. ヘア(2000). 診断名サイコパス―身近にひそむ異常人格者たち 早川書房

Twitterに蔓延るトンデモ心理テスト 後編

5秒でわかる世界で最も正確な性格テスト()
 後編最初はこれです。 

 このテストのおおよその結果は以下の通りです。
 1.悩みなし・わんぱく・ハッピー
 2.自立・前衛的・束縛を嫌う
 3.自己反省・敏感・思想家
 4.堅実・頭脳明晰・調和
 5.プロフェッショナル・真実・自信
 6.温和・慎重・攻撃的でない
 7.分析力・リーダー・自信
 8.ロマン・空想・情緒的
 9.活発・行動的・外向的

  「海外の科学者や心理学者が」という物言いが既に臭すぎてスピードワゴンが燭台に回し蹴りするレベルです。
 調べるまでもなくでたらめだと判断できます。これは心理検査の分類では「投影法」と呼ばれるものになりますが、通常投影法の検査でもたった一つの画像から性格を判断することはありません。文章を完成させて被験者の性格を診断する「文章完成法テスト」でも何十個もの反応を集めて総合的に判断します。 一つの絵を選ばせるだけだとその時の気分によって選ぶ絵が変わる可能性もあります。昨日はわんぱくだった人が今日は堅実なんてありえませんね。
 問題は「海外の科学者や心理学者が、何年もかけて作ったのだそう。」 という部分。科学者も心理学者もこんなくだらないもの作るほど暇じゃないのですが、盛大に誤解を与える表現になってます。

 目は疲れて無くてもそう見える。
 お次はこれです。 
 
  大丈夫。疲れてなくても見えるんですよ。これは「きらめき格子錯視」というものです。黒い点が見えるのは網膜の周囲にある杆体細胞からの情報が間違って伝えられるためだと考えられています。つまり目の疲労とは関係なし。まあこんな画像みてたら目は疲れるでしょうが。


  こんなバージョンもありました。当然疲れてなくても動きます。これは眼球が常に細かく動いているために発生する錯視なようです。人間の目は一点を見つめている時も微妙に動いています。
 上の二つの錯視ですが、「黒い点が見えない人もいる!」「動いて見えない人もいる!」という反論をする人のために書いておくと、見えない人もいます。錯視にも個人差があり、見えない場合もあります。理由はよくわかって内容ですが。

 以上いくつか取り上げました。また新しいのが見つかったら取り上げるかもしれません。くれぐれも騙されぬように。 

Twitterに蔓延るトンデモ心理テスト 前編

 さて、この前心理検査とはなにかという話題で記事を書きましたが、今回はそれを上回るとんでもないものを見つけたのでご紹介がてらdisりたいと思います。
 人によっては「なんでいちいち目くじらをたてて取り上げるのか。そんなものほうっておけばいいじゃないか」と思われる人はいるでしょう。しかし心理検査というのは実際に臨床の現場で使われるれっきとした技術であり、ここで取り上げる心理テストとは一線を画すものです。それを混同されるのは不都合だし、なにより不快なのです。科学者がマイナスイオンに苛立ち、産婦人科医が自然分娩に憤るのと似たようなものだと思ってください。

 ある意味ぞっとしたテスト
 
  まずこちら。ちなみに問題の答えは「赤い箱」。こう答えないと「自閉症かもしれないよ!」などとふざけたことをぬかしてます。
 この問題の元ネタはメタ認知のテストです。メタ認知とは「認知の認知」のこと。「私はこの問題をこういう方法で解いた」とか「英単語の暗記にはこんな方法がいい」みたいなことだと思って下さればいいでしょう。大人ならこの問題、「サリーはお菓子が赤い箱に入ったままになっていると思っているから赤い箱を調べる」と考えるはずです。しかしメタ認知がまだ十分に備わっていない、小学校低学年くらいの子供は「青い箱」と答えるかもしれません。身近にいたら試してみてください。もっともメタ認知にも個人差がありますが。 

 自閉症とは
 そもそも自閉症とは「意思伝達の質的な障害」や「コミュニケーションにおける質的な障害」、あるいは強いこだわりがみられる病気のことです。意思伝達の障害という意味では上述の問題で「赤い箱」と答えない人は可能性がありそうですが、言うまでもなくこの程度の問題で診断できるものではありません。自閉症的性質を持った人でも本人がそれに気づかず生活している人もいます。それはそれでいいのです。本人や周囲の人が困ってなければそれは個性として受け止められるべきものでしょう。この手の問題を見ると「ひっかけ問題じゃないか」と勘繰る人も、日常生活全般でそういう思考をしているとは限りませんしね。
 本当に困っているならこんな心理テストにかまけてないで専門医に相談しましょう。 

 長くなったので後編に続きます。 

心理テストとはなにか

最近新しくフォローしてきたアカウントにいかにも胡散臭い心理学系botがありました。このbotは例えば以下のような「心理テスト」を提供しています。


 いったい何の根拠があってこのような結果になるかは不明ですが、十中八九適当に作ったのでしょう。僕はこういった「心理テスト」や占いの類が大嫌いです。「コミュニケーションのツールとして使うならいい」という意見もあると思いますが、こんなもんに頼るなと言いたいです。占い師はさっさと絶滅すればいいんですよほんと。
 ところで、皆さんの中にも「心理テスト」と呼ばれるものを学校とか、企業とかで受けさせられた人がいるでしょう。また少し心理学に明るい人ならカウンセリングの場面で色々な「心理テスト」を利用することを知っているかもしれません。
 しかし、このようないかにもいい加減な「心理テスト」と専門家によって用いられる「心理テスト」は何が違うのでしょうか。この機に簡単に解説しておこうと思います。以下の文章では上述のようないい加減なものを「心理テスト」、専門家により作成され臨床の現場でも用いられているものを「心理検査」と呼んで区別します。

 心理テストの種類
 一般に心理学では心理テストは3つの種類に分けられます。
 「質問紙検査」はアンケートのようなものに答えてもらい、それを分析して被検査者のことを理解します。
 「作業検査」は簡単な作業をしてもらい、その成績や作業過程の様子を元に分析します。簡単な暗算を延々やらされる内田クレペリン検査が有名でしょう。 
 「投影法」と呼ばれる検査ではある刺激に対する被検査者の反応を 基に分析します。ロールシャッハテストが有名です。

 心理テストと心理検査の違い
 さて本題です。この2つは何が違うのでしょうか。簡潔に書けば「ちゃんとした人がちゃんとした手順で作ったか」ということになります。
 ちゃんとした人というのは言うまでもなく心理の専門家のことです。誰が作ったかはっきりしていることもポイントです。どこの馬の骨かわからないやつが適当に作っているわけではないのです。
 ちゃんとした手順というのは、実証的研究によって判明した理論に基づいていたり、質問文が被検査者に誤解なく伝わるようにしていたり、平均的な回答はどのような結果になるかを調べていたりするということです。
 上述の「心理テスト」の例では誰が作ったのかわからず、きちんとした手順を踏んだのかも不明という残念な結果になっています。 

 心理検査使用の注意
 「心理検査」は正しく使えば非常に便利ですが、注意すべき点もあります。まずそれぞれの「心理検査」には長所と短所があるということです。また被検査者のことがわかるといっても限界があります。このことをきちんと理解して「心理検査」を受けて下さい。 
犯罪心理学者(途上)、アマ小説家、動画投稿者。カクヨム『アラフォー刑事と犯罪学者』ニコニコ動画『えーき様の3分犯罪解説』犯罪学ブログ『九段新報』など。TRPGシナリオなどにも手を出す。
E-mailアドレス
kudan9newbridge@gmail.com
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