九段新報

犯罪学オタク、新橋九段によるブログです。 日常の出来事から世間を騒がすニュースまで犯罪学のフィルターを通してみていきます。

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【書評】犯罪の心理

 本書は犯罪者の心理について書かれた1冊です……ってこのブログで紹介するならだいたいそうだろと思いますよね?しかし本書はただの心理学本ではありません。なんと出版が昭和27年、つまり終戦間もなくの時期という大昔に書かれたものなのです。図書館で見つけた時はわが目を疑いました。
 内容としては統計的な分析から犯罪を考察するというものです。とはいってもこの時代にはコンピューターなんてないので、精々総数を比べてあれこれいうだけなんですが。
 しかし中にはその時代特有の論点も含まれていて興味深いものになっています。

 戦争の犯罪学的作用
 時期が終戦間もなくということもあって、本書では戦争の影響についても考察されています。戦後70年が経とうとしている現代ではまずお目にかかれない論点です。
 まず冒頭で「青少年の犯罪は増加したか」と章題をつけ、減少傾向にあった少年犯罪が戦争を経て急増する様を論証しています。そして「戦争は、かくの如く、青少年の犯罪を増加せしめ、また悪質ならしめた」と結論しています。著者によれば戦争によって犯罪が増加、凶悪化するのは一般にみられる現象のようです。 
 また後半部では犯罪を犯した少年の中で欠損家族の割合が一般に比べて大きいことを指摘しています。これらの欠損家族では親が子供の相手をしてやれないとか、子供が甘えやすい相手として両親がいないといった要素から犯罪に走りやすくなるというのが著者の主張です。そしてこれらの欠損家族を大量に生み出したのが、紛れもなく戦争なのです。
 戦争というと外国との関係悪化が注目されますが、国内の治安悪化という視点から見てみることも重要でしょう。

 映画の悪影響
 昨今ではゲームやインターネットの子供へ対する悪影響が取りざたされていますが、この時代は映画が槍玉にあげられていたようです。
 本書ではギャング映画に感化されて犯罪を行った例を挙げて、青少年への悪影響を説いています。若者に人気の娯楽が悪者にされるのはいつの時代も同じようです。
 もっとも流石に専門家だけあって、著者は映画の悪影響だけを問題視したわけではありません。新聞などでも、読者の気を引くように盛大に事件を脚色したようなものは悪影響があると書いています。新聞の報道姿勢もあまり変わりがないのかもしれません。
 単純に映画に感化されて犯罪を行ったというだけではなく、映画は青少年にとって最大の娯楽であったために、不良のたまり場となったり、盗んだ金の使いどころになったりしていたようです。

 これらの記述から当時の犯罪状況、考え方などいろいろなものが見えてきます。そういう意味でも、なかなか面白い本に出会えたと言えるでしょう。

 中西昇(1952). 犯罪の心理 創藝社

犯罪心理学超初学者のためのブックガイド

今回は題名の通り全くの0から犯罪心理学を学ぼうという人のためのガイドです。私自身それ程沢山読んでるわけではないのですが、今までで読んだ本の中からおすすめを紹介することにします。書名にアマゾンへのリンクを張っておきますので気になったらチェックしてみてください。
 
 入門書ならコレ!
 まず最初に細江達郎著『犯罪心理学』をおすすめします。出版が2012年と新しく、内容も平易な文で簡潔に書いてあるのが魅力の一冊です。特に「しろうと理論」について触れているのが他の本にはない特徴でしょう。
 ほかに初学者におすすめの本は越智啓太著『犯罪心理学がよーくわかる本』同著者の『犯罪捜査の心理学―プロファイリングで犯人に迫る』 です。どちらもわかりやすいですし、前者の本は図解も豊富で理解を助けてくれます。私がこの本を読んだのは高校生くらいだったと思いますが、そのくらいの年齢でもわかりやすいと思うほどです。
 日本で起こった凶悪事件を一通り知りたいなら犯罪事件研究倶楽部編『日本凶悪犯罪大全』が有用でしょう。ただし、本書の犯罪心理の解説はあまり頼りにならないのであくまで事件を参照する程度に留めましょう。
 上掲の本で0から1か2くらいになったら越智啓太著『ケースで学ぶ犯罪心理学』に進みましょう。これは各種犯罪の解説を実際の事件を例に行っており理解をより深めることができるでしょう。
 また、越智啓太編『朝倉心理学講座〈18〉犯罪心理学』を読めば最初に読んだ本の内容より突っ込んだ知見を得ることができると思います。

 「一般常識」に対抗する
 世間一般においては犯罪心理学の知見から「あり得ない」とされることが結構まかり通っていることがままあります。犯罪心理学を学ぶ土台が出来たら次はこれらの誤解を打壊す本を手にとってみましょう。読みやすいと思われるものから順に紹介します。
 「証言者が自信を持っていればその証言は正しい可能性がある」等証言や自白に関する誤解を解くには仲真紀子『法と倫理の心理学』が良いでしょう。裁判と記憶に関わる様々な知見を紹介しています。
 「少年犯罪の凶悪化」言説への対抗は管賀江留郎著『戦前の少年犯罪』が良いでしょう。著者のユーモラスな語り口調で楽しく学べます。戦前の道徳観に唖然とするかもしれません。
 「ゲームをやると子供が凶暴に」という言説には『ゲームと犯罪と子どもたち ――ハーバード大学医学部の大規模調査より』 をおすすめします。もっとも、この手の論争には未だ明確な答えが出ていないことを留意する必要があると思います。分厚くて敷居が高そうに見えるかもしれませんが、高校生の私が読めたくらいの平易さです。
 男性による性犯罪では「性欲を抑えきれなかった」という動機をよく聞きます。これに違和感を覚えたなら牧野雅子著『刑事司法とジェンダー』を読んでみるべきでしょう。捜査段階や裁判においてどのように普段我々が聞く動機が形成されているか明快に描き出した名著です。

 ピンポイントに学ぶ
 今度はこの犯罪についてだけピンポイントに!という本を紹介します。ピンポイントだけあって内容はかなり濃いです。 
 「テロ」について学びたいなら加藤朗著『テロ―現代暴力論』あるいは首藤信彦著『現代のテロリズム』がおすすめです。前者は新書ですが中公新書だけあって内容は充実しており足掛かりには十分でしょう。後者は岩波ブックレットなので読みやすい分内容に物足りなさを感じるかもしれません。
 「快楽殺人」や「FBI方式プロファイリング」を学びたいならロバート・レスラー著の『FBI心理分析官』『FBI心理分析官2』『快楽殺人の心理』は外せません。特に2は恐らく皆さんも記憶にある、アメリカでハロウィンに日本人留学生が殺害された『服部君銃殺事件』も取り上げており、必見です。『快楽殺人の心理』はレスラーの調査をまとめたものですので、他の2冊より退屈かもしれません。
 「ストーカー」について学びたいならポール・ミューレン他著『ストーカーの心理―治療と問題の解決に向けて』が一押しです。ただ、かなり分厚く内容も多いので読みこなすのに少々骨は折れるかもしれません。内容的に難しいということはないのですが。
 「死刑問題」なら団藤重光 『死刑廃止論』が反対の立場から主張を繰り広げています。加賀乙彦著『死刑囚の記録』で死刑囚の実情を学ぶのもいいかもしれません(出版年が1980年であることは留意する必要があります)。

 本の選び方
 最後に、より信頼できる書籍を選ぶ私なりの方法を紹介しましょう。というのも、犯罪心理学の勉強はまさかこの記事で紹介した本で終わりというわけではないからです。
 まず最初に著者に注意しましょう。コンビニ本にありがちな「世界凶悪犯罪研究会」 みたいなのは論外です(『日本凶悪犯罪大全』は例外です。はい)。著者がその分野の専門家であればよっぽど大丈夫でしょう。どうやってそれを見分けるかですが、まずは著者の経歴を見ます。そして著者がどこかの大学の教授職に相当する身分についていればよっぽど信頼できます。まあ中には全然研究してない人も稀に紛れてるんですが。
 次に着目すべきは本の形態です。新書なら中公新書や岩波新書が信頼性が高いです。一方要注意は新潮新書で、いい加減なことが書いてあるケースが結構多いです。一応著者はその分野の専門家なので所々参考になるのですが、初学者が読むにはリスキーなので避けるのが無難です。

 こんなところでしょうか。今年からは犯罪学に関する本の書評にも手を出す予定なので楽しみにしてください。 
犯罪心理学者(途上)、アマ小説家。カクヨム『アラフォー刑事と犯罪学者』『生徒会の相談役』『車椅子探偵とデスゲームな高校』犯罪学ブログ『九段新報』など。質問はhttps://t.co/jBpEHGhrd9へ
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kudan9newbridge@gmail.com
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