九段新報

犯罪学オタク、新橋九段によるブログです。 日常の出来事から世間を騒がすニュースまで犯罪学のフィルターを通してみていきます。

社会調査

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そのクソ調査がクソなわけ

 先日、以下のような記事を目にしました。
 先日しらべぇでは、調査から「ネトウヨ」を自認する人たちの傾向を分析。意外性と納得感がないまぜの興味深い結果となった。
 そこで右寄りの人だけでなく、「左翼」を自認する人たちはどのような傾向が見られるのか、あらためて検証したい。
 左翼の人は「出会い系」好きでネット炎上しやすい傾向?-しらべぇ
 まあ、素人がみても問題含みな調査なんですが、折角なんで社会調査の専門の視点からなぜこの調査がダメダメなのか指摘しておこうと思います。

 大雑把な定義と主観に頼るな
 まず、「自分は左翼だと思う」と回答した割合は全体の7.3%。わずかに男性が女性を上回っている。2ヶ月前の調査で「ネトウヨ自認」が7.4%だったことと合わせて考えると「政治信条が極端に左右に寄った人はともに1割弱」ということがわかる。
 シンパ層(どちらかと言えば右・左寄り)を除けば、ときに見られる「国民全体が右傾化している」といった批判は当たらない可能性が高い。
 と、大前提となる政治的主張を回答者の大雑把な主観に頼るところからまず問題があります。また、調査では左翼がどのようなものを指すのか具体的な定義がなされていません。
 これでは、回答者ごとにどのような政治志向が左翼かの判断にばらつきが出るため、正確な測定になりません。回答者の中には、ちょっとリベラルな程度で左翼だと自認した人もいれば、かなり左に偏向していても左翼だと自認していな人も含まれる可能性があります。
 社会心理学の研究が政治的志向を扱う際には、支持政党や具体的な考えの傾向を聞くことで、回答者が左翼か右翼か(というか、保守かリベラルか)を判断しています。日本でも、この程度の調査なら所属政党による分類は有効でしょう。
 ちなみに、右傾化はあくまで過去と現時点での右翼の割合を問題にしているので、2段落目の解釈も誤っています。
 同時調査とのクロス集計の結果、左寄りを自認する人たちたちは「他人の顔色を伺わずに言いたいことを言える」と答えた割合が、そうでない人と比べて2.5倍。4割を超えた。
 言いたいことを言えるかどうかも主観によって尋ねています。こればかりは主観に頼るしかない項目ですが、せめて複数場面を想定した項目の平均をとるなどして正確な測定に努めたいものです。

 調査はあくまで相関研究
 こうした性格の影響か、トラブルに巻き込まれやすい実態もあるようだ。
 ネットで「炎上」したことがある経験者は、一般の人がわずか3%なのに対して、左翼自認者は2割。ツイッターやフェイスブックで右派・左派の対立がよく見られるが、データからも裏付けられる結果となった。
 また、どういうわけか左寄りの人たちは、『相席屋』のような男女の出会いを提供する居酒屋・カフェの利用率がきわめて高い。
 左翼でない人が4%弱なのに対して、今回の調査では5人に1人が「利用経験あり」との結果に。「出会いと炎上」は、政治的な考え方となんらか関係があるのだろうか。
 と書いていますが、調査はあくまで相関研究であり、因果関係を確定することはできません。
 つまり、政治的志向に影響を与える性格が、炎上の原因となっているという筆者の推定以外にも、単にネット上には右翼思想が多く、彼らの反発を招きやすいが故に炎上するといった、調査で測定されていない第3の要因による説明も考えられるのです。
 相席居酒屋の利用経験との関連がなぜ出たのかはよくわかりませんが、そもそも政治的志向を正確に測定できていない調査なのでいちいち気にする必要もないかもしれません。

 ネトウヨ研究も同様の愚を犯す
 では、ネトウヨとは実際どのような人たちなのだろうか? しらべぇ編集部は全国20〜60代の男女1348名を対象に調査を実施した。
 ネット右翼・ネトウヨは、思想が異なる相手による「レッテル貼り」の意味合いもある。自ら好んで名乗る、誇らしい称号ではないためか、自覚している人は1桁台。男性はおよそ1割で、女性はその半分程度だった。
(中略)
 立ち小便のような軽微なものから重大な事犯まで、その性質はさまざまだろうが、ネトウヨを自覚している人はそうでない人と比べて「他人には言えない犯罪経験」がある割合がおよそ4倍。3割を超えた。
 ネトウヨ自覚者でも約7割は犯罪とは無縁なわけだが、一般人との大きな差は注目に値する。
 ネトウヨってどんな人?「言葉責め」好きな変態の傾向も-しらべぇ
 この筆者の同様の記事には、ネトウヨを対象にしたものもありますが、これも同様の誤りを犯しています。
 政治的志向を主観によって測定していることもそうですが、問題は犯罪経験に関するものです。これもどの程度のものを犯罪経験とするか回答者の判断にばらつきが予想されますし、それを踏まえて考えればこの項目は、犯罪経験の有無よりも自身の行為が犯罪に該当しているという認識の有無を尋ねていると考えるべきでしょう。
 さらに言えば、これも回答者のネトウヨ定義によりますが、ネトウヨと差別的言動を不可分だと考えており、かつ差別的言動を犯罪行為に該当すると解釈していれば、ネトウヨ自覚があるものは自動的にこの項目に該当するというトートロジーになっています。

 多様な可能性を考えれない調査
 そのほかにも、この筆者は『右翼と左翼どちらが気持ち悪い?6割が選んだ答えは…』という記事を書いていますが、自分が賛成できる思想は気持ち悪いと思いにくいために、社会的に支持されやすいほうの思想がより好意的に受け止められやすいという基本的な要素を無視して単に結果を比較するなど、調査の体をなしていない記事がこれでもかと出てきます。いちいち指摘していたらきりがないでしょう。
 調査に必要なのは、自分の明らかにしたい相関関係を歪みなく見るために、剰余変数をなくす技術です。それすらもできない素人がデータを集めて分析しても、その数字には全く意味がなくなりますので、注意すべきでしょう。 

「DV被害は男子の方が多い」か?

 毎日新聞のこんな記事です。
◇大阪府の中高生1000人調査
 大阪府の高校生グループが府内の約1000人の中高生に「デートDV」に関する調査をしたところ、男子生徒の3割以上が「(彼女から)暴言や暴力を受けて傷ついた」経験があることが分かった。女子生徒が「(彼から)暴力を受けた」割合は12%で、男子の半分以下。交際相手に「暴言が嫌と言えない」割合も、男子(30%)が女子(22%)を上回った。
 調査は昨年9~11月に書面で実施。府内の105人の中学生(男子55人、女子50人)、886人の高校生(男子300人、女子586人)が回答した。
 男女ともに傷つけられた経験は暴言が最多。男子は暴力(31%)、無料通信アプリ「LINE(ライン)」のチェック(17%)、女子は性行為の強要(16%)、ラインのチェック(16%)が続いた。
 <デートDV>暴言や暴力…被害者は男子生徒、女子の倍以上-毎日新聞
 しかし、犯罪心理学にそれなりに関わってきた私からすると、この結果にはかなり違和感があります。

 犯罪は男性の方が多い
 というのも、基本的に男性の方が女性より犯罪を犯しやすく。攻撃的だからです。
 警察発表の統計では、2012年に粗暴犯(暴行・傷害・脅迫・恐喝・凶器準備集合)で検挙された者52577名のうち女性は3972名にすぎません。検挙人員全体で見てもおよそ29万人のうち6万人ちょっとと、男女比にはかなり偏りがあります。
 これには生物学的な基盤も影響しています。このように強固な差が一般的な犯罪においてみられるにも関わらず、高校生のカップルに限った時に暴行被害の経験で男女の差が埋まるどころが逆転するというような事態が発生するとは考えにくいのです。
 ちなみに、暴言やLINEのチェックといった行動に男女差がないこと自体はあまり疑問はありません。身体的な能力が男性に劣りがちな女性がそれを用いない攻撃手法をとることは自然だからです。それでも男性と大差ないというのにはやはり違和感はあるのですが。

 調査の問題?
 このような結果になった理由として、調査手法に問題があった可能性があります。
 この調査にどのような形式の質問が使われたか不明ですが、一般的に被害実態調査での質問は、被害者が受けた被害を被害として自覚していない可能性を考慮します。
 例えばデートDVなら、暴力や暴言といった被害を受けている被害者がそれを「付き合っている人からこのようなことをされるのは普通なんだ」と解釈し、被害だと思わないという可能性があるということです。このような被害者に「あなたはデートDVに遭っていますか?」と尋ねても「いいえ」と回答するため、被害が調査結果に反映されないこと言うことが起こり得ます。
 また、サンプルの問題も考えられます。この調査のサンプルがどのように集められたかも不明ですが、もし呼びかけで回答者を募る形式であれば、デートDVに関心のある、それこそ被害に遭っていると自覚している人々が集まり、自覚のない人たちはそもそもサンプルから欠落した可能性もあります。
 つまりこの調査は、女性の方が暴力を男性に振るいやすいというよりも、男性の方が被害を自覚しやすいと解釈するほうが妥当かもしれません。
 このような事態になった原因は、指導した人間が生徒指導の専門家であったが犯罪や被害調査の専門家ではなかったことにあるのだろうと思います。ある一面で専門家でも、別の方面では素人まるだしというのは珍しくもないことです。

 無論、男性のデートDV被害を軽視してはいけません。問題は、この女性側の被害が過小評価されている可能性のある調査結果をもとに、女性の方が強くなっているんだというありがちなバックラッシュが行われそうだということです(実際、ちらっと検索したらありましたし)。

ニコニコアンケート基礎調査の作りが雑

 以前から思っていたのですが、ニコニコ動画のアンケートの作り方は雑だと思います。11月21日から24日にかけて行われたニコニコアンケート基礎調査の結果がやっと出たので、今回はこのことについて、どこが雑だったのかとかどういうアンケートがよいのかといった話をしていきたいと思います。

 フェイスシート
 通常(心理学や社会学のアンケート調査の場合ですが)質問紙の一番最初にフェイスシートというものがつきます。これにはどんな目的で調査をしていて、何にどうやってデータを使うのかなどが書かれています。
 さて今回のニコ動のアンケートの場合ですが、私の記憶ではこれに該当するものがありませんでした。つまりデータをどのように活用するのかとかほとんど明示せずに協力しろと言ってきたわけです。
 今までのアンケートの実施状況を考えれば、おおよそ見当のつくことではあるのですが、個人情報をどのように処理するのか全く示さないのは問題があるでしょう。特に今回の場合は選挙区をはっきりさせるために大まかな住所まで聞いてきていましたから。もっともその選挙区のデータもどのように活用されたのかわからないので、何が目的だったのかもわかりません。

 好きな国と嫌いな国
 質問項目に関しては、単純なものが多かったために特に問題があるようなものは少なかったと思います。しかしよく見てみれば作りが甘いというか、雑なものが見受けられます。
 その1つが好きな国と嫌いな国を聞くものです。
Q7 環太平洋諸国のうち、一番好きな国はどこですか。(国名の順番は太平洋の北から時計回りです)
Q8 環太平洋諸国のうち、一番嫌いな国はどこですか。(国名の順番は太平洋の北から時計回りです)
 選択肢は両方とも上から順にカナダ、アメリカ、メキシコ、チリ、オーストラリア、インドネシア、シンガポール、マレーシア、ベトナム、中国、台湾、韓国、北朝鮮、ロシア、その他でした。
 しかしよく考えればわかるように、環太平洋諸国で一般に馴染みが深い国というのは限られています。アメリカと中国からロシアまでくらいでしょうか。それ以外の国に何か思い入れがある人というのは限られていることが容易に想像できます。
 そして実際に結果はその通りになりました。好きな国ではアメリカがトップに、次いで台湾、意外にもカナダが3番目でしたが5番目のオーストラリア以降はシンガポールがわずかに5%を超える程度でした。
 嫌いな国ではよりはっきりします。韓国、中国、北朝鮮の順に票が集中したためでしょう。知っている国が限られる場合のような項目の作り方をすれば、回答が不必要に偏るのは自明です。
 この質問の問題点はもう1つあります。この質問に対して「好きな(嫌いな)国がない」人が回答する先がないという問題です。「その他」に回答すれば選択肢以外のどこかの国が好き(嫌い)だというニュアンスになるので、回答に困ることになります。結果として適当な国に回答するか、違和感を覚えつつその他に回答することになり、結果に余計なバイアスがかかることになります。

 ちなみにこのような質問項目の問題点などもあり(後述する「世論」の問題もありますが)、結果から「世論はこの国を好いている(嫌っている)」という結論を下すのは控えるべきでしょう。特に嫌いな国についての結果をみて「嫌いな国が安定の3国www」とか言うのはあほの丸出しと言って過言ではありません。あの選択肢の中で嫌いという感情を抱けるのは、悪いところまでしっかり報道されがちな隣国になる可能性が高いですし、ニコニコ動画の風土を考えれば当然の結果と言えます。(とはいえ、現在の社会情勢から考えれば全国で同じ質問をしても同じ結果になる蓋然性は高いが。)

 未成年が選挙に行くの?
Q13 あなたは来月の衆議院総選挙で投票に行きますか。
  この質問に対する回答が年代別で出ていましたが、何とも間抜けな状況になっています。
 というのも、選択肢には「未成年なので投票できない」というものがあるにも関わらず10代以下の回答者がこれを選択した割合が68.5%にすぎません。しかも逆に20代以上がこの選択肢を選んだ割合が常に数%存在するという有様です。
 まあデータの整理の上で機械的に並べただけだと思いますが、もしも解釈にまでこのデータを使ってきたらドワンゴは担当者を更迭すべきでしょうね。
 しかし逆に言えば、この項目は妥当性尺度として使えます。
 妥当性尺度というのは、回答者の回答がどの程度信頼して良いものなのか判断するための尺度です。一般にアンケートでは、回答者が真剣に答えたのか適当に答えたのか判断がつきづらいです。そこで心理検査に使われる質問紙のいくつかは、この妥当性尺度を入れてどの程度回答者がきちんと答えたのかの参考にすることがあります。
 妥当性尺度にはほとんどの人が特定の回答をすると考えられる質問が使われます。例えば「あなたは嘘をついたことがありますか?」なら殆どの人が「はい」と回答するので、これに「いいえ」と答えた人は適当に回答しているか、正直に回答していないかのどちらかだと考えられます。こういった項目をいくつか用意しておいて、多くの割合で期待される回答をしなかった場合は結果の解釈を保留するなりします。
 今回のアンケートでは、10代が「未成年なので投票できない」と答えなかったり、20代以上がそれに回答したりすればその人はきちんと回答していないと予測できます。そういった人の回答はデータに余計なバイアスを与えるだけなので除くとよいでしょう。

 結果の解釈で気をつけること
 データを整理して、いざ解釈をしようとするにあたっても注意しなければならない点は多そうです。
 まず回答者の偏りです。ニコニコ動画でアンケートをすれば当然10代から20代の若者が多くなるだろうと予測されます。逆に50代以上は微々たるものでしょう。
 男女比もある程度偏っている可能性があります。恐らく男性の方が多いでしょう。しかし目立っていないだけで、目につく以上に女性の利用者は多いようなのでどの程度なのかはわかりません。案外差はなかったりして。
 こういった偏りが予測されるデータの解釈には回答者の内訳が必須ですが、何もわからない状態です。データの整理時にいくらか補正はしているようですが、具体的にどんな計算をしたのかわからないので何とも言えません。
 データの大きな偏りが予測される以上、これを「世論」と表現するのは妥当ではないでしょう。せいぜい「ニコニコユーザーの傾向」がいいとこです。ネットではマスコミの世論調査は不人気ですが、あれはかなり慎重にサンプリングされているので回答者には大きな偏りがないと予測できます(もっとも質問文や結果の解釈がちゃんちゃらおかしいときはあるのですが)。

 どうやら28日にニコ生でこの調査の解釈をするようなのでちょっと見てみようと思います。それに問題ありなら、また記事でも書いて突っ込むことにします。
犯罪心理学者(途上)、アマ小説家。カクヨム『アラフォー刑事と犯罪学者』『生徒会の相談役』『車椅子探偵とデスゲームな高校』犯罪学ブログ『九段新報』など。質問はhttps://t.co/jBpEHGhrd9へ
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