九段新報

犯罪学オタク、新橋九段によるブログです。 日常の出来事から世間を騒がすニュースまで犯罪学のフィルターを通してみていきます。

銃犯罪

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【書評】アホでマヌケなアメリカ白人

 久々の書評、どころか久々の記事ですね。最近忙しい。
 本書はあの有名な映画監督マイケル・ムーアの著作です。彼の作品は『ボウリング・フォー・コロンバン』を見たことがありますが、ユニークにアメリカ社会の問題点を突く良作でした。
 で、本書はブッシュが大統領となった後に出版されたもので、基本的にブッシュ政権とそれを作り上げた白人たちへの恨み節で構成されています。
 じゃあなんでここの書評で?と思うかもしれませんが、それは本書にアメリカ政府やアメリカ国民の犯罪感に関してなかなか興味深いエピソードがいくつか載っていたからです。

 マッチと飛行機
 911以降、飛行機へ持ち込める手荷物が厳しく制限されるようになったことは周知の事実でしょう。その禁止品のリストには編み物用のかぎ針やコルク抜きも含まれています。へーテロリストって決行時刻まで編み物で時間をつぶすんですね。案外牧歌的だ。
 しかしムーアは、空港で乗客の幾人かが手荷物検査用のトレーへ紙マッチやオイルライターを入れ、ゲートの向こうでまた受け取るという光景を目にします。かぎ針がだめでライターはいいの?と思ったムーアはその理由を自分のイベントに参加していた客から知ることになるのです。
 その理由というのは、なんとなく想像がつくようにタバコ業界からの圧力でした。FAAが当初作成したリストにはちゃんとマッチの類が含まれていたのですが、飛行機から降りてすぐにタバコを吸いたい客に配慮した結果リストから外されることになったのでした。
 しかしかぎ針やコルク抜きとは異なり、マッチは実際にテロ未遂で利用された道具でした。自分の靴の中へ仕込んだプラスチック爆弾へ火をつけようとして手間取り警察に捕まった男がいたのです。ですが当然、その事件の後もマッチは持ち込みできる状態が続きました。

 ウサギを殴り殺し、黒人を撃ち殺す
 ムーアの名声を一気に高めた作品といえば『ロジャー&ミー』です。これはGM工場の大量解雇を題材にした作品だそうですが、この中にはあるシーンがあります。
 それは黒人の少女が肉として売るためにウサギを殴り殺すシーンです。このシーンは残酷だという反応をけっこう受けるようで、このシーンのために映画はR指定をされました。また学校の教材として映画を見せた教師の中にはこのシーンをわざわざカットしたという人もいるようなのです。
 しかしムーアによればそのシーンの2分後には、警官がおもちゃの銃を持った黒人の子供を射殺するシーンが入っているのです。もうお分かりのように、このシーンが残酷だという批判をされたことは一度もないようです。少なくとも本書を出版するまでは。
 ムーアはこの現象を、皆が黒人が殺されることに慣れてしまっているせいだと指摘しています。黒人は恐ろしく凶悪な犯罪を犯すものだとも思われています。しかし実際には、ビルへ爆弾を仕掛けたのも学校へ銃を抱えていったのもみな白人でした。だから彼はこう言います。アメリカの未来のために白人を殺せ!
 まあムーアも白人なので、主張が通れば彼も殺されてしまうのですが。その辺は彼もわかっているようですけど。

 マイケル・ムーア (2002). アホでマヌケなアメリカ白人 柏書房

オークランド銃乱射事件はISと関係あるか

 先日、アメリカオークランドのバーで銃乱射事件があり、過去最大の犠牲者を出しました。
 【オーランド=上塚真由、ワシントン=加納宏幸】米南部フロリダ州オーランドのナイトクラブで12日未明(日本時間12日午後)、銃乱射事件が発生し、地元当局によると、50人が死亡し、53人が負傷した。容疑者の男は警察と銃撃戦の末、店内で死亡した。オバマ米大統領は同日、「米国史上最悪の銃撃事件」だと述べ、「テロ行為であり、憎悪に基づく行為だ」と実行犯を強く非難した。オーランド市は非常事態を宣言した。
 米メディアは、男が犯行前、警察にかけた緊急通報の中で、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)に忠誠を誓う発言をしていたと伝えた。IS系のサイトも「ISの戦士が実行した」と事実上の犯行声明を出したが、実際に関与があったかは不明だ。
 死者50人 オバマ大統領「米史上最悪の銃撃」「憎悪に基づくテロだ」 容疑者はISに忠誠か-産経新聞
 アメリカで起こった事件であり、容疑者とISに関係があったという事情もあって日本の報道ではほとんどが今回の事件をIS関連のテロだと見立てて報じています。
 しかし、今回の事件をイスラム過激派の仕業だとする見方は、早計であるように感じます。

 イスラムというよりはアメリカの問題
 今回の事件がISに関連していると言われる最大の理由が、容疑者がISと通じていたという報道です。しかし、FBIは事前に何度も容疑者を捜査していましたが、結局有力な証拠を見つけることが出来ず、今回の事件を防ぐことはできませんでした。
 また、IS系の報道サイトが犯行声明を出してはいますが、単に無関係な事件に便乗しただけの可能性もあり、断定が出来ません。
 何より重要なのが、容疑者はイスラム系の養親の元で育ち、イスラム教徒であったとはいえ、元はアメリカ生まれアメリカ育ちの白人であるということです。容疑者は同性愛者などに嫌悪感情を抱いていたと言いますが、それは何もイスラム過激派に限った話ではなく、キリスト教保守にも共通してみられる思想です。
 さらに、そもそも銃乱射事件はイスラム過激派とは無関係に、アメリカでは毎年一定数発生し、戦死者よりも大量の死者を出してきました。犯人がイスラム過激派かもしれないという時に限ってイスラム教徒への憎悪を膨らませ、キリスト教徒であれば知らんぷりという反応がアメリカ国内にあるとしたら、あまりにも滑稽です。
 一方、共和党指名が確定した実業家トランプ氏は「米国がイスラム過激派のテロリストに攻撃された」と主張。オバマ氏が12日の声明で「イスラム過激派」の言葉を使わなかったとして弱腰だと批判し「大統領をやめるべきだ」と訴えた。
 クリントン氏、オバマ大統領参加の集会を延期 トランプ氏「米国がイスラム過激派に攻撃された」-産経新聞
 ですが、実際にはトランプに代表されるように、自国の問題を外集団に押し付け解決を図る空しい努力はありふれています。

 そもそも、銃の所持は権利なのか
 アメリカの権利問題に口を挟むのは、よそ様の家の問題に出しゃばるようで気が引けるのですが、銃の所持が権利だとする見方には面白い反論もあります。
 そもそも、銃を所持する権利は入植者である白人が希望したものであり、先住民族や奴隷として連れられてきた黒人たちには認められていなかったという見方があるようです。入植者は先住民族を虐げ奴隷を管理するために銃を欲していたが、それ以外の人々はそうでもないから銃を所持する権利はいらないというのです。
 多発する警官の黒人銃撃事件に業を煮やした黒人たちが銃を持ち自警団を結成したら逮捕されたなどという笑うに笑えないジョークも聞いたことがあります。真偽は定かではありませんが、この問題にはアメリカの社会問題の根底が潜んでいるようです。

 共有する価値観って?
 一方、日本も対岸の火事と思っている場合ではありません。現に、日本の報道では事件が同性愛者へのヘイトクライムであるという視点がすっぽり抜け落ち、IS絡みのテロという単純な文脈に回収されてしまっています。これは、国内のイスラム嫌悪を煽るという点でも、正確な情報が入ってこないという点でも問題があります。
 また、安倍首相が「米国と共有する価値観への挑戦」云々と言っていましたが、具体的に何のことかはさっぱりでした。素直に捉えれば多様な性的指向への理解と考えるべきでしょうが、ストレートに表現できない理由でもあったのでしょうか。
 東京・銀座の元ホステスの女が交際相手を殺害したとされる事件。性同一性障害で男性から女性になった元ホステスに対し、収容先の東京拘置所が女性ホルモンの投与を拒んだ。弁護人や医師らは体調悪化を懸念するが、なぜ投与が認められないのか?
 性同一性障害の被告にホルモン投与、なぜ認められない?-朝日新聞
 東京拘置所では現在進行形で人権侵害の真っ最中ですが、それを抜きにしても明言すれば各地で発生しているヘイトクライムへの対応へも言及しなければならないという事情があるのでしょうか。

イスラム国狂騒曲 アメリカよ何処へ行く

 アメリカ、カリフォルニア州サンバーナーディーノの福祉施設における銃乱射事件がイスラム国に関連することがわかり、アメリカではいろいろと騒動を引き起こしています。

 宮崎勤事件を彷彿とさせる自宅公開
 【AFP=時事】子どものおもちゃ、細断された書類、イスラム教の聖典コーラン(Koran)、コンピューター機器――米カリフォルニア(California)州で14人が殺害された銃乱射事件で射殺された容疑者夫婦の自宅が4日、メディアに公開された。2人の生活を垣間見る機会が与えられたが、今回のようなメディア公開は異例で、議論を呼んでいる。
  米国籍のサイード・ファルーク(Syed Farook)容疑者とパキスタン人の妻のタシュフィーン・マリク(Tashfeen Malik)容疑者が、カリフォルニア州サンバーナーディーノ(San Bernardino)の福祉施設のパーティーで14人を射殺してから2日後。メディア関係者は、ファルーク容疑者の家主によって、2人が生後6か月の娘と暮らしていた2階建ての住宅を取材する許可を与えられた。
 数十人のジャーナリストがレッドランズ(Redlands)にある容疑者宅に押し寄せ、容疑者夫婦を無差別殺りくに駆り立てた手掛かりをつかもうと、子どものおもちゃや家族写真をあさる様子はある意味、現実離れした光景だった。
(中略)
 建物内には他にも、イスラム教の礼拝用の敷物やコーラン、イスラム教のしきたりに関する子ども向けの手引書があった。
(中略)
 CNNは「私たちは、検討せずに放送すべきではなかった写真やIDカードなどを一瞬放送してしまったことを後悔している」と述べている。
 CNNの法務アナリスト、ポール・キャラン(Paul Callan)氏も、メディアが殺到した事態に衝撃を受けていた。
 「前代未聞だ。捜査当局の驚くべき怠慢と無謀さを示していると思う。今や犯罪現場は汚染されてしまった」とキャラン氏は述べた。
 米加州の銃乱射、容疑者宅内部をメディアに公開-AFP
 自宅からイスラムを連想させるものが見つかったという報道ですが、これを漫画やポルノビデオに変えれば完全に宮崎勤事件での報道の再現となるので、この報道を見た時は驚きました。
 人間には特異なものを特異な出来事の原因とする習性があるようで、コーランなんかに注目したのはその表れなのでしょうが、大半のイスラム教徒がテロとは無関係であるように、コーランもテロとは関係がありません。
 ちなみにですが、この事件がイスラム国絡みであるという報道に私は最初懐疑的でした。というのも、フランスの事件の余波で過剰に反応している可能性があったということと、容疑者の職場がターゲットであるという点ではテロに関係のない銃乱射事件の典型的な特徴を持っていたからです。銃乱射事件は、自分の現状への不満の責任を社会、特に現状を導いた原因と目される学校や職場に帰属し、復讐として実行される面があるのです。単にたまたま犯人がイスラム教徒であっただけで、イスラム国とは関係ないのかもしれないとも思っていました。
 その後の捜査で、どうも関係がありそうだとなったわけですが、おそらく職場への不満もあり、それがターゲットの選定に影響したのでしょう。

 銃規制はテロ対策たりえるか
 ニューズウィーク日本版の記事『【統計】銃犯罪の多さは銃規制の緩さと比例するか』では、事件のあったカルフォルニア州が銃規制は厳しかったことなどをあげ、基本的に銃規制の厳しさは銃犯罪の減少と関係するものの例外もあると述べています。
 テロ対策に関していえば、銃規制は効果があるものの限界もあるのだと思われます。銃のような大量に人を殺せる道具が手に入りにくくなれば、テロ実行のハードルがかなり上がりますし、実行そのものは阻止できなかったとしても、一度の事件で犠牲になる人の数を減らすことにはつながります。また、基本的に犯罪は軽微なものから重大なものへ移行するケースが多いので、前科者へ銃を販売しない規制も有効かもしれません。
 一方で、そのような規制は今回のように前科のないテロリストには対応できないという欠点もあります。テロにおいてそのようなパターンを辿るものがどの程度の割合いるのか不明ですが、例えば前科のないものに銃器の調達だけを請け負わせるなどすれば、この規制をすり抜けることはより容易になるかもしれません。
 また、合法的な入手経路があるということは、それだけ違法に入手する経路も残されるということでもあります。先程の例のように、合法的に入手した人から流してもらう方法もあります。日本のように一部の例外を除けば銃の所持そのものが違法である国であれば、銃を持っている人を端から調べればいいかもしれませんが、アメリカのように銃を所持できない人間の方が例外であればそれも難しいでしょう。

 トランプ旋風とアメリカの希望
 2016年米大統領選に共和党から出馬し高い支持率を維持している実業家ドナルド・トランプ氏は7日、カリフォルニア州での銃撃事件を受けて、ムスリム(イスラム教徒)の米国入国を「すべて完全に」禁止するよう呼びかけた。
 トランプ氏は報道陣に提供した声明文で、複数の世論調査が、相当数のムスリムが米国人を憎んでいるという結果を示していると述べ、「色々な世論調査結果を見るまでもなく、この憎しみが理解を超えているのは誰の目にも明らかだ。この憎悪がどこから、なぜやってくるのか、見極めなくてはならない。この問題を特定し、理解し、どういう危険を意味するのか理解できるまでこの国は、聖戦しか信じず道理をわきまえず人命を尊重しない連中による恐ろしい攻撃の被害者になるわけにはいかない」と持説を展開。
(中略)
 米政治ニュースサイト「The Hill」がトランプ氏の報道担当に、「すべて」というのは現在外国にいるムスリム系米国人も含むのかと問いただすと、報道担当は「トランプ氏は全員と言っている」と答えた。
 トランプ氏のこの声明を受けて、ホワイトハウスはただちにこれを「アメリカらしくない」と批判。米国の理念や安全保障上の利益に反すると指摘した。
(中略)
 トランプ氏は、大統領選出馬を表明した際にメキシコが「強姦犯と犯罪者」を米国に送りこんでいると非難。その発言は広く嘲笑されたが、支持率は一気に急騰した。
 トランプ氏は、米国内の一部モスク(イスラム教寺院)を閉鎖し、ムスリムを監視すべきだと呼びかけ、また非難されたが、それでも共和党の中の最有力候補としての地位を固めた。
 【米大統領選2016】トランプ氏、ムスリムの米入国を全面禁止せよと-BBC NEWS JAPAN
 一連の事件に関して、共和党の大統領候補ドナルド・トランプはイスラム教徒の入国禁止を訴える事態になりました。
 こういう馬鹿はどこにでもいるんだなという事例ですし、くだらないとわかりきっているはずなのに広がりを見せるイスラムフォビアに対し暗澹たる思いもするのですが、希望もあります。
 それは即座にホワイトハウスがこの発言を批判したということ、BBCのようなメディアも(上掲の容疑者宅公開も含めて)これを批判的に報じているということです。ヘイトクライムに対しては行政機関のような権威のある立場の賛否が市井の人々の態度形成に大きく影響することが知られていますが、ホワイトハウスの姿勢は反人種差別の立場を強く後押しするものです。
 翻って日本においては、現在進行形で進んでいる在日朝鮮人へのヘイトスピーチへの対応を見る限りでは、首相官邸にもマスメディアにもこの機能は期待できないと言っていいでしょう。
 来年の米大統領選に共和党から出馬している実業家ドナルド・トランプ氏について、英国入国禁止にするよう英議会に求めるオンライン請願に英国時間9日深夜の時点で36万人以上が署名したため、下院は審議するかどうか検討することになった。
 トランプ氏が7日夜にイスラム教徒の米国入国禁止を呼びかけたことを受けて、英スコットランドの女性による請願が8日に英議会のオンライン請願サイトで受け付けが始まり、9日深夜までに36万人以上が署名した。10万人以上の署名が集まったら議会は、請願を審議するか検討しなくてはならない決まり。
 発言を内外で広く非難されているトランプ氏は9日、決して2016年大統領選から撤退しないとあらためて強調した。
 トランプ氏の発言に対する反応にはほかに次のようなものがある――。
・スコットランド自治政府のニコラ・スタージョン首相は、トランプ氏に与えていたスコットランド・ビジネス大使の肩書を剥奪。
・スコットランド・アバディーンのロバート・ゴードン大学は、起業家・実業家としての功績を称えて2010年に授与したトランプ氏の名誉学位を撤回。
・中東の小売大手「ライフスタイル」は、トランプ氏の家庭製品メーカー「トランプ・ホーム」による製品の販売を中止。
 「トランプ氏を英国入国禁止に」署名に36万人超 英議会検討へ-BBC NEWS JAPAN
 イギリスでは、市民がトランプへの入国禁止を訴えたほか、様々な組織や企業が行動を介して彼の発言にNOをつきつけました。差別を否定し、行動で示すことを是とする価値観が共有されている社会の力をまざまざと見せつけられたように思います。
 やっぱり翻って日本なんですが、行政機関の与えていた肩書の剥奪1つとっても無理なんじゃねぇかなと思いますし、そう考えるとかなり暗い気分にもなるんですが、しかし最終的にはこのような段階にたどり着くのも不可能ではないという傍証であるということにしたいと思います。  

えーき様の3分犯罪解説第10講あとがき

 今回はハロウィンに起きた日本人留学生射殺事件でした。ハロウィンっつても実際には17日だったので全然日付違うんですが。
 そういった事件があったことは知ってたけど、その後どうなったのかとか知らない人が多かろうと思い今回の事件のチョイスと相成りました。民事で負けてたんですね。犯人。

 動画中に「銃を持っていたために気が大きくなった」という言及がありますが、別にこれは銃に限った話ではありません。刃物でも同じようなことが起こる可能性は十分にあり、実際刃物を持ち歩く少年なんかはこれが主な動機だったりします。刃物を集めるのは異常な精神を表しているというより、ただ気が小さいことの表れかもしれません。少なくとも男というのは一度は危なげな武器の類に憧れるものなので、部屋から刃物が見つかったみたいな報道に過剰に反応する必要もない気はします。

 あと動画で紹介したYOSHIの会のリンクも用意しておきます。
 銃で武装する権利はアメリカ国民に強く根付いている考え方と言っていいでしょう。それに国外から批判を加えるのはどうなの?そういうのはアメリカが決めていくことじゃないの?という気持ちはなくはないのですが、銃の存在が犯罪を促進しているのは事実ですし「犯罪減らしたいなら銃規制したほうがいいぜ?」くらい言っても問題ないでしょう。

 向こうは散々自由主義を方々に押し付けてるんだし、これくらいお互い様でしょう……。 

 

3Dプリンター拳銃はどのように対策すべきか

 3Dプリンターで銃を製造、所持 大学職員の男を逮捕

 昨日つぶやいた内容をまとめつつ論じていきましょう。3Dプリンターで作成された銃を所持していた容疑で男性が逮捕されました。なお事件の情報は上述のような報道でしか得ることが出来ず推測を多く含むこと、記事の筆者は法律、とりわけ刑法の実務には精通していないことを留意して読んでください。

 なぜ逮捕されたのか
 逮捕された理由は単純で、恐らく3Dプリンター銃が銃砲刀剣類所持等取締法(以下銃刀法と呼ぶ)に引っかかったからでしょう。詳しい条文はリンク先で読めますが、銃刀法では第1章第2条で拳銃を『けん銃、小銃、機関銃、砲、猟銃その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び空気銃(圧縮した気体を使用して弾丸を発射する機能を有する銃のうち、内閣府令で定めるところにより測定した弾丸の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして内閣府令で定める値以上となるものをいう。以下同じ。)をいう。』と定義しています。動画を見る限り、そして『厚さ2・5ミリのベニヤ板を10枚以上貫通』という性能を考慮すると殺傷能力があると認められたと考えていいでしょう。
 なおTwitterで以下のようなツイートがみられましたが

 恐らく誤解を招くような表現になっています。このツイートだとまるで警察が殺傷能力のないものに細工をして殺傷能力を付与して逮捕したようになっていますが、単純に「ちくわでもなんでも銃刀法に触れるような状態で所持したらアウト」という話だと思います。

 3Dプリンター銃はなぜ危険か、どう対策すべきか
 3Dプリンターで拳銃が作成できることの最大の問題は言うまでもなく「どんな人でも拳銃を手に入れられる」ことです。3Dプリンターの現状ではどんな人でもというほど簡単ではないようですが、「文書を印刷するようにネットからダウンロードしたデータを3Dプリンターで印刷」ということが出来るようになるのは時間の問題であると思います。この事件を機に何らかの対策を考える必要はあるでしょう。
 では対策はどうすればいいのでしょうか?私は「拳銃を作成できる設計図のデータの配布を禁止」する以外ないように思います。当然ながら3Dプリンターを規制するのはナンセンスとしかいいようがありません。麻薬密売に使われるからといってスーツケースを禁止するようなもんです。
 3Dプリンター銃自体の規制は現行の銃刀法で十分でしょう。現に逮捕できたわけですし。
 なお規制に関してよく見る論調として「3Dプリンターで弾は作れないから心配する必要はない」というものがありますが、圧縮した空気を発射する機能さえあれば火薬は不要ですし、それが3Dプリンターで作成できなくても、あと少し細工すれば銃として機能する状態のものが作成できるという事実は無視できるものではないでしょう。

 拳銃の流通はなぜ問題か
 3Dプリンターで拳銃が作成できることを論ずる際に、「拳銃でなくても犯罪はできる」という論調をよく見ます。実際その通りなのですが、鈍器や刃物にはない拳銃の機能を無視していると言わざるを得ません。拳銃の機能とは「犯罪のハードルが著しく下がる」 と「犯罪の被害が拡大する」の2点です。後者については論ずるまでもないと思いますので前者について論じましょう。
 犯罪をする際のハードルはいくつかありますが、その1つに「返り討ちにあうかも」というものがあります。非力な人間が誰かを殺害しようとする際には、相手に接近して抵抗される前に仕留める必要があります。もしためらって殺し損なったら目的を達成できないだけでなく相手に抵抗され自分の身を危険にさらすことになります。一定の距離を保ちながら相手を傷つけられる拳銃はこの懸念をいともたやすく払拭します。
 またこれに関連して、銃は「どんな人間が使っても威力が一緒」という問題点があります。引き金を引けば同じ銃なら同じ速度で弾丸が発射されるので当然ですが。これは「非力だから撲殺は難しい」というようなハードルを取り払うことになります。
 またこれは個人的な見方ですが、「直接手を下さない感覚」によって殺人のハードルを下げる可能性もあるかもしれません。刃物を人に刺す、あるいは鈍器で思いっきり殴りつけるという行為は「手ごたえ」を伴いますが、拳銃にはそれがありません。殺人の心理的な負担は拳銃の方が圧倒的に少ないように思います。

 銃で弱者は救われない
 この事件で逮捕された男はTwitterで以下のようなことを書いていました。



 彼が言うように銃が流通したら弱者は守られるのでしょうか。答えは否でしょう。
 銃を解禁したらマッチョな勘違い男が銃を持ちだして女性が今よりさらに危険にさらされるだけであると思います。この意見は拳銃を持つ権利が万人に認められる結果について基本的な視点が欠落しています。
 また「銃の無い社会に民主主義というのはありえないんです。」ともありますが、銃が出回ったら民主主義は今よりさらにないがしろにされるでしょう。引き金を引くだけで人を殺せる飛び道具の存在は選挙という民主主義的な手続きを踏んで選ばれた議員をあっさり殺して議論の場から永遠に引きずりおろすことになります。これは荒唐無稽な想像ではありません、実際に日本では共産党のトップがナイフで衆人環視の中殺害される事件も起こっています。
 銃による犯罪から身を守るために必要なことは「銃を法律で規制する」 ことでしょう。銃で犯罪をするにはまず手元に銃がある必要があります。アメリカでは銃を持つことは制約さえ乗り越えれば適法なのでこの関門を乗り越えることができます。逆にいえば関門を乗り越えられたら法律はもう手出しできません。銃で人を傷つけるまでその銃を取り上げることはできないのです。一方日本では銃を持つことそれ自体が罪なので、銃をもった瞬間にしょっ引けます。人を傷つけるのを待つ必要はなく、銃による事件を法律が防ぐことができるのです。
犯罪心理学者(途上)、アマ小説家。カクヨム『アラフォー刑事と犯罪学者』『生徒会の相談役』『車椅子探偵とデスゲームな高校』犯罪学ブログ『九段新報』など。質問はhttps://t.co/jBpEHGhrd9へ
E-mailアドレス
kudan9newbridge@gmail.com
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