2009年05月11日

ありがとうございました

足澤公彦によるブログは、

現在下記のところで行っております。

「玉。琢(みが)かざれば、光なし」

http://blogs.yahoo.co.jp/kugel_149

ぜひお立ち寄りください。

 

 

 

4月から記事の更新を考えて、写真を撮りためたりもしていたのですが、

この記事の更新を最後に、無期休載とさせていただくことにいたしました。

 

ここのところ万年筆を整理していました。

手元に残ったのは、大半が、やはり、モンブランとペリカンの万年筆でした。

ワーグナーの森睦師匠に、フルハルターの森山さんに、金ペン堂の古矢さんにバッチリ調整していただいた万年筆をただただ書き込んでみようと思っています。

その果てにどんな世界が待っているのか、書いて書いて書きまくった万年筆のことを、いつかまた、拙文にまとめられたら、と思っております。

御用の方は、恐れ入りますが、下記アドレスまで電子メールをお送りください。

kugel_149@yahoo.co.jp

 

ありぃがっとぉ!



kugel_149 at 07:50|PermalinkComments(0)TrackBack(0)万年筆とわたくし 

2009年04月08日

お知らせ

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ご無沙汰いたしております。

万年筆が登場するエッセイを2冊取り上げました。

よろしかったら、こちらへお立ち寄りください。

ブログ「玉、琢かざれば、光なし」

http://blogs.yahoo.co.jp/kugel_149



kugel_149 at 19:47|PermalinkComments(0)TrackBack(0)万年筆の本 

2008年11月01日

11月最初の週末

こう

革小物のワイルドスワンズが、11月1日(土)、銀座にお店をオープンします。ワイルドスワンズといえば、森山信彦さんの万年筆専門店「フルハルター」のオリジナル万年筆ケース『リポーズ』(1本用)と『カルテット』(4本用)を制作している会社です。堅牢で、どこか懐かしい感じのする革小物を作っています。

直営店の名前は「C.O.U.」と書きしるされています。Company Of Utilityの頭文字を取ったんだそうで、「様々な価値観、よりよいものとの出逢いを提供出来る場」ということを意味しているそうだ。鴻野社長の「鴻」という文字の音も関係しているのかもしれない。店名は「コウ」と読みます。

営業時間は、午前11時〜午後8時(日曜日のみ午後7時まで)
定休日は、毎週火曜日となっています。

お店の場所は、東京メトロ「銀座1丁目駅」 11番出口の真上。メルキュールホテル銀座東京の1階並びになります。

〒104−0061東京都中央区銀座2−9−4 銀座アイタワー1階
TEL・FAX:03−3563−5040
 取り扱いブランド:WILDSWANS,PRAO,BALINT etc...
ACCESS
 東京メトロ「銀座1丁目駅」 11番出口 徒歩10秒
 東京メトロ「銀座駅」 A13出口 徒歩3分
 都営浅草線「東銀座駅」 A2出口 徒歩5分

このお店の特筆すべき点ですが、もうフルハルターのHPで森山さん自身がお書きになっているので、ここでもご紹介しますが、「C.O.U.」ではファーバーカステル社の筆記具を扱っており、その万年筆は、あらかじめ森山さんによって検品・微調整をされています。初回は8本納められたようですが、そのうちの1本を書かせてもらいましたが、驚くほど書きやすく感じられました。初めて万年筆を使う人にお勧めです。

革小物は、その場で買って帰ることのできるものもと、オーダーを受け付けてくれるものとがあります。文庫本のカバーは実によく工夫されていておすすめです。

万年筆のケースは、現在いろいろと試作中で、創意工夫に驚かされるモデルが次々と発売されていくようです。

機会をつくられて、ぜひ訪ねてみてください。

 

今日はもう一つ記事を。下の写真は8月下旬に神田神保町の「金ペン堂」で撮影したものです。雨天にもかかわらず、お店の前にはたくさんの人が。

リリーさん3

よく見ると、店主の古矢健二さんが立っています。商品の説明をしているではありませんか!入院・闘病生活後、久しぶりの“現役復帰”といった感じです。

 

 

リリーさん2

帽子をかぶった男性がひとり。

あ、リリーさんだ。

そう、リリー・フランキーさんです。

 

りりーさん1

明日、11月2日の『プレミアムスウィッチ』という番組(日本テレビ)でリリー・フランキーさんが登場します。
金ペン堂の万年筆を紹介するようですよ。ぜひ!

放送時間は、夜6時55分から。
『真相報道 バンキシャ!』と『ザ!鉄腕!DASH!!』の間のミニ番組です。
全国で放送されているのかなぁ。されてない感じだなぁ。



kugel_149 at 09:36|PermalinkComments(0)TrackBack(0)万年筆関連グッズ | 万年筆つながりの人間関係

2008年10月17日

万年筆の似合う著名人2008

マスコミ各社

今年で5回目となった「万年筆コーディネート賞2008」(ハートライン・プロジェクト主催)。集まった取材陣の人数は、これまでで最多。

年々確実に「万年筆の似合う著名人を選ぶイベント」としてマスコミ各社には認知されてきている。

 

赤堀さん

このプロジェクトの親分は、ごぞんじ!赤堀正俊 南青山書斎館オーナーだ。今年も御苦労さまでした! 赤堀さんは、万年筆愛好者の裾野を広げるべく日々奔走している方。万年筆を一人でも多くの人たちに使ってもらいたいという思いは、徐々にそうなりつつある。

 

 

集合写真2

受賞者されたのは、写真左より、田中優子さん(法政大学教授)、安藤忠雄さん(建築家)、小西真奈美さん(俳優)、中尾彬さん(俳優)、橋本五郎さん(読売新聞特別編集委員)、金聖響さん(指揮者)、プロジェクトのスーパーバイザーである石川次郎さん。

お笑いタレントがいないせいか、穏やかで大人の雰囲気漂う授賞式だった。

 

田中さん

昨年度の受賞者である中沢新一さんによって選ばれた田中優子さん。着物に似合う万年筆をぜひ常用していただきたいなぁ。

 

 

安藤忠雄さん

アルピニスト野口健さんによって選ばれた安藤忠雄さん。安藤さんの手帳は、細かな文字でぎっしり書き込まれていることで有名。一度実物を見てみたいなぁ。

 

 

金さん

本上まなみさんによって選ばれた指揮者の金聖響さん。本上さんとは家族ぐるみのお付き合いだとか。奥様で女優のミムラさんと本上さんが仲良しなんだそうです。

 

 

水谷豊さん

一般部門で選ばれたのは、男性が水谷豊さん。残念ながら授賞式にはおいでになれなかった。VTRでのコメントでは、万年筆の似合う男になりたい、と。

 

 

小西さん

同じ一般部門の女性の部門で選ばれたのが小西真奈美さん。すらっと長身の美女でした。

 

 

 

丸善と

全国の万年筆販売員によって選ばれたのは俳優の中尾彬さん。かなりの本数を持っていらっしゃるとか。副賞でもらった万年筆はアウロラの限定品。持っていないものをもらってうれしいなぁと渋い声で御挨拶してました。

 

橋本さん

特別賞の受賞者は、橋本五郎さん。読売新聞社の特別編集委員です。朝の情報番組『ズームイン!!SUPER』にも御出演されています。モンブランの万年筆を30年以上愛用されているそうです。

 

 

安藤さん文字

会場の大きな画面には、受賞者のメッセージが映し出されるのだが、今回は、安藤忠雄さんと小西真奈美さんの直筆メッセージが心に残った。安藤さんの文字は、あったかい感じがした。小西さんの達筆ぶりには思わず拍手!だった。

 

小西さん文字

 

 

 

 

 

横顔

副賞の万年筆を見せての記念撮影。みなさん、うれしそうだ。石川次郎さんのコメントによれば、控室で受賞者がこんなにもうれしそうにしている授賞式はなかなかないのだという。控室では、万年筆談義が熱を帯びるらしい。

万年筆を使う人が増えてきているようで、受賞者が年を追うごとに「実際に万年筆を使用している人物」が増えてきている。そうして受賞の言葉で、万年筆に対する熱い思いが語られることが多くなってきた。

来年もたのしみだ。

 

 



kugel_149 at 00:34|PermalinkComments(3)TrackBack(0)その他 

2008年09月01日

さわやかな秋をむかえたくて……

お知らせです。

 

複数の方々から、

「万年筆を研究したり、万年筆に関する情報交換をしたりする会を新たにつくるっていうのは本当ですか?」

というお問い合わせをいただきました。

 

 どちらの、どなたさまが、どのような意図で流されたデマか知りませんが、まったくもって事実無根の話です。そのような話は一切ありません。新たな会をつくろうなどという考えは、わたくしにはありません。

 

 ときどき気のあった仲間たちと、おいしいものを食べたり飲んだりしながら、万年筆のことを語り合うぐらいのことはあるかもしれませんが、これは、これまですでにやってきたこと。メンバーも昔から同じです。旅の話や、映画の話、文学の話、食べ物の話、恋愛の話などなど、話題は多岐に及びます。万年筆の話ばかりではありません。

 

かねてより、モノに関する研究会というものは、話題の主役となるモノを修理したり調整したりする人物が中心にいないと成り立たない、と思ってきました。いま、わたくしが信託し尊敬できる、万年筆を修理調整できる方は、片手ほどもおられません。この方々は、みなさん、お忙しい。新しい勉強会を、などとお願いできるわけがありません。

 

 万年筆を初めて買った日から今年で30年。30年間、自分なりに万年筆と向き合ってきたので、最近、正直言うと、あまり驚いたり、感動したりしなくなってきているのです。いつも使っていますが「ビギニング・オブ・オジイサン」という心境です。

 

加えて、新しい製品にも心を奪われなくなってきているのです。自らが厳選した万年筆を、大事に、大事に、使っている瞬間が、たまらなく愉しいのです。それらと比較すると、昨今の万年筆がつまらないのです。これは、あくまでも、わたくしにとっての話です。

 

 昨年末より、わたくしは万年筆研究会WAGNERにほとんど顔を出さなくなりました。一度は親しくなったみなさんがどうしてらっしゃるのかと気にかかることもありますが、自分のために調整してもらった万年筆を使い込んでいくことで、これまで以上に万年筆と向かい合っていきたいと思うようになったのです。何か諍いが続いているわけではまったくないのです。好きな万年筆を使って、多少自慢げに寸簡をしたためたりしながら御縁を続けさせていただきたいと思っているのです。

 

 開高健先生が『輝ける闇』という作品の中で、次のような文章を書いておられます。ここのところ、この文章がわたくしの頭から離れないのです。

 

徹底的に正真正銘のものに向けて私は体をたてたい。

私は自身に形を与えたい。

私は戦わない。

殺さない。

助けない。

耕さない。

運ばない。

煽動しない。

策略をたてない。

だれの味方もしない。

ただ見るだけだ。

わなわなふるえ、目を輝かせ、犬のように死ぬ。



kugel_149 at 01:18|PermalinkComments(1)TrackBack(0)万年筆とわたくし | 万年筆つながりの人間関係

2008年08月24日

愛と哀しみのモンブラン

金ペン堂では、モンブランの万年筆は、店主の目の前にあるガラスケースの、一番上の段に陳列されてきた。あたかも店一番の自信作のように、モンブラン149や146、144が美しく並んでいるのだった。


中学3年生の時に初めて金ペン堂に行って以来、30年ものあいだ、モンブランの万年筆はずっと同じところに並んでいて、いつもわたくしの心をくすぐり続けてきたのだった。


万年筆の中の万年筆とも思える、いわば“王様の万年筆”のような、多くの作家たちが使い続けてきたモンブラン149を、自分も使いこなせるようになりたい、モンブラン149が似合う男になりたいものだと思ってきた。


いま、最も愛用している万年筆は、わたくしの場合、モンブラン149である。

 

 

金ペン堂の古矢さん親子が「モンブランの万年筆を扱わない」と決めた。
店にいま並んでいる分だけでおしまいとなる。


店の奥にしまってある調整済みの万年筆はないし、調整作業中のものもない。未調整の在庫もない。金ペン堂の古矢健二さんがバッチリ調整した最後のモンブランたちが大切に愛用してくれる人を静かに待っている。

 

 

ある時期から金ペン堂はモンブラン社に不愉快な思いをさせられてきたそうだ。商品を卸さないといったいやがらせもされたこともあったという。
モンブラン以外の万年筆も扱っているが、根強いモンブランファンのために、時代とともに欠点が増えていくモンブランを嘆きつつも、丁寧に調整して「筆記具として使いやすいモンブラン万年筆」を店に並べてきたのだった。


それは、古矢さんの心の中に「金ペン堂は、初めて万年筆を使う人からプロの書き手のための万年筆専門店である」という自負があるからだと思う。
お客さんの期待にこたえたい、お客さんの信頼を裏切るわけにはいかない、という思いは、激痛で動けないにもかかわらず、病院の個室で、手術の直前直後以外は、ひたすら調整を続けている姿にはっきりとあらわれていた。あまりにも壮絶な調整の現場だった。


古矢さんのことを「怖い」とか「気難しい」とか「威張っている」などと決めつける人もいるが、古矢さんは、そんな人じゃない。生きものであっても、生きものでなくても、存在するものすべてを大切にしようとする人なのであって、古矢さんのような人を真に「やさしい」人というのではないだろうか。


古矢さんは、最後の最後まで、モンブランを見捨てなかった。同じ外見をしていながら、マイナーチェンジをするたびに粗悪になっていくモンブランを、時に怒り、時に嘆きながらも、他のメーカーの万年筆よりも余計に時間をかけて調整し、「筆記具としてのモンブランの地位」を守り続けてきたのだ。

 

「モンブランはドイツで生まれ日本で育てられた」と語ったという、1970年代のモンブラン社の社長、チャンボア氏との絆みたいなものも大切にされてきたのだろう。バッチリ調整したモンブランを、文字通り、膝下に置いてきたのだ。


それなのに、古矢さんは決心した。「もうモンブランは扱わない」と。哀しい決断だったようだ。

ひとりふたりの人間が寝る時間を削って調整に専念しても追い付かないほど、どうしようもない万年筆になってしまっている、というのだ。


万年筆という筆記具が「かわいくてしかたない」と感じられるのは、モノでありながら生きているように感じられるからだ。

ボディーに吸い込んだインクを必要に応じて吐き出してくれる筆記具。書きたいときにインクがスーッと流れ出てきてくれて、書かないときにインクはピタッと止まる筆記具。
「ダラダラとインクがボタ落ちせずに、キャップを外したら、最後の一滴までインクが流れ続け、書くことのできる筆記具こそが万年筆だ」
と古矢さんから耳にたこができるくらい聞かされてきた。

 

「モンブランが使えない。金ペン堂で買ったのにインクが出ない」、「書き始めてしばらくするとインクが出てこなくなる。最後の1滴まで書けるんじゃないのか」といった声がお得意様から数多く寄せられ、古矢さんは、手術を終えたばかりで自宅療養中だったのにもかかわらず、なぜインクが出てこないのか、その原因を調べ始めた。
「からだを壊して、自宅療養中だから、調整がきちんとしていないんじゃないか、なんて思われるのは悔しいからな。今まで以上にバッチリ調整してるんだよ」

 

検証には約1年かかったという。
そして原因を突き止めた。


なんと、ペン芯やボディーに使用している樹脂に問題があったというのだ。
成分分析までしてもらった結果、非常に多くの油分を含んでおり、水性のインクをはじいてしまい、毛細管現象によってインクを押し出す力を生み出すことができない樹脂だったというのだ。
「なんで、こんな樹脂で万年筆を作るんだ!インクが出るわけないだろう!」

古矢さんはパーツの材質を変更するようにモンブラン社にはたらきかけてきたそうだ。


しかし、今でもその樹脂が使われ続けている。
それどころか、その脂分を多く含んだ樹脂に入れてインクフローが保たれるような“危なっかしいインク”に切り替えつつあるのだという。

古矢さんは断言している。
「インクの成分を変えたり、インクに特殊な薬品を加えたりすることで解決できる問題じゃないんだ!」

 

 

「モンブランファンのために何とかしなきゃいけない」
傍観者になれなかった古矢さんは、半年かけて、解決方法を探った。


そうして、試行錯誤の末に、なんとか「いける!」という方法を見つけ出し、金ペン堂で販売するすべての149と146にその解決方法を施したのだ。

 

そうやって現行商品で、インクがちゃんと出る149や146が金ペン堂に並び、お客様からは「やっぱりモンブランっていいな」という声が得られているのだが、せっかく万年筆としての性能を保持してもらったそれらの万年筆をモンブラン社は“調整”でなく“改造”とみなしているらしいのだ。
何か不具合が生じたとしても“改造された=正規の商品でない”モンブラン万年筆にはパーツを供給しないということをモンブランが伝えてきたらしいのだ。

 

ずっと考えていたようだ。
ずっと悩んでいたようだ。
しかし、古矢さんは決めたのだ。

 
昨日、土曜日の閉店間際に金ペン堂に行った。
閉店時刻を過ぎても、お客さんで混んでいた。
順番を待って中に入ると、いつもの場所に、モンブランの149と146と144が並んでいた。

本当は、昨日、古矢さんが調整した最後の149を1本買おうかと思っていたのだ。
ガラスケースの中を見ていたら、古矢さんの奥様に忠告されてしまった。
「もういいの。いっぱい、いろいろ、もってるんだから」
心の中を見透かされていた。そうだよなぁ。他の人にモンブランのよさをわかってもらいたいなぁ。わたくしは、結局、買わなかった。

 

149はあと5本。Mが3本とBが2本。
146はあと10本。
144はあと数本。
渾身の思いを込めて古矢さんが調整したモンブランたち。

このモンブランたちは、インクが最後の1滴まで出てくるように調整されたものだ。
初めて149や146を使ってみたいと思っている人たちに買われていくといいのだけれど……。

 

 

おことわり
「万年筆が好きである」の記事は、
あくまでも足澤公彦個人の考え方、とらえ方、意見、感想をつづったもので、
萬年筆研究会WAGNERとは一切関係がありません。
萬年筆研究会WAGNERの公式見解等ではまったくありません。



kugel_149 at 15:48|PermalinkComments(8)TrackBack(0)万年筆とわたくし 

2008年08月02日

黒住文規先生たちの書展に立ち寄ってみませんか

くろすみせんせい「第5回鵬圖舍書展」へのお誘いです。

 「鵬圖舍」は「ほうとしゃ」と読みます。

 いよいよ8月4日までです。

 午前11時〜午後7時(最終日は4時まで)

 田中八重洲画廊

 (東京都中央区八重洲1−5−15) 

 黒住(くろすみ)文規先生を中心に、大学や高校で書道を教えていらっしゃる先生たちが書展を開催しています。

 

金ペン堂の店主、古矢健二さんが、黒住先生を紹介してくださったのだった。

「足澤君といい勝負の、万年筆の好きな書道の先生がいるんだけど、今度一緒に飲むか?」

ふたり地味で、寡黙で、真面目そうな感じが漂っていたが、万年筆の話がはじまると黒住先生は一変してしまったのだった。黒住先生が兄弟子というところ。わたくしは弟弟子。

 

 

黒住先生と万年筆の話をするときは、もっぱら「書き味」と書き生まれる「線」の話である。それがすごく愉しいのだ。

 

作品3

いろいろなコレクターがおいでになることは知っていて、わたくしなりにレスペクトしているつもりだが、あるときから、わたくしは、“筆記具”として万年筆の話のできない時間や空間に身を置かないということにしてしまっている。

 誰とでも仲良く、エブリバディー・フレンドリーといった方針でがまんしていたこともあったが、「書き味」や「書き心地」についてやりとりができないと、こちらのフラストレーションがたまる一方なので、しずかぁぁぁに、その場からいなくなることにしている。いわゆるフェードアウトってやつね。

 

作品2

黒住先生の書展では、久しぶりに愉快な時間を過ごすことができた。

出展されている先生方(閑野忍先生も、日比將人先生も、寺岡稔先生も、棟方辰臣さん)は、みなさん、万年筆大好き人間たち。

先日も会場で、万年筆の試し書き大会になってしまった。一流の書の達人たちが、思い思いに試し書きをされながら、筆記感を語ってくださったのだ。

 

その日は、日比先生がコレクション、「アウロラのダンテ(M)」、「オマス(M・金ペン堂カーボンブラックインキ入り)」、「ペリカン復刻版400NN(F)」を持参されていたので、書かせていただいた。

日比コレクションいずれも金ペン堂の古矢さんがバッチリ調整してあるので、うなるほど書きやすかった。不思議なくらいにやわらかな筆記感のある万年筆たちだった。

 

 

 

 

 

ためしがき1

それにしても、すごいですよ。書道の達人の試し書きというのは。次々と作品が生まれ出てくる感じです。

 

 

ためしがき2

先生方は運筆軽やかに、スラスラと万年筆を走らせるのです。

 その脇で、太った大きな手で、ドラえもんのような風情で、わたくしは、赤面しながら、文字を書いていたのだった。あちゃー、まいったなぁ。

 

 

 

作品 字の上手な人の前で、下手な文字をさらけ出すのは恥ずかしいが、不思議なことに、上手な先生方の文字を真似て書き綴っていると、字が上手になっていくのがわかった。

文字は練習すれば、格段に、早々に、上手になっていく。

文字のうまい人になった気分で、“その気になって”文字を綴っているのがよいようだ。

 

 

 

 

 

 

 

たしか、明日は、ワーグナーの定例会も行われるはず。

黒住先生もワーグナーの集まりには何度かいらしていますよ。

だから、きっと顔見知りの人も多いはず。

展覧会は午前11時から午後7時までなので、ワーグナーの定例会とはバッティングしていますが、前後どちらかに、ぜひぜひお立ち寄りください。

 

 

マスター黒住先生は「篆刻(てんこく)」の名人でもあります。

会場には、篆刻の材料も置いてあります。

お願いすると、あなたのお名前の印を彫ってくださるそうですよ(もちろん、その場でではありません。念のため)。

お値段も、決してお高くないので、気楽に打診してみてはいかが…。

 

おきにいり

わたくしが気に入ってしまったのはこの作品。「寒山詩」です。



kugel_149 at 17:04|PermalinkComments(10)TrackBack(0)万年筆つながりの人間関係 

2008年07月19日

やっと好きになれたペリカン1931ホワイトゴールド

g2 ペリカン100のフォルムが好きである。

 

 長い間、ペリカン400NNを“原型”と称して大切に使ってきたわたくしにとって、ペリカン100Nや、その前のペリカン100は、たいそう古臭いデザインに感じた。

 

 興味は、400から、400N、そして400NNに向いていたので、あまり100Nや100に興味を抱かなかった。

 

 これには別の理由もあった。それは、なかなか状態の良い100にも100Nにも出逢えなかったのだ。尻軸の周辺からインクがにじみ出てくることがよくあった。随分と泣かされた。日々の生活でそれらオールドモデルを愛用することはなかった。

 

 ところが、ペリカンが1997年にすばらしい復刻版を世に出してくれた。

 

g3 ペリカン1931ゴールドがそれだ。インクがボタ落ちしたり、インクが尻軸からにじみ出てきたりといった機能上の問題がまずない1931ゴールドは、実に万年筆らしい姿かたちをしていて、ペリカンファンとしては持っていなければならない1本のように感じられたのだ。安くないお値段だったけれど、どうしても買わざるを得ない万年筆になってしまった……。

 

 幼稚園児になったばかりの娘を抱えて、家計は火の車。それでも、発売直後、かなり無理をして購入したのだった。

 

 やっと購入。

 試し書きで硬い書き味だということはすぐにわかったので、できるかぎりインクフローをよくしてもらった。それでも、実際にインクを吸入して書いてみて、がっかりした。

 

g1 硬いタッチで、弾力がなく、本音を言えば、16万8千円の価値のある万年筆には思えなかった。イリジウムの玉の大きさも小さく、BBや3Bといったニブは用意されていなかった。モンブランのロレンツォ・デ・メディチに次ぐ、久々の落胆だった。(左が本来ついているニブ。右が400の時代のニブ)

 

 

 

g5 その後ペリカン社は、次々と1931シリーズを発表していった。同じように硬く、どうしょもない書き心地なのはわかっていたので、買っても使わず無駄になるのはわかっていたのに、あのコンパクトで、しかも無骨な感じのする、クラシカルな外見にひかれ、結局、その後シリーズすべてを購入したのだった。

 

 いま手元に残っているのは、1931ゴールドと、1931ホワイトゴールドと、1931トレドだけである。

 

 ただし、この3本には、いずれも付いているべきペン先がついていない。いずれもペン先を別のものに交換してしまっている。ペン先を付け替えることで使う出番が増えた万年筆たちだ。

 

 今回取り上げる1931ホワイトゴールドは、のんびりと葉書を書くときによく使う1本だ。1950年頃から1956年頃まで作られていたペリカン400の「M(太字)」ニブをつけている。

 

g4 この時代のニブは、その後の「左右に2本線が伸び、ペリカンを円で囲った意匠のニブ」よりもふわっとしていて軟らかだ。軟らかい書き味を求めているのならば、ぜひおすすめする。この時代の弾力を知ると、どんどん万年筆の世界にはまっていくように思う。ペン先が紙にふれて、上、下、右、左、斜めへと線を引いていく一画一画、ペン先がいつまでも紙面と離れたくないかのように感じられるのだ。

  

 手先が器用でない人にはおすすめできないが、丁寧にペン先をひねってはずして、そのまま1931シリーズにねじ込むだけだ。ペリカン1931ホワイトゴールドと、400初期型の、イリジウムの大きいMニブを持っていたら、しかも、やわらかな書き心地をお望みなら、ぜひお試しあれ!



kugel_149 at 23:15|PermalinkComments(4)TrackBack(0)万年筆とわたくし | 万年筆

2008年07月07日

やっと再会!三菱鉛筆社製シャープペンシル「ペッカー」

 2005年12月6日付の記事「わたしのお気に入り 緊急出動のときはピックスさ!」で、ちっぽけな思い出を拙文にまとめた。

 

p02「小学校の5年生か6年生の頃だったかなぁ。母に執拗にねだってやっと三菱鉛筆製の「ペッカー」というシャーペンを買ってもらった。ペッカーは、軸の頭をノックして芯を出すのではなく、人差し指があたるあたりにあるボタンを「左クリックして」芯を出すというシャーペンだった。マチャアキこと堺正章がキツツキの格好をしてTVコマーシャルにでて当時の子どもたちの心を掴んで離さなかった。わたくしもまんまと引っかかった一人であったのだ。わたくしのペッカーは青色のものだった。それにコーリンが作っていた黄金色のシャープペンシル芯を入れて使っていた。当時から結構こだわっていたんだな。生意気なガキだ!それまで、BやFの鉛筆ばかり使ってきたものだから、0.5mmの芯は、キツツキが木をコンコンとノックするかのようにポキポキ折れてしまい、イライラしてばかりだった。ある日、芯を送り出すメカニズムを知りたくて分解しているうちにペッカーを壊してしまった。おっ母に顔向けできなかったなぁ。ペッカーはどこかへ飛んでいってしまったようで、あれから一羽ならぬ一本も見ない。再会したいものだ」

http://blog.livedoor.jp/kugel_149/archives/50381799.html

 

p03青色ではないけれど、緑色のペッカーをこのたびプレゼントしていただいた。贈り主の方は、このブログの熱心な読者の方で、すべてのページをプリントアウトし、繰り返しお読みくださっている、ということを知って、入る穴を思わずさがしてしまった。わたくし以上にわたくしのことを知っているようなのだ。

 

 『ペン!ペン!ペン!ファウンテンペン!』が出版された折に1冊お贈りしたのだが、そのお礼にとペッカーをずっとさがしてくださったのだった。

 

p05p04このペッカーは、デッドストックだったようで、それぞれのパーツが粉をふいたようにさびているのだが、クリップのところに三菱鉛筆の値札まで付いている。当時1000円だったのかぁ。1974年ころだったと思う。

 

 

 

 

 

 p01

 芯を送り出すボタンのところに指を置いてホールドすると、ペッカー本体の真ん中あたりを持って筆記することになる。もしかしたら、今から30年以上も前に、この位置をホールドして筆記していたので、万年筆をはじめとする筆記具のほとんどを後方を軽く持って低い筆圧で書けるようになったのかなぁ。

 

 

p06



kugel_149 at 21:56|PermalinkComments(1)TrackBack(0)ペンシル 

2008年06月29日

モンブラン2桁シリーズ・グレー軸にぴったりのインク:色彩雫「霧雨」

 日本語がある程度身についてきた外国人学習者にとって、「雨」という字は厄介な文字らしい。姿かたちから「雨」いう文字は覚えやすいそうだが、「雨」の字がついた言葉の読み方はすこぶる難しいというのだ。

 

ふつう<あめ>と読むが<あま>と読む時もある。<さめ>と読む時もあれば<う>と読む時もある。そこに確たる法則があるのか訊いても明快に答えてくれる日本人国語教師はほとんどいないらしく、「雨音」は<あまおと>、「大雨」は<おおあめ>、「小雨」は<こさめ>、「豪雨」は<ごうう>、「五月雨」は<さみだれ>、「時雨」は<しぐれ>、「梅雨」は<つゆ>と、それぞれ丸暗記をするしかないというのだ。

 

稲作文化と密接な関係のある日本人にとって、雨は、一年中、気にかかる事象だった。やまとことばに漢語が加わり、「雨」を表現する言葉がふくらんでいったのだろう。四季の移ろいの中で「雨」の違いを微妙に使い分け、しかも、それぞれの雨に色の違いも見ていたのだ。なんと繊細な感性だろうか。古来、歌人や詩人が、自らの思いを雨に託し、ふさわしい雨の色を思い思いに表現してきたのだった。

 

北原白秋の『城ケ島の雨』いう詩の冒頭部分を紹介しよう。

 

雨はふるふる 城ケ島の磯に

利久鼠の 雨がふる

雨は真珠か 夜明けの霧か

それとも私の 忍び泣き

 

 白秋は「利休鼠の雨」と表現している。「利休鼠」とはどんな色なのだろう。

 

黒と白の中間の色、英語でいうグレーには、「鼠色」と「灰色」という呼び方があって、青味がかった色合いには「鼠色」を、赤味や黄味がかった色合いには「灰色」という言い方を日本人はしてきたようだ。

 

 江戸時代の流行色は「鼠色」で、「薄墨色」から「墨色」にいたるまで約は百種類もの「鼠色」の種類があったという。吉岡幸雄さんの『日本の色辞典』(紫紅社)には詳しい解説が載っている。

「三年に一度は家が焼けるといわれていた江戸では、『灰』の字は忌み嫌われて、『鼠』が採用されたのだろう」(『日本の色辞典』「鼠色」の項より)

 

 利休とは、千利休のことである。上述の吉岡幸雄さんに再度解説していただこう。

「そもそも色名に『利休』が冠される場合は、茶道からの連想で葉茶か抹茶の緑色に思いがおよび『緑がかった』という形容になる」(『日本の色辞典』「利休鼠色」の項より)

 

 グレーにほんのり緑がかった色が「利休鼠」という色なのだ。以前、京都の西陣で、吉岡幸雄さんが草木染めで染めた「利休鼠」の色見本をみせていただいたことがあるが、その時に見た色味は、思っていた以上に緑色が強く、ドクター・ヤンセンの「チャールズ・ディケンズ」に近かった。

 

 

色雫1 パイロット万年筆から、万年筆用インク「色彩雫」の第2シリーズが発売されたというので、南青山の書斎館に行ってきた。

 

 今回発売されたのは、「孔雀(くじゃく)」、「松露(しょうろ)」、「深緑(しんりょく)」、「冬将軍(ふゆしょうぐん)」、「霧雨(きりさめ)」の5色である。

 

色雫見本 前作の「紺碧」を濃くした感じのターコイズブルーが「孔雀」。「松露」は青系が勝っている青緑でペリカンの緑縞の万年筆に合うような気がした。「深緑」は文字通り深い緑色。緑好きにはたまらないインクだろう。「冬将軍」は青系の強いグレーで、セーラーのジェントルインクのグレーに近い感じがした。もう少し青味を強くしていくと、ドクター・ヤンセンの「アンデルセン」に近くなるような気がした

 

霧雨1 最後の「霧雨」。

 色合いをみて、

「やっと出逢えた!」

 と感激した。

 ずっとモンブラン2桁シリーズのグレー軸にふさわしいインクを探していたのだ。オマスの「グレー」やプライベートリザーブの「グレイ・フラネル」、ドクター・ヤンセンの「シラー」や「グーテンベルグ」、セーラー・ジェントルインク「グレー」などを試してきたのだけれど、色合いが微妙に異なっていたり、インクフローが良好で良好でなかったり、紙に滲んだり裏写りしてしまったりしたので、宙ぶらりんの状態が続いていたのだ。

 

霧雨色合い 「霧雨」。いい。すごくいい。

モンブラン2桁シリーズのグレーのために作られたような色合いだ。

これ以上薄かったり淡かったりすると筆記用インクとして常用できないが、この濃さは実に使いやすい。読書をしていて文章の右脇に線を引いたりするのにも重宝するだろう。

 

 

色合い 手元にグレー軸のモンブラン2桁シリーズが2本。74番と23番。どちらの万年筆にもパイロット色彩雫「霧雨」を入れた。

 音もせずに、舞うように、降りしきる「霧雨」のイメージの線が、心をおだやかにしてくれる。

 

 

 

買い増ししては減らし、買い増ししては減らし……。これまで実に多くのインクを試してきた。一時期に比べると万年筆の本数は激減し、使うインクも限られてきている。イメージ通りの色合いが揃い、お気に入りの万年筆に吸い込ませ、出番に備えている。自分の意思で、使うインクを選ぶ。そのインクの色になにがしかの意味合いを込めて文字を綴る。「霧雨」が加わって、さらに書くことが愉しくなった。

 

 あとは、黄金色に輝くセピア色のインクを待つだけだ。



kugel_149 at 02:36|PermalinkComments(1)TrackBack(0)インク