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2008年08月09日

【コラム】ユーザー作成コンテンツがひっくり返す、商売の常識 〜初音ミクが巻き起こした革命とは?〜

【コラム】ユーザー作成コンテンツがひっくり返す、商売の常識 〜初音ミクが巻き起こした革命とは?〜

「VOCALOID 02 初音ミク」というパソコンソフトは、もうごぞんじのことと思います。あの、緑色の髪をした女の子のキャラクターを思い浮かべる方も多いでしょう。
たしかに、キャラクターそのものにも、絶大な人気があります。

ごぞんじない方にご説明しておくと、これは音楽制作用のソフトです。
ただ、ふつうのソフトとはまったく違っている。音符を入力すると、そのメロディーを「人間の声で歌ってくれる」んですね。厳密には「声優が吹き込んである音声データが合成され、ユーザーの思いのままに歌わせることができる」と考えてください。初音ミクというキャラクターは、このソフトの中にいる「バーチャルな歌手」のことです。

これが凄いのは、昔のSF映画のような「いかにも機械的な声」で歌うのではないこと。
ヤマハが開発したVOCALOIDエンジンという技術が利用され、かなり自然な歌声が作れる。
細かくパラメータを調整すれば、それが合成音なのか、本当の人間が歌っているのか、すぐには区別がつかないレベルにまで高められます。もしお疑いならば、
ネット上を探してみてください。さまざまな曲を、すぐに発見できると思います。

このソフトの登場は、とてつもない革命を引き起こしました。

なにしろ、自宅のごく普通のパソコンさえあれば、プロのボーカルが歌っているかのような曲を作れてしまう。これがユーザーの心をガッチリとつかみ、一種のムーブメントを引き起こすこととなったのです。

■ネットに公開された数万の楽曲たち

その影響力は、ネットを見てみれば一目瞭然です。

ソフトの発売は2007年8月。まだ1年しかたっていないというのに、たとえばニコニコ動画には、すでに数万本の楽曲(の動画)がアップされています(すべてを数えることはできないので、もしかしたら十万曲を超えているかもしれません)。少なくとも、1日に100〜200本のペースで、アマチュアたちの手による楽曲が公開されている計算です。

ここまで大量の曲が公開されると、中にはユーザーの支持を集めるものも出てきます。
それらは、いまではネットの世界を飛び出して、たとえばカラオケ曲として配信されるようになっているものもあります。CD化され、「初音ミクが歌っている曲」として販売されるものも登場しているほどです。

つまり、ネット空間という広大な「ストリート」で、みんなが一斉にストリート・ミュージシャンを始めたようなもの。誰もが自由に曲を発表していたら、その中にはとびきりの才能の持ち主がいた。
それが一気に人気を集め、プロとしてデビューするようになった――と考えると、
このムーブメントは理解しやすいかもしれません。

こうして、アマチュアが、自宅のパソコンを使って作ったボーカル曲が、いまではCDショップに売っている時代になったのです。こんなことをやってのけた「音楽ソフト」は、空前絶後でしょう。

■キャラクタービジネスの常識が変わる

さて、デジタルエンタテインメント・ビジネスの視点から、このムーブメントを見てみると、きわめて面白い現象が起きていることがわかります。

従来のキャラクタービジネスの常識が、根本からひっくり返っているのです。

キャラクタービジネスとは、いわば著作物の二次使用ビジネスです。コミックやアニメ、小説などの人気が出ると、そこに登場したキャラクターの人気が高まり、それがビジネスへと発展します。
母体となる作品の権利を持っている企業から許諾を得て、さまざまな公認キャラクターグッズが作られる、といった具合ですね。これは「大元の著作者が権利関係を縛る」ことで、利益を確保するビジネスだと考えていい。

ここが初音ミクは、まったく逆なんですね。

念のために書いておきますと、従来のビジネスと同様に、許諾を得た上で作られている初音ミクグッズは、たくさんあります。たとえば、初音ミクのフィギュアなどは、そういうビジネスルールに則って作られています。そうすることでクオリティを保っている。

しかし、こと音楽作品に対しては、このルールが非常に緩やかです。

購入してくれたユーザーが、初音ミクに歌わせようと「愛情を注いで作った楽曲」ならば、どんどん公開してOK。
上手くても下手でもOK(ただし公序良俗に反しているものはダメ)。あらゆる作品の制作は歓迎されます。
なにしろ販売元であるクリプトン・フューチャー・メディア自身も、自社で「ピアプロ」という投稿サイトを運営。ユーザーが自分の作品を発表したり、ユーザー同士が交流する場を用意しています。

■権利の開放が好循環を生む

なぜ、こうなるのか?「初音ミク」というのは、凄まじい人気を持つキャラクターであると同時に、「ユーザーが指定したとおりに歌う」ためのバーチャル歌手だからです。つまり楽器と同じような存在だからですね。

誰かが作ったピアノで、自分が作曲した演奏し、それがCD化されて大ヒットを記録したとします。その場合、ピアノを作った人は「勝手に演奏して商品化するな!」とは言わないし、「その作品は二次著作物である」と主張することはありません。ピアノは道具に過ぎないからです。

「初音ミク」も同じ。このソフトを使って「素晴らしい曲を作り、歌わせた作品」を公開したとしても、それは「初音ミク」という道具を使って表現された作品だということ。その曲を作った人の著作物になるわけですね。

だからこそ、ユーザーは自由に楽曲を作っていい。だから次々にカラオケ配信されていくものも出れば、CD化されるものも出てくる。才能あるユーザーが、どんどん初音ミクの魅力を伝える作品を作り、それらが世間に広がっていき、キャラクターの人気そのものが上がっていく、という好循環を生んでいるのです。(注:カラオケ配信、CD化などは無許可でできるわけではありません。販売元の許諾が別途必要となります)

現在では、「初音ミク」の他にも、さまざまなVOCALOIDソフトが発売されています。最近では、プロの歌手であるGACKTの声で歌わせることのできる「がくっぽいど」(株式会社インターネット)なども登場。デジタル技術の猛烈な発展により、音楽の世界でも、主にプロだけがユーザーを楽しませる作品を作る時代は、ゆるやかに 終わりつつあります。すべてのユーザーが自由に楽曲を作れて、みんなが楽しむというムーブメントは、まだまだ広がっていくでしょう。


日経ビジネスオンライン
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20080806/167386/
2chスレッド
http://news24.2ch.net/test/read.cgi/moeplus/1218203006/


VOCALOID2 キャラクターボーカルシリーズ01 初音ミク HATSUNE MIKU
クリプトン・フューチャー・メディア (2007-08-31)
売り上げランキング: 24
おすすめ度の平均: 4.5
5 コレは凄い
5 高クオリティ
5 実際すごい
1 まだまだ開発の余地あり
5 個人的評価ではなくソフト全体としての評価


kuma344 at 08:15│Comments(0)TrackBack(0)コラム 
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