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2009年03月14日

【コラム】音楽シーンに異変? 「初音ミク」チャートインの理由

【コラム】音楽シーンに異変? 「初音ミク」チャートインの理由

動画投稿サイトなどで人気の楽曲を集めた初音ミク関連のCDアルバムをメジャーレーベルが相次いで発売。そのチャートアクションが注目されていたが、supercell feat.初音ミクが3月4日に発売した『supercell』(ソニーミュージック)はオリコンチャートで初登場4位を記録。
同日発売の中島美嘉『NO MORE RULES.』(5位)を抑えての4位と、大健闘を見せた。
これはネット時代の音楽的状況を語る上で、見逃せない出来事の一つだろう。

■ 「場」を創出した象徴としての歌手

まず「初音ミク」とは何かのおさらいから始めよう。初音ミクは実在の歌手ではなく、ボーカロイドと呼ばれるWindows上の歌唱ソフトだ。2007年夏に発売されたこのソフトは、ジリ貧だったDTM業界が息を吹き返すほどの大ヒットとなった。

合成音声の元となる音源に女性声優を起用、人声と聴き違えるほどリアルな発音を実現し、萌え系のキャラクターを与えたことがヒットの理由だ。ヤマハの音声合成エンジン「VOCALOID2」を利用し、音源ソフトメーカーのクリプトン・フューチャー・メディアがキャラクターイメージと共に開発した。

初音ミクがあれば、ボーカリストを呼ばなくても言葉を持った曲が作れる。そうした手軽さ、面白さから、アマチュアのクリエイターたちが様々な曲を制作。その音源を動画サイトにアップロードし始め、特にニコニコ動画では爆発的な人気を集めた。

初音ミクのキャラクターは無名のクリエイターとリスナーの媒介役として機能し、作られた曲はゲームやアニメに親しんだ若いリスナーに受け入れられた。初音ミクはソフトメーカー、クリエイター、リスナーの三者によって創られた、象徴的な意味での「歌手」であるとも言える。

■ メジャーリリースのハードル

そうした動画サイト生まれの人気曲『メルト』『恋は戦争』『ブラック★ロックシューター』を生み出したのが、楽曲制作者のryo氏率いるsupercellというプロジェクトだ。キャラクターデザインや動画編集など様々なクリエイターが参加している。

これまで彼らの音源は自主流通盤としてコミックマーケットやアニメ・同人系の販売店に並ぶこともあったが、あっという間に売り切れてしまい、一般リスナーの手にはなかなか届かなかった。クリエイター側としても、そうした大量のニーズに応えるには限界があった。

それが今回のメジャーリリースへとつながっていく。彼らの音源を扱うメジャーのメリットも大きかったはずだ。なにより楽曲の完成度は高く、すでに動画サイトで高い人気もある。
特に代表曲である『メルト』の人気は高く、ニコニコ動画での再生回数はそろそろ400万回に届きそうな勢いだ。制作もプロモーションもコストをかけずに済む上に、初音ミクなら確実に売れる。

ただ、クリエイター側としては、安直にメジャーに乗せられない理由もある。ボーカロイド楽曲の人気を支えたのは動画サイトのユーザーたちだ。彼らは楽曲をリミックスの素材として使い、初音ミクが3DCGで動き回るようなプロモーションビデオを作ったりと、様々な形で楽曲の価値を高めてきた。

そうした二次利用が可能なのも、楽曲の全権利を作者自身が持っていて、作者がその状況を許しているからだ。しかし、楽曲の権利が一部でも作者の手から離れると、その状況は成り立たなくなくなる。メジャーでの流通はそこが課題だった。

■ タダで聴いてもCDは買う

初音ミクの最初のメジャー流通盤は、livetuneというグループのアルバム『Re:Package』だった。
2008年8月27日にビクターエンタテインメントから発売され、オリコンウイークリーチャートで5位を記録するという快挙を成し遂げている。

このリリースで注目すべき点は、彼らがJASRAC登録を回避したことだった。業界の常識では、メジャーの流通に乗せるなら著作権登録は当たり前なわけだが、彼らはその常識には従わなかったわけだ。そうした理由は簡単で、ユーザーの二次利用を妨げないためだ。

このlivetuneの成功は良い前例となった。今回のsupercellもlivetune同様にJASRAC登録はしていない。ネット時代の実態に合わせたリリース条件をメジャーに認めさせたことが、初音ミクの成した功績の一つだろう。

また「コピーが楽曲の価値を毀損する」という問題も、ここには存在しない。個々の収録曲は動画サイトでいつでも聴けるし、その多くはタダでダウンロードもできる。それでもCDが売れるという状況は、自分が参加した場には誠実に対応するという、クリエイターとリスナーの態度が作ったものだ。

■ ボーカロイドはどこへ向かうのか

ボーカロイド関連のメジャーリリースは、これからいくつも予定されている。きっと本物のアイドルや有名芸能人にまじって、再びチャートをにぎわすだろう。

ここまで大量の才能が一時に出てきたことは、過去を振り返ってもそう多くはない。そこで気になるのは、初音ミクのキャラクターは、いろいろな意味でまだ借り物だということだ。
同じクリエイターの曲でも、ボーカロイドとそれ以外では再生数に大きな開きがある。リスナーの多くはボーカロイドの曲が聴きたいのだ。

彼らはボーカロイドというアイドルに楽曲を提供する、作詞・作曲家のような立ち位置で仕事をしていくのか。あるいは初音ミクなしで、アーティスト個人としての道を踏み出すのか。
いずれにしても、今までの音楽とは違う新しい場で、新しい人たちが、新しいやり方で活躍することになる。そこには必ず新しい音楽も生まれるはずなのだ。


日経トレンディネット
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20090310/1024495/


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クリプトン・フューチャー・メディア (2007-08-31)
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5 個性豊かなVOCALOID
5 乗り越えられる壁
5 実用的な音声合成
5 MIDI に歌詞を流し込み可能・認証について・ミクの魅力など
5 コレは凄い


kuma344 at 12:11│Comments(0)TrackBack(0)コラム 
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