2006年09月09日

アシカとオットセイ、ここが違う!5

4840f7b3.jpg ガラパゴスから帰ってからずぅ〜〜〜っと気になっていたことがある。
俺が見たのは、アシカなのかオットセイなのか?ということだ。
ガラパゴスには両方棲んでおり、旅行資料にも「アシカプールがあります」と書いてある資料と「オットセイプールがあります」と書いてあったりする。だから実物を目の前にして、どっちなんだ?と悔しい思いをしてきたのだ。
 区別の出来ない俺はおかしいのだろうか?と思っていたら、水中写真家の中村 元さんのHPにこんな1文が載っていた。

よくオットセイとアシカはどう違うの?と聞かれるが、オットセイは、まぎれもないアシカ科の仲間であり、他のアシカ科の仲間とオットセイの違いなど、素人目には区別のつけようがない。
 ところが英語では他のアシカの仲間がシーライオン(海のライオン)と呼ばれるのに、どういうわけかオットセイだけがファーシール(毛アザラシ)と呼びならわされている。
 まあ、アシカとアザラシの違いだって、よくわからない人のほうがはるかに多いのだから、別になんだっていいのだろう。


なんだぁ、「素人には区別のつけようがなかったんだ!」とちょっと安心したものの、「一応俺は素人に毛の生えた、哺乳類の専門家でもあるのであって・・・」ということで、調べることにしたわけだ。

 信頼できる資料(「鯨類・鰭脚類」西脇昌治著 東京大学出版、1965年に出版され、当時で3000円もした本!現在、鯨関係はかなりいい本がでているけれど、鰭脚類についてはこれを越える本はないと思う)には、オットセイはガラパゴス諸島の北のはずれにあるヘノベサ島にだけいる。と書いてある。もちろん奴らは回遊するわけだろうから、他の島にいたとしてもおかしくはないとは思うけれど。
では、専門家はどのように区別できているのだろうか?
福岡市にある「海の中道海洋生態科学館」のHPにはこう書いてある。

皆さんは、アシカとオットセイの違いをご存じでしょうか。この2種類の動物は、同じ鰭脚類のアシカ科に属し、外観も良く似ているため、しばしば混同されます。事実、アシカを見ながら「オットセイだ!!」という会話をされているお客様を良く見かけます。

 今回は両者の見分け方を紹介しましょう。まず体格はアシカの方が大きく、また顔つき鼻づらが太く短いのがアシカです。さらに、ヒレ状になった前後の脚はオットセイの方が長く、より水中の生活に適応しています。
 中でも最もはっきりした違いは体毛です。彼らの体は、寒さから身を守るために、長い毛と短い毛の二重構造の体毛でおおわれています。アシカでは長い毛1本と短い毛5本が−つの束になっていますが、オットセイでは長い毛1本に短い毛が約50本もあり、より保温効果を高めています。
 当館にはオットセイはいないので、両者を見比べることはできないのですが、アシカヘの誤解が生じないためにも、違いを覚えておいてください。


 ・・・だそうで、結局見た目ではわからないっていうことなんだね?にも関わらず「違いを覚えておいてください」って、言われてもねぇ?
ただ、なぜオットセイが「ファーシール」と呼ばれているのかはわかった。アシカよりも毛皮が保温性に優れて上質だからだ。
・・・となると、この文章には矛盾がある。「鼻面が短く太いのがアシカ」と言っていながら「より保温性に優れた毛皮を持っているのがオットセイだ」と言っているところだ。
では、そこを検証する。


「体格が・・・」と言われても、相対的な問題だから、成獣のオットセイと若いアシカではオットセイの方がデカイだろうし、「前足の長さ」というのも、比べてみないとわからないことだと思う。
このように「二つ並べて(捕まえて計測して)みるとわかることもあります」・・・というのは、俺の基準では「違い」とは言わない。どっちか片っ方がいてもわかる違いを「違い」というのだ。そうでなければフィールドで個体識別はできない。
毛の構造やら何やらと言われても、シシトウとオクラの違いは、「切ってみるとオクラは粘りけがあるので・・・」というのと同じではないか!?やはり「表面にツヤがあって、細かい毛が生えていないからシシトウ!」という答えを期待していたわけだ。そういうのを「専門家」という。

調べていてわかったことは、生息分布を見るとアシカは北太平洋に分布しており、アリューシャン列島よりも北には分布しないとある。例外的に、南半球のオーストラリアとニュージーランドに棲んでいるニュージーランドアシカってぇのがいるが。(オーストラリアアシカは近似種)
一方、オットセイは、赤道付近に生息しているのはガラパゴスオットセイ。カリフォルニアにはガダループオットセイがいるが、こいつらはミナミオットセイという仲間で6種(8種という資料もあり)おり、他は南緯30度以上〜南極海に棲んでいる。
(ミナミオットセイという言い方は、いわば「南浦和」と表記するみたいなものだ)
いわゆる「オットセイ」(つまり「浦和」)は、北太平洋に広く分布し、繁殖期はアリューシャン列島からオホーツク海、ベーリング海、北氷洋にまぎれこむ場合もあるという。

生息分布から見てもオットセイはアシカよりも寒いところに棲んでいるから、毛皮も下毛が50本もあって保温効果に優れている。ということが言えよう。それなら、「アレンの法則」が働いているはずなのでは?と推理したわけだ!そしてナント、その推理を裏付けるように、「オットセイの耳介はアシカよりも小さい」という記述もあった。

アレンの法則というのは、同じ種類の動物でも、暖かい地方の動物は鼻面が長く、飛び出ており、耳が放熱しやすいように大きい。一方、寒冷地の連中は放熱しにくいように耳が小さく鼻面が出ていないというものだ。
それで考えると、水族館の言う「鼻面が太く短いのがアシカ・・・」というのと、資料の「オットセイは耳介が小さい」というのは矛盾していることになる。
法則に従うなら、寒冷地仕様にできているオットセイは、「(アシカと比べて)鼻面が太く短く、耳介は小さい」でなければならない。こうなったら頭骨で比べてみるしかなかろう。
しかし、手元にはアシカの頭骨の資料しかない・・・・それから5ヶ月・・・やっとオットセイの頭骨を作図することができた!
それが挿絵で、上がオットセイで下がアシカだ
オットセイは、3個体のデータから平均値を出して描いたもの(残念ながらデータは全てミナミオットセイのもの)アシカは5個体のデータを参考にした。(カリフォルニアアシカ)
本当ならば、200個体くらい調べないといけないのだろうけれど、論文に載せるわけでもないし、俺の中では結論(相当な違い)が出たのでいいことにした。
頭骨というのは実際に描いてみると、細かい違いに気が付くことができる。

これほど頭骨が違うわけだから、見た目でも、鼻面が太く短いのがオットセイだ!
俺がガラパゴスで見てきた鰭脚類は、ぜ〜〜んぶアシカだと思いこむことにしていたのだが
・・・・????
ちなみに子どものアシカは鼻面が短い。これは子どもだから丸顔で・・・というより、「先祖帰り」であって、ライオンの子どもに斑点模様があるとか、俺ら日本人は赤ん坊の時におしりに蒙古斑がある。というのと同じだ。
つくづく、俺ら生き物は「法則に従っている(抗えない)」と思う。

分類学的に言うと、こいつらは
動物界 脊椎動物門 哺乳綱 食肉目 鰭脚亜目 アシカ科 となり、属が6属いる。
オタリア属、トド属、アシカ属、ミナミアシカ属、ミナミオットセイ属、オットセイ属
誤解を承知でおおざっぱに言うと、「適応放散」(http://www.kumagai-satoshi.com/kiso-shinka.htmを参照のこと)で言うところの「ナントカ」という生き物がオットセイだと思いねぇ!
北半球にいたのがオットセイで、南半球にいたのがミナミオットセイだ。
でもって北半球にいたオットセイの中から、カリフォルニア周辺の暖かい海にいたものが、耳を大きく鼻面を長く(アレンの法則)、下毛も薄く進化したのがアシカ。一部は更に南下してガラパゴス諸島に定着し、ガラパゴスアシカになる。
オットセイの中でも更に北に棲んでいて、寒くないように体に脂肪をつけて大きく進化したのが(ベルグマンの法則についてはhttp://blog.livedoor.jp/kumagai_satoshi219/archives/50288293.htmlを参照のこと)トド。
ミナミオットセイの中でも、ガラパゴス諸島の一番北の島であるヘノベサ島に定着したのが、ガラパゴスオットセイであり、南米の海岸にのみべったり張り付いて威張っていたのがオタリア・・・(この違いは進化ほど顕著ではなく、地域個体差に近いように思うけれど)という考え方でいいのだろう。
じゃ、「アシカ科」ではなくて「オットセイ科」だと思うんだけれど、俺が言ってもどうにもならねぇことだ。

カワイソウだから、水族館の専門家の名前は削除した。
おそらく「アレンの法則」という言葉は知っているのだろうと思う。だけどそれが、目の前にいるアシカに繋がっていないのだろう。

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この記事へのコメント
また親ばか話で恐縮ですが、
以前、娘にに『アシカとアザラシ』の違いを
聞かれたことがあります。
アシカとオットセイじゃなくて良かった。
Posted by マイセン at 2006年09月09日 08:46
アシカとアザラシは、「そばとうどん」くらい違います。
アシカとオットセイは、「ざるそばともりそば」あるいは「冷や麦とそ〜めん」の違いでしょうか?
Posted by くまがい at 2006年09月09日 14:38