自閉症との関連も考えられている母性や社会性のオキシトシンが、出産時には胎児のGABA神経を一時的に抑制性に変えているようです。
幼若期には興奮性ですが、GABA神経は脳内の代表的な抑制性神経で、その抑制性とオキシトシンが出産時だけでなく関係すると考えるといろいろ納得出来るような。
母性や社会性のオキシトシンと対なのが父性、攻撃性や不安とも関係する抗利尿ホルモンのバゾプレッシン、こちらは抑制性を弱め脳を興奮度を上げるのでは。
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http://www.mt-pharma.co.jp/general/science/06/2006_12_15/sci_jsumm.htm
母体から分泌されるオキシトシンは出産時の胎児の脳内GABA作動性神経伝達を興奮性から抑制性に一時的に切り替える
Maternal Oxytocin Triggers a Transient Inhibitory Switch in GABA Signaling in the Fetal Brain During Delivery
胎児のニューロンを出産に備えさせるために、母体と胎児の間で行われるシグナル伝達のメカニズムについて報告する。未熟なニューロンでは、γ‐アミノ酪酸(GABA)が主要な興奮性神経伝達物質として機能している。今回われわれは、出産前の短時間の間、細胞内の塩化物イオン濃度が一過性に減少し、GABA作動性ニューロンが興奮性から抑制性に切り替わることを見出した。このような現象は、母体から分泌され分娩に不可欠なホルモンであるオキシトシンによって惹起された。In vivoで、出産前にオキシトシン受容体アンタゴニストを投与すると、胎児ニューロンにおけるGABA作用の切り換えは阻害され、酸素欠乏症状がより悪化した。したがって、母体から分泌されるオキシトシンは胎児のニューロンを抑制し、出産時の損傷に対する抵抗性を増強すると考えられる。
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http://www.kanazawa-u.ac.jp/university/administration/prstrategy/eacanthus/0702/images/08_pdf_01.pdf
相手を認識し記憶するのに必要なCD38分子の機能を発見
金沢大学医学系研究科教授
金沢大学21世紀COEプロジェクト「革新脳科学」拠点リーダー 東田 陽博
本発見の展望 CD38分子の機能低下がオキシトシン分泌を低下させマウスの社会行動異常を生じ、機能回復によりその行動異常の改善を証明した。したがって、ヒトでも、CD38が自閉症を含む発達障害者の社会行動異常の原因の一つであることが十分考えられる。
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http://wwwsoc.nii.ac.jp/psj/jpsj/06810/068100355.pdf
脳の性分化
佐久間康夫 日本医科大学大学院医学研究科システム生理学分野
細胞レベルでの脳の性分化
視床下部の主要な興奮性伝達物質はmethyld-aspartate(NMDA)受容体を活性化するグルタミン酸である.活性化したNMDA 受容体はCa2+ の細胞内への流入を起こし,アポトーシスやシナプス可塑性の変化を招く.また,成熟した脳では抑制性伝達物質として働くγ-アミノ酪酸(GABA)は幼弱なニューロンでは興奮性に働く.
幼弱なニューロンではCl −イオンを取り込む1 型Na+-K+-2Cl −共輸送分子(NKCC1)が存在する一方, K + とCl −を運び出すK + - C l −共輸送分子(KCC2)の発現が少ないため,細胞内Cl −濃度が高く,GABA 受容体が活性化するとCl −の流出による脱分極が起こるためである.
エストロゲンが細胞の成育を促しNKCC1 の発現を抑えればアポトーシスは抑制される[59].GABAA 受容体β3サブユニットの遺伝子をノックアウトしたマウスで視床下部腹内側核の体積が増加した[60]のはGABA 作用の遮断によるアポトーシスの阻止によるとも解釈できる.ただし,胎生13 日には腹内側核をとりまく部位でGABA の合成が起っているのに対し,腹内側核にGABA 陽性細胞が現れるのは出生時であること,野生型マウスではこの核の外側腹部に局在が限られるエストロゲン受容体α陽性ニューロンの分布がノックアウトマウスでは広く分散することに基づき,GABA がニューロンの移動を調節する可能性も提唱されている[ 6 0 ].
G A B A はイオンチャネルであるGABAA 受容体ばかりではなく,三量体G タンパク共役型のGABAB を介してニューロンの移動を抑制することがマウス胎仔視床下部の培養系で示されており[61],GABA は複数の経路で視床下部の形態形成に関わるらしい.活きたニューロンの移動にGABA が実際に影響をおよぼすことは,トランスジェニック法で可視化されたGnRH ニューロンで示されている[62].この報告ではGABAA の遮断により培養脳切片中のGnRH ニューロンの動きが亢進し,本来の移動経路を逸脱することが示された.
他にもCl −ポンプ/ATPase,Na+,K+-ATPaseなどの活性化はニューロンのアポトーシスをまねく.キナーゼ系の活性化により,CREB の燐酸化など細胞の生存を促す経路の活性化の可能性もある.これらのイオンチャネルや酵素の転写翻訳がエストロゲンにより時期・脳部位特異的に行われて,部位特異的な脳の性差が生じると考えられる
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http://web.kanazawa-u.ac.jp/~med63/shimin_hiroba/shimin_hiroba2.htm
「オキシトシン(下垂体後葉ホルモン)」の新しい機能:相手を信用する気持ちを増加させる。」
Kosfeldその他、Nature 435巻673-676、2005年
オキシトシンが向社会性、人と人との接近行動を促進する作用を持っていることを示している。
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http://reproduction.jp/jrd/jpsum/vol49/49-2.html
オキシトシンはブタ卵胞に及ぼすインスリン様成長因子-Iの影響を左右する
(J. Reprod. Dev. 49: 141-149, 2003)
すなわち、IGF-Iはブタ卵胞サイズと卵胞細胞の分裂を亢進し、プロゲステロン、エストラジオール、IGFBP-3、インヒビンAとインヒビンBの分泌およびPCNAとMAPK/ERK1,2を介した細胞内機構に影響するが、オキシトシンはこれを左右する。
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