2008年01月31日

自閉症でも話題になったオキシトシンが出産時に胎児のGABA神経を抑制性に変えること

自閉症との関連も考えられている母性や社会性のオキシトシンが、出産時には胎児のGABA神経を一時的に抑制性に変えているようです。

幼若期には興奮性ですが、GABA神経は脳内の代表的な抑制性神経で、その抑制性とオキシトシンが出産時だけでなく関係すると考えるといろいろ納得出来るような。

母性や社会性のオキシトシンと対なのが父性、攻撃性や不安とも関係する抗利尿ホルモンのバゾプレッシン、こちらは抑制性を弱め脳を興奮度を上げるのでは。
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http://www.mt-pharma.co.jp/general/science/06/2006_12_15/sci_jsumm.htm
母体から分泌されるオキシトシンは出産時の胎児の脳内GABA作動性神経伝達を興奮性から抑制性に一時的に切り替える

Maternal Oxytocin Triggers a Transient Inhibitory Switch in GABA Signaling in the Fetal Brain During Delivery

胎児のニューロンを出産に備えさせるために、母体と胎児の間で行われるシグナル伝達のメカニズムについて報告する。未熟なニューロンでは、γ‐アミノ酪酸(GABA)が主要な興奮性神経伝達物質として機能している。今回われわれは、出産前の短時間の間、細胞内の塩化物イオン濃度が一過性に減少し、GABA作動性ニューロンが興奮性から抑制性に切り替わることを見出した。このような現象は、母体から分泌され分娩に不可欠なホルモンであるオキシトシンによって惹起された。In vivoで、出産前にオキシトシン受容体アンタゴニストを投与すると、胎児ニューロンにおけるGABA作用の切り換えは阻害され、酸素欠乏症状がより悪化した。したがって、母体から分泌されるオキシトシンは胎児のニューロンを抑制し、出産時の損傷に対する抵抗性を増強すると考えられる。
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http://www.kanazawa-u.ac.jp/university/administration/prstrategy/eacanthus/0702/images/08_pdf_01.pdf
相手を認識し記憶するのに必要なCD38分子の機能を発見
金沢大学医学系研究科教授
金沢大学21世紀COEプロジェクト「革新脳科学」拠点リーダー 東田 陽博

本発見の展望 CD38分子の機能低下がオキシトシン分泌を低下させマウスの社会行動異常を生じ、機能回復によりその行動異常の改善を証明した。したがって、ヒトでも、CD38が自閉症を含む発達障害者の社会行動異常の原因の一つであることが十分考えられる。
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http://wwwsoc.nii.ac.jp/psj/jpsj/06810/068100355.pdf
脳の性分化
 佐久間康夫 日本医科大学大学院医学研究科システム生理学分野

細胞レベルでの脳の性分化

視床下部の主要な興奮性伝達物質はmethyld-aspartate(NMDA)受容体を活性化するグルタミン酸である.活性化したNMDA 受容体はCa2+ の細胞内への流入を起こし,アポトーシスやシナプス可塑性の変化を招く.また,成熟した脳では抑制性伝達物質として働くγ-アミノ酪酸(GABA)は幼弱なニューロンでは興奮性に働く.

幼弱なニューロンではCl −イオンを取り込む1 型Na+-K+-2Cl −共輸送分子(NKCC1)が存在する一方, K + とCl −を運び出すK + - C l −共輸送分子(KCC2)の発現が少ないため,細胞内Cl −濃度が高く,GABA 受容体が活性化するとCl −の流出による脱分極が起こるためである.

エストロゲンが細胞の成育を促しNKCC1 の発現を抑えればアポトーシスは抑制される[59].GABAA 受容体β3サブユニットの遺伝子をノックアウトしたマウスで視床下部腹内側核の体積が増加した[60]のはGABA 作用の遮断によるアポトーシスの阻止によるとも解釈できる.ただし,胎生13 日には腹内側核をとりまく部位でGABA の合成が起っているのに対し,腹内側核にGABA 陽性細胞が現れるのは出生時であること,野生型マウスではこの核の外側腹部に局在が限られるエストロゲン受容体α陽性ニューロンの分布がノックアウトマウスでは広く分散することに基づき,GABA がニューロンの移動を調節する可能性も提唱されている[ 6 0 ].

G A B A はイオンチャネルであるGABAA 受容体ばかりではなく,三量体G タンパク共役型のGABAB を介してニューロンの移動を抑制することがマウス胎仔視床下部の培養系で示されており[61],GABA は複数の経路で視床下部の形態形成に関わるらしい.活きたニューロンの移動にGABA が実際に影響をおよぼすことは,トランスジェニック法で可視化されたGnRH ニューロンで示されている[62].この報告ではGABAA の遮断により培養脳切片中のGnRH ニューロンの動きが亢進し,本来の移動経路を逸脱することが示された.

他にもCl −ポンプ/ATPase,Na+,K+-ATPaseなどの活性化はニューロンのアポトーシスをまねく.キナーゼ系の活性化により,CREB の燐酸化など細胞の生存を促す経路の活性化の可能性もある.これらのイオンチャネルや酵素の転写翻訳がエストロゲンにより時期・脳部位特異的に行われて,部位特異的な脳の性差が生じると考えられる
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http://web.kanazawa-u.ac.jp/~med63/shimin_hiroba/shimin_hiroba2.htm
「オキシトシン(下垂体後葉ホルモン)」の新しい機能:相手を信用する気持ちを増加させる。」
Kosfeldその他、Nature 435巻673-676、2005年

オキシトシンが向社会性、人と人との接近行動を促進する作用を持っていることを示している。
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http://reproduction.jp/jrd/jpsum/vol49/49-2.html
オキシトシンはブタ卵胞に及ぼすインスリン様成長因子-Iの影響を左右する
(J. Reprod. Dev. 49: 141-149, 2003)

すなわち、IGF-Iはブタ卵胞サイズと卵胞細胞の分裂を亢進し、プロゲステロン、エストラジオール、IGFBP-3、インヒビンAとインヒビンBの分泌およびPCNAとMAPK/ERK1,2を介した細胞内機構に影響するが、オキシトシンはこれを左右する。
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2008年01月30日

興奮性であることもあるGABA、その変調が臨界期やてんかんなどに影響するのでは?

抑制性の代表であるGABA神経も幼若期や神経障害後には興奮性であることもあるようです。

このGABA神経の興奮性と脳の臨界期が関係し、自閉症スペクトラムにありそうな臨界期があるものの変調にも関係してくるのではと。

また、自閉症の人の30%ぐらいおこるてんかんや過剰シナプスの除去の変調にも、この抑制性の神経が興奮性に振れることと関係するかも。
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http://www.md.tsukuba.ac.jp/basic-med/molneurobiol/brain/seika/seika_a02.html
A02班 「脳の発達生理機能の研究」

・福田敦夫班員は、発達過程の大脳皮質神経細胞の細胞内Cl- 濃度をスライスパッチクランプ法とイメージング法で計測し、さらにCl-トランスポーターのKCC2(外向き)、NKCC1(内向き)の発現をsingle-cell multiplex RT-PCR法、in situ hybridization法を用いて観測し、それらの関係を解析した。その結果、脳室帯の神経幹細胞は神経特異的なKCC2を欠き非常に高い細胞内Cl- 濃度値を示すが、分化・移動による皮質層構造の形成過程でNKCC1/KCC2発現バランスの変化によりCl- 濃度値が低下しGABA応答が脱分極から過分極に逆転することを見出した。この結果は、従来知られていた発達にともなうGABA応答の変化はCl-トランスポーターの変換によることを示したものである。
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http://www.nips.ac.jp/news/2006/20070320/
ストレスによる神経細胞特異的カリウムークロール共役担体(KCC2)の脱燐酸化・内在化とGABA抑制作用の機能消失
 発達生理学系 生体恒常機能発達機構研究部門

神経細胞特異的カリウムークロール共役担体(KCC2)は神経細胞内Cl-濃度の恒常性を保つ重要分子であり、Clチャネルを開く抑制性伝達物質であるGABAおよびグリシン応答を規定している。

未熟脳および各種神経障害後にはKCC2の発現が低下し、GABAは脱分極応答をしめすことに近年注目が集められている。特に障害後には急速なKCC2の機能低下が起こり、蛋白発現以外の機能制御の存在が示唆されていた。今回、培養海馬神経細胞を用いて、種々の神経細胞ストレス(過酸化酸素〈注、過酸化水素?〉、BDNF, 過剰興奮)によって、蛋白およびmRNAの低下消失に先行してKCC2の脱リン酸化が起こることが判明した。この変化に伴い、細胞内Cl-濃度は2段階(1時間以内、6時間以降)で増加をしめすことが判明した。障害後の脱リン酸化はKCC2の細胞膜発現を減少させることが判明した。この結果、GABAは障害培養神経細胞に脱分極を惹起し、細胞死を促進することが判明した。脱リン酸化酵素阻害剤によって、ストレスによる初期(蛋白発現減少以前)の細胞死は優位に抑制された。また、KCC2を強制発現した神経細胞においては、早期および後期いずれの時期においても優位にGABAによる細胞死を抑制した。これらの結果から、種々の神経障害によって脱燐酸化によるKCC2の細胞内在化、その後の蛋白発現自体の消失によってGABAは細胞脱分極―細胞死を惹起することが判明した。

Oxidative stress (H2O2) and the induction of seizure activity (BDNF) and hyperexcitability (0 Mg2+) resulted in a rapid dephosphorylation of KCC2 that preceded the decreases in KCC2 protein or mRNA expression.
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http://www.jstage.jst.go.jp/article/nl2001jsce/2003/109/109_4/_pdf/-char/ja/
 脳内エストロゲン受容体
 林 糸眞治 横浜市立大·院総合理学·内分泌学

(3)ステロイドホルモンとその受容体以外の関与
 脳の性分化の時期にステロイドホルモンがその受容体と結合して作用することが重要であるという認識は一致しているが、ステロイドホルモンがどのような機構で分化に関与しているかについてはいろいろな検討がなされている。これらの中で、McCarthyらは、脳内抑制性アミノ酸であるガンマアミノ酪酸(GABA)が中間物として重要な役割を果たしていることを示唆する結果を得た。

 彼女らによれば、GABAは新生仔期の脳内では興奮性に働くという。抑制性から興奮性への転換はラットの生後6日令から10日令の間に完了するという。この時期はちょうどラットの脳の性分化が決定する時期に当たる。この場合は臨界期の体内エストロゲンレベルが高いとGABA生産が増大し、細胞膜上のGABAA受容体のCl-イオンを細胞外に放出し膜を脱分極化するように働く。Cl-が細胞外に出ることによって入れ代わりにCa++の細胞内取込が促進し、CREB kinaseが働いてCREBのリン酸化が促進し、CREBの活性化によってタンパク合成が盛んになり、結果として構造タンパクなどの合成が促進され、雄型の脳形成に働く。
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http://www.jst.go.jp/kisoken/crest/report/heisei18/pdf/pdf13/13_1/009.pdf
「発達期および障害回復期における神経回路の再編成機構」
鍋倉 淳一(自然科学研究機構生理学研究所 教授)

また、虚血・再還流時の障害因子である酸化ストレスによって、細胞内Cl-くみ出し主要分子であるKCC2 が障害1 時間以内に脱燐酸化・内在化が起こり、その後数時間で蛋白自体の消失によって、障害細胞ではGABA は過分極から脱分極作用へスイッチすることが判明した。このGABA 作用の変化が障害後の活動領域の拡大の原因の一つである可能性について今後検討を加える予定である。また、脱分極GABA が特徴的な幼若期においてGABA が大脳皮質細胞の移動を制御しており、幼若期において皮質損傷によってKCC2 発現低下、NKCC1発現上昇により[Cl-]i 上昇がおこり、その結果、異常な細胞移動がおこりmicrogyrus と呼ばれる皮質形成異常が形成されることを明らかにした。これはCl-ホメオスタシスの未熟型への回帰と考えられたが、本来の移動終了完了前までが臨界期と考えられた。未熟脳に高発現し発達減少するNeuronal Ca2+ sensor 1 分子が障害細胞では再発現するなど、障害後には未熟期神経細胞特性が再現することが判明した。また、回路レベルにおける特徴的再編である過剰シナプスの除去にはP/Q 型Ca2+チャネルやGABA 伝達が関係している可能性が各々の遺伝子改変動物の小脳登上線維をモデルに明らかになりつつある。
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2008年01月29日

HB-EGFが臨界期のキーなので、自閉症は臨界期のあるものの変調を多く抱えるのでは?

GSK3β、PDS95、nNOSなどの結合により産生が調節される一酸化窒素、グリア細胞などからのスーパーオキシドなどの活性酸素、これらのバランスで分解を調節される細胞外マトリクスのヘパラン硫酸、でそこからまたGSK3βのオンオフにフィードバックされるのが生殖・生存の基本回路で、ここのヘパラン硫酸の分解の過剰過少になるような偏りが自閉症スペクトラムなのだとおもいます。

そして、この基本回路が臨界期にも関係し、自閉症スペクトラムの症状を生む偏りの原因によってはいろいろな臨界期を持つものも変調する。

脳の性差を生む変化も周産期頃に臨界期があるもの、アスペルガーの人に自分の性に違和感を感じる人が多そうなのも、その辺からくるものなのでは。

その臨界期のキーになるのが、HB-EGFなのでは?
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http://www.jst.go.jp/kisoken/presto/complete/cellfunction/scholar/3/pdf/05.pdf
膜型増殖因子の持つ細胞増殖のアクセル機能とブレ−キ解除機能の 分子機構の解明
東山 繁樹
研究のねらい 細胞が外界から様々なリガンド刺激を受け細胞内に情報を伝達する仕組みは、各リガンド特異的受容体の活性化とその下流分子のリン酸化リレーとして明らかにされてきている。その中で、シグナルの多様化を作り出す一つの分子機構にEGF受容体(EGFR)のトランス活性化がある。

このEGFRのトランス活性化にはEGFRのリガンドである膜型増殖因子EGFファミリー,特にHeparin-binding EGF-like Growth Factor (HB-EGF)が細胞膜表面上で膜型メタロプロテアーゼADAMsにより切断される“shedding”反応がキーステップである(Figure1)。

このsheddingによって生じる遊離型細胞外ドメインは増殖因子としてEGFレセプターを活性化し、続いて細胞内のRas-Raf-MAPキナーゼカスケードを活性化して増殖シグナルを惹起する。

一方、shedding後に細胞膜に残るC末端断片ペプチド(CTF)の役割についてその機能は全く不明であった。 我々はHB-EGF-C末端断片ペプチド(HB-EGF-CTF)が速やかに核内に移行し、転写抑制因子Promyelocytic leukemia zinc finger protein (PLZF)と結合しこれを核外に汲み出す反応を誘導することを見い出した。

これにより、HB-EGF-CTFが遺伝子転写抑制解除機能を持つことを明らかにし、新たなシグナル分子として機能すると共に、新たな細胞増殖シグナル経路が存在することを示した(J. Cell Biol. 163, 489-502, 2003)。

これまでの我々の実験結果は、細胞増殖は増殖因子-受容体シグナルによる増殖アクセル機能と並行して、増殖ブレ−キ解除の機構が作動することを示しており、これによりスムースな細胞周期の進行がもたらされると考えられる。しかし、このブレ−キ解除の分子機構は全くと言っていい程不明のままである。本研究では膜型増殖因子が持つ増殖アクセル機能と増殖ブレ−キ解除の巧妙な分子機構を明らかにし、細胞増殖分子機構の新たな概念を創出することを研究のねらいとした。

研究成果
2)HB-EGF-CTFによる細胞周期および周期関連因子の制御
(1) HB-EGF-CTF とPLZF の細胞周期進行に伴う細胞内局在変化:
(2) PLZF によるcyclin Aの発現抑制の解除:
(3) PLZF によるc-mycの発現抑制の解除:

3)HB-EGF-CTFシグナルの破綻と病態
(1) 遺伝子改変マウスの作製から:
また、これまでにproHB-EGFのsheddingが皮膚創傷治癒に重要であること報告しており (J. Cell Biol. 151, 209-219, 2000)、これをさらに検討するために、 Hb-egf lox/lox マウスとKeratin 5-Cre マウスとの交配により表皮細胞特異的にHb-egf遺伝子を欠損させたマウスを作製し,創傷治癒過程におけるHB-EGFの役割を解析した。Figure 10と11に示す様に、Hb-egf遺伝子欠損マウスでは背中の傷の治癒速度が創傷後7日目で有意差を持って遅延することが示された (文献4)。
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http://www.biotoday.com/view.cfm?n=20774
EGF受容体は再ミエリン化を促進する

2007-07-10 - 新たな研究の結果、EGF受容体(EGFR)はオリゴデンドロサイト(乏突起膠細胞、oligodendrocyte)の再生と髄鞘再形成(再ミエリン化)を促進すると分かりました。
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http://camomile.env.kyoto-u.ac.jp/ehormone/seika/2004youshi/youshi/PA03/PA03-19.pdf
研究課題 :魚類、両生類、哺乳類の不可逆化の臨界期探索(計画研究 A03)
研究代表者:井口 泰泉(岡崎国立共同研究機構・統合バイオサイエンスセンター・教授)

3.実験結果
   エストロゲンによって発現が制御されている成長因子を調べるため、卵巣を摘出したマウスに17b-estradiol を投与し、経時的に成長因子の発現をリアルタイム定量PCR で調べたところ、EGF 様成長因子mRNA の発現が急激に上昇した。新生仔DES 処理したマウスの膣でも同様にEGF 様成長因子の発現は対照群と比べて高く、またその受容体であるEGF 受容体、及びerbB2 のリン酸化が認められた。次に、EGF の作用を調べるためにEGF を卵巣を摘出したマウスに投与したところ、膣でエストロゲン受容体のリン酸化が誘導された。新生仔DES 処理したマウスの膣でも、エストロゲン受容体をリン酸化するMAPK やAKT 経路のシグナル分子のリン酸化とともに、エストロゲン受容体がエストロゲン非存在下でリン酸化されていた。EGF 受容体、erbB2、エストロゲン受容体の阻害剤を投与することによって、上皮基底細胞の増殖活性の低下や上皮の厚さの減少が誘導された。
4.結論
   エストロゲン標的器官の腫瘍化には成長因子やその受容体、そしてエストロゲン受容体の関与が示唆されている。しかし多くは細胞レベルでの研究によっているため、それぞれの因子の関係を関連づけることはできていなかった。本実験では、マウス新生仔エストロゲン投与モデルを用いて、生体の組織レベルでの研究を行うことによって、成長因子→受容体チロシンキナーゼの活性化→エストロゲン受容体のリン酸化→成長因子の発現→…という、成長因子とエストロゲン受容体のアクチベーションループ構造が、エストロゲン非依存の細胞増殖・分化に重要であることを明らかにした。
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http://www.jst.go.jp/kisoken/crest/eval/jigo/20050527/8_naibunpi/naibunpi_02.pdf
1.研究課題名 「内分泌かく乱物質の動物への発生内分泌学的影響」
2.研究代表者 井口 泰泉 (自然科学研究機構 岡崎統合バイオサイエンスセンター 教授)

生殖器官の細胞増殖・分化には、エストロゲンと成長因子のクロストークが存在する事が知られている。間質を介する上皮細胞増殖・分化の既存概念とは異なり、女性ホルモン受容体(ER)による成長因子(EGF)発現、EGF受容体リン酸化・細胞内情報伝達系の活性化、ERのリン酸化による成長因子の発現、という活性化ループが存在する事を明らかにした。間質組織由来因子に依存せず上皮組織内で完結しており、エストロゲン非依存的な異常な細胞増殖の原因は上皮・間質相互作用の破綻である事が示唆された。

外因性エストロゲン刺激に対する臨界期は器官によって異なる事、同一器官でも形態学的異常毎に臨界期が異なる事、遺伝子発現パターン解析で臨界期を評価出来る事、を明らかにした。エストロゲン応答遺伝子の発現は、組織の発達時期に応じて変化しており、マウスでは生後5日目前後で、新生仔型と成熟型に分れる事を明らかにした。
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2008年01月27日

ノックアウトマウスが統合失調症様になるHB-EGF、携帯電話の電磁波ででるROSで切断活性化されること

ヘパラン硫酸に関係するHB-EGFのノックアウトマウスで統合失調症様の症状がでるようです。そしてそのHB-EGFは携帯電話の電磁波でも切断がおこるという記事、それにはROS(reactive oxygen species:活性酸素種)の活性化が関係している。

ROSを下げすぎるのも問題がでるなとおもったのは、サプリメントで広い活性酸素種を解毒する白金ナノコロイドの連用で何人かの女性にでた肌や関節のトラブル、たぶんROSの解毒しすぎで表皮創傷治癒などの抑制になったのかと。

ダウン症の人に心臓の問題があることが多いのは、ROSの解毒するSODの染色体が多いため、その影響がでているのでは?

GSK3βが要で発生分化にもかかわる基本回路を、生存の大事なところにアレンジして使っているとおもいますが、その上流のTLR4からの信号も、その下流の一酸化窒素に分解されるヘパラン硫酸、そしてこのHB-EGFも。

そしてこのヘパラン硫酸の分解が過剰過少のどちらかに振れているのが自閉症スペクトラムで、その状態により脳の再構成も影響されるのではとおもいます。

それをコントロールするには、一酸化窒素と活性酸素の状態の調節をまず考えるのが一番かと。

記憶がよくて暑がりのタイプの息子に飲ませて良い感触を得ている抗酸化作用とiNOSの抑制のウコン、スペクトラムで暑がりの人には向いていて、そこの過剰を抑えることで予後にも響いてくるのではとおもいます。
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http://cell-biology.biken.osaka-u.ac.jp/MekadaLabHP/Iwamoto/CC84F81A-39FD-45A2-9AA5-4107A82AEF30.html
Iwamoto’s Page
4 HB-EGFって増殖因子?

以下に挙げるような生理的な過程でHB-EGFは「増殖因子」ではない、別の働きをしていることがわかってきました(図3参照)。

心臓における心筋の生存あるいは収縮性の維持(Iwamoto et al., 2003 PNAS)
心臓弁発生過程における細胞増殖の抑制(Iwamoto et al., 2003 PNAS; Jackson et al., 2003 EMBO J)
表皮創傷治癒や目蓋形成過程における細胞運動性の促進(Shirakata et al., 2005 JCS; Mine et al., 2005 Development)
肺胞形成過程における細胞増殖の抑制(Minami et al., in press DD)
受精卵の着床における細胞接着の促進(Xie et al., 2007 PNAS)

このように、今まで調べた限りでは、HB-EGFが増殖を促進するような生理的過程は見出されておりません。もしかすると(現時点ではまだ言い過ぎかもしれませんが)、HB-EGFは普段は「増殖因子としては働かないよう」に何らかのしくみが働いていて、癌などの病変によってこのしくみがこわれて、病気の時にはHB-EGFが「増殖因子」として暴走するようになるのかもしれません。このしくみのひとつが、HB-EGFの細胞外マトリックスHSPGとの相互作用の中にあるのではないか、と現在私はにらんでいます(後述)。
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http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?Db=pubmed&Cmd=ShowDetailView&TermToSearch=17456048
Mechanism of short-term ERK activation by electromagnetic fields at mobile phone frequencies.
Friedman J, Kraus S, Hauptman Y, Schiff Y, Seger R.

We found that the first step is mediated in the plasma membrane by NADH oxidase, which rapidly generates ROS (reactive oxygen species). These ROS then directly stimulate MMPs (matrix metalloproteinases) and allow them to cleave and release Hb-EGF [heparin-binding EGF (epidermal growth factor)]. This secreted factor activates the EGF receptor, which in turn further activates the ERK cascade. Thus this study demonstrates for the first time a detailed molecular mechanism by which electromagnetic irradiation from mobile phones induces the activation of the ERK cascade and thereby induces transcription and other cellular processes.

PMID: 17456048 [PubMed - indexed for MEDLINE]
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http://cas.eedept.kobe-u.ac.jp/~seeds/medicine/takekida1.html
◆黄体形成と退縮の過程におけるHB-EGF発現とジャクスタクライン機構
(教官等名)武木田 茂樹

2. 現在の研究テーマ
研究の視点と内容のポイント

黄体形成、退縮のメカニズムは未だ不明な点が多い。

EGF(Epidormal Growth Factor)ファミリーのひとつであるHB-EGF(Heparin―Binding EGF-like growth factor)は顆粒膜細胞ではその発現を認めず、黄体細胞においてその発現を認めることがわかった。このことは、HB-EGFが黄体形成、維持、退縮において重要な生物作用を有することが示唆される。
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http://www.jst.go.jp/pr/info/info172/index.html
活性酸素が炎症・アレルギー反応を活性化する新たな仕組みの発見
−感染防御(自然免疫システム)における新たな細胞内分子機構−

 JST(理事長:沖村憲樹)の研究チームは、活性酸素が病原体感染によって起こる炎症やアレルギー反応を促進する作用を持つこと、その活性酸素の作用を受けるターゲットがASK1(Apoptosis signal-regulating kinase 1)*1という細胞内タンパク質リン酸化酵素であることを突き止めた。
【論文名】
「ROS-dependent activation of TRAF6-ASK1-p38 pathway is selectively required for TLR4-mediated innate immunity」
(活性酸素依存的なTRAF6-ASK1-p38経路の活性化がTLR4を介する自然免疫に特異的に必要である)
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http://www.tmig.or.jp/jsbg/simpo26/KondoT.htm
酸化ストレス性細胞障害を防御するシグナル伝達と細胞内アンチオキシダントによる制御
 近藤宇史(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科・原爆後障害医療研究施設・分子情報制御研究分野)

ROSは細胞内小器官を傷害し、直接アポトーシスへと向かうASK-1, JNK, p38MAPKなどのシグナルを活性化する。そこで各細胞内小器官は独自のアンチオキシダントを具備している。例えば、核のアンチオキシダントと核の酸化ストレスはアポトーシスシグナルを調節しており、小胞体も酸化ストレスによって本来のタンパク質の合成と品質管理に対するストレスとして独自の反応を示す。

グルタチオン(GSH)は分子量307のトリペプチドで細胞内の非タンパク性硫黄の90%以上を占める。あらゆる細胞内に高濃度(1mM以上)に存在して、多彩な生理的機能を有している。GSHの代謝は合成と細胞外への輸送によってコントロールされている。

一方、ROSはレドックスを働かせる起点となり、細胞内情報伝達の活性化を引き起こすことで抗アポトーシス作用を示す。レドックスは細胞機能全般の制御に関連する重要な仕組みである。転写因子による遺伝子発現は、転写因子タンパクのDNA結合を制御するレドックスが調節している。情報伝達に働く多くのキナーゼはmRNAの発現、タンパクの発現と、翻訳後の酵素活性の修飾で制御されるが、酵素活性の制御はレドックスによってなされる。具体的には、キナーゼの活性中心に存在するシステインのSH基の状態によって活性型か不活性型かに調節されている。レドックス制御に関連するのは、グルタチオン(GSH)とチオレドキシン(TRX)などである。
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2008年01月25日

ヘパリン結合性EGF様増殖因子のノックアウトマウスは、統合失調症モデルマウス

GSK3β、PDS95、nNOSなどの結合により産生が調節される一酸化窒素、グリア細胞などからのスーパーオキシドなどの活性酸素、これらのバランスで分解を調節される細胞外マトリクスのヘパラン硫酸、自閉症や統合失調症、またその他の疾患と関係あるルートだと注目しています。

そのヘパラン硫酸と関係ありそうなHB-EGF(ヘパリン結合性EGF様増殖因子)をノックアウトしたマウスが統合失調症様の病態を示すようで、自閉症にも関係してるのだろうとおもいます。
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http://jstshingi.jp/abst/p/07/15/chubu10.pdf
JST「新技術説明会」2007年11月2日
原英彰 岐阜薬科大学 薬効解析学研究室

統合失調症様モデルマウスの紹介
本技術の概要
ヘパリン結合性EGF 様(Heparin binding EGF-like growth factor: HB-EGF)増殖因子を前脳選択的に欠損させたマウスは、統合失調症モデルマウスとして利用でき、新薬開発のための病態解明並びに薬効スクリーニングに応用できる。

従来技術・競合技術との比較
本マウスは統合失調症様の病態を示すが、陰性症状並びに陽性症状ともに併せ持ったモデルであり、この様なモデルは見当たらない。

新技術の特徴
本マウスは、
. 統合失調症様の陽性症状を示す。
. 統合失調症様の陰性症状を示す。
. 認知障害を示す。
. 本マウスは統合失調症の仮説であるドパミン仮説、グルタミン酸仮説、神経発達障害仮説全てに該当する。

EGFと統合失調症EGFと統合失調症
1. 近年、神経栄養因子やサイトカインと精神疾患との関連が注目されている。
2. 統合失調症患者の死後脳においてEGFの低下およびEGF受容体の増加が報告されてる1) 。
3. 統合失調症患者の血中のEGF濃度の低下が報告されている1)。
4. 新生児期にEGFを皮下投与したラットでは、PPIの
低下や社会性行動の低下が認められ、また中枢興奮薬への感受性が増加する2)。
     ↓
EGFのシグナルの変化が統合失調症病態の発現に関与!?
1) Futamura et al. 2002, 2) Furamura et al. 2003

HB-EGFと統合失調症
1. HB-EGFはEGFファミリーに属し、大脳皮質、海馬をはじめとする高次機能を司る中枢神経系に幅広く発現している。
2. HB-EGFはドパミン作動性神経の発達に関与している1)。
3. HB-EGFは主としてEGFと同様にEGF受容体に結合しその作用を発揮する。

         1) Farkas et al. 2002

実験結果のまとめ
1)HB-EGF KOマウスは統合失調症様の行動異常およびモノアミン変化が認められた。
2)HB-EGF KOマウスにおいてスパインの形態変化およびその関連タンパクであるPSD-95、NR1の発現の減少が認められた。

結論
以上、HB-EGF KOマウスは統合失調症の新しい病態モデルとなりうることが示唆され、新薬開発のツールとして応用できる。
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http://www.ccr.niigata-u.ac.jp/kyodokenkyu/annual/vol7/seikahoukoku/7014.pdf
神経栄養因子で作製した統合失調症モデルの分析・評価・応用
那波宏之 (新潟大学脳研究所) 二村隆史(三菱ウェルファーマ株式会社)

1. 研究の概要 神経栄養因子は、神経細胞の一生を通じて、前駆細胞の増殖、分化、発達、神経伝達、細胞死などを制御している重要な分子群である。これまで多様な神経栄養因子の生理活性のうち、特に神経発達過程におけるその活性と生理機能について我々は研究を重ねてきた。前駆細胞から生み出された直後の神経細胞は未熟で、神経伝達物質はもちろんのこと、機能的なシナプスなどもっていない。その成長過程で神経栄養性因子などを介して選択的に獲得されると考えられる。多くの神経栄養因子のうち脳由来神経栄養因子(BDNF)や上皮成長因子(EGF)には、GABA作動性抑制ニューロンやドパミン作動性神経の発達を調節することが報告されていた。従って、これら因子の脳内シグナル異常が、脳発達やシナプス可塑性が障害されている統合失調症などの精神疾患に関与するであろうと考えている。この仮説に基づき神経栄養因子シグナル阻害剤が精神病治療薬として応用できるかを、種々の動物モデルで検討した。

2. 成果の概要 1)EGF投与、2)イボテン酸による海馬障害、3)polyI:C-RNA投与で得られた各種の統合失調症動物モデルを用いて、これらモデルにおける上皮成長因子シグナルの関与を、上皮成長因子受容体の活性阻害剤の脳室内投与でのプレパルスインヒビションの改善効果を指標に評価、比較してみた。従来の方法にのっとりラットに対し1)EGF皮下投与、2)イボテン酸による海馬障害を生後の新生仔期に実施し、3)polyI:C-RNA投与を妊娠後期ラットに行った。子どもの成長後2ヶ月齢においてプレパルスインヒビションの反応を計測したところ、有意な障害が観察された。これら3種類の統合失調症モデル動物に上皮成長因子受容体の活性阻害剤を脳室内に持続投与した場合、投薬前後の比較もしくはコントロール投薬群との比較の結果、EGF投与モデルとイボテン酸による海馬障害モデルにおいて顕著なプレパルスインヒビションの改善効果を見た。

これらの結果は、上皮成長因子受容体の活性阻害剤が複数の統合失調症モデルの認知行動改善に有効であることを示している。

3. まとめ 脳研病理学分野やリソースセンターとの先行共同研究によると、上皮成長因子受容体(EGFR)が、統合失調症の患者さん脳で上昇していることがわかっている。この事実は、今回の当該受容体の阻害剤が一部の統合失調症様モデルの認知行動異常の改善に有効であることも合致する。今後、上皮成長因子受容体の活性阻害剤の脳血液関門通過性、ならびに副作用を制御することで、新規抗精神病薬の開発のきっかけとなることを望むものである。
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http://cell-biology.biken.osaka-u.ac.jp/MekadaLabHP/Research.html
目加田研 研究内容の紹介
1 細胞増殖因子について
2 EGFファミリーの増殖因子と膜結合型増殖因子
3 HB-EGFについて
4 発生過程や成体におけるHB-EGFの役割
5 膜型から分泌型への転換の重要性
6 膜型から分泌型への転換機構
7 HB-EGFとがん
8 膜型HB-EGFと複合体を形成する分子群の解析
9 CD9とテトラスパニンファミリー分子の解析
10 線虫を用いたテトラスパニンの遺伝学的解析
11 ジフテリア毒素とジフテリア毒素レセプターについて
12 HB-EGFを分子標的とする抗癌剤の開発

8. 膜型HB-EGFと複合体を形成する分子群の解析

  膜結合型HB-EGFは細胞表面で単独で存在するのではなく、種々の膜タンパク質と複合体を形成しています(図7)。

<図7 proHB-EGF と複合体を形成する分子群>

 HB-EGFとアソシエートする分子として最初に見つけたのが、膜4回貫通型タンパク質CD9です。
 CD9はHB-EGFに結合することで、 HB-EGFの作用を増強することが解っています。ヘパラン硫酸プロテオグリカン (HSPG) も HB-EGF のヘパリン結合部位に結合して、膜結合型 HB-EGF の作用を増強したり抑制したりしているものと思われます。実際、膜結合型 HB-EGF のジフテリア毒素結合活性はヘパラン硫酸プロテオグリカンの存在によって増強されます。インテグリンα3β1も HB-EGF・CD9 複合体にアソシエートすることが解っています。 これらの複合体は、細胞間の接着部位に局在化しており、複合体として細胞間のコミュニケーションに働いていることを示唆しますが、個々の分子が複合体の中でどのような役割を果たしているのか、今後の問題です。 (EM)
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http://cell-biology.biken.osaka-u.ac.jp/MekadaLabHP/Iwamoto/5DC19E67-697E-4475-9CEC-06C6FE198DF6.html
岩本 亮 大阪大学 微生物病研究所 細胞機能分野 准教授

1 HB-EGFのいろんな働き方モード

私たちや他の研究グループらによって、主に培養細胞を使った研究から、HB-EGFはいろんな「働き方」をしているということがわかってきています。この「働き方」というのには、以下のような様式が知られています(図1参照)。

マトリクライン(Matricrine):
sHB-EGFが細胞外マトリックスのヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)と結合しながら働きます。HB-EGFは自身のヘパリン結合部位を介してHSPGのHS糖鎖と結合します。HB-EGFとHS糖鎖の結合は、HB-EGFの活性を上昇させますが、HB-EGF自身の活性にとってヘパリン結合部位は必須ではなく、かえってHB-EGFのEGFドメインの活性を構造的に負に制御していて、HS糖鎖のヘパリン結合部位への結合がこの負の制御を解除している、ということを私たちは報告しています(Takazaki et al., 2004 JBC)。これらのことから、HSPGはHB-EGFの活性を制御する重要な因子であるといえます。
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2008年01月23日

自閉症にAMPA受容体のカルシウム透過性の変調が影響するかも?

脊髄で強い発痛物質としてあげられていたのが一酸化窒素とアデノシン、一酸化窒素に注目してきましたが、たぶん睡眠導入物質のアデノシンもGSK3βを含む基本回路の構成に必須の働きをしている物質で、いづれはもう少し考えないととおもっています。

で、そのアデノシンの分解酵素が、アデノシンをイノシンに変えることでその性質も変えるRNA編集し、それにより、記憶の長期増強にも中心的な働きをするAMPA受容体は通常はRNA編集を受けカルシウムの不透過になるようです。

分解酵素のタイプがどうなのかはまだよく分かっていませんが、そのアデノシンの分解酵素を生まれつき持たないためにADA(アデノシン・デアミナーゼ)欠損症というリンパ球が減ってしまう免疫不全の難病をもつお子さんに自閉症が合併する、その自閉症の症状が出る原因を以前から考えているのですが、このAMPA受容体のカルシウム透過性の変化が関係しているかも。

AMPA受容体のカルシウム透過性の変調により、ALSでは細胞死が起こらないところで細胞死が起こるのかもしれませんが、逆に細胞死が起こるところで細胞死が起こらない場合があるかも。

分からないまま、目に付いたところを引用。
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http://www.bitway.ne.jp/ejournal/so-net/1431100411.html
ALSの運動ニューロン死とグルタミン酸受容体の分子変化
 郭 伸 東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻神経内科学教室

 運動ニューロンの神経細胞死には,AMPA受容体を介したメカニズムが中心的な役割を果たしており,この神経細胞死にはCa2+透過性AMPA受容体の割合が増加し,AMPA受容体を介するCa2+の流入が増大することが主要な役割を果たしている。AMPA受容体のCa2+透過性亢進には,未編集型GluR2サブユニットを含むAMPA受容体割合の増加の他に,編集型GluR2サブユニットを含まないAMPA受容体割合の増加,のメカニズムがある。

孤発性ALS運動ニューロンの神経細胞死には前者の分子変化が起こり,神経細胞死の一次原因となっているが,変異SOD1に関連した家族性ALS(ALS1)では後者のメカニズムが働き,変異SOD1の細胞毒性を増強させていると考えられる。

また,運動ニューロン死には,AMPA受容体を介さない神経細胞死もあり,球脊髄性筋萎縮症(SBMA)がその代表である。このように,運動ニューロン疾患により細胞死の分子機構が異なるので,治療法もそれぞれに特異的なものが求められる。孤発性ALSにおけるGluR2のRNA編集異常は,疾患特異性が高いので,GluR2 Q/R部位のRNA編集を快復することが孤発性ALSの特異治療につながると考えられる。GluR2のRNA編集はADAR2が触媒するので,孤発性ALS運動ニューロンではこの酵素活性が何らかの原因で部位特異的に低下したためと考えられ,ADAR2活性を快復することが,GluR2 RNA編集の正常化を通じて特異治療の標的になると期待される。
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http://www.togo-nou.nips.ac.jp/publication/seika/2006seika/18-5.pdf
研究課題名 異常蛋白質蓄積によるASK1 シグナルを介した神経変性細胞死の分子病態の
解明
研究代表者名 西頭 英起 E-mail nishitoh.osur@tmd.ac.jp
所属・職名 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科・特任助教授

研究成果報告書
細胞内異常タンパク質の蓄積がタンパク質分解経路の抑制、ならびに小胞体ストレスを誘導することを以前の研究により明らかにしていることから、異常タンパク質蓄積の一例として、家族性ALS の原因の一つである変異型SOD1 タンパク質を用いてユビキチンプロテアソームと小胞体ストレスに対する影響を検討し、さらに変異型SOD1 結合タンパク質のスクリーニングにより、その分子標的・メカニズムを解明した。

すなわち、変異型SOD1 を運動神経細胞に発現させることにより、小胞体ストレスが惹起されることを明らかにした。

この変異型SOD1 誘導性の小胞体ストレスは、小胞体から異常タンパク質が細胞質側へと排出される機構、すなわち小胞体関連分解(ER associated degradation: ERAD)の抑制が原因であった。そこで、変異型SOD1 がERADを抑制する際の標的分子をスクリーニングするため、ERAD 関連タンパク質との結合を検討したところ、小胞体膜タンパク質でERAD に必須の分子と変異型SOD1 が特異的に結合し、その機能を阻害していることが示された。さらに、変異型SOD1 とこのERAD 構成分子の結合を阻害するペプチドを見いだし、そのペプチド発現により変異型SOD1 誘導性の小胞体ストレス誘導、ASK1(小胞体ストレス誘導性アポトーシスに必要な分子)経路の活性化、神経細胞死が抑制されることも明らかとなった。また個体レベルの結果として、ASK1 ノックアウトマウスではALS の病態進行が有意に遅延されたことから、変異型SOD1 によるERAD 構成分子機能阻害がALS の病態進行に大きく関与していることが示唆された。
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http://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/123/2/113/_pdf/-char/ja/
興奮性シナプス伝達の実現とその修飾:AMPA 受容体の動的制御機構
 加藤明彦*,杉山博之 九州大学大学院理学研究院生物科学部門

シナプス領域へのAMPA受容体蓄積にPSD95が重要な役割を果たすことも示されている.PSD95を海馬培養神経細胞に導入することにより,AMPA 応答が増加する.

PSD95の翻訳後修飾による局在調節は興味深い.PSD95のN 末端領域には脂質修飾(palmitoylation)をうけるシステイン残基が2つ存在し,この残基に変異を入れてpalmitoylation を受けなくした変異体はシナプスに濃縮しなくなる(29).さらに神経活動に依存してpalmitoylationは可逆的に調節されており,それに伴いAMPA 応答も増減する(30).

それではどのようにPSD95はAMPA 受容体の応答を調節するのか.PSD95はそれ自体,AMPA 受容体とは相互作用しない.有力な候補はTARP ファミリーである.
TARP はPSD95との相互作用を介してAMPA をシナプス領域に濃縮させることが示されている(31).
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http://www.md.tsukuba.ac.jp/basic-med/molneurobiol/brain/seika/seika_a04.html
先端脳ホームページ

3 筋萎縮性側索硬化症についての研究
 筋萎縮性側索硬化症については,レーザーミクロディセクターを用いて切り出した単一ニューロン組織での検討により,孤発性ALSの脊髄運動ニューロンでは,疾患特異的,細胞選択的にAMPA受容体サブユニットのGluR2 Q/R部位RNA編集率が低下していることを発見した。この分子変化は,チャネルのCa2+透過性を増大させ,細胞死の直接原因になっていることから, 孤発性ALSの病因は編集酵素ADAR2 の活性低下である可能性が高いと考えられる。さらに,運動ニューロンに発現するカルシウム透過性AMPA型グルタミン酸受容体が,変異SOD1トランスジェニック ALSモデルマウスにおいて,脊髄で変異SOD1の異常凝集形成を促進するとともに,臨床症状,病理所見を悪化させる因子であることを見出した。また,変異SOD1は異常蛋白質としてHsp70に結合するが,ユビキチンリガーゼCHIPがHsp70のポリユビキチン化を介して変異SOD1の分解を促進することを示した。
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http://seeds.hyogosta.jp/seeds_data.php?key=1695
ひょうご研究機関 研究者シーズ集
「アデノシン分解阻害による関節リウマチの新たな治療薬創出」

関節リウマチでは関節内のアデノシン分解酵素(アデノシン・デアミナーゼ;ADA)により、内因性抗リウマチ物質のアデノシンが分解され、関節炎が持続していることから、ADA阻害薬を投与することによりリウマチ関節炎の抑制、関節障害の改善を図ります。
これまでリウマチ関節の関節液中ADA活性が高いことは知られていましたが、その病的意義は明らかでは有りませんでした。私たちは、リウマチ関節の炎症性滑膜細胞がADAを多量に産生し、それによってアデノシンが分解され関節炎の持続につながることを明らかにしました。すなわちADA阻害薬により内因性抗リウマチ物質であるアデノシンを炎症局所で維持することにより、生体が本来持っている抗リウマチ作用を引き出し、身体に優しいリウマチ治療を行います。
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http://norion.blog11.fc2.com/blog-entry-2.htm
NSFのS-NitrosylationはGluR2の膜上移行を促進する
●S-Nitrosylation of N-Ethylmaleimide Sensitive Factor Mediates Surface Expression of AMPA Receptors
Neuron, Vol 46, 533-540, 19 May 2005

ポストシナプティックなAMPA受容体はシナプス可塑性を調節している。また、シナプス可塑性はNMDA受容体の活性化とN-ethylmaleimide sensitve factor (NSF)によって調節されている。NSFはPSD95を介してNMDA受容体と共存するnNOSにより産生されたNOによってS-nitrosylationされ、S-ntirosylationされたNSFはAMPA受容体のGluR2サブユニットに結合しやすくなる。NMDA受容体の活性化に反応してGluR2が膜上に移行するには内在性のNOが必要となる。つまり、NMDA受容体の活性化によりnNOSが活性化されてNOが産生され、NSFのS-nitrosylationが起こり、GluR2に結合することでAMPA受容体の膜上への移行を促進する。
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2008年01月20日

自閉症も統合失調症も発生から老化までの生存にかかわる基本回路の偏り(2)

GSK3βを含む基本回路が発生分化にかかわり、そこの発生分化に関係する物質が老化のところまで関係する。

頭尾のシグナルであるアクチビンと同じファミリーであるBMPが牛乳の宣伝にでてくるように骨形成に、分節のシグナルに関係しGSK3βの下流のNotchがアレルギーに。

その要の1つであるGSK3β(グリコーゲン合成リン酸化酵素3β)には名前の由来にかかわるインスリンが、そしてエストロゲンや成長ホルモンがインスリン様成長因子-1(IGF-1)を通じ、ASK1などからの酸化ストレスがAktという経路で、また細胞内へのカルシウム流入に影響されるカルシニューリンやNFATとの相互作用、一酸化窒素の産生の調節を受ける細胞外マトリクス経由のフィードバックにより、エネルギーや種の保存、個体の生存などが統合される。

発生分化にも関係する物質が、その基本回路で統合された情報により、脳・体の再構成していく。

自閉症は、その基本回路に何らかの原因により、脳のネットワークに偏りがでてしまう障害で、両端の偏りを含む症候群なのだとおもいます。
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http://www.u-tokyo.ac.jp/coe/coe02_tanbou16_j.html
拠点探訪16 融合科学創成ステーション

浅島教授
脳ということですと、一つは神経ネットワークづくりという回路の問題です。記憶の問題や脳の中における言語中枢、それからアルツハイマーの病気とか、脳といっても一元的ではなくて、いろいろなアプローチがあるわけです。我々の拠点では、酒井先生を中心として言語中枢を新しく見つけました。人はどこで言葉を認識し、どういう言葉を認識するかという研究も行いました。記憶でいえば、私たち自身はアクチビンという蛋白質で細胞の分化を制御しているのですが、実は記憶にもアクチビンという蛋白質が関与することが分かってきました。初期の発生を研究している私たちにとってみれば、今まで記憶に関しては神経学者がやっていて、全く別の世界のことだと思っていました。ところが、実際にはいろいろよく見て、別のところで同じ分子を使っていたということになれば、生物が一つの物質を場所と時間によって全く違った機能を持たせるということが分かります。記憶が人間にとって最も重要な一つの精神構造であるとするならば、そしてそういうものまでもアクチビンという蛋白質が関与しているのであれば、我々としてはある意味では新しい見方が出てきます。川戸先生が行っているのですが、記憶をつかさどる脳の部位である海馬にアクチビンを投与することによって、神経の枝が非常によく増え、記憶と言われている枝が非常によく増えるということを、彼らが開発したマウスを使った独特の方法で調べることができたのです。何を起こせば記憶がよくなるかといったときに、一つは海馬の枝、つまり神経細胞を伸ばしていくことであるということが分かれば、これからは学習とは一体どういうことかといったときに、枝の出方がどうなっているかを見ればいいわけです。
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http://park.ecc.u-tokyo.ac.jp/bio-komaba/pnf/kawato/index.html
川戸 佳 教授
[脳生物物理学・分子細胞生物学]

具体的には現在以下のようなことを研究している。

2.脳神経シナプスで局所的に合成されるニューロステロイドが記憶学習モジュレーションする機構を海馬で解析。高次脳機能においては、女性・男性ホルモンは性ホルモンではなく(雄の脳も女性ホルモンを合成する)、ニューロステロイドの代表であり、神経モジュレーター・神経成長因子として働き、精神現象を規定している。これらは抑うつ症やアルツハイマー症を治す効果がある。ストレスステロイドは精神抑うつ症の要因である。KOマウスや遺伝子改変マウスを用いた解析も行っている。更に、アクチビン(性ホルモンだが、脳でも作られる)環境ホルモン(合成女性ホルモン)が、急性的に海馬の記憶学習を撹乱することを見出し、その分子機構も解析している。以上の研究から神経内分泌学を革新し神経シナプス分泌学を提唱している。
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http://www.jsps.go.jp/j-rftf/saishu_hyouka_08/02_life/p_pdf/l_04-06.pdf
形態形成を制御するシグナル分子ネットワークの解明
プロジェクトリーダー
上野 直人 岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所・教授

2.1 動物の背腹、頭尾はどのように決まるのかほとんどの動物は頭尾、背腹、左右の3つの体軸をもつ。アフリカツメガエルの胚発生における体軸形成は、オーガナイザーと呼ばれる領域に依存している。オーガナイザーは背側中胚葉や神経形成に必須の領域であり、我々はすでに胚の腹側では細胞増殖因子BMP の働きによってその形成や作用が抑制されていることを明らかにしてきた。

2.2 増殖因子の作用範囲はどのように決まるのか
個体発生の過程では均一な細胞集団が細胞分化によって徐々に異なる性質をもった細胞集団に区画化されていく。この「パターン形成」には細胞間相互作用が必須であり、細胞増殖因子が中心的な役割を担っていることが明らかにされてきた。とくにBMP、アクチビン、ノーダルに代表されるTGF-βスーパーファミリーに属する細胞増殖因子は初期発生における体軸形成といった基本的なボディープランの確立から器官形成までパターン形成に必須の役割を担っていることが知られている。

2.4 脊椎動物における分節化のしくみ(高橋淑子)
すべての脊椎動物の体には、脊椎骨や肋骨などに代表されるように、からだの前後軸に沿って分節と呼ばれる組織の規則正しい繰り返し構造が認められる。

これまでに、形態的境界の形成には、隣接する細胞同士の相互作用が重要であることなどを見いだし、この境界形成の誘導シグナルを"セグメンター"と名付けた。また、セグメンターがNotch シグナルを介してその活性を発揮していることを見いだした。
その際、Notch 活性のオン/オフ境界が形態的分節に必須であることがわかった。

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http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2006/060621/detail.html
アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見
- 謎の免疫細胞「記憶型T細胞」がアレルギー反応に必須 -
平成18年6月21日
◇ポイント◇
・アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明
・分化・発生等で重要なノッチ分子への情報伝達がアレルギー反応を制御
  喘息やアレルギーに新たな治療方法の可能性

図1 T細胞分化過程における記憶型T細胞とその細胞内シグナル伝達系
(右)抗原刺激によって産生されるIL-4産生は、T細胞抗原レセプターを介して活性化されたNFATによって誘導が制御されている。今回の研究から、記憶型T細胞ではT細胞抗原レセプター経路に加え、Notch シグナル経路がIL-4の産生に関与することが明らかとなった。Notch は、遺伝子結合タンパクであるRBP-Jを介して、IL-4遺伝子座の調節領域CNS-2に結合し、IL-4の産生をNFAT経路と協調して制御していると考えられる。
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http://www.j-tokkyo.com/2006/A01K/JP2006-075155.shtml
【発明の名称】 新規非ヒト動物
【発明者】 【氏名】井ノ口 馨  株式会社三菱化学生命科学研究所内

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチビン遺伝子が少なくとも脳で過剰発現され、かつ、少なくとも活動量の上昇、情動性の異常、情報処理機構の異常、および学習記憶の異常のいずれかの表現型を有する継代可能な非ヒト動物、またはその子孫。
【請求項2】
少なくとも脳で活性化されるプロモーターの制御下におかれたアクチビン遺伝子が導入され、かつ、継代可能であることを特徴とする非ヒト動物、またはその子孫。

【請求項13】
アクチビンが関与する精神疾患がそう病、うつ病、そううつ病、多動性障害、自閉症、統合失調症、または外傷後ストレス障害である請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
アクチビンが関与する記憶障害が学習記憶障害、老化に伴う記憶障害、脳血管障害に伴う記憶障害、認知症に伴う記憶障害、パーキンソン病に伴う記憶障害、またはうつ病に伴う記憶障害である請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
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2008年01月18日

自閉症も統合失調症も発生から老化までの生存にかかわる基本回路の偏り

追いかけていたGSK3βから一酸化窒素の産生の調節、これは発生分化から老化までに関係する基本回路の一部で、発生のところで免疫のシグナルが使われ、順序から見ると、この基本回路をアレンジして、免疫、性、記憶、闘争反応など、生存、種の保存などの大事なところで使われています。

周産期に臨界期がある男女の脳の構造もこの基本回路に関係しますが、女性は思春期にオンと周期的にオン、オフ、男性は周期性はつぶして思春期以降にはいつでもオン、種の反映・生き残りのための巧みなエネルギーの戦略があるようにおもえますが、この男女の違いを作る仕組み、たぶん同じく基本回路をつかうと免疫の仕組みと似ているような。

この基本回路、平常時に働き、生存にかかわる時に働かなくなる仕組みが組み込まれ、生存にかかわるのと同じ状態に回路の変調やエネルギーの関係で働きにくくなると働かなくなる、そんな状態が自閉症、また統合失調症やハンチントン病やその他の多くの疾患や精神障害だと。

この基本回路の、一酸化窒素や活性酸素に分解調節される細胞外マトリクスのヘパラン硫酸に調節されるアクチビン、発生段階では濃度依存的に諸器官を形成する物質で、過剰過少どちらでも神経管の形成が阻害されそうで、それが易刺激性の過敏な状態を作っているのでは。

自閉症や統合失調症などが難しいのは、この過剰過少があることで両端どちらも含まれることと、その過剰過少が一酸化窒素と活性酸素のバランスの少しの違いで反転してしまうことなのかと。

で、キーはアクチビンの状態なのだとおもいますが、そのアクチビンの状態を反映しているのが漢方の熱証寒証で、暑がり寒がりが分かりやすいその外への現れかと。

熱証:暑がりで比較的元気ですが、体に熱を帯びやすく、脳卒中や糖尿病になりやすい。
寒証:寒がりで、冷えからくる消化機能の低下や生理障害がある。  
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2008年01月16日

自閉症スペクトラムとハンチントン舞踏病(4):自閉症はシート状形成のVEGFか管形成のアクチビンの不足?(2)

ハンチントン病とアクチビンの関係、『さらにハンチントン病や脳虚血のモデル動物にアクチビン A を脳室内投与すると有意に病状が改善されるとする報告もある。』とすでに引用したものの中にありました。

たぶん、アクチビンが不足し、シート状の組織を管状にできないため、神経の軸索が伸びないために『症状は易刺激性やうつ状態とともに‘舞踏病’といわれる比較的速い不規則な不随意運動と情動不安が特徴』ということに。息子にもあるチックも同じことなのでは。

そして自閉症スペクトラムでは、どちらもヘパラン硫酸に調節されるシート形成のVEGFか管形成のアクチビンの不足により『最も影響を受けると思われる神経細胞としては、大脳皮質のニューロンに加えて基底核のGABA作動性、コリン作動性、エンケファリン作動性の中型有棘細胞』となる。

自閉症は、認知の問題だけでなくエンケファリンが性と摂食にも関係する闘争逃走反応の中脳中心灰白質に働くことで分かるように抑制系にも問題が出てきやすい障害だと。

ヘパラン硫酸の分解は、神経細胞内の一酸化窒素と分解する細胞外マトリクスを決めるグリア細胞からの活性酸素のスーパーオキシドの影響が大きいとおもいますので、そこに目を向けるべきなので、自閉症もハンチントン病と似た構造なら、一時期だけにダメージ受ける疾患ではないとおもいますし、そこへのケアーが必要なのでは。
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http://www.wako-chem.co.jp/siyaku/journal/jiho/pdf/jiho683.pdf
アクチビンの作用とその制御
徳島大学分子酵素学研究センター 杉野紀志子、杉野  弘

  1. はじめに
アクチビンの細胞内情報伝達機構は、最近の研究によりその主要な部分が解明され、他の TGF-B ファミリーの因子、例えばTGF-B やBMPなどと基本的には多くが共通していることが判明した6, 7)。

一方、フォリスタチンはインヒビンやアクチビンと異なり一本鎖の糖タンパク質であり、その後の研究によりアクチビン結合タンパク質であることが明らかにされ、アクチビンの作用調節因子としての作用が注目を集めている8)。ここでは、アクチビン作用の多様性とフォリスタチンによるその制御機構をまとめた。

 3. アクチビン作用の多様性9, 10, 11, 12)
事実、アクチビンは下垂体前葉の FSH 産生細胞の数を増加させることや FSHmRNA の安定性を高める。興味深いことに、アクチビンの数多くのアイソフォームの中でアクチビン B が下垂体で産生されオートクライン因子として働き FSH 分泌を高めているという。
逆に、成長ホルモン、プロラクチン、コルチコトロピンなどの他の下垂体ホルモンの分泌はアクチビンにより抑制されると報告されている。

脳・神経系での働きに注目すべきデータが蓄積されつつある。これまでに、ある種の神経細胞の生存維持、毛様体神経節細胞の分化誘導などの作用が報告されていた。ところが、最近になって、ラットへのカイニン酸の投与によっててんかんを誘導すると海馬にBA mRNA が一過性に高まる。また、海馬に電気刺激を加え長期記憶を惹起すると、同様にBA mRNA の発現が海馬に認められている。さらにハンチントン病や脳虚血のモデル動物にアクチビン A を脳室内投与すると有意に病状が改善されるとする報告もある。

一方で、筆者らは最近、アクチビン II型受容体と相互作用する分子 ARIP1を見いだした17)。ARIP1 は WW ドメインや PDZ ドメインといったタンパク質相互作用に必要なドメインを複数個有する高分子の細胞内タンパク質であり、興味深いことに、脳に特異的に高い発現が認められる。

このような結果は、アクチビンとその細胞内シグナル伝達系が神経回路網形成に深く関わりを持っていることを示唆しているアクチビンはランゲルハンス島細胞からのインスリンの分泌を促進する。

また、ラット頭頂骨由来細胞の増殖を促進することやプロリンのコラーゲンへの取り込みを促進することなどからBMPとともに骨の形成に関与していると考えられる。

 4. フォリスタチンによるアクチビン作用の制御12, 18)
 アクチビンのシグナルは2 種類のアクチビン受容体 I 型及び II 型を介して細胞内へ伝えられる。いずれもセリン/スレオニンキナーゼ型受容体である。アクチビンが恒常的にリン酸化されたII 型受容体に結合した後、この複合体と I 型受容体が会合し膜上で四量体を形成する。そのことにより I 型受容体の膜直下の GS 領域がリン酸化される。

このリン酸化により細胞内情報伝達分子である Smad のリン酸化カスケードが惹起され、アクチビンのシグナルが核まで伝達されることになる。Smad分子群の中にはシグナル伝達に対して抑制的に働くものもある。こうしたアクチビンのシグナル伝達系をフォリスタチンは細胞の外で遮断することにより、アクチビンの多彩な作用を阻害する(図4)。

フォリスタチンには RNA スプライシングによって翻訳されるタンパク質領域の長さの違いから2種類の分子種、FS-315 と FS-288(それぞれ、315 残基と 288 残基のアミノ酸から成る)が存在する。

その結果、アクチビンの II 型受容体への結合によって惹起される細胞内リン酸化カスケード応答反応が、FS-288によりより効果的に抑制されるものと考えられる。

フォリスタチン分子の中でも FS-288 はアクチビンと複合体を形成したままでも強く細胞表層ヘパラン硫酸に結合しうる。つまり、アクチビンは FS-288 を介して細胞表層にとどまる。その後、エンドサイトーシスにより、アクチビン/FS-288 受容体は細胞内に取り込まれて、リソソーム内でタンパク分解を受けて最終的に細胞外へ放出される21)。

 5. おわりに
アクチビンの多彩な作用発現に対して、その調節因子であるフォリスタチンもやはり多様な分子種を準備して厳密にアクチビンの働きを監視する機構が必要であるものと考えられる。アクチビンは貧血症や骨粗鬆症への治療応用が考えられている。最近、ハンチントン病に有効であるとの報告もある。他方、フォリスタチンは慢性肝炎、慢性腎炎、進行性固型癌などの患者で高値を示すことが認められている。
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2008年01月15日

自閉症スペクトラムとハンチントン舞踏病(3):自閉症はシート状形成のVEGFか管形成のアクチビンの不足?

結局、ハンチントン舞踏病は、一酸化窒素が分解調節するヘパラン硫酸が調節するアクチビンの不足が軸索の形成に影響し、自閉症スペクトラムはその管形成のアクチビンが不足するタイプと、その前段階でこれもヘパラン硫酸に貯留されるシート状形成のVEGFかの不足によるのではないかと。

ヘパラン硫酸の一酸化窒素での分解が、過剰過少に振れると、VEGFかアクチビンが不足し、軸索の形成に影響する。

VEGFが不足しアクチビンが多いタイプは、影響の少ない海馬での記憶や大脳皮質での記憶の維持には問題ないが、大脳皮質での記憶の再編成は変調する。

自閉症スペクトラムは少なくともこの両極端のタイプがあるのでは?
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https://www.sigma-aldrich.co.jp/sigma/RBI/alzheimer_disease/pdf/htm.pdf
ハンチントン病

その症状は易刺激性やうつ状態とともに‘舞踏病’といわれる比較的速い不規則な不随意運動と情動不安が特徴で、HD患者の80%もの人々が発症後10〜15年以内に何らかの精神障害をきたしています[3]。
多くの場合、症状の開始から15〜20年以内で死に至ります[4,5]。

メカニズム:ポリグルタミンリピート

HDをはじめとするトリヌクレオチドリピート病の病理的な特徴として、線条体の中型有棘細胞(medium-sized spinyneuron)の細胞質、核、軸索末端にβ-シート構造のユビキチン化されたポリグルタミン含有タンパク質凝集体の蓄積がみとめられます[7]。

HDによって最も影響を受けると思われる神経細胞としては、大脳皮質のニューロンに加えて基底核のGABA作動性、コリン作動性、エンケファリン作動性の中型有棘細胞があります。
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http://imcr.showa.gunma-u.ac.jp/imcr/rip/rip.htm
研究所の知的財産
アクチビンは血管内皮細胞に作用し,管腔形成を促進して血管新生促進作用をもつ。一方,フォリスタチンはこのアクチビン作用に拮抗し,血管新生抑制作用を示す。アクチビンはVEGFのもつ血管新生作用を仲介しているため、VEGFのもつ血管新生作用はフォリスタチンによって完全に抑制される。したがってアクチビン及びフォリスタチンはそれぞれ血管新生の促進及び抑制に有効である。
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2008年01月14日

自閉症スペクトラムとハンチントン舞踏病(2)どちらもアクチビンの不足?

もう一度記事を読み直してみると、『細胞質、核、軸索末端にβ-シート構造のユビキチン化されたポリグルタミン含有タンパク質凝集体の蓄積』というのが、これはシート状のものを管にするアクチビンが不足しているということ。

一酸化窒素が分解調節するヘパラン硫酸が調節するアクチビンの変調が軸索の形成に影響し、記憶の再編成に影響しているのではとおもっていましたが、易刺激性などにも影響する、これが傍証になるのでは。

自閉症スペクトラムもアクチビンの変調の影響が大きいのだと。
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https://www.sigma-aldrich.co.jp/sigma/RBI/alzheimer_disease/pdf/htm.pdf
ハンチントン病

ハンチントン病(HD)は常染色体優性遺伝型の神経変性疾患で、北米ではおよそ15,000人に1人の割合で発症します。
発症年齢は20歳〜50歳代でアメリカとヨーロッパにおける患者数は100,000人あたり約5人です[1,2]。

その症状は易刺激性やうつ状態とともに‘舞踏病’といわれる比較的速い不規則な不随意運動と情動不安が特徴で、HD患者の80%もの人々が発症後10〜15年以内に何らかの精神障害をきたしています[3]。
多くの場合、症状の開始から15〜20年以内で死に至ります[4,5]。

メカニズム:ポリグルタミンリピート
この疾病の遺伝子欠陥は染色体4pに特定され、ハンチンチンというタンパク質をコードするHD遺伝子の異常型は、そのN末端領域にポリグルタミン鎖の伸長を惹起するシトシン-アデニン-グアニン(CAG)のトリヌクレオチドリピート配列を含んでいます。

そしてその繰り返し数の増加が発症時期や疾患の重症度に影響しています(多くは36以上で、繰り返し数が11〜34の間は正常範囲と考えられている)。

世代を追うごとにリピート長が増加し発症時期が早くなりますが、70以上のトリヌクレオチドリピートはまだ確認されておらず、おそらく胎児の段階で死滅するものと思われます[6]。

HDをはじめとするトリヌクレオチドリピート病の病理的な特徴として、線条体の中型有棘細胞(medium-sized spinyneuron)の細胞質、核、軸索末端にβ-シート構造のユビキチン化されたポリグルタミン含有タンパク質凝集体の蓄積がみとめられます[7]。

HDによって最も影響を受けると思われる神経細胞としては、大脳皮質のニューロンに加えて基底核のGABA作動性、コリン作動性、エンケファリン作動性の中型有棘細胞があります。

死んだ細胞は次第にアストロサイトに置き換わり側脳室前角が拡大して錐体外路運動系への抑制シグナルが減少することにより[6]、不随意運動が起こります。
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http://imcr.showa.gunma-u.ac.jp/imcr/rip/rip.htm
研究所の知的財産
アクチビンは血管内皮細胞に作用し,管腔形成を促進して血管新生促進作用をもつ。一方,フォリスタチンはこのアクチビン作用に拮抗し,血管新生抑制作用を示す。アクチビンはVEGFのもつ血管新生作用を仲介しているため、VEGFのもつ血管新生作用はフォリスタチンによって完全に抑制される。したがってアクチビン及びフォリスタチンはそれぞれ血管新生の促進及び抑制に有効である。
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自閉症スペクトラムとハンチントン舞踏病

ネットでハンチントン舞踏病のページを見ていると、前後をつなぐGSK3βは出てきませんが、自閉症の関連ルートだと思っているところに問題がある疾患で、『易刺激性やうつ状態とともに‘舞踏病’といわれる比較的速い不規則な不随意運動と情動不安』と自閉症ともかなり重なる症状。

下記のインスリン成長因子-1はたぶんIGF-1でそこからAKTを通じたGSK3βの抑制は、エストロゲンの関係でも取り上げたところ。

結局、ハンチントン舞踏病はまだよく分かっていない一酸化窒素による外部マトリクスを通じたGSK3βのフィードバックの障害なのでは。

最も影響を受ける神経系としてあげられているエンケファリンは、モルヒネ様物質で闘争逃走反応やフリーズと関係する中脳中心灰白質に影響するもの、易刺激性やうつ状態や情動不安と関係するのだろうと。

ここが上げられている神経系に影響する構造がわかれば、自閉症スペクトラムの構造もかなり分かってくることになるとおもいます。
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https://www.sigma-aldrich.co.jp/sigma/RBI/alzheimer_disease/pdf/htm.pdf
ハンチントン病

ハンチントン病(HD)は常染色体優性遺伝型の神経変性疾患で、北米ではおよそ15,000人に1人の割合で発症します。
発症年齢は20歳〜50歳代でアメリカとヨーロッパにおける患者数は100,000人あたり約5人です[1,2]。

その症状は易刺激性やうつ状態とともに‘舞踏病’といわれる比較的速い不規則な不随意運動と情動不安が特徴で、HD患者の80%もの人々が発症後10〜15年以内に何らかの精神障害をきたしています[3]。
多くの場合、症状の開始から15〜20年以内で死に至ります[4,5]。

HDによって最も影響を受けると思われる神経細胞としては、大脳皮質のニューロンに加えて基底核のGABA作動性、コリン作動性、エンケファリン作動性の中型有棘細胞があります。死んだ細胞は次第にアストロサイトに置き換わり側脳室前角が拡大して錐体外路運動系への抑制シグナルが減少することにより[6]、不随意運動が起こります。

線条体グルタミン酸レセプターの減少はN-メチルD-アスパラギン酸(NMDA)レセプター、特にNR2B型を介したグルタミン酸作動性の神経伝達を亢進すると考えられており、興奮毒性がHDにみられる神経死に関与する可能性を支持しています[9,10]。

よってグルタミン酸レセプターのアンタゴニストはHDの研究、そしていずれはその治療にも役立つと考えられます。

ポリグルタミン伸長を含む変異型のハンチンチンはNMDA型・カイニン酸型のグルタミン酸レセプターとPSD-95(シナプス後肥厚部タンパク質-95)の結合を妨害することによりレセプターの過感受性とカルシウム流入の上昇をもたらし、多くのキナーゼ活性化を介して最終的にはアポトーシスに至る反応が生じると考えられます[11]。


一方最近の報告で、インスリン成長因子-1が変異型ハンチンチンにより特異的に誘導される神経死をセリン/スレオニンキナーゼAkt/PKBの活性化を介して阻害し、変異型ハンチンチンの核内封入体の形成を減少させるといわれています[19]。

また、HD患者でAktは低分子量型に変化しています。
このデータは、IGF-1/Akt経路がこの疾病の治療法のターゲットとなる可能性を示しています。
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2008年01月13日

自閉症と自然免疫・免疫寛容・活性酸素のTLR・TRAF6・ASK1のつながり

自閉症に関係するとおもっているGSK3βが調節する一酸化窒素に関するルート、『発生分化』という言葉がキーワードになるほどに生命の基本的なところと関係するみたいですが、免疫系と中枢神経系とは似ているといわれていた渋谷先生の免疫を読み直していると、『ところが最近、ショウジョウバエの腹背軸の決定に関与するToll遺伝子のほ乳類の相同遺伝子(Toll-like receptor; TLR)が発見され』というのが目に入って来ました。

背腹の軸は追いかけているGSK3βのルートが関係するところ、結局TLRが免疫寛容に関係するとおもっているTRAF6につながり、それがPI3K-Akt経路を通じてGSK3βにつながっている。

神経の再編成にも、この自然免疫の機構を使い、自閉症ではそれが自由度がなく偏っているために、活動依存的にできるフィルターの粗密ができずに、重要なことの抽出が起こらないのでは?

TRAF6と関係する活性酸素の作用を受けるのがASK1、略称ASKという団体に所属していますので、何か縁は感じていましたが、ここにつながってくるとは。

まだ、たぶんという言葉が付くところは多いのですが、自閉症を含めいろいろな疾患の構造が、ここのつながりを意識することでみえてくるのでは?
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http://www.md.tsukuba.ac.jp/basic-med/immunology/hitome5.htm
ひと目でわかる分子免疫学 連載第5回
「感染症から学ぶ免疫学の基本原理」
渋谷 彰 筑波大学大学院人間総合科学研究科、基礎医学系免疫学

自然免疫機構における病原体認識機構

ところが最近、ショウジョウバエの腹背軸の決定に関与するToll遺伝子のほ乳類の相同遺伝子(Toll-like receptor; TLR)が発見され、これらが病原体の様々な成分を認識し、樹状細胞などに活性化シグナルを伝えることがわかってきた。
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http://www.genome.tokushima-u.ac.jp/dei/is/achiev/2006.html
免疫監視の基盤とその維持・制御

TNF受容体ファミリー、IL-1R/TLRファミリーのシグナルを伝達するTRAF6は自然免疫で重要な役割を果たすが、T細胞特異的に欠損させると予想外にも多臓器炎症性疾患へとつながることを見いだした。

TRAF6を欠損したT細胞は、PI3K-Akt経路の過剰な活性化を示し、その結果CD4+CD25+制御性T細胞による抑制に対して耐性になる。これらのデータは、TRAF6の抹消での免疫寛容維持における今まで知られていなかった役割を同定したものであり、またレスポンダーT細胞を寛容にするためのシグナルに感受性を高める内在性制御機構がエフェクターT細胞に存在することを示唆するものである。
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http://www.brain.riken.go.jp/bsi-news/bsinews19/no19/research1.html
生物の“腹”と“背”を分けるメカニズムの解明
− 体軸形成を担うカルシウムシグナルの標的遺伝子を発見 −

 生物の初期発生において、腹と背を分ける体軸の形成は、背側に神経管が発達するなど一つの受精卵が細胞集団を作り上げていく上で重要な役割を果たしています。研究グループでは今回、免疫系に関与するカルシウム依存性転写調節因子「NF-AT」にカルシウムシグナルが作用することによって、腹側化シグナルとして働くことを明らかにするとともに、NF-ATが、背側化と関連するGSK-3と呼ばれる酵素に作用し、腹側化を促すことを見いだしました。このGSK-3は、脳の老化との関連が指摘されています。

以上の結果から、IP3受容体やNF-ATの腹側化シグナルがGSK3-βを含む背側化シグナルとクロストークしていることが明らかになりました(図5)。

 GSK3-βは、脳の老化などの原因による神経細胞死を引き起こす際に、神経細胞内で活性化されている酵素の一つとして見いだされており、アルツハイマー病との関連も指摘されています。この酵素の活性により体軸形成の異常が消失するという今回の私たちの成果は、GSK3-βの活性が脳の老化だけでなく初期発生と密接に関連するという極めて興味深い結果を示しています。
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http://www.p.kanazawa-u.ac.jp/~seibutu/index.html
生体防御応答学研究室

 ショウジョウバエの発生過程では,形態形成に伴って多くの細胞がアポトーシスで死に,ヘモサイトやその他の食細胞により除去されています。特に,変態過程では,幼虫組織の崩壊と細胞貪食やオートファジー経路を介する分解,そして成虫組織の再構築が起きています。また,変態時の神経細胞では,幼虫型神経軸索が部分的に刈り取られ(axon pruning) ,そこから成虫型の軸索が再構築されて機能を獲得します。これらの複雑な現象はすべて,たった二種類のホルモンにより調節されていることが知られていますが,組織細胞の死と貪食による排除のしくみは未だよくわかっていません。
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http://medical.tanabe.co.jp/public/science/05/2005_4_8/sci_jsumm.shtml
自己免疫寛容はTRAF6によって誘導される胸腺ストローマの発生に依存する
注)TRAF6:tumor necrosis factor receptor-associated factor 6

胸腺の微小環境は胸腺上皮細胞(thymic epithelial cells:TECs)によって形成され、自己免疫寛容の誘導や、T細胞の発生に必須である。しかし、TECsの分化や胸腺の機能的構築の基礎となる分子機構は十分に理解されていない。今回われわれは、TRAF6の欠損によって、胸腺髄質上皮細胞(mTECs)が無秩序に分布し、成熟mTECsが消失することを報告する。TRAF6欠損マウスの胎仔から胸腺ストローマを採取し、胸腺のないヌードマウスに移植すると、自己免疫応答が誘導された。したがって、TRAF6は胸腺ストローマの発生を誘導しており、自己免疫寛容や自己免疫応答の制御において非常に重要な因子である。
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http://www.geocities.jp/mizuhase/sciencejournal.htm
ASCノックアウトマウス由来マクロファージは病原体に応答したカスパーゼ1の活性化およびIL-1β、IL-18の産生が起こらない。Nature. 2004 Jun 9 Epub 2004 Jun 09.

この論文ではASCおよびIPAFのノックアウトマウスを作製し、これらのノックアウトマクロファージで病原体に応答したカスパーゼ1の活性化が起こるか調べた。(ASC、IPAFについては「Nodファミリーの謎物語参照」を参照)

ASCの欠損マクロファージはTLRアゴニストとATPによって誘導されるカスパーゼ1の活性化およびIL-1β、IL-18の産生が起こらなかった。また、ASCノックアウトマウスはLPSによるエンドトキシンショックに耐性になった。さらに、ASCのノックアウトマクロファージはサルモネラ菌に応答したカスパーゼ1の活性化も起こらなかった。
一方、IPAFの欠損マクロファージはTLRアゴニストとATPによって誘導されるカスパーゼ1の活性化およびIL-1β、IL-18の産生には影響を与えなかったが、サルモネラ菌に応答したカスパーゼ1の活性化は起こらなかった。
さらに、ASCやIPAFの欠損マクロファージはサルモネラ菌に応答したアポトーシスも起こらなくなった。

これらのことから、ASCおよびIPAFは病原体に応答したカスパーゼ1の活性化に必須であることが示唆された。


疑問点:ASCは本当にTLRの下流で働いてる?
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http://www.geocities.jp/mizuhase/science.world.htm

また、NLRP3/cryopyrinは痛風にかかわる尿酸結晶に応答するという報告や、TLR活性化因子+ATP応答してP2X7受容体の下流でカスパーゼ1を活性化するという報告が別々のグループからされています。
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http://209.85.173.104/search?q=cache:PxHK_hZwmOgJ:www.infdis.nagasaki-u.ac.jp/h16doc4/A0100510.doc
Toll-like受容体シグナルにおけるTRAF6の生理機能解明
合田 仁、井上 純一郎(東大・医科研)

[研究の目的]

Toll/IL-1 receptor familyは、免疫・炎症反応において中心的役割を果たしている細胞膜受容体である。Toll-like receptor (TLR)は、ウイルス、細菌の構成成分を認識し、IL-1、TNFなどの炎症性サイトカインやIFNなどの発現を誘導する。IL-1はIL-1 receptor (IL-1R)を介して炎症性サイトカインや急性期タンパク質などの遺伝子の発現を誘導する。TLR、IL-1Rは、TIR domainを有するアダプター分子であるMyD88、TRIF等を介して、下流のNFkB、MAPKを活性化する。MyD88の下流に位置する分子としてTNF receptor associated factor (TRAF) 6の関与が示唆されていたが、昨年度申請者のグループはTRAF6欠損細胞を用いた解析を行うことで、TRAF6はMyD88依存的経路によるNFkB、MAPKの活性化及び炎症性サイトカイン産生に必須の因子であることを明らかにした。しかし、TRAF6からNFkB、MAPKの活性化までの分子機構については今だ未知の部分が多い。そこで本年度は、TRAF6下流のシグナル伝達機構の解明を目的として、TRAF6下流に位置すると考えられる候補因子をRNAiによりknock downし、それらのNFkB、MAPK活性化に与える影響について解析した。
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http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/psy/www/jp/labo/kagaku.html
神経化学研究室 | 大阪大学大学院医学系研究科 精神医学教室

アルツハイマーにおいては脳内の炎症性変化が以前より指摘されているが、免疫学において近年明らかにされてきた自然免疫システム(Innate Immune System)に関連するToll-like Receptor (TLR)とそれに伴うタウ蛋白リン酸化と細胞死の関係を研究している。
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http://www.jst.go.jp/pr/info/info172/index.html
活性酸素が炎症・アレルギー反応を活性化する新たな仕組みの発見
−感染防御(自然免疫システム)における新たな細胞内分子機構−

 JST(理事長:沖村憲樹)の研究チームは、活性酸素が病原体感染によって起こる炎症やアレルギー反応を促進する作用を持つこと、その活性酸素の作用を受けるターゲットがASK1(Apoptosis signal-regulating kinase 1)*1という細胞内タンパク質リン酸化酵素であることを突き止めた。
 細菌やウイルスなどに感染すると、それらを体内から迅速に排除するため自然免疫システム*2という生体内防御機構が活性化する。自然免疫システムがひとたび病原体の感染を感知すると免疫応答に必須な炎症性サイトカイン*3が産生され、生体内で炎症を引き起こす。一方で、なんらかの原因によりこれらの防御反応が異常に亢進すると、アレルギーや自己免疫疾患の原因にもなる。病原体の感知には、細胞膜受容体であるTLRファミリー*4が重要な働きをしていることが知られているが、本研究では、このファミリーのうち、TLR4という受容体の活性化に伴って特異的に活性酸素が産生され、さらに活性酸素を介して、タンパク質リン酸化酵素であるASK1が活性化されることによって、サイトカインが効率よく産生される仕組みを明らかにした。また、ASK1を働かなくしてしまったマウスにおいては、TLR4受容体活性化によって引き起こされる炎症性サイトカインの過剰産生や、それに伴うショック死が起こりにくくなっていることが判明した。
 活性酸素が炎症やアレルギーの症状を亢進させる可能性についてはこれまでも注目されていたが、そのターゲットの実体が明らかとなったのは初めてであり、アレルギー性疾患や自己免疫疾患などの新たな治療法の開発に繋がるものと期待される。

【成果の概要】

 今回の論文の概要:  一條教授らの研究チームは、病原体を感知する細胞膜受容体であるTLRファミリーのうち、TLR4という受容体の活性化に伴って特異的に活性酸素が産生され、さらに活性酸素を介してタンパク質リン酸化酵素であるASK1が活性化されることによって、サイトカインが効率よく産生される仕組みを明らかにした。ASK1の活性化には、ASK1をTLR4受容体に集めるために働くTRAF6というタンパク質がASK1に結合することがまず必要であり、この結合は活性酸素の産生が引き金となって起こることが分かった。ASK1が活性化した後のステップとして、p38という別のタンパク質リン酸化酵素が引き続いて活性化されることも見出された(図2)。 さらにASK1を働かなくしてしまったマウスにおいては、p38タンパク質リン酸化酵素の活性化、またTLR4受容体の活性化によって引き起こされる炎症性サイトカインの過剰産生や、それに伴うショック死が起こりにくくなっていることが判明した。これらの仕組みは、これまで線虫と呼ばれる進化の上で原始的な生物に存在することは分かっていたが、ヒトやマウスのような高等哺乳動物にも共通して備わっている生物に普遍的なものであることが今回初めて明らかとなった。また、これまでにも炎症や感染時に産生される活性酸素の役割については注目されてきたが、その活性酸素がターゲットとする分子機構の実体は不明であり、本研究で初めてその実体がASK1であることが突き止められた。

【論文名】
「ROS-dependent activation of TRAF6-ASK1-p38 pathway is selectively required for TLR4-mediated innate immunity」
(活性酸素依存的なTRAF6-ASK1-p38経路の活性化がTLR4を介する自然免疫に特異的に必要である)


この研究テーマが含まれる研究領域、研究期間は以下のとおりである。
 「ストレスの受容・認識とシグナル変換の分子機構」
  (研究代表者:一條秀憲 東京大学大学院薬学系研究科細胞情報学教室 教授)
   戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CRESTタイプ)
   研究領域:「たんぱく質の構造・機能と発現メカニズム」
         (研究総括:大島泰郎 共和化工株式会社環境微生物学研究所 所長
                       /前 東京薬科大学生命科学部 教授)
   研究期間:平成14年度〜平成19年度
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http://www010.upp.so-net.ne.jp/inuikodomoclin/LDIC/bunken.htm

ムコ多糖III型患者さんから排泄されたオリゴ糖がミクログリアを活性化し、種々のサイトカインを分泌することをマウスを用い見出した。正常人のムコ多糖や、牛のヘパラン硫酸では認められない。どのような系で活性化が起こるかを検討するためTLR4やMyoD88のないマウスとムコ多糖III型マウスを用い検討し、これらの系も関与しているが、他の系の関与も考えられた。
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http://home.hiroshima-u.ac.jp/yobosika/oim/8.html
TRANCEによるTRAF6の利用における量的な特徴

 なぜ、TRANCE-RANK-TRAF6シグナリングがvivoでの破骨細胞分化に重要なのかは謎のままである。 CD40とIL-1R/TLRを含む他の免疫受容体は前駆破骨細胞上に発現しており、TRAF6を用いてオーバーラップしている シグナリングカスケードを活性化するが、破骨細胞分化は誘導しない。私たちはこれらの観察結果より、 TRANCE/RANKシグナルと他のリガンド/レセプターペアに誘導されるTRAF6関連シグナルには、 質または量の違いがあるのではないかという疑問を抱いた。
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2008年01月11日

自閉症なども、性周期の関連語のパルス・サージという観点から見直すと

自閉症は、GSK3βやPSD95、nNOSのかかわる一酸化窒素の産生の調節が偏ることが原因で起こる障害だとおもい追いかけていますが、ここに関係する女性の性周期で使われるパルス、サージで見直してみると、いろいろなところにパルス・サージの関係がありそうで、それに一酸化窒素が関係する仕組みが絡んでくるのだろうと。

大まかな仕組みはGABAがブレーキになっているパルスのゲインを平常心のホルモンセロトニンがコントロールし、そのGABAをモルヒネ様物質のエンドルフィンなどが抑制することでサージの状態になる。

女性の性周期のほか、まず浮かんだのが痛覚、そして脳の臨界期ですが、次にランナーズハイ、性に関して、また陣痛、授乳など、その外自閉症には、パニックや睡眠なども関係しないかと。

記憶もセロトニン、GABAの関連でパルスに関係しそうですが、そのサージとはなになのか?

てんかんは一酸化窒素によるアストロサイトのグルタミン酸トランスポーターGLT-1の抑制が関係するかも。

パルス・サージという観点から見直すと、また新しいものが見えてこないかと。
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http://physi1-05.med.toho-u.ac.jp/system_neuro/serotonin/index.html
システム神経生理学-セロトニン神経系
有田 秀穂
 (1)分布、投射、活動様式
 (2)運動系への促通作用
 (3)ペースメーカー、オートレセプター、各種の入力
 (4)ゲインコントロール
 (5)不安と5-HT1A受容体
 (6)レム睡眠の抑制
 (7)海馬θ波と記憶への影響
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http://physi1-05.med.toho-u.ac.jp/system_neuro/serotonin/s1/s1.html
セロトニン神経系(1):分布、投射、活動様式

 セロトニン神経は、トリプトファンから細胞内酵素により作られるセロトニンを、神経終末から放出して、標的神経のセロトニン受容体に作用する神経である。セロトニン含有神経、あるいはセロトニン作動性神経(serotonergic neuron)と呼ばれることも多いが、ここではセロトニン神経(serotonin neuron)と表現する。

セロトニン神経細胞の分布

 セロトニン神経の細胞体は脳の正中部に分布するという点でユニークである。多くの神経系が両側に分布するのとは異なり、正中に位置するということは、生命活動の根幹と深く関連した特別の神経系であることを考えさせる。発生学的に最も古い脳である脳幹の正中部に、縫線核群があり、そこにセロトニン細胞は分布する(図1上段)。 

セロトニン神経の活動様式

それでは、セロトニン神経は何によって興奮するか?興味深いことに、脳内のパターン形成機構によって発現するリズム性運動が、セロトニン神経の活動を増強させる。歩行運動、咀嚼運動、呼吸運動、グルーミングなど、リズム性運動が繰り返されると、セロトニン神経の自発性発射頻度が増強するのである(図4)。
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http://phi.med.gunma-u.ac.jp/demography/birth2004s.pdf
人口学講義「出生の分析」
 中澤 港(群馬大学助教授)

1.3 ヒトの生殖の生物学的機構〜ミクロな,あるいは医科学的視点

月経周期をつかさどる上記一連の制御機構は視床下部−下垂体−卵巣系(hypothalamus-pituitaryovarianaxis) と呼ばれる。この系において鍵となるプロセスは,視床下部からのGnRH の分泌である。GnRH の分泌は,通常はパルス状で起こるが,LH サージの直前には一度に大量分泌される(サージ)。これらは別々の制御系によっており,それぞれGnRH パルスジェネレータ,GnRH サージジェネレータと呼ばれる。

パルスジェネレータは男性にもあるが,サージジェネレータは女性にしかなく,月経周期を形成する上で重要な役割を担っている(田中,1998)。神経内分泌系のメカニズムを調べることは技術的に難しいために,これらのジェネレータのメカニズムもまだ解明されたとは言い難いが,最近になっていくつかの知見が得られてきている。

なお,βエンドルフィンがGnRH ニューロンの働きを抑制するメカニズムとしては,GnRH の分泌を制御している一酸化窒素を伝達物質とする神経系を止めてしまうことが最近提唱された(Faletti et al., 1999)。

すなわち,通常の状態ではGnRH サージジェネレータはGABA ニューロンによって抑制されていて,卵胞が成熟してエストロゲンへの曝露が一定の値と時間を超えると,それが排卵準備完了のサインとなってGABA ニューロンの作用を止め,GnRH サージが起こるというメカニズムである。これはエストロゲンの正のフィードバック作用と呼ばれる(田中,1998)。
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URL:http://atopy.wakabagari.com/joukyu12.html
◆下行性抑制系
普段は介在性ニューロンであるGABA ニューロンによって下行性抑制系は抑制されているが、生体内オピオイドの刺激やモルヒネの投与によりオピオイドニューロンが活性化されると、 GABAニューロンが抑制されて、下行性抑制系が活性化される。

またGABAニューロンには抑制性セロトニン受容体である5−HT1Aが存在しているため、パキシル(パロキセチン)、トレドミン(ミルナシプラン)をはじめとする抗うつ薬はNE、5−HT再取り込み阻害作用により下行性抑制系を賦活化し、疼痛を緩和させる。
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2008年01月08日

自閉症で、早く閉じたり、後ろにずれたりするのではないかという臨界期は女性の性周期と似た仕組み?

『自閉症は、GSK3βやPSD95、nNOSのかかわる一酸化窒素の産生の調節が偏ることが原因で起こる障害だとおもいますが、エストロゲンもこの一酸化窒素の産生の調節を使い、周産期に臨界期のある脳の男性化にも関係し、その影響は思春期以降のテストステロンやエストロゲンの上昇により大きくでる。』

自分でも思わぬ方向に進んでいますが、GnRH パルスジェネレータ,GnRH サージジェネレータ、GABAやオピオイド(モルヒネ様の物質)、これらが制御する女性の性周期と痛覚の下行性抑制と中脳中心灰白質や腹内側核とかなり似ているようです。

とおもっているうちに、臨界期(感受性期)もGABAが関係するようなのでとおもって検索すると、下記の対談。どうも臨界期と女性の性周期は似た仕組みと考えられそうです。

『一つは、発生段階で使われた分子が、発達期に別の役割で現れることです。生後の脳では、できあがった神経回路の活動に応じて可塑性が起こりますが、そのとき発生段階の分子がおもしろい役割を果たしていそうです。』はアクチビンのこと?

『もう一つは、可塑性が起こっていけない時期に起こらないようにさせるブレーキ的な分子がわかってきました。可塑性が起こらない、つまり柔軟に脳が組み換えられないようにする分子が、いくつか存在しています。もしかしたら、可塑性を引き起こすメカニズムは常にあり、それをうまく抑えることで、臨界期らしき現象が現れているのではないかと考えています。』は、女性の性周期と似た仕組みが働くということ?

一酸化窒素にこだわるのも、研究している方が中枢神経系や記憶と似ていると書かれている免疫系や脊髄の痛覚にどちらも役割を果たしているというのにという『ずらし』の考え方からですが、女性の性周期や臨界期なども『ずらし』の考え方でいけるのかも。
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http://www.brain-mind.jp/newsletter/06/interview.html
脳のやわらかさ vol.1 ヘンシュ貴雄×大隅典子 対談

大隅 先生は発達段階を研究していらっしゃいますが、私は、その前の初期の脳ができあがるような時期と、大人になってから脳の神経細胞が生まれるところを見ています。昔は、3歳ぐらいのときに脳細胞の数がいちばん多くて、あとはどんどん死んでいくだけと言われていましたが、15年くらい前から、大人の脳でも神経細胞が生まれていることがわかりました。できあがった脳というのは、コンピュータの素子がピッシリ入っていて、入力によってつなぎかたが変わるだけではなく、素子が新たに加わっていくという見方になりました。大人の脳でも神経細胞が新たに生まれることができるのは、神経幹細胞がずっと残りつづけているからです。そして、最近、わかってきたことは、生まれる前の赤ちゃんの状態で使われている分子メカニズムが、大人の脳のなかでも働いているということです。ヘンシュ先生のところでいちばんホットな研究というと何でしょうか。

ヘンシュ 臨界期の脳の柔軟性を「可塑性」とよびます。私たちは、遺伝子を操作して、生後の脳の臨界期を操作することに成功しましたが、その臨界期の可塑性を今度は大人によみがえらせる手法を調べています。

大隅 CRESTのプロジェクトに含まれていますか。

ヘンシュ はい。二つほどおもしろい結果が出つつあります。一つは、発生段階で使われた分子が、発達期に別の役割で現れることです。生後の脳では、できあがった神経回路の活動に応じて可塑性が起こりますが、そのとき発生段階の分子がおもしろい役割を果たしていそうです。もう一つは、可塑性が起こっていけない時期に起こらないようにさせるブレーキ的な分子がわかってきました。可塑性が起こらない、つまり柔軟に脳が組み換えられないようにする分子が、いくつか存在しています。もしかしたら、可塑性を引き起こすメカニズムは常にあり、それをうまく抑えることで、臨界期らしき現象が現れているのではないかと考えています。

大隅 ブレーキのほうが大事かもしれないということですね。

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ヘンシュ そうですね。私は、最近、自閉症などは、臨界期の異常ではないかと考えています。自閉症はいまアメリカで増加していて、160人に1人が自閉症という高い率になっています。この原因はよくわかりません。病気が認識される率が高くなっただけなのか、実際に増えているのかはわかりません。
私たちの研究で、大脳皮質にある2種類の神経細胞、興奮性細胞と抑制性細胞では、抑制性細胞のほうが臨界期の開始の時期設定をしていることがわかっています。興奮と抑制のバランスがうまく取れない場合に、統合失調症や自閉症につながる可能性があります。遺伝子の研究からも、興奮と抑制を調整する遺伝子がかかわる可能性が見えてきています。特に自閉症は、3歳以降に正常な発達過程からずれますので、臨界期の神経回路網を組み換える大事な時期に、環境からの影響を受けて症状が出ていると考えられます。

大隅 自閉症の場合には、臨界期が早く閉じてしまうのですか。

ヘンシュ 仮説としてはそうです。早く閉じたり、後ろにずれたりするのではないかと。いま、ボストン小児病院で研究をしていますが、興奮と抑制のバランスを操作すると、少なくともマウスでは、臨界期を後ろにずらす、あるいは早めることができます。もしかしたら、自閉症では、ある脳機能は、臨界期をまだ迎えていない。別の脳機能は臨界期を早く閉じてしまい、天才的な面もあるし、機能が発達しない面もあるということになるのではないかと思います。

大隅 いまお話を聞いていて、興奮性と抑制性のバランスのところが非常に重要だと思いましたが、そこにもう一つ、私としては「役者」を加えたいと思うんです。それは、グリア細胞といわれるものです。グリアは、日本語では、神経膠細胞といいます。グリア細胞の一つ、アストロサイトは、血管と神経細胞の間の橋渡しの役割をしています。例えば血管のなかに入ってくるいろいろなホルモンやサイトカインなどの分子や栄養を神経細胞に届ける。そこの微調整が悪いと、いろいろなアンバランスが起きてくる可能性があります。
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http://phi.med.gunma-u.ac.jp/demography/birth2004s.pdf
人口学講義「出生の分析」
 中澤 港(群馬大学助教授)

1.3 ヒトの生殖の生物学的機構〜ミクロな,あるいは医科学的視点

月経周期をつかさどる上記一連の制御機構は視床下部−下垂体−卵巣系(hypothalamus-pituitaryovarianaxis) と呼ばれる。この系において鍵となるプロセスは,視床下部からのGnRH の分泌である。GnRH の分泌は,通常はパルス状で起こるが,LH サージの直前には一度に大量分泌される(サージ)。これらは別々の制御系によっており,それぞれGnRH パルスジェネレータ,GnRH サージジェネレータと呼ばれる。

パルスジェネレータは男性にもあるが,サージジェネレータは女性にしかなく,月経周期を形成する上で重要な役割を担っている(田中,1998)。神経内分泌系のメカニズムを調べることは技術的に難しいために,これらのジェネレータのメカニズムもまだ解明されたとは言い難いが,最近になっていくつかの知見が得られてきている。

なお,βエンドルフィンがGnRH ニューロンの働きを抑制するメカニズムとしては,GnRH の分泌を制御している一酸化窒素を伝達物質とする神経系を止めてしまうことが最近提唱された(Faletti et al., 1999)。

すなわち,通常の状態ではGnRH サージジェネレータはGABA ニューロンによって抑制されていて,卵胞が成熟してエストロゲンへの曝露が一定の値と時間を超えると,それが排卵準備完了のサインとなってGABA ニューロンの作用を止め,GnRH サージが起こるというメカニズムである。これはエストロゲンの正のフィードバック作用と呼ばれる(田中,1998)。

胎児は常にエストロゲンに曝されているが,胎児の血液中にはαフェトプロテインというエストロゲン結合タンパクがあってエストロゲンは脳血液関門を通過できない一方で,テストステロンは脳血液関門を通過でき,脳内でアロマターゼという酵素によって芳香化されてエストロゲンになり,脳内のエストロゲンレセプターに結合し,視索前野−視床下部や辺縁系の扁桃核に分布するこれらのレセプターをもつニューロンの「予定死」を促進したり阻止したりして雌型神経回路の形成を抑え(この過程でGnRH サージジェネレータが失われる),その後にテストステロンに反応する雄型神経回路が形成されるというのである(田中, 1998)。


その後の研究から,中脳中心灰白質と視床下部腹内側核との間には密接な神経繊維の連絡があることや,腹内側核がエストロゲンによって引き起こされる発情期特有の生理的変化の中枢であることから,中脳中心灰白質は腹内側核からの刺激を受け取ってロードシスという反射につなげる部位であると想定されている。腹内側核は満腹中枢としても知られ,GnRH レセプター,エストロゲンレセプターのみならずレプチンレセプターも存在し,腹内側核に隣接する弓状核(Arc) にもGnRH レセプターとレプチンレセプターが存在し,弓状核で産生されるニューロペプチドY (NPY) による食欲亢進シグナルがレプチンの結合によって制御されることが注目されている。思春期になって食欲がなくなるのも,これら神経伝達物質と視床下部ニューロン群の作用の結果と考えられるが,この点については次節で詳しく触れる。
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下行性抑制系
URL:http://atopy.wakabagari.com/joukyu12.html
◆下行性抑制系
普段は介在性ニューロンであるGABA ニューロンによって下行性抑制系は抑制されているが、生体内オピオイドの刺激やモルヒネの投与によりオピオイドニューロンが活性化されると、 GABAニューロンが抑制されて、下行性抑制系が活性化される。

またGABAニューロンには抑制性セロトニン受容体である5−HT1Aが存在しているため、パキシル(パロキセチン)、トレドミン(ミルナシプラン)をはじめとする抗うつ薬はNE、5−HT再取り込み阻害作用により下行性抑制系を賦活化し、疼痛を緩和させる。
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2008年01月05日

自閉症などの思春期以降の問題の元は、すでに周産期に臨界期がある脳の男性化に

自閉症は、GSK3βやPSD95、nNOSのかかわる一酸化窒素の産生の調節が偏ることが原因で起こる障害だとおもいますが、エストロゲンもこの一酸化窒素の産生の調節を使い、周産期に臨界期のある脳の男性化にも関係し、その影響は思春期以降のテストステロンやエストロゲンの上昇により大きくでる。

記憶の良いタイプの自閉症の人の予後が難しいのは、この周産期に臨界期のあるこの脳の超男性化が思春期以降にでてくるからだと。

このGSK3βが関係する疾患の統合失調症や躁うつ病(双極性障害)にもこの影響はあり、最近問題の「キレる」ということも。

マグネシウムの不足、炎症性の物質を多く生むリノール酸などの過剰が、細胞へのNMDA受容体からのカルシウム流入に影響し、この周産期に臨界期のある脳の男性化に影響しているのだろうとおもいます。
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http://www.env.go.jp/chemi/end/2002report/pdf_j/sakuma_j.pdf
エストロゲン受容体と脳の性分化
 佐久間 康雄 日本医科大学
行動上の性別はラットでは周産期に遺伝的性別とは関わりなく決定され、「臨界期」に実験的な操作により、性的表現型が容易に変わります。例えば、芳香化するアンドロゲンの1 種であるテストステロンは、雄性化を生じさせ、その結果、雄性の内分泌または行動が現れます。雌または新生児期に去勢した雄では、芳香化するアンドロゲンが存在せず、雌の特徴が現れます。

その産物であるエストロゲンは、核または未知の膜受容体を通して、ニューロンの成長、シナプス形成、髄鞘形成の遺伝子制御を制御し、脳の男性化を生じさせます。この素晴らしいシステムにおける問題は、エストロゲン結合タンパクが過量のエストロゲンによって飽和状態になると、エストロゲン結合タンパクはエストロゲン受容体に容易にアクセスし、エストロゲン様作用のある他の非ステロイド系分子は、ジエチルスチルベストロール(DES)の場合と同様に、認識されずに脳に進入し、エストロゲン受容体αと考えられるエストロゲン受容体と結合します。

エストロゲン受容体分子の独特の特性は、性分化の時期または成体においても、その発現はそのリガンドによって制御されていることです。

視床下部の腹内側核はエストロゲンの主なターゲットであり、雌ラットのロードシス反射を促進させます。この構造を電気刺激するとロードシス反射を強化し、腹内側核を電解により損傷するとロードシス反射を減少させます。
腹内側核が軸索投射する主なターゲットは、中脳中央灰白質の背側です。
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http://www.nilgs.affrc.go.jp/SEIKA/animal/13/1313/1313.htm
課題名 ヤギの摂食行動等に対する視床下部腹内核の一酸化窒素の役割
要 約 ヤギの発情期における摂食行動の低下は,主としてエストロジェンによってもたらされ,その作用を仲介する中枢神経機構として視床下部腹内側核の一酸化窒素が関与していることが示された。
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http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2007/071023/detail.html
カルシニューリン(酵素)の複雑な活性制御機構の謎を解く
- 酵母細胞を使い酵素活性の阻害因子が鍵を握ることを発見 -
独立行政法人 理化学研究所
◇ポイント◇
・免疫、心臓形成など生命現象に関係するカルシニューリン活性制御機構を解明
・合成と分解のバランスによるフィードバック阻害因子を活性調節
・臓器移植、心肥大、ダウン症などへの有効な薬剤開発に新たな道を提示

 カルシニューリン・シグナリングは、カルシウムによって活性化される細胞内情報伝経路で、免疫応答に関与するT細胞の活性化、心臓の形成、細胞分裂、行動記憶などを行うのに必要な様々な遺伝子群のスイッチを押します。
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http://www.j-tokkyo.com/2007/C07D/JP2007-224051.shtml
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【背景技術】
【0002】
グリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK3)は、二つの異性体(αおよびβ)からなるセリン/トレオニンタンパク質キナーゼであり、これらは異なる遺伝子によりコードされるが、触媒ドメイン内で高度に相同性である。GSK3は中枢および抹消神経系で高度に発現される。GSK3は、タウ、β−カテニン(catenin)、グリコーゲン合成酵素、ピルビン酸脱水素酵素および延長開始因子2b(eIF2b)を含む幾つかの基質をリン酸化する。インスリンおよび成長因子はプロテインキナーゼBを活性化し、これはGSK3をセリン9残基上でリン酸化し、それを不活性化する。
【0003】
アルツハイマー病(AD)痴呆およびタウパシー(taupathies)
【0004】
慢性および急性神経変性性疾患
成長因子で仲介されるPI3K/Akt経路の活性化は、神経細胞の生存において基本的役割を果たすことが示されている。この経路の活性化はGSK3βの阻害を引き起こす。最近の研究(Bhatら,PNAS 97:11074−11079(2000))は、脳虚血のような神経変性の、または成長因子の奪取後の細胞および動物モデルにおいて、GSK3β活性が増加することを示している。例えば、活性化部位のリン酸化は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病およびHIV性痴呆、虚血性卒中および頭部外傷のような慢性および急性神経変性性疾患で生じると一般的に考えられる細胞死の1種であるアポプトーシスを受けやすいニューロンで増加した。リチウムは、細胞内および脳内でのアポプトーシスの阻害において、GSK3βの阻害を引き起こした用量で神経保護性であった。従って、GSK3β阻害剤は、神経変性性疾患の進行を弱めるのに有用であろう。
【0005】
双極性異常(BD)
双極性異常は、躁病エピソードおよびうつ病エピソードを特徴とする。リチウムは、その気分の安定化効果に基づいて、BDを処置するために使用されてきた。
【0006】
統合失調症
GSK3は、多数の細胞性過程の、特に神経の発達中のシグナル変換カスケードに関与する。
【0007】
糖尿病
インスリンは、グリコーゲン合成酵素の脱リン酸化、従って活性化により、骨格筋におけるグリコーゲン合成を刺激する。休息状態において、GSK3は脱リン酸化によりグリコーゲン合成酵素をリン酸化し、そして不活性化する。
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http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2007/071113/detail.html
胎児期の不飽和脂肪酸代謝不全を示唆する統合失調症の遺伝子を発見
<補足説明>
※1 統合失調症
統合失調症は、人口の約1%が罹患すると言われている精神疾患で、思春期・青年期に発症することが多い。幻覚や妄想、思考の障害、自発性の低下、感情の平板化などを主要な症状とし、社会的機能低下も問題となる。統合失調症の発症には、他の多くの精神疾患と同様に複数の遺伝的要因と環境要因が複雑に相互に作用していると考えられているが、発症への個々の遺伝子の関与は大きくないといわれている。環境要因では、飢饉の他、妊娠中のインフルエンザ感染、冬季出生、周産期障害、母子のRh血液型不適合などが、統合失調症の発症率を若干増加させることが知られている。
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2008年01月04日

闘争逃走反応や恐怖に関係する中脳中心灰白質と、性行動や満腹中枢の腹内側核との密接な連絡

あけましておめでとうございます。

一酸化窒素を産生するnNOSの『非常に濃密な含有神経の分布がある』のが中脳中心灰白質で、闘争逃走反応や痛覚の抑制、恐怖反応の仲介などと関係する、まさに自閉症で問題になる箇所だとおもっていますが、その後ikettieさんのブログの『一酸化窒素と性周期』に出会い、nNOSが細胞外マトリクスの分解を通じて女性の性周期とたぶん関係するのだろうと。

そして、調べると中脳中心灰白質とエストロゲン、一酸化窒素の関係はいろいろでてきます。

満腹中枢でエストロゲンとも関係深い視床下部腹内側核がその中脳中心灰白質が密接に関係するようで、闘争逃走反応や痛覚の抑制、恐怖反応の仲介などと関係する中脳中心灰白質をその方からも考えないといけないようです。キレるとも関係しそうな中脳中心灰白質、自閉症の予後にも大きく関係しそうで、ここのコントロールは大事なところだと。

『テストステロンは脳血液関門を通過でき,脳内でアロマターゼという酵素によって芳香化されてエストロゲンになり,脳内のエストロゲンレセプターに結合し,視索前野−視床下部や辺縁系の扁桃核に分布するこれらのレセプターをもつニューロンの「予定死」を促進したり阻止したりして雌型神経回路の形成を抑え(この過程でGnRH サージジェネレータが失われる),その後にテストステロンに反応する雄型神経回路が形成されるというのである』

躁うつ病の薬リチウムは、GSK3βを通じ、このnNOSが細胞外マトリクスの分解する経路に働き、このルートの躁とうつを招く振動は細胞外マトリクスの分解する種類を変える酸化ストレスの変動によるモノではないかとおもっていますが、自閉症ではニューロンの「予定死」の変調が起こっていることを考えると、性周期を生むGnRH サージジェネレータが男性でも生き残っている可能性も。

中澤先生の「出生の分析」を是非直接読んでください。
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http://www.jstage.jst.go.jp/article/nl2001jsce/2003/110/110_9/_pdf/-char/ja/
脳の性分化と性行動抑制機構
山内 兄人 早稲田大·人間科学·神経内分泌

 アンドロゲンは脳の神経細胞内で芳香化酵素によりエストロゲンに変換されて作用する。これはエストロゲンにより脳の雄化が生じることを意味する。実験的にもエストロゲンが性分化を引き起こすことが証明されている。

このように、新生期のエストロゲンによって、中隔外側部から直接中脳中心灰白質に投射される神経の量が変化することが明らかになった。しかし、これが中隔の抑制力とどのような関係があるのか全く不明である。
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http://phi.med.gunma-u.ac.jp/demography/birth2004s.pdf
人口学講義「出生の分析」
 中澤 港(群馬大学助教授)

1.3 ヒトの生殖の生物学的機構〜ミクロな,あるいは医科学的視点

月経周期をつかさどる上記一連の制御機構は視床下部−下垂体−卵巣系(hypothalamus-pituitaryovarianaxis) と呼ばれる。この系において鍵となるプロセスは,視床下部からのGnRH の分泌である。GnRH の分泌は,通常はパルス状で起こるが,LH サージの直前には一度に大量分泌される(サージ)。これらは別々の制御系によっており,それぞれGnRH パルスジェネレータ,GnRH サージジェネレータと呼ばれる。

パルスジェネレータは男性にもあるが,サージジェネレータは女性にしかなく,月経周期を形成する上で重要な役割を担っている(田中,1998)。神経内分泌系のメカニズムを調べることは技術的に難しいために,これらのジェネレータのメカニズムもまだ解明されたとは言い難いが,最近になっていくつかの知見が得られてきている。

なお,βエンドルフィンがGnRH ニューロンの働きを抑制するメカニズムとしては,GnRH の分泌を制御している一酸化窒素を伝達物質とする神経系を止めてしまうことが最近提唱された(Faletti et al., 1999)。

すなわち,通常の状態ではGnRH サージジェネレータはGABA ニューロンによって抑制されていて,卵胞が成熟してエストロゲンへの曝露が一定の値と時間を超えると,それが排卵準備完了のサインとなってGABA ニューロンの作用を止め,GnRH サージが起こるというメカニズムである。これはエストロゲンの正のフィードバック作用と呼ばれる(田中,1998)。

外性器の性分化も胎生8週ころからテストステロンの作用で起こる。視床下部のGnRH パルスジェネレータによるGnRH 放出によって刺激を受けた下垂体からLH とFSH がパルス状に分泌され,これらが精巣の間質細胞を刺激してテストステロンを分泌させる。胎生14〜20 週頃にはテストステロン濃度が急上昇し,脳の性分化が起こると言われている(「アンドロゲンシャワー」と呼ばれる。アンドロゲンとはテストステロンに代表される男性ホルモンの総称である)。脳の性分化のメカニズムはヒトのデータは乏しいが,ラットの実験から得られた知見から,次のように推測されている。

胎児は常にエストロゲンに曝されているが,胎児の血液中にはαフェトプロテインというエストロゲン結合タンパクがあってエストロゲンは脳血液関門を通過できない一方で,テストステロンは脳血液関門を通過でき,脳内でアロマターゼという酵素によって芳香化されてエストロゲンになり,脳内のエストロゲンレセプターに結合し,視索前野−視床下部や辺縁系の扁桃核に分布するこれらのレセプターをもつニューロンの「予定死」を促進したり阻止したりして雌型神経回路の形成を抑え(この過程でGnRH サージジェネレータが失われる),その後にテストステロンに反応する雄型神経回路が形成されるというのである(田中, 1998)。


その後の研究から,中脳中心灰白質と視床下部腹内側核との間には密接な神経繊維の連絡があることや,腹内側核がエストロゲンによって引き起こされる発情期特有の生理的変化の中枢であることから,中脳中心灰白質は腹内側核からの刺激を受け取ってロードシスという反射につなげる部位であると想定されている。腹内側核は満腹中枢としても知られ,GnRH レセプター,エストロゲンレセプターのみならずレプチンレセプターも存在し,腹内側核に隣接する弓状核(Arc) にもGnRH レセプターとレプチンレセプターが存在し,弓状核で産生されるニューロペプチドY (NPY) による食欲亢進シグナルがレプチンの結合によって制御されることが注目されている。思春期になって食欲がなくなるのも,これら神経伝達物質と視床下部ニューロン群の作用の結果と考えられるが,この点については次節で詳しく触れる。
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http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2006/060418/detail.html
躁(そう)うつ病(双極性障害)にミトコンドリア機能障害が関連
- 躁うつ病の発症メカニズム解明につながる初めてのモデル動物の可能性 -

 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、躁うつ病(双極性障害)※1によく似た行動異常を引き起こすモデル動物を作り、ミトコンドリア機能障害※2が躁うつ病に関係していることを明らかにしました。

また、普通のマウスでは見られない、性周期に伴った顕著な行動量の変化も見られました。これは躁うつ病患者に見られる“躁”状態および“うつ”状態といった気分の波の変化によく似ています。これらの行動異常は、リチウムの投与により改善し、また躁うつ病患者に投薬すると症状が悪化する三環系抗うつ薬※5によってより顕著になりました。
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