『自閉症スペクトラムは、NMDA受容体のルートの一酸化窒素の産生効率が影響する記憶の再編成・編集に変調をもつ疾患だとおもいますが、そのNMDA受容体というシグナリングの増幅器は、左右脳の機能形成にも関係するので左脳の言語や右脳の空間感覚の発達にも偏りが、また他の精神疾患とも関係深い部位なのでそちらの影響も受ける疾患だとおもいます。』
その一酸化窒素と活性酸素のスーパーオキシドのバランスにより分解される細胞外マトリクスが変わり、その分解される細胞外マトリクスのひとつのへパリンあり、その変化によりへパリン結合性成長因子などや分泌中枢といわれる脳下垂体に影響するアクチビンなどが影響されますが、その影響を受ける一つに大事なドーパミン神経の形成・維持もあるのだとおもいます。
そしてその一酸化窒素と活性酸素のスーパーオキシドの産生に関係深いのがBH4(テトラヒドロビオプテリン)、このBH4が平常心のセロトニン、睡眠維持物質のメラトニン、警戒ホルモンのノルアドレナリン、生きる意欲のドーパミンの合成にかかわる補酵素でもあります。
BH4の不足するフェニルケトン尿症が小頭症の原因になるようで、息子は乳幼児の時から頭の大きいタイプなので、あるとすればBH4の過剰のタイプなのではとおもっていました。
そして目についたのが『マウスにLPS を腹腔内投与することにより,脳の青斑核におけるNE の代謝回転が亢進したのは,GCHの発現量の上昇によりTH の補酵素であるBH4 の生合成が増加し,結果としてTH 活性の亢進が起こったためであると考えられる.』
ノルアドレナリン神経の体内ストレス系のアラームシステムが対外ストレス系のアラームシステムを亢進させるのにBH4の増加が関係しているということだとおもいますが、息子の状態はBH4の過剰によりノルアドレナリン神経系が亢進していることで、かなり説明できるようにおもえます。
『炎症性サイトカインは細胞内のBH4産生を著しく増加させる』ようで、BH4の過剰を考えられるタイプではそれを抑えるためには抗炎症も視野にいれる必要があるのではとおもいますし、時として抗炎症剤がセルフコントロールを無くさせることにもこの辺りが関係していないかと。
また、BH4の一酸化窒素とスーパーオキシドの産生への影響は、ビタミンB3のナイアシンなどとも関係するようで、一筋縄ではいかないようですが、そのバランスの変化は分解される細胞外マトリクスが変え、人の体内環境を大きい影響を与える元凶になっているのかとも。
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http://www.nibb.ac.jp/catalogue/2006/pub_2829.pdf
基礎生物学研究所 統合神経生物学研究部門
受容体型プロテインチロシンホスファターゼζ (Ptprz) の関わる生命現象とそのシグナル伝達経路
Ptprz は主に中枢神経系に発現する,プロテオグリカンに属する唯一の受容体型PTP 分子である。我々はPtprzのリガンド分子として,ヘパリン結合性増殖因子であるPleiotrophin とMidkine を同定するとともに,基質分子としてGit1, p190 RhoGAP 等, さらに, 会合分子としてPSD-95 ファミリー等を同定してきた。
また,Ptprz 遺伝子ノックアウトマウス(図2B)の作成・解析によって,胃粘膜上皮細胞に発現している本分子がH. pylori 菌の分泌するVacA 毒素の受容体として働き,胃潰瘍の形成に関与していることを明らかにした。
更に最近,本ノックアウトマウスには空間学習・記憶に関わる海馬の機能・脳内報酬系として知られる中脳.辺縁系のドーパミン神経機能に異常があることを見出した。今後,本分子の脳機能,特に記憶,情動,行動における役割の解明とその分子機構に迫る
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http://www.p3000-signal.jp/tanpaku04.html
細胞接着の構造生物学的解明
図3.GTPシクロヒドロナーゼI
GTPシクロヒドロナーゼI (GTPCHI)は,Znイオンを活性中心にもち,GTPをテトラヒドロビオプテリンBH4へ変換する一連の反応の初発律速酵素である。
BH4はフェニルアラニンなどから神経伝達物質を生合成する酵素群や一酸化窒素合成酵素(NOS)の活性に必須の極めて重要な補酵素である。従って,GTPCHIの変異はジストニアやパーキンソン病などの神経疾患と関係する。
動物細胞においてはGTPCHIの活性はGFRP(GTPCHIフィードバック制御タンパク質)によって精密に制御されている。興味深いことに,GFRPは,正と負の両方のフィードバック制御を行っている。そこで,正のアロステリックエフェクターであるフェニルアラニンとの三者複合体(360kDa-不活性型複合体)の構造を分解能2.8Åで決定した。フェニルアラニンはGTPCHIとGFRPとの境界領域に結合して,GTPCHIを活性状態のコンホメーションに固定することがわかった。
[1is8; Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99, 1212-1217 (2002)]
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http://meme.biology.tohoku.ac.jp/evol2005/pic/page56-92.pdf
昆虫の多様な色彩世界における色素細胞の潜在的な機能を探る
中越元子(北里大・一般教育)
一方、ヒトではテトラヒドロビオプテリン(BH4)の芳香族アミノ酸水酸化反応やNO合成反応における補酵素活性が重要な意味を持つ。例えば、GTP-シクロヒドロラーゼI (GTP-CH I)はBH4 生合成における律速段階の酵素であり、その遺伝子変異は深刻な神経精神疾患を引き起こす。
しかし、昆虫におけるBH4 の生理学的機能については未知の部分が多い。本講演では、昆虫の色素細胞において、メラニンやオモク
ローム合成と深く関わるプテリジンの機能を探るため、プテリジンよりもオモクローム系色素を多量に蓄積するタテハモドキやカイコ
と、プテリジン系色素と尿酸を多量に蓄積するモンシロチョウなどで展開しているGTP-CH I に着目した研究を紹介したい。
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http://wwwsoc.nii.ac.jp/psj/jpsj/06404/064040071.pdf
26.マウス青斑核におけるGTP cyclohydrolase I mRNA の発現はLPS 投与により増加する
金子葉子,森 啓至,中島 昭,太田 明(藤田保健衛生大学医学部生理学I)
我々はこれまでに,グラム陰性桿菌の細胞壁から遊離されるリポ多糖(LPS)をマウスの末梢に投与すると,青斑核においてノルエピネフリン(NE)の生合成が増加することを報告してきた.今回我々は,LPS 投与によるNE 生合成増加のメカニズムを検討する目的で,NE 生合成に関与している酵素に着目し,その発現量の変化を解析した.
LPS 感受性であるC3H/HeN マウス(♂,8W)にLPSを腹腔内投与し,経時的に脳を取り出し,青斑核を摘出した.
Real-time PCR 法およびin situ hybridization 法でtyrosine hydroxylase(TH),GTP cyclohydrolase I(GCH),6-pyruvoyl-tetrahydropterin synthase(PTPS),sepiapterinreductase(SR)のmRNA の発現量を定量した.
5μgLPS 投与により,GCH mRNA の発現量のみが上昇し,その他の酵素の発現量に変化は認められなかった.
マウスにLPS を腹腔内投与することにより,脳の青斑核におけるNE の代謝回転が亢進したのは,GCHの発現量の上昇によりTH の補酵素であるBH4 の生合成が増加し,結果としてTH 活性の亢進が起こったためであると考えられる.
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http://bsw3.naist.jp/achievements/?page=dissertation_detail&dsn_code=157
研究業績の紹介 : バイオサイエンス研究科 奈良先端科学技術大学院大学
Maita, N., Hatakeyama, K., Okada, K. and Hakoshima, T. (2004) Structural basis of biopterin-induced inhibition of GTP cyclohydrolase I by GFRP, its feedback regulatory protein. J Biol Chem 279, 51534-51540.
GTP cyclohydrolase I (GTPCHI)は一酸化窒素合成酵素や神経伝達物質生合成経路を下流にもつフェニルアラニンやチロシンの水酸化酵素の制御に重要なビオプテリン生合成の初発律速酵素である。
動物では、ビオプテリン濃度を調節するために、GTP cyclohydrolase I feedback regulatory protein (GFRP)がGTPCHIとフェニルアラニン存在下では活性型あるいはビオプテリン存在下では阻害型複合体を形成することによってGTPCHIの活性を制御している。ここでは、ビオプテリンによって誘導されるGTPCHIとGFRPの阻害型複合体の結晶構造を報告する。
解析の結果、5分子のビオプテリンがそれぞれのGTPCHIとGFRPとの界面にある2つのGFRPにサンドウィッチされた10量体GTPCHIの構造が明らかになった。結合したビオプテリンは2つGTPCHIサブユニットによって形成されるクレフトに埋もれており、活性部位を形成しているペプチド領域における大きなコンフォメーション変化を引き起こし、開いた状態の活性部を誘発する誘導適合の構造変化をともなっていた。DOPA感受性ジストニアの変異位置を三次元構造上に置いてみることによって、酵素を不活性化する変異のみならず、GFRPによるGTPCHIの制御に影響を与えるかもしれない、ビオプテリン結合部位やGTPCHIやGFRPとの境界に位置する変異も見つかった。
(PubMed)
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http://physi1-05.med.toho-u.ac.jp/system_neuro/noradrenalin/index.html
ノルアドレナリン神経
(1)分布、活動、入力
(2)ストレスとHPA系
(3)A1/A2と室傍核
(4)覚醒との関係
(5)中脳中心灰白質
(6)扁桃体
(7)小脳への入力
(8)パニック障害
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ノルアドレナリン神経系(2)ストレス、HPA系、CRFとの関係青斑核NA神経系とストレス反応
他方、ストレス性入力を中継してアラーム・システムとして働くNA神経系がストレス性感情障害と関連することは、1960年代の「情動障害のカテコールアミン仮説」3以来、多数のデータで示されている。青斑核を刺激すると、ストレスに対する恐怖反応が増強し、逆に、青斑核を破壊すると、恐怖反応が抑えられる。青斑核NA神経はα2アドレナリン受容体による自己抑制機構を備えているが(前回の解説参照)、α2受容体アンタゴニストであるyohimbineを投与すると、青斑核NA神経活動が増加し、恐怖反応が増強する。逆に、clonidineで青斑核NA神経を抑制すると、恐怖行動が抑えられる。また、コカインはNAの放出を促進させる効果があるが、この薬の乱用は情動障害を誘発する。
室傍核CRF細胞と青斑核NA神経の相互作用
青斑核NA神経→室傍核CRF細胞の関係は単純ではないが、CRFが逆に青斑核NA神経の活動を亢進させることは確かなようである。Nemeroffのグループの報告6によると、ストレス刺激が青斑核のCRF濃度を増加させること、および、 CRFを青斑核に局所投与すると、恐怖反応が増強し、同時に前頭前野でのNAの放出が増大すること、が示されている。このCRFの起源は室傍核を含めて数カ所が考えらている(図1)。
いずれにせよ、CRFが青斑核NA神経の活動を増強させることは、ストレス反応における悪循環を形成させる危険があり、注目に値する。この悪循環を断つことが、ストレス反応を抑制するのかもしれない。
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ノルアドレナリン神経系(3)延髄A1/A2領域から室傍核への投射
バゾプレッシン(AVP)
AVP分泌には体液の浸透圧の変動も重要な因子であるが、この場合には、室傍核近傍の視索上核や脳室周囲器官(第三脳室前腹側部や終板器官など)に存在する浸透圧感受性細胞が賦活され、その情報が室傍核AVP産生細胞に神経性に伝達される2。
免疫-脳コミュニケーション
病原異物、細菌、ウイルスなどの侵入があると、免疫系が活性化され、白血球の一種であるマクロファージや単球からサイトカイン(インターロイキン-1、IL-1など)が血中に放出されて、異物を除去する免疫反応が出現する。この時、炎症性サイトカインは脳へ化学的メッセージ(感染発生の警報)を伝達する役割も果たす。この免疫-脳コミュニケーションは、視床下部・下垂体・副腎系(HPA系)を活性化して、副腎皮質からのコルチゾール放出を促進させる。コルチゾールは免疫抑制作用を持つので、サイトカインによるHPA系の活性化は、免疫反応の暴走に歯止めをかけるフィードバック作用であると考えられる。 HPA系の活性化の鍵は、前回の解説で説明したように、コルチコトロピン放出因子(CRF)を産生する室傍核細胞にある。
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もう一つの経路はA1/A2領域のNA神経を経由する長い神経回路である(図1)。腹腔内あるいは静脈中にエンドトキシンを投与して免疫反応を実験的に賦活すると、IL-1が肝臓のKupffer細胞で産生される。すると、肝門脈領域にあるIL-1受容体が賦活され、その興奮が腹部迷走神経を介して、孤束核に伝達される。それは次いでA1領域にあるNA神経を活性化し、室傍核でのNA放出を修飾して、CRF細胞を興奮させる、という神経経路である4。ただし、この場合にも上記のAVP細胞の場合と同じく、A1領域を介さない別経路が存在し、孤束核近傍のA2領域のNA神経も室傍核に投射して、CRF産生を促進させる。このA1/A2を介する神経経路は、感染発生の警報を脳に伝達する上では最も速いものである。 A1/A2領域のNA神経はHPA系を賦活するだけではなく、さまざまな病床感覚の発現にも関係する。発熱、眠気、食欲減退、不安などの随伴症状の発現への関与である。A1/A2領域のNA神経は、室傍核以外に視索前野/脳室周囲器官にも投射し、そこでPGE2の産生を促す4(なお、上記のように、PGE2の産生は_中のサイトカインが脳室周囲器官に作用しても発生する)。
PGE2は視索前野の体温中枢に働きかけて発熱を誘発したり、睡眠中枢に働きかけて徐波睡眠の増加を促したり、さらに、視床下部の摂食・満腹中枢に働きかけて、食欲を抑える働きにも関係する3。このように、出血や感染など、内部環境の危機的変動の情報は、迷走神経→孤束核→A1/A2のNA神経→室傍核という共通のルートを経由して視床下部に伝達され、それぞれ固有の神経内分泌反応(AVP、CRF)を発現させる。
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http://plaza.umin.ac.jp/JPS1927/fpj/topic/topic_123_46.htm
テトラヒドロビオプテリンとスーパーオキシド
藤田保健衛生大学医学部薬理学 野村隆英
キーワード:テトラヒドロビオプテリン,スーパーオキシド
テトラヒドロビオプテリン(BH4)はフェニルアラニン水酸化酵素,チロシン水酸化酵素,トリプトファン水酸化酵素など芳香族アミノ酸モノオキシゲナーゼの補酵素であり,カテコールアミンやセロトニン合成に重要な役割を果たしている.
また,BH4は一酸化窒素合成酵素(NOS)のコファクターとして一酸化窒素(NO)の産生にも関わっている.
さらに,BH4は生体内でスーパーオキシド(O2 −)を低下させる抗酸化物質として機能していることが報告され,BH4の生体機能の調節や病態発生への関与を考える上で大変に興味深い.
BH4が組織中のスーパーオキシドを低下させる機序としては次の2つが知られている.一つは,BH4がアスコルビン酸同様にスーパーオキシドを化学的に還元し消去することによるものであり,他の一つは,BH4がNOS にコファクターとして結合し,NOS のスーパーオキシド生成を抑制することによるものである(Free Radic Res.2003;37:121-127).
BH4量が不足した条件下ではNOS はNOではなくスーパーオキシドを生成することが知られている(Biochem J.2002;362:733-739).
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一方,Tajima らはBH4によるNAD(P)H 酸化酵素の活性化がスーパーオキシドの生成を引き起こすことを報告している(Br J Pharmacol. 2000;131:958-964).彼らはNO の血小板凝集抑制作用が外因性のBH4によって阻害されることを観察したが,この時,外因性BH4の作用はスーパーオキシドジスムターゼやスーパーオキシド生成阻害剤で抑制されることを見出した.又,NAD(P)H酸化酵素の特異的阻害薬を添加するとBH4の効果は解除された.彼らは,BH4が血小板のNAD(P)H 酸化酵素を活性化してスーパーオキシドを生成し,この結果,NO が不活化されるためにNO の血小板凝集抑制作用が阻害されると考えた.
BH4が生体内でスーパーオキシドを減少させる因子として振る舞うのか,逆に,酸化ストレスを生じる因子として作用するのかは,組織中のBH4濃度やその作用部位により異なるのかもしれない.炎症性サイトカインは細胞内のBH4産生を著しく増加させることが知られており,炎症という病態発生へのBH4の関与は興味ある問題であり,今後の詳細な検討が必要である.
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http://www.gak.co.jp/TIGG/54PDF/GT54-1.pdf
ヘパラン硫酸プロテオグリカンの新しい分解経路
石原 雅之 防衛医科大学校・研究センター・医療工学部門
ヘパリンやHS は細胞外マトリックスタンパク質、増殖因子、ケモカイン、細胞外スーパーオキサイドジスムターゼのような酵素等多くのタンパク質と相互作用する。すなわち、NOは細胞外マトリックスHSPGを分解することによりこれら機能分子の遊離を制御していると言える。マクロファージや好中球は多量のNOや超酸化物を放出し、過酸化窒素を生成する。これは、HSPGでなくヒアルロナンの分解を増加させる結果となる。関節骨液中のヒアルロナンの分解や合成の変化は、慢性関節リウマチと相関していることが知られている。
NOと超酸化物とのバランスが細胞外マトリックス中のどのグリコサミノグリカンを分解するかを決定し、いろいろな病態進行を制御する重要な要因であるもしれない。このように、NOや超酸化物が細胞外マトリックス代謝の制御と病理に関係していると言うことができる。
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