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2011年10月10日

樽平 銀座店

店に入ると、僕の直前に入店したお客さんがカウンターに座るところだった。僕も一人だったので、ひとつあけた隣に座った。そのお客さんは60半ば。まん丸な顔は血色がよく、笑顔を絶やさない感じのいい人だった。やけに築地に詳しく、昔の仲卸のことなどいろいろと教えてくれた。話し始めるきっかけは、僕が食べていた刺身だった。僕がお店の人と秋刀魚について話していると、「秋刀魚は今時期、美味しいでしょう」と話しに入ってきた。もちろん秋刀魚はおいしいけれども、僕が食べていたのは、〆秋刀魚だった。「ほぉ、それは珍しいですねぇ」と、ずいぶん興味をひかれた様子で、結局その人も〆秋刀魚を注文した。樽平は刺身のおいしさで売っている居酒屋ではないが、この〆秋刀魚はうまかった。

結局、お店の人を含めて3人でずいぶんと話し込んでしまった。営業時間も過ぎてみなそろそろ帰ろうとしていた頃、「どうしてそんなに築地に詳しいんですか」と板さんが聞いた。「いやあ、昔編集の仕事とかしていたもんで、その時の」とだけ言って、新橋駅への行き方を教わって帰って行った。どうやら東京の人ではないらしい。「金春湯はまだあるんですか」なんてことも聞いていた。仕事で東京によく来ていたのかもしれない。久々に銀座に飲みにきたのだろう。でも、僕はどこかでこの人に会っている気がする。写真で拝見しただけかもしれない。思い出せそうにないくらい淡い記憶だ。それにしても酒場は面白い。いつもこんな出会いがあって、2度目に会うことはほとんどない。あのおじさんにも、もう会うことはないんだろうと思う。



kunilog at 00:34│Comments(0)TrackBack(0)

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