※2014年2月の記事を2018年1月現在の状況へアップデートしました。
Bluetooth機器が音楽再生用機器に広く用いれられるようになったのには、オーディオデータ用のBluetoothプロファイル、A2DP(Advanced Audio Distribution Profile)の採用があり、これにより音楽用機器へのBluetooth適用が普及し始めました。
しかし、Bluetooth規格ではデータ転送量の都合から音声データを圧縮、転送し機器側にて再展開する必要があります。A2DPプロファイルの標準オーディオコーデック(音声データの圧縮方式のこと)であるSBC(Sub Band Codec)コーデックにおいては、多くの場合圧縮率1/20と高圧縮であることから音質の低下が避けられません。また、音声データを転送する際に圧縮データを展開→SBCへ再圧縮→転送→再展開という流れを取り、圧縮展開時の音質の劣化も発生します。さらに遅延が200msから250ms発生するため、動画再生時やゲームの効果音等において違和感を感じることが少なくありません。
そのため、最近ではA2DPのオプションコーデックであるAACやapt-Xを採用し、音質の向上を図っている機種が増加してきました。(SBCコーデックではライセンス費用が不要であったのに対し、これらコーデックではライセンス費用が発生することが普及の妨げであったようですが、高音質へのニースが高まってきてようやく普及の目をみたようです)
apt-Xは英CSR社(現在はクアルコム)が提供していているコーデックで、SBCコーデックと比較して低圧縮、低遅延、低データエラーレートであることが特徴です。圧縮率ではSBCの1/20に比較して約1/4、ビットレートではおおよそ352kbpsと、通常の圧縮音源を使用する分にはまずまずのレートを確保可能です。遅延ではSBCの200-250msに比較して約32msと圧倒的に少なくなります。また、データエラーの発生率が大幅に低下するため、通信が途切れにくくなります。
apt-Xコーデックを使用するには、受信機側のみならず送信機側もapt-Xに対応している必要があります。2013年モデル以降のAndroid機種であれば多くの機種がapt-Xに対応しているようですが、例えば人気のXperiaでも2013年冬モデル以降でようやく対応する等、メーカーやスマートフォンの価格帯によって対応が大きく異なるので注意が必要です。またiPhoneを中心としたiOSデバイスでは非サポートとなります。
さらにはハイレゾ相当の音源にも対応したapt-X HDも登場しています。こちらは48kHz/24bitというハイレゾ相当の転送が可能となり、理論上のビットレートは最大576kbpsと向上しています。また後述するLDACと比較し、データ転送レートが固定されているため電波環境の変化に対しても音質の影響が少なくなることが予想されます。
apt-X/apt-X HDともに次期android (Oreo)ではいずれもエンコーダーソースがオープンソース化されたことにより標準的に対応コーデックとして使用可能な状態になることが想定されるため、送信機器側の対応は今後急速に普及が進むものと推測されます(但し対応可否は各メーカーの判断によります)。
AACコーデックはAppleのiTunesストアで提供されれている楽曲で採用されているおなじみの音声圧縮コーデックです。元々がMpeg1 Audioを超える高圧縮、高音質を狙った規格であるために音質が優れること、特に送信側のソースがAACであれば、圧縮されることなくオリジナルのデータで転送されるため更に良いとされています。
AACコーデックに対応している機種として、最近のiOS機種(iPhone、iPod touch、iPad)が挙げられます。ただし注意してもらいたいのが、AppleがAACの詳細仕様を公開していないことから、機種による相性問題が発生しやすく、またiOSのアップデート等で不具合が発生する例が多いようです。AAC対応機種を購入する際には、iOSで不具合が発生していないか(OSのバージョンも含めて)確認を取ることをお勧めします。
LDACはソニーが開発したハイレゾ相当音源にまで対応した高音質コーデックです。最大990kbps(96/48kHz)のビットレートはここに挙げたコーデックの中で最高のスペックを誇ります。
欠点としてはソニー以外のメーカーへの普及が(特に送信側で)殆ど進んでいないことが挙げられますが、こちらについても次期Android(Oreo)でのオープンソース化によるエンコーダー実装が行われますので今後の普及が見込まれます。またデータ転送レートは可変タイプのため、Bluetoothの接続状況によってはその能力を最大限発揮出来ない可能性があります。
いずれにしても各コーデックに対応するには送信側機器(スマホ等)と再生側機器(スピーカー、イヤホン等)の両者ともそのコーデックに対応していることが必要であり、どちから一方のみでは対応されず標準コーデックであるSBCでの再生となってしまいますので注意が必要です。
これらapt-X/AAC対応機種にてSBCコーデックとapt-X/AACコーデックにて聴き比べると、やはり音質に大きさ差を感じることが多いと思います。しかし留意してもらいたいのは、スピーカーはアナログな部分の性能にも大きく依存します。apt-X/AACに対応しているスピーカーでも音質的には?と思うものもありますし、BOSEのように対応コーデックを公表していなくてもDSP処理により高音質を実現している例もあります。スペックのみにとらわれず、実際に視聴したり周りの評判等を確認して、納得行く機種選びを行うことを強くお勧めします。またより高音質にこだわるのであれば、wifi接続を考慮する等その他の方式まで選択肢を広げて検討するのが望ましいと思われます。