ポロロッカ;干潮の影響で、川に逆流現象が発生すること。南米アマゾン川で発生するものが有名。高さ数メートルの波が上流800kmにまで押し寄せる。
サーファーたちの冗談でしかなかった多摩川大逆流。冗談が多摩川流域を河口から上流へ遡るにつれて大事になってゆき...。多摩川流域を舞台とした、人の噂を題材とした連編小説。
相変わらず原宏一さんの小説は面白いです。最初は誰も信じていなかった噂が、不動産屋の思惑により話が徐々に大きくなり、官庁が絡むことによりレポートは書き換えられ、まさに波のように徐々に、静かに話が大きくなって真実味を帯びてくる様子はデマって怖いなあと思わせるものがあります。最初の一作目は、うーん?、という感じでしたが上流に進むにつれて面白くなってきましたw。
ただ、本作はそういったデマの伝播を主題としている訳で無く、ポロロッカという噂を耳にした多摩川流域に暮らす人々の生活を描くというか、デマをきっかけにほんの少しだけ人生を変えることの出来た人々のお話です。
面白いのは、みんなポロロッカなんて来ないと分かっていながらデマに乗ったり、便乗していることです。何でも良かったのです。何かを変えるきっかけが欲しかっただけで、そのきっかけがポロロッカだったのです。あえてデマに乗り、幸せを手に入れる。そう考えると、良いデマってあるんですねw。
個人的には気に入ったのは、カフェを経営する栞の回です。栞の恋の行方だけは結末でもはっきりせず(良い方向であることは匂わせるのですが)、すごく気になります。
多摩川、個人的には多摩沿線道路を良く使用しますので馴染みがありますが、関東の河川でも何か別格の雰囲気を感じますね。ジョギング、バーベキュー、野球、サッカー...。何か、河川敷には幸せ一杯という雰囲気で、ちょっと気持ちが落ち込んでいる時には通るとさらにブルーになりますww。そんな幸せ溢れる多摩川から、本作に登場する人々も幸せのパワーをもらったのかなあ、と感じたりしました。