削り屋 (小学館文庫)
上野 歩
小学館
2015-03-06



歯科大に通い、歯科医になる予定だった剣拳磨。ひょんなことから大学を辞め、あてもなく歩いていた時に見つけた旋盤工募集の看板。歯科実習で研磨の腕を褒められたことを頼りに旋盤工の道を歩みだすのだが…。

旋盤、って言っても分かんない人多いんだろうなあ。ましてやNC機でない汎用旋盤なんて。私自身、学校の実習で使ったくらいかなあ。まあ、仕事上ではそれなりに接点があったので分かりますが。

基本的なストーリーは旋盤による金属加工の奥深さにハマった主人公が、汎用旋盤に拘る頑固な師匠の下様々な困難を乗り越え、ついには技能五輪を目指す青春ストーリーなのですが…、まあ何と勢いのあるストーリーというか、荒削りと言うか…。

例えば剣磨が最初に大学を辞めるくだりであるとか、永遠の(?)ライバル、コンツェルンの息子との因縁とか、強引なストーリー展開が結構目立つように思いました。部分部分で見ていくと、最初に旋盤を触って上手く削れなかったけど上達していく場面や、東日本大震災により応援に行かされる話であるとか、良いなあと思う場面が多いのですが、全体として見ると細かいプロットを丹念に拾って全体のストーリーを組み立てていく力が欠けているのかなあと感じました。

しかしですね、この部分が良くなるととんでもなく化ける作家さんかもしれません。題材の選定、力のある筆力、章単位でのストーリーの組み立てには眼を見張るものがあるように思います。それだけに何とも荒削りな仕上がりなのが惜しいというか、あっ、旋盤が題材だけにわざと荒取りしただけのかw、だとしたら凄すぎるや。

実際のところ、私もこういった精密加工に関わっていたことがあるのですが、もう殆どが段取り命ですね。ツールの選定、ツールの状態チェック、ワークの固定(旋盤ならバイトの固定、かな?)。後はNC機だろうが汎用機だろうがあんまり差は無いかなあ。全くの素人が覚えるまでの時間は大きく違うけど。決して職人の世界!とか変に持ち上げず、うまく旋盤に関わる事象を紹介しているように思いました。