日々妄想 -書籍と家電の個人的記録-

一介のサラリーマンの日々の読書記録と家電レビューの覚え書きです。 文庫本を中心に、時々家電の衝動買い、さらにはへっぽこ登山まで?

カテゴリ:著者別(か行)

デビュー (実業之日本社文庫)
今野 敏
実業之日本社
2013-08-06




19歳のアイドル、高梨美和子は実は既にカルフォルニア大学バークレー校の修士号を持つ天才美少女。20歳まではアイドルを行うという契約のもと、その素顔を隠して活動を行う。売春、クスリ等の芸能界に巣食う不祥事を、その頭脳と美貌を活かして潜入捜査、 時には危険な目に遭いつつも、周りの人々の協力を得て次々と解決してゆく。 

うーん、最初の感想はちょっとイマイチだったかなあ。設定はかなり面白いですので、どちらかと言えば美少女頭脳派ミステリー(何じゃそりゃ?)かと思っていたのですが、事件解決のきっかけとなる美和子の推理が甘いと言うか、あまりにも唐突過ぎて少し興醒めしてしまいました。天才美少女アイドルという設定が充分に活かされていないように感じました。

一方で、脇役陣の個性が光る感じで、こちらで何とか物語を破綻させていないかなあ、という感を持ちました。いつも美和子に振り回されるマネージャーの岡田二郎、著名作曲家の井上鏡四郎、スタントマンの長谷部修、等々。これらの人々の美和子へ対する助けで物語が深くなっているというか、救われています。

そして何と言っても本作で一番良かったのが、この4人が集う秘密のバー。一見さんや騒がしい客を寄せ付けない、 客を選ぶこの店では美和子も素の顔に戻って、という場面が非常に魅力的です。ああ、こんな行きつけのバーが欲しいww、なんて思ってしまう訳で。

こうして見てくると、一番期待していたミステリーの部分は期待外れだった面があるものの、周辺の描写、 舞台の設定はさすがの今野さん、上手で引き込まれるなあという感じです。調べてみたら本作は1992年初出と、20年以上前の作品なんですね!。それを考慮すると、全く色褪せていないというか、う〜ん、大したものです。






鳥取県、JR因美線の郡家駅から若桜駅まで19.2kmの第3セクター鉄道である若桜鉄道。この途中にあるうぐいす駅の駅舎が、取り壊し解体か撤回かで揺れている。この駅舎、著名な建築家であるフランク・ロイド・ライト氏(帝国ホテルを設計した人)の設計であるとのこと。解体推進派である村長の芹沢豪造と、反対派である京大名誉教授の三ノ輪重次郎。この二人は幼馴染でもあり、そして二人とも関わりの深い豪造の孫である涼太。涼太はこの二人からそれぞれお互いに有利になる証拠を出すために駅舎について調べるように命じられたのだが…。


どうです、ここまでのあらすじを見るとすごく面白そうじゃありません?建築ミステリーか、はたまた鉄道ものなのか、とにかく期待いっぱいで読み進めたのでしたが…。


結論としては、期待していたほどで無かったというか、どちらかと言えば期待外れと言っても良いと思います。それでも最後まで読み切れたのは、平易な文章おかげでしょうか。基本的にはギャグミステリーに近い分類で良い気がします。しかしギャグミステリーには、ミステリーものとしての根幹がしっかりしていることが前提となり、そこに各種ギャグが散りばめられて面白さが倍増するように思います。本作は、肝心のストーリー展開が甘いというか、ややご都合主義で簡単に人が死んだり、話が急展開する場面が多く、読んでいても? と思うことが多々ありました。


肝心の駅舎の謎についても、やけにあっさりと謎解きが終わっていますし、結末についても選挙終盤の討論会の場面でほぼ先が読めてしまっていますし…(この場面についても話を強引に変えすぎなのでは?という気がしますし)。


とにかく、あまり読後感が良く無かったとしか言えません。最初の期待値が大きかっただけに尚更です。私はあまりこのブログで否定的な見解は書かないように心がけているのですが、今回に関してはちょっと…、ま、私とこの作家さんとの相性があまり良く無かったということなのでしょう。

限界集落株式会社 (小学館文庫)
黒野 伸一
小学館
2013-10-08



 都心から中央高速道で2時間、さらに下道で1時間以上。仕事を辞め、都心から逃れるため祖父の家にやってきた主人公の多岐川優。そこは殆どが老人の、まさに限界集落と呼ぶにふさわしいド田舎…。田舎の風習と現実に戸惑いつつも、ふとしたことから集落存続のために動き出すことに…。


限界集落とは、65歳以上の高齢者が50%以上となり、冠婚葬祭等の社会的共同生活の維持が困難である状態(Wikipediaより)。


こんな環境の中、集落生き残りのために集落営農を掲げ、効率化と収益の改善を始めた優。当然のように変化を受け入れない抵抗勢力、自治体との確執、そして恋愛…。やがて経営は軌道に乗るが、とんでもない事件が待っていて…。


と、読み物としてはいろいろな要素が盛り込まれ、ストーリー展開も良く大変楽しめる内容になっていると思います。個人的には中央道で2時間、そこからさらに1時間ということで山梨県、しかも南部のほうか! と勝手に舞台を具体的に決めて一人盛り上がって読み進めておりましたw。


舞台設定の巧さもさることながら、本書の一番の魅力は、個性豊かな登場人物にあるように感じます。主人公の優は実は優秀なファンドマネージャー、どことなく影のある正登、あかねに代表される農業研修生の面々、そして頑固な正登の娘、美穂。あれっ、限界集落たるべき(?)ご老人があまり出てきませんねw。そうです、主役はあくまで若年世代です。限界集落の存続には、継続的な若年世代の流入が不可欠なのですから、納得出来る話です。


しかし老人達も、集落に活気が出てきたことで活き活きと変化していく様子が随所に描かれ、地域活性化には経済的な面のみならず、精神面での充実が必要であることを認識させられます。


私自身、市町村合併により広大な面積となった自治体の(どちらかと言えば)中心部に住んでおり、この辺りの事情は何と無く分かるのですが、実経験から考えるとここまで都合良く農作物が売れるか?、とか、優の完全無欠な完璧さが鼻につくよな?、等ケチをつけたくなる部分も有るわけですが、まあ小説ですからw。あくまで読み物として考えれば、コンパクトシティ構想、ゆるキャラ(?)によるイメージ戦略等、トレンドもきっちりと押さえられており総じて良く出来た小説であるように感じました。

このページのトップヘ