日々妄想 -書籍と家電の個人的記録-

一介のサラリーマンの日々の読書記録と家電レビューの覚え書きです。 文庫本を中心に、時々家電の衝動買い、さらにはへっぽこ登山まで?

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TVドラマにもなった新野剛さんのあぽやんシリーズの第3弾。某J〇Lを思わせる経営危機により大航ツーリストにもリストラの波が・・・。成田空港所の閉鎖、大航エアポートサービスへの業務委託・・・。翻弄し、疲弊する”あぽやん”、遠藤くん。遂には心折れて・・・。

個人的には大好きなあぽやんシリーズの第3弾です。ただ、ちょっと今までと違うというか・・・。タイトルが示すように、熱い遠藤君のあぽやんっぷりが見られる訳ではなく、ちょっと戸惑います・・。本シリーズの持ち味が薄れてしまっているような・・。

あまりに突然の環境変化に孤軍奮闘するもついには心折れてしまった遠藤君。しかし周りの人々の”あぽやん魂”が復帰を後押しし、というのが基本ストーリーです。そのため、あぽやん1、2を踏まえず本作から入るとこの世界には没頭しにくく、面白くないかもしれません。逆にずっと本シリーズを読んできた人にとっては懐かしのメンバー勢ぞろいでニヤッとしてしまうかもしれません。馬場さん、今泉さん、同期の須永等々。もちろん森尾さんもですよ。個人的には古賀さんに出てきてもらいたかったのですが、これは流石に無理か・・。

また本作から出てくる名脇役もいますので新展開はあるのですが、基本的には何というか、同窓会的なノリが強く滲んでおり、作品としては遠藤君と森尾さんの2人の関係に注目したあぽやん2がクライマックスかなあと思います。まあもちろんこの2人の関係の進展も描かれる訳ですが、もう安心してみていられる感じですね、この付かず離れずの関係というか、ツンデレな森尾さんのキャラはww。いやあ、TVドラマでの桐谷美玲さんはハマり役ですねぇ、本作を読んでいてもどうしても森尾さん=桐谷美玲から離れられません。

それでも遠藤君の病気、成田空港所の閉鎖をきっかけに各人の忘れていたあぽやんとしての誇りが蘇る点が本作の見所でしょうか。最後の展開からも本作であぽやんシリーズは一旦終了かな、と思わせますが個人的には新天地での遠藤君の熱い仕事っぷりを見てみたい気がします。是非、新シリーズでの復活を期待したいですね。

迷える空港 あぽやん3 (文春文庫)

恋するあずさ号 (実業之日本社文庫)
坂井 希久子
実業之日本社
2015-04-04



名前が同じだというだけで新宿駅から夜8時発の特急あずさに飛び乗った介護士の梓。何も無い諏訪湖畔で自殺志願者に間違われ、連れて来られたのは高遠町の民宿。のんびりとした田舎に癒されつつも、東京に戻れば介護の仕事にあまり望まない恋人との結婚話…。東京と高遠を往復するにつれ、梓を救ってくれた陶芸家の桂に心惹かれていくが…。

一言では言い表せない本作ですが、筆者は題材についてよく調べ上げて書いているよなあというのがよく伝わってきます。桜の名所である長野県旧高遠町(現伊那市)の風景や季節毎の空気感、訪問介護という仕事の内容や働いている人、家族の心情。これらの描写が物語へと没頭していく良い脇役となっています。

しかし何と言っても本作最大の見所はこの頼りない、どこか抜けている主人公の梓でしょう。小学生からお婆ちゃんまで自然と友達になってしまう子供っぽさ、ここで?、と登場人物に言わしめる泣き虫ポイントの外れっぷり…。題名の通り、一応はラブストーリーではあるのですが、もうどちらかと言えば梓の抜けっぷりのほうを楽しんでしまうくらいで。

この抜けているという感覚、筆者はポイントにしているようで、良い記述があったので紹介します。"人は誰でも頼りない、抜けている部分があって、だからこそ他人を必要とし、抜けている部分にはまる人が相性が良いということだと思う"。うーむ、深いですね。

しかしいよいよ恋人と婚約か、という日に梓はやらかしてしまいます。その後は桂ともギクシャクし始め、とようやくラブストーリーに復帰、ラストを迎えます。そして文庫本に追記されたというエピローグで、幸せな結末を予感させてくれ、ある意味梓の保護者的感覚で読んでいた私はホッとしたものですw。

いや、しかしこれ読むと田舎に住みたくなっちゃうよね、上手いよねえ、書き方が。えっ、今でも充分田舎に住んでるんだけどww。

枕女優 (河出文庫)枕女優 (河出文庫)
著者:新堂 冬樹
出版:河出書房新社
(2010-06-04)



枕女優。役を獲得するために監督、プロデューサー等に性的接待を行う女優のこと。本作の主人公、鳥居水香が入った芸能プロダクションでは組織的に枕営業が行われていた…。水香も芸能界で有名になるために枕営業を行い、そしてトップ女優へと登りつめていく…。

タイトルからして刺激的な本作品、枕営業や芸能界の生々しい描写もさることながら、最も印象に残ったのは役作りに没頭していき、常に女優・鳥居水香に成り切ってゆく鈴木弘子(鳥居水香の本名)の精神が崩壊していく点でした。女優になるためには、全てを捨てなければならない、全てを捨て、常に女優を演じ続けられるものだけが生き残れる世界…。そして弘子は最終的には…。

どちらかと言えば下世話な内容かな、と読み始めた本作ですが、最終的には細かい心理描写に圧倒されました。新堂冬樹という作家は、"忘れ雪"のような純愛作品と、"悪の華"のような芸能・風俗界のエンターテイメント作品に大きく分かれるように思います。私個人では、前者の作風のものについて好んで読んでおり、後者の作風については今回初めて読んだのですが、高いエンターテイメント性に加えて、純愛路線に見られるようなきっちりとした心理描写も加わってかなり魅力的に感じました。これは別作品も読んでみなければ。

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