日々妄想 -書籍と家電の個人的記録-

一介のサラリーマンの日々の読書記録と家電レビューの覚え書きです。 文庫本を中心に、時々家電の衝動買い、さらにはへっぽこ登山まで?

カテゴリ:著者別(な行)

ネオ・ゼロ (集英社文庫)
鳴海 章
集英社
2017-11-17



鳴海章さんの人気シリーズ、ジークこと那須野治朗が活躍するゼロシリーズ。時は1990年代初頭、今回は従来のファントム(F4)から離れ、時期FSXで苦汁を舐めた日本政府が極秘に開発を進めた試験戦闘機、ネオ・ゼロを操り北朝鮮核施設爆撃に向かうのだが・・・。

うーん、私はこの種の軍事系小説大好きなので選り好みはしないタイプなのですが今回はちょっと不完全燃焼です。何が原因なのかな、と考えるとこの愛すべき主人公、那須野の良さがあまり前面に出ていない点なのかもしれません。まだ見たことも無い試験機、ネオ・ゼロに乗ることになった経緯、過去との葛藤、この辺りのストーリーに厚みが無かったように感じました。この厚みの無さが終盤の急転直下の展開に伏線としてうまく繋がっていかないというか、”えっ?”とただ驚きで終わってしまったのが残念でなりません。

もっと那須野の不器用な生き方を全面に押し出して、追い詰められてネオ・ゼロに乗る等、出撃に向かうまでのプロセスを丁寧に描いて欲しかったなあと感じます。今回の内容ではちょっと那須野のキャラが立ちません。個人的にはもっとハードボイルドタッチに描いて欲しいなあw。

そうは言っても鳴海さん、実力充分ですから読ませますww。試験機ネオ・ゼロのディテール、90年代ならそうだよなあという戦闘機に対する新機能も時代の空気を十分に感じさせるものでさすがです。そしてラストの急展開にも驚かされます。とにかく各要素で見ていけばレベルが非常に高い、ただそれらが上手く融合していないというか・・・、本当にそこだけが残念でした。まあそうは言っても完読していますので、要は楽しかったということでww。

神様のカルテ0 (小学館文庫)
夏川 草介
小学館
2017-11-07



信州松本を舞台とした内科医・栗原一止の人気シリーズ、神様のカルテ。シリーズ1から3と来て、ここで何故か0(ZARO)。これは通常の神様のカルテシリーズとは違うということは容易に予想がつきますね。

内容としては栗原の医学生時代、研修医時代、そして各時代の前後の栗原を取り巻く人々を描いた短編集です。そのため、ゼロという名称から本作に入るとちょっと栗原ワールドに没入出来ず、燃焼不良を起こしてしまいそうです。やはりシリーズ1から読み進めてもらわないと、ん?となってしまいそうです。

一方で本シリーズを読み進めている方にとっては最高の短編集でしょう。まさに内科医・栗原一止の原点ともいうべき、何故本庄病院に入り、内科医になったのか?を周囲の人々も含め描いた内容にはなるほどと思う所も多いように感じます。

それぞれの短編ともに味わいがあるのですが、やはり白眉はタイトルの由来となった”神様のカルテ”でしょう。栗原の研修医時代、1人の末期癌患者と医者としてだけならず、1人の人間として向き合う葛藤、患者の容態が悪化している中、大狸先生こと板垣とただ日本酒を飲み交わし待つシーン、そして”神様のカルテ”の意味・・・。まさに本シリーズの原点、タイトルの由来となった短編であり、神様のカルテシリーズの持ち味が全て詰まっているように感じます。特に本シリーズを読み進めてきた方にはこの一作だけでも読む価値大です。

ただ個人的に残念なのは、個性的な御嶽荘の面々や妻・榛名とのやりとり、栗原の夏目漱石への敬愛っぷりや冬の凛とした松本の空気感、うまそうな日本酒の数々・・、こういった本シリーズの魅力的な部分はあまり前面に出てこないため、栗原ワールド全開、とはならず物足りない面は感じます。まああくまで番外編ということなのでしょう。

いずれにしても本シリーズを読み進めている方には必読の一冊でしょう。そうでない方は、ぜひシリーズ1から読み進めて頂くほうが本作をより楽しめるように思います。




先刻からこの種の仮想戦記ものも悪くないなあと思い、連続して同ジャンルのものを読んでみました。北朝鮮軍の偽装工作によって反日感情が高まる韓国。対日制裁を行おうにも経済的、政治的な対処は不可能。世論の高まりにより軍事的なオプションを取るしか無く…。対馬、続いて五島列島を急襲。自衛隊は平時に対処は出来ずに…。


中村秀樹さんと言えば元潜水艦乗り。尖閣諸島沖海戦や第2次日露戦争などの潜水艦が主役の仮想戦記がありますが、本作もこれらの作品と同じ流れに則ったものになります。仮想戦記ではありますがトンデモ兵器のようなものは無く、現状の兵力を元にした仮想シミュレーション+αといった感じです。


そして巻末で友好国である韓国に対し有事の備えを行うのは批判が出るのは承知の上で、しかし最悪の事態に備えることこそが本当に最悪の事態が発生することを防止する有効な手段であることを作者は述べています。仮想戦記で有りながら、実に冷静、中立な立場で本作を書いたことが伺え、嫌韓で書かれたようなものとは一線を化しているように思います。


本作で最も印象的だったのは、戦場での優劣を決定付けるのは決して正面装備(武器そのものの強さ)だけではなく、陸海空の連携、データリンクやネットワークにより装備の性能を最大限発揮させる手法が大事で有ることでしょうか。派手で目立つ装備ばかり目に付きますが、本当に重要なのは地味な部分の地道な整備な面なのでしょう。この部分で日韓に大きな差が生まれるのだなあと強く感じました。


もちろん中村さんお得意の潜水艦戦もありますが、今回は主役とまでは行かないかな。細かくみれば日本の領土に侵略した時点で国際社会からの制裁があるでしょうし、米軍はどうした?、等有るのですが総じて沈着冷静でリアリティの高い仮想戦記に仕上がっており、オススメできます。

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