日々妄想 -書籍と家電の個人的記録-

一介のサラリーマンの日々の読書記録と家電レビューの覚え書きです。 文庫本を中心に、時々家電の衝動買い、さらにはへっぽこ登山まで?

カテゴリ:著者別(な行)




先刻からこの種の仮想戦記ものも悪くないなあと思い、連続して同ジャンルのものを読んでみました。北朝鮮軍の偽装工作によって反日感情が高まる韓国。対日制裁を行おうにも経済的、政治的な対処は不可能。世論の高まりにより軍事的なオプションを取るしか無く…。対馬、続いて五島列島を急襲。自衛隊は平時に対処は出来ずに…。


中村秀樹さんと言えば元潜水艦乗り。尖閣諸島沖海戦や第2次日露戦争などの潜水艦が主役の仮想戦記がありますが、本作もこれらの作品と同じ流れに則ったものになります。仮想戦記ではありますがトンデモ兵器のようなものは無く、現状の兵力を元にした仮想シミュレーション+αといった感じです。


そして巻末で友好国である韓国に対し有事の備えを行うのは批判が出るのは承知の上で、しかし最悪の事態に備えることこそが本当に最悪の事態が発生することを防止する有効な手段であることを作者は述べています。仮想戦記で有りながら、実に冷静、中立な立場で本作を書いたことが伺え、嫌韓で書かれたようなものとは一線を化しているように思います。


本作で最も印象的だったのは、戦場での優劣を決定付けるのは決して正面装備(武器そのものの強さ)だけではなく、陸海空の連携、データリンクやネットワークにより装備の性能を最大限発揮させる手法が大事で有ることでしょうか。派手で目立つ装備ばかり目に付きますが、本当に重要なのは地味な部分の地道な整備な面なのでしょう。この部分で日韓に大きな差が生まれるのだなあと強く感じました。


もちろん中村さんお得意の潜水艦戦もありますが、今回は主役とまでは行かないかな。細かくみれば日本の領土に侵略した時点で国際社会からの制裁があるでしょうし、米軍はどうした?、等有るのですが総じて沈着冷静でリアリティの高い仮想戦記に仕上がっており、オススメできます。

神様のカルテ 3 (小学館文庫)
夏川 草介
小学館
2014-02-06



信州松本、本庄病院で働く内科医、栗原一止とその妻、ハルの人気シリーズ第3段。前作にて恩師を喪った栗原であるが、今回は新しい小幡先生を迎え、また栗原自身にも新たな旅立ちが…。


このシリーズはいつ読んでも不思議で、無茶苦茶面白いとか、泣けるといったことは無いのですが物語にスッと入り込めて、そのまま没頭して読み続けてしまうのです。今回は何故ここまで自然に読み込めてしまうのか、ということを検証して見たいと思います。


まずは何と言っても、過酷と言っても過言ではない地方医療の現実があり、栗原の勤務状況も冷静に見ればかなり酷いのですが、そこにばかり焦点をあてても物語が重くなってしまいます。この過酷な状況を感じさせない表現がうまいというか、物語としての面白さとうまくバランスが取れていると感じます。


このバランスが効いている一番の要素が、一止の妻であるハルの存在であることは間違いないでしょうが、個人的には御嶽荘の面々もかなり物語の中で存在感を持っているように思います。常に病院内の人々の話が続くと、少し読み疲れてしまうというか…。


また、所々、信州という地域の空気感をうまく表現しており、これは長野県に関わったことがある人であれば良く分かるのではと思います。一番なるほど、と思ったのは暖かい院内から寒い屋外に出た時の刺すような冷たさの表現。-5℃くらいでは冷たいのがマイナス2桁に達すると痛い、に変わる感覚。この屋外に出た時に感じる刺すような痛さはは私が長野にいる時に感じる一番好きな(そして、一番嫌いでもある)瞬間でもあり、少し懐かしくも感じてしまいます。


また松本という舞台も実に良く、近隣の人であればモデルとなった病院はすぐにわかる訳ですが、松本に少なからず関わりのある私にとっても全ての情景が目に浮かび、さらに物語に没頭させてくれます。


また所々に登場する日本酒(この銘柄がまたマニアックというか…)、文学(今回、ある本が物語のキーとなります)、これら全てが栗原の物語を引き立ててくれている点が心地よい読後感につながっているように思います。


本作では栗原自身にも新たな旅立ちの時が訪れます。ですが、今後も栗原は医療の現実に悩み、苦しみながらも周りの人々の力を得ながらしっかりと成長していける、そう確信出来る内容だと感じました。基本的にはシリーズものですので最初から読み進めるのが筋だと思いますが、この3作目が個人的には一番印象深いものとなりました。


尖閣諸島沖海戦―自衛隊は中国軍とこのように戦う (光人社NF文庫)尖閣諸島沖海戦―自衛隊は中国軍とこのように戦う (光人社NF文庫)
著者:中村 秀樹
出版: 潮書房光人社
(2012-11-30)

いわゆる仮想戦記のジャンルに入るかと思いますが、トンデモ兵器はでてきません。20xx年、中国が尖閣諸島に侵攻したら、という想定で話が展開します。

仮想戦記にありがちな特定の主人公(○○少佐の視点での戦闘等)は最小限に、淡々と事項が進行していきます。当初は日本政府の事なかれ主義により事態は急激に悪化してゆきます。F15戦闘機20機以上が壊滅、護衛艦8隻が一度に壊滅…。序盤のやられっぷりは半端無く、仮想戦記らしからぬ淡々とした進行と相待って恐ろしさを感じます。

特に政府の対応。決して仮想の話では無いと感じてしまうのは、昨今の中国に対する前政権の対応があるからでしょうか。

後半からは自衛隊が立て直し、筆者が自衛隊の潜水艦乗りだったということもあって潜水艦を中心に仮想戦記らしい展開となってようやく一安心です。

全く米軍が全面に出てこない(有人の先島諸島が占拠されても)、国際社会で中国批判が発生しないなど、?と思う点がありますがそんなことは筆者は承知済み。巻末で後半は自衛隊有利に展開しすぎているのもわざと。つまり仮想戦記として楽しく読ませるためにアレンジを行っており、筆者の想定する未来は…。最後まで読み切って、筆者の本意とすることが分かると、寒気が走ります。

筆者は元海上自衛隊の幹部。我々の考える戦争観との違いを明確に説明あいてくれています。我々は戦争というと国民総動員の全面戦争をいめーじしてしまうが現代の戦争は地域紛争が中心であること、当事者以外では平常な生活が展開されるということ。

もちろん積極的に戦争を行う必要性は全く無いと思います。しかし、今日の戦争を正しく理解することこそが無駄な戦争を避け、しいては国を守るということに繋がるのだな、と思いました。

やや極端なマスコミに対する描写、シミュレーションの形を取っているように見えて実は仮想戦記であり、読む人に(特に軍事知識の疎い人には)誤解を与えてしまうのでは?と思う点はありますが、現在タイムリーな話題を正しい見識で小説に仕立て、我々に尖閣諸島を守るには?を考えさせてくれる良い書籍だと思います。当初は中国の領海侵犯をマスコミが大々的に報じていたのに、今では殆ど報道もありませんしね…

このページのトップヘ