日々妄想 -書籍と家電の個人的記録-

一介のサラリーマンの日々の読書記録と家電レビューの覚え書きです。 文庫本を中心に、時々家電の衝動買い、さらにはへっぽこ登山まで?

カテゴリ:著者別(は行)

侠飯 (文春文庫)
福澤 徹三
文藝春秋
2014-12-04



タイトルは"おとこめし"と呼びます。何かイイっすね。就職活動中の大学生、若水良太は、自宅マンション前にてヤクザ同士の抗争に巻き込まれ、何故か組長の柳刃竜一を六畳一間の1kマンションに匿うことに。巨大な冷蔵庫を購入し、お取り寄せグルメにて次々と料理を作り出す竜一。果たして二人の結末は?

いやあ、不思議な作品でした。この種の料理小説であれば、章毎にキーとなる料理があり、そこに何らかのエピソードなり事件が絡んでくるものなのですが、本作ではその事件が無いんです!。まあ、些細な出来事はあるのですが(就職活動の面接、等)、端的に言ってしまえばオッさんが料理作って、大学生が飯食うだけ、という恐ろしい展開ですw。

だが、それが良いww。もう、何というか物語に広がる無骨さが堪らないです。"自分、不器用ですから..."といつ言い出してもおかしくない展開です。そして料理も無骨で、まさに漢の飯。だが、それが良いwww。とんでもなく美味しそうなんですよね。大体、最初の料理、というか飯の炊き方からもう来ています。米研ぎの1回目は良い水で、研ぎ方から炊き方まで…。一番印象的だったのは、カマバタですね。もう、どれも自分で真似できそうな次元なのがまた良いのです。

無論、ただ飯食っているだけではなく、竜一と出会って良太と周囲の友達が徐々に成長していく過程も描かれてますし、最後には竜一のあっと驚く展開もありますので、小説としても充分に楽しめる作品だと思います。しかし、何と言っても白眉なのは料理のシーンです。ホント、ただ飯食っているだけなのにこんなに楽しく読み進められるなんて…、恐るべし、福澤徹三ワールドといった感じでした。

旅屋おかえり (集英社文庫)
原田 マハ
集英社
2014-09-19





元売れないアイドルで崖っぷちタレントの丘えりか。唯一の仕事は旅番組の"ちょびっ旅"。そんな唯一の仕事も些細なミスで失い、所属事務所共々失業の危機に。そんな折におる婦人から告げられた一言"私たちの代わりに旅をしてくれませんか?"。こうして前代未聞の旅行代理人が誕生したのだが…。

いやあ、面白かったです。旅行代理人としての大きな仕事は本書内では主に2つあり、1つは難病を患っている女性の代わりに秋田県角館に桜を観にいくこと、もう1つは仕事を失うきっかけとなった元番組のスポンサー、江戸ソースの会長の依頼です。1つ目の依頼に対してはまさに(?)王道、旅行く途中に出会った様々に人に助けられ、初期の目的を達成、さらには依頼人家族の問題をも解決、そして2つ目の依頼には…、これは読んでのお楽しみということで。

先ほど、内容的には王道、と書きましたが、そうなのです。ストーリー展開的には至ってオーソドックスなのですが、深みがあるというか。これは何なのだろうと読後、改めてキーとなる部分を読み返して感じたことがあります。それは"旅とは何ぞや?"という本質に対する明確な答えがあって、本書は構成されているということです。これがあるからこそ、筋の通った良い物語になっているのではないでしょうか。

それが結末に書かれている次の一文に現れていると感じました。

"旅先には、きっと誰かが待っている。そして帰ってくれば、おかえり、の一言が待っている。それが何よりも嬉しくて。"

この文章に、本作の全てが詰まっています。帰るところがあるからこそ、旅をすることが出来る。新しい出会いにワクワクする。これが旅の本質なのでしょう。そういえば、主人公の名前もおかえりですし^_^。

もちろん、丘えりの帰りを待っている人達のことも忘れてはいけません。個性的な事務所の社長、元番組の仲間達、そして故郷礼文島で待っている母親…。これら脇役陣についてのプロットもしっかりしていることも、本作のキーワード"おかえり"を際立たせることに役立っているように感じます。

全く個人的な話ですが、過去数年間、年間海外出張日数が150日を超えるような日々が何年か続きました(国内も含めると年の半数以上)。まさに旅暮らしという生活で、刺激的でもあり楽しい面も多々有りましたが、精神的にはかなり厳しかったです。そんな時にはとにかく帰るんだ、この想いのみで日々過ごしていたことを思い出します。とにかく人は帰る場所があってこそ、そんなことを本作を読みながら懐かしく感じました。続編があると面白いのだけれど、結末を考えるとちょっと難しいのかな?

東京ポロロッカ (光文社文庫)
原 宏一
光文社
2013-12-05



ポロロッカ;干潮の影響で、川に逆流現象が発生すること。南米アマゾン川で発生するものが有名。高さ数メートルの波が上流800kmにまで押し寄せる。


サーファーたちの冗談でしかなかった多摩川大逆流。冗談が多摩川流域を河口から上流へ遡るにつれて大事になってゆき...。多摩川流域を舞台とした、人の噂を題材とした連編小説。


相変わらず原宏一さんの小説は面白いです。最初は誰も信じていなかった噂が、不動産屋の思惑により話が徐々に大きくなり、官庁が絡むことによりレポートは書き換えられ、まさに波のように徐々に、静かに話が大きくなって真実味を帯びてくる様子はデマって怖いなあと思わせるものがあります。最初の一作目は、うーん?、という感じでしたが上流に進むにつれて面白くなってきましたw。


ただ、本作はそういったデマの伝播を主題としている訳で無く、ポロロッカという噂を耳にした多摩川流域に暮らす人々の生活を描くというか、デマをきっかけにほんの少しだけ人生を変えることの出来た人々のお話です。


面白いのは、みんなポロロッカなんて来ないと分かっていながらデマに乗ったり、便乗していることです。何でも良かったのです。何かを変えるきっかけが欲しかっただけで、そのきっかけがポロロッカだったのです。あえてデマに乗り、幸せを手に入れる。そう考えると、良いデマってあるんですねw。


個人的には気に入ったのは、カフェを経営する栞の回です。栞の恋の行方だけは結末でもはっきりせず(良い方向であることは匂わせるのですが)、すごく気になります。


多摩川、個人的には多摩沿線道路を良く使用しますので馴染みがありますが、関東の河川でも何か別格の雰囲気を感じますね。ジョギング、バーベキュー、野球、サッカー...。何か、河川敷には幸せ一杯という雰囲気で、ちょっと気持ちが落ち込んでいる時には通るとさらにブルーになりますww。そんな幸せ溢れる多摩川から、本作に登場する人々も幸せのパワーをもらったのかなあ、と感じたりしました。

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