日々妄想 -書籍と家電の個人的記録-

一介のサラリーマンの日々の読書記録と家電レビューの覚え書きです。 文庫本を中心に、時々家電の衝動買い、さらにはへっぽこ登山まで?

カテゴリ:著者別(ま行)




東京都豊島区ですら消滅可能性都市(2040年に若年女性人口が半減する)に挙げられて話題となった本書(増田レポート)、賛否両論あるのは知っていましたがどう見ても消滅するであろうど田舎に住む身分としてはww読まない訳に行かないであろうと今更ながら読んでみました。いや、これかなり衝撃的であるとともに、私が肌で感じている地方の現実にかなり近いものを感じました。

実は私は大都市圏からクソがつくほどの田舎に引っ越して10年程度経ちます。途中、東京等に引っ越してはいるのですが基本は田舎住まいです。ある時、興味があって自分の住む街の人口分布を調べてみて、今までに見たことの無い人口分布図を見て驚いたことがありました。18歳を境に、人口がグッと減るんですね。特に女性が顕著で、これが18歳以下の水準に戻るには、40歳以上なんですよね。こんな若年世代だけいない街なんて有り得るのか!、と落胆した記憶があります(何故に落胆?)。

理由は簡単で、本書で述べられている通り、雇用が無いんですよね。雇用が無いから(特に女性)、大都市圏へ向かう。そして生活環境の厳しさから未婚化が進む、と。少子化対策というと、すぐに子育て支援、移民受け入れ、という話になりがちですが本書では一番の原因は未婚化、そして地方の生活環境が悪化していることと明言しています。そして東京への一極集中は更なる少子化を招くだけであると。私自身は、東京等の大都市に人口を集中させたほうが良いと考えていただけにこの点はちょっと意外でした。

そして地方では既に高齢者の減少すら始まっている事実(介護/福祉の雇用ですら失われつつあるという事実、年金総支給額も減少し、地方経済が縮小していくという事実)、そして東京ですらも後追いで同様の事象に見舞われるという予測、これらは結構強烈です。本書で印象的だったのは、出生率では少子化は語れないということ、大事なのは子供の総数であるということ、実に的を得ています。

もちろん、少子化に対する対応策も述べているのですが、語弊を招くような言い方をするとある水準以下の地方は切り捨てに近い状態とし、拠点都市までおいて人口流出を食い止めるという案、これももう日本はここまで追い込まれているのだなあ、と感じずにはいられません。

そして、切り捨てられる地方に住んでいる身としては、もう手遅れなんだろうなあとも感じずにはいられません。ボリュームゾーンであった第3次ベビーブーム世代は徐々に結婚出産適齢期を外れ始め、団塊の世代もここ数年で消費を減らしていくのは目に見えています。この10年で地方に増えたものは…、葬儀場とコンビニかなあ。両者ともにここ5年は頭打ちで、コンビニは数を減らしつつあるし。娯楽系は壊滅的ですね。ボウリング場は潰れ、カラオケも半減に近いし、パチンコも大手資本以外は全滅。これが現実です。なのに巨額を投じて新しいバイパス道路を建設していたりするし…。本書では、特色ある地方の産業活性化例を示しているけれど、大多数の地方都市にはそのような力があるとも思えないし…。

ホント、地方の雇用ってびっくりするくらい厳しいですよ。安月給とはいえ、東京基準で給与が支払われる企業の製造拠点で働いていますからまあまあな訳なのですが、現場のおばさんなんかに話を聞くと、旦那より給料が高いのは当たり前なんですよね。旦那の給料いくらなんだよ、とツッコミたくなる訳でして。ホント、公務員と年金生活者くらいしかお金を持っていないわけですよ、地方なんて。

とまあ、愚痴りたくなるくらい本書のデータは衝撃的で残酷なのです。少なくとも本書を手に取って、巻末にある全国の市町村の将来人口予測で自分の馴染みのある街の項目だけでも読んでほしいです。今後の選挙における投票基準等すらも変わりそう、それくらい自分にとって本書はインパクトがありました。

路地裏ビルヂング (文春文庫)路地裏ビルヂング (文春文庫)
著者:三羽 省吾
販売元:文藝春秋
(2013-01-04)
販売元:Amazon.co.jp


 古ぼけた雑居ビルで働く人々に起こる人生の様々な、ほんの小さな転機を綴った連作短編です。古ぼけた雑居ビルである辻堂ビルヂングにはその賃料の安さからちょっと変わった店子たちが集まります。怪しげな訪問販売、無認可保育所、零細個人塾等々。これらの会社で働く人々の人生のちょっとした葛藤、閉塞感をビルの住人との交流の中で少しづつ解決していくストーリーです。
登場人物としては個性豊かな面々が出てきます。最初は訪問販売会社の加藤くん。最初はちょっと頼り無さげな新入社員だったのに、中盤からはすっかり子分を従えたボスキャラに変身してしまっているのが笑えます。そして良い味を出しているのが、1階の飲食店店員、通称"ガンジャ"。おでん、沖縄料理、ホルモン焼きと形態を変えても常に不味いという奇跡の味と片言のニホンゴが物語に一服の清涼感を与えてくれます。

この1階の飲食店こそが"辻堂ビルヂング"のオーナーであるお嬢さんのお店であり、やがてビルの立ち退きに当たってその生い立ちも明らかになってきます。そして、ビル立ち退き後の爽やかなラストに心癒されることとなりました。

このような物語を読むと、自分の生活と思わず対比させてしまうもので、残念ながら私は雑居ビルのような場所で勤務したことがありません。正確には雑居ビルのような場所で働いたことはあるのですが、雑居ビルと呼ぶにはあまりにも巨大なオフィスビルであり、店子同士の交流などあるはずもなく…。そして現在はいわゆる自社建物で勤務のためさらに他組織との交流が無く…。愚痴になってしまってますね。

自分の体験をも踏まえると、人生のちょっとした転機って自分の回りの異質なもの(ヒト)との交わりから始まることって多いような気がしています。逆に同質な人たちとのみ関わっていると、次第に閉塞感を感じてしまうというか…。

本作品は、個性豊かな店子が集まることによって生じるそんな異質なもの同士の出会いによって人生の転機を切り開く人々の姿をうまく描いているように思いました。

な〜んて言ってもすぐ故障するエレベーターは嫌だし、全然効かないエアコンも嫌だし…、やっぱり快適なオフィスのほうが良いかなw。いや、快適な雑居ビルがベストか?

このページのトップヘ