日々妄想 -書籍と家電の個人的記録-

一介のサラリーマンの日々の読書記録と家電レビューの覚え書きです。 文庫本を中心に、時々家電の衝動買い、さらにはへっぽこ登山まで?

カテゴリ:書評(小説)

神様のカルテ0 (小学館文庫)
夏川 草介
小学館
2017-11-07



信州松本を舞台とした内科医・栗原一止の人気シリーズ、神様のカルテ。シリーズ1から3と来て、ここで何故か0(ZARO)。これは通常の神様のカルテシリーズとは違うということは容易に予想がつきますね。

内容としては栗原の医学生時代、研修医時代、そして各時代の前後の栗原を取り巻く人々を描いた短編集です。そのため、ゼロという名称から本作に入るとちょっと栗原ワールドに没入出来ず、燃焼不良を起こしてしまいそうです。やはりシリーズ1から読み進めてもらわないと、ん?となってしまいそうです。

一方で本シリーズを読み進めている方にとっては最高の短編集でしょう。まさに内科医・栗原一止の原点ともいうべき、何故本庄病院に入り、内科医になったのか?を周囲の人々も含め描いた内容にはなるほどと思う所も多いように感じます。

それぞれの短編ともに味わいがあるのですが、やはり白眉はタイトルの由来となった”神様のカルテ”でしょう。栗原の研修医時代、1人の末期癌患者と医者としてだけならず、1人の人間として向き合う葛藤、患者の容態が悪化している中、大狸先生こと板垣とただ日本酒を飲み交わし待つシーン、そして”神様のカルテ”の意味・・・。まさに本シリーズの原点、タイトルの由来となった短編であり、神様のカルテシリーズの持ち味が全て詰まっているように感じます。特に本シリーズを読み進めてきた方にはこの一作だけでも読む価値大です。

ただ個人的に残念なのは、個性的な御嶽荘の面々や妻・榛名とのやりとり、栗原の夏目漱石への敬愛っぷりや冬の凛とした松本の空気感、うまそうな日本酒の数々・・、こういった本シリーズの魅力的な部分はあまり前面に出てこないため、栗原ワールド全開、とはならず物足りない面は感じます。まああくまで番外編ということなのでしょう。

いずれにしても本シリーズを読み進めている方には必読の一冊でしょう。そうでない方は、ぜひシリーズ1から読み進めて頂くほうが本作をより楽しめるように思います。




TVドラマにもなった新野剛さんのあぽやんシリーズの第3弾。某J〇Lを思わせる経営危機により大航ツーリストにもリストラの波が・・・。成田空港所の閉鎖、大航エアポートサービスへの業務委託・・・。翻弄し、疲弊する”あぽやん”、遠藤くん。遂には心折れて・・・。

個人的には大好きなあぽやんシリーズの第3弾です。ただ、ちょっと今までと違うというか・・・。タイトルが示すように、熱い遠藤君のあぽやんっぷりが見られる訳ではなく、ちょっと戸惑います・・。本シリーズの持ち味が薄れてしまっているような・・。

あまりに突然の環境変化に孤軍奮闘するもついには心折れてしまった遠藤君。しかし周りの人々の”あぽやん魂”が復帰を後押しし、というのが基本ストーリーです。そのため、あぽやん1、2を踏まえず本作から入るとこの世界には没頭しにくく、面白くないかもしれません。逆にずっと本シリーズを読んできた人にとっては懐かしのメンバー勢ぞろいでニヤッとしてしまうかもしれません。馬場さん、今泉さん、同期の須永等々。もちろん森尾さんもですよ。個人的には古賀さんに出てきてもらいたかったのですが、これは流石に無理か・・。

また本作から出てくる名脇役もいますので新展開はあるのですが、基本的には何というか、同窓会的なノリが強く滲んでおり、作品としては遠藤君と森尾さんの2人の関係に注目したあぽやん2がクライマックスかなあと思います。まあもちろんこの2人の関係の進展も描かれる訳ですが、もう安心してみていられる感じですね、この付かず離れずの関係というか、ツンデレな森尾さんのキャラはww。いやあ、TVドラマでの桐谷美玲さんはハマり役ですねぇ、本作を読んでいてもどうしても森尾さん=桐谷美玲から離れられません。

それでも遠藤君の病気、成田空港所の閉鎖をきっかけに各人の忘れていたあぽやんとしての誇りが蘇る点が本作の見所でしょうか。最後の展開からも本作であぽやんシリーズは一旦終了かな、と思わせますが個人的には新天地での遠藤君の熱い仕事っぷりを見てみたい気がします。是非、新シリーズでの復活を期待したいですね。

迷える空港 あぽやん3 (文春文庫)

侠飯3 怒濤の賄い篇 (文春文庫)
福澤 徹三
文藝春秋
2016-08-04



深夜ドラマになっている福澤徹三さんの人気シリーズ、侠飯の第3弾。今度はホンマもんのヤクザの組が舞台?。安定の面白さがありますので迷わず購入です。

半グレ集団の1人、渋川卓磨はヤクザ組長自宅を地上げせよと命令されたが、実は何と卓磨の祖父の家。祖父で渋川組の組長、渋川伊ノ吉は弱ってはいるものの昔気質の任侠。決してうんとは首を振らず、卓磨は見習いとして渋川組に住み込みで働く事に。そこに現れたのが柳刃と火野の例の2人組。1人1食300円以内決められている中で侠飯が炸裂する!!

いやあ、ストーリーはもう予定調和というか、3作目ともなるとプロットが固定化しちゃっており新鮮味は無くある意味水戸黄門的な流れであるのですが、舞台が本当の任侠である所が今回のミソ。任侠と言っても渋川組は暴力団指定すら受けられない弱小かつ、堅気には迷惑をかけない主義なのでまあ善良ww。柳刃が昔の任侠の流儀に則って渋川組に居候する流れがもう面白くって。今までで一番ツボにはまっている感じです。

そして相変わらずの美味そうな料理。今回一押しは鶏つくねピエンロー。ピエンローは妹尾河童さんのレシピで有名ですが、材料等に余分なものを入れてはいけない所がポイント。でも侠飯はアレンジしちゃうんですw。もうこの場面だけで福澤さん、分かってるなあとww。

まあストーリーは最後の一発逆転という流れは変わりませんし、ちょっとラブストーリーを絡めつつ、ダメ主人公が更生していく流れは変りませんので本作にサプライズを求めてはいけませんw。安心して読み進められる漢の料理小説であるとww。もちろんですが前作のキャラクターもちょっとだけ登場しますよ。

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