日々妄想 -書籍と家電の個人的記録-

一介のサラリーマンの日々の読書記録と家電レビューの覚え書きです。 文庫本を中心に、時々家電の衝動買い、さらにはへっぽこ登山まで?

カテゴリ:書評(小説)




製菓会社の広報宣伝部に異動となった山田が突然言われた一言、「お前は今日から当社のゆるキャラだ!」。あまりに突然のことに戸惑いつつも一生懸命職務を全うしようとする山田。縦割り冷たい視線、宣伝の失敗等の苦難を乗り越えて…。

いや、これは掴み一発勝負ですね。何だよ、一介の社員がそのままゆるキャラだなんて。そう感じてしまった時点で完全に作者の思うツボですねw。こんな感じで突拍子の無い話が突き進んでいくかと思っていたら、中身はある意味全うなお仕事系小説でした。どちらかと言えばもう青臭いくらいの。

良いなあと思ったのは、所々に山田の名言(?)が有るんですね。幾つか挙げていきます。"人生フルスイング"、"半径5メートルの範囲で変えていければ良い"等々。どうです、何か良くないですか?。何となく、部長が山田をゆるキャラに選んだ理由が分かるような気さえしてきましたよw。

無論、この手の小説につきものな個性豊かな同僚、恋愛話も盛り込まれていますので不足無し、お仕事小説の王道路線ですので文句無くオススメできるかと。

さて、現実の世界に戻って山田のような存在が周りにいるかと言うと…、うーん、難しいですね。山田のような発言の裏には打算が隠れていたりするし。今時、あまりに保守的な役員等はすぐに外されるし。現実の世界はやっぱり小説より厳しいや。

恋するあずさ号 (実業之日本社文庫)
坂井 希久子
実業之日本社
2015-04-04



名前が同じだというだけで新宿駅から夜8時発の特急あずさに飛び乗った介護士の梓。何も無い諏訪湖畔で自殺志願者に間違われ、連れて来られたのは高遠町の民宿。のんびりとした田舎に癒されつつも、東京に戻れば介護の仕事にあまり望まない恋人との結婚話…。東京と高遠を往復するにつれ、梓を救ってくれた陶芸家の桂に心惹かれていくが…。

一言では言い表せない本作ですが、筆者は題材についてよく調べ上げて書いているよなあというのがよく伝わってきます。桜の名所である長野県旧高遠町(現伊那市)の風景や季節毎の空気感、訪問介護という仕事の内容や働いている人、家族の心情。これらの描写が物語へと没頭していく良い脇役となっています。

しかし何と言っても本作最大の見所はこの頼りない、どこか抜けている主人公の梓でしょう。小学生からお婆ちゃんまで自然と友達になってしまう子供っぽさ、ここで?、と登場人物に言わしめる泣き虫ポイントの外れっぷり…。題名の通り、一応はラブストーリーではあるのですが、もうどちらかと言えば梓の抜けっぷりのほうを楽しんでしまうくらいで。

この抜けているという感覚、筆者はポイントにしているようで、良い記述があったので紹介します。"人は誰でも頼りない、抜けている部分があって、だからこそ他人を必要とし、抜けている部分にはまる人が相性が良いということだと思う"。うーむ、深いですね。

しかしいよいよ恋人と婚約か、という日に梓はやらかしてしまいます。その後は桂ともギクシャクし始め、とようやくラブストーリーに復帰、ラストを迎えます。そして文庫本に追記されたというエピローグで、幸せな結末を予感させてくれ、ある意味梓の保護者的感覚で読んでいた私はホッとしたものですw。

いや、しかしこれ読むと田舎に住みたくなっちゃうよね、上手いよねえ、書き方が。えっ、今でも充分田舎に住んでるんだけどww。




台風直撃の東京を、北朝鮮の特殊部隊が襲撃、高層マンションを占拠する。訓練された部隊にSATは壊滅、自衛隊特殊部隊も輸送ヘリを撃墜され甚大な被害が。自衛隊総合情報部の真下は、犯人の所在と真意を突き止めるために3人の部下たち共に捜査に乗り出したのだが…。

人気作家のゼロシリーズの第2作ですね。始めに断っておきますが、私はこの種のクライシスミステリーが大好きですのでどうしても評価が甘くなってしまいます。大筋のストーリー展開としては予期せぬ襲撃、警察組織の敗北、自衛隊投入、となる前の政治的駆け引き、戦力の逐次投入による自衛隊の敗北、と王道的な展開です。この種の作品を読んだことが無い人に取っては息詰まる展開なのでしょうが、まあ読み慣れていますからww、ああ、いつもの展開が来たな、といった感じです。

しかし後半からはちょっと様相が変わってきます。自衛隊による一大攻勢、とはならず、さらに劣勢が続いてしまいます。焦点は情報官の真下とその部下達に当たってきます。この辺りが、良くある日本国内テロ小説とは異なる点でしょうか。

そして犯人達の真意については、ミステリー的要素が高く、充分に楽しめます。その真意については、え〜っ、そういうことだったの?となって結構良かったです。そうです、本作はクライシス物の体裁を取っていますが、本格ミステリーでもあると。さすが、売れているだけのことはあります。そんな訳で一気読みです。これは第1作の"生存者ゼロ"も読まないと。

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