多世界の歩行者

       小説や専門書の感想だったり映画の感想、考えた事などを書いています。 人様に読んでいただくような文章ではないのであしからず。         《ネタバレを含んでいる場合がありますのでご注意ください!》


"作品解説とあらすじ" 



 この作品は2016年に刊行された森見登美彦先生の幻想小説です。

 あらすじは10年前京都の「鞍馬の火祭り」の日に突然消えてしまった長谷川さんという女性を 神隠しのように突如失踪した。そしてその後その時に居合わせていた英会話スクールの仲間たちは再び「鞍馬の火祭」に参加しようということになりその中で立ち寄った画廊で「夜行」という作品が飾ってありそれを見た一緒に来ていた人々は自分達とのつながりを感じ、「夜行」に関する思い出を話し始めるといった内容です。

 という話で構成としては第一夜の尾道から最終夜の鞍馬の五章に別れています。

 その一つ一つが英会話スクールの仲間の一人一人が「夜行」に関する思い出話をしていくといったものです。
しかもその一つ一つが怪奇小説や幻想小説を思わせるような、深く暗い闇を思わせるような内容ばかりでした。

"ホラー風味の異色作" 



 私自身、森見先生の本は読んできていたつもりでしたが、以前のものとは全く異質で面喰いました(とはいってもきつねのはなしはまだ読んでいませんが……)。

 以前の四畳半神話体系や夜は短し歩けよ乙女、それから有頂天家族など京都を舞台にして不思議で幻想的それに笑えたり泣けたりくらい話だったりしたのですが、この作品では一様に暗い物語の中を登場人物たちが恐る恐る進んでいくといった感じで完璧に意表を突かれました。

 ホラーというほどではありませんでしたが登場人物たちが闇に飲まれていく様は十分恐怖を良い起こすもので、良く言えば新境地で驚き悪く言えば期待外れといった感じでした。

"この世界はつねに夜" 



 それはともかく私はこの本を読んでいると昔子供の頃に、夜の森の中を肝試しで一人で歩いた時の事を思い出します。
 森の中は葉の揺れる音と風の音しか聞こえず、周囲は真っ暗で恐怖を覚えた私は逃げかえり戻ったキャンプ場の明かりを見た時の安堵感に似たそんな感じを受けました。

 つまりこの本は森見先生の過去作を考えて読むと面喰いますが、途中からこの物語の世界に引き込まれるような感じがするような物語だと思います。
 ほの暗い感じの物語なので好き嫌いはあるかと思いますが、気になれば読んでみてもいいかもしれません。

夜行 [ 森見 登美彦 ]
夜行 [ 森見 登美彦 ]
  



この本は十角館の殺人などの綾辻行人先生が2006年に発表した、ホラー小説です。

この作者の本は他にもいくつか読んでいますが、どれもホラー色というか身近な恐怖といった感じの作品が多いような気がします。

それでこの本のあらすじですが、主人公の母親は若年性の痴呆になってしまい、彼女は子供の頃に経験した恐ろしい記憶、凄まじい閃光、バッタの飛ぶ音、などに恐怖するようになる。主人公の波多野森吾はその病気が遺伝性かもしれないと知り恐怖するようになる。凄まじい閃光、バッタの飛ぶ音とはいったい何なのか、といったはなしです。

それにしても全体の暗い雰囲気といったらないです。

そもそも主人公が暗い性格で、なんに対してもマイナス思考とった具合で読んでいるほうもなんか暗くなります。ですがまあこの作品自体がホラーなのであっているといったらあっていますが。

この作品の良いところは、やはり次第次第に追い込まれていく主人公で母親の過去の謎や不治の病の進行、周囲で起きる小学生を狙った殺人事件などいろいろな要素が次々に起こっていくのが恐怖感を増加させている。

最終的な展開や結末は少し残念でしたが、ホラーものとしては結構面白かったです。

痴呆症やアルツハイマーなどの知識も書いてあり参考にもなりました。

ホラーとしてよりもなんか読んだ後少し暗い気持ちになりましたが面白い作品でした、ホラーとかが好きな人にはお勧めです。

最後の記憶 (角川文庫)
綾辻 行人
KADOKAWA / 角川書店
2014-06-20


 



久しぶりの更新で何かいたらいいのか忘れましたが書いていきます。

この小説は桐野夏生さんが少女の誘拐監禁をテーマにして書いた作品です。

桐野夏生さんの作品は前々から読もうと思っていたのですが、結構分厚い本が多くてなんとなくよんでなかったのですが、アメトークの読書芸人を見て、読みたくなったというダメダメな理由で読んでみました。

あらすじは、小説家の「小海鳴海」は10歳の時に男に誘拐され一年間監禁されていたという過去を持ち、その犯人の男が出所し手紙を送ってきたことで誰にも教えてこなかった過去を文章にし、そこには衝撃の事実が書かれていたといった内容。

 この作者の作品は初めて読んだのですが、作者の独特な毒を持った表現や描写なんかがいい意味で刺激的で最後まで一気に読んでしまいました。

あらすじを読んでも分かるように、少女の誘拐監禁といったテーマをとても精緻に深く描いているため、暴力描写や性の描写もあり私個人としては問題なく読めましたし、このテーマだとこの事がないと薄っぺらになってしまうので位と思うのですが、苦手な人には辛いのかもしれません。

作品の構成として、35歳になった自分が10歳の頃のことを思い出しながら文章にしているという構成なので、物語が正確に語られているという感じではなく、思い出しながら書いているといった感じになっているので、第三者の視点で語られる物語よりもかなりノンフィクションに近い感じがしてそのことも物語の実存性を高めているように思います。

まあただこの毒のある文章はある程度なれないと、思ったより心に重くのしかかってくるため気軽に読んでしまってなんとなく公開しました(笑)

とにもかくにもかなり深く入り込める作品だったので、ある程度許容できる人にはお勧めです。

残虐記 (新潮文庫)
桐野 夏生
新潮社
2007-07-30

 

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