多世界の歩行者

       小説や専門書の感想だったり映画の感想、考えた事などを書いています。 人様に読んでいただくような文章ではないのであしからず。         《ネタバレを含んでいる場合がありますのでご注意ください!》


 この作品を知ったのはアメトーーク!の読書芸人の回だったかと思いますが、先日文庫本が売られているのを見つけて勢いで購入しました。

"あらすじ" 


 内容としては、宗教団体ともいえない松尾という老人を中心とした集団と性的快楽を中心に置いている名前のない『教団X』と呼ばれる宗教組織の二つを中心として、何の特徴もない男楢崎の訪問が話の起点になり人間とは何か、宗教とは何か、世界とは何かなど色々な事を読者に問いかけてくる作品です。

 この作者の作品は初めて読んだのですが、とても難解で読んだ後にも理解できたとは私には言えない内容でしたが、それでも独自の思想や宗教観があって興味深く読めました。


"意識とは" 


 松尾の事、教団Xの教祖の事は内容を読めば分かります。なのでここではこの作品のキーワードについて触れたいと思います。
 それは
でも、意識は「私」によって、脳に何らかの因果作用を働きかけることができない。
原子たちには元々、意識を作り出す能力が備わっていた
という二つです。どちらとも意識の事を言っていて、人間の意識とはどこにあるのか、意識と行動の因果関係は?というのを松尾という老人の口を使って、語られていてとても面白い内容でした。
 そもそも意識という言葉の定義も多く曖昧です。通常は人が自己または外界について持つ直接な認知という意味を持っているようです。しかしこの作品では宗教用語的な使い方の心の働き、精神の働きという使い方が正しいのではないかと思います。

 そしてそもそも意識が存在するのかという問題や、意識が脳を操っているのかそれとも脳が体を動かしていてそれを意識が認識しているのかという問題もあって、この本で語られているのは主に後半の事になります。

 私の考えとしては上に書いてあるのとは別の、実体二元論という考えが一番好きです。
 これは脳と魂や意識などがラジオと放送局のように相互に作用しあって、行動などを決めていると考えるもので、何だかしっくりくるしどちらかが一方的というのもなんだか違う、と個人的に思う。

 そもそもこういった考えの理論じたい、根本的に科学で証明されておらず全員同じ価値観である必要もないので、幽霊がいるいないと同じように、私は好きだからいる。私は嫌いだからいない。という個人的な好き嫌いでいい問題ではないでしょうか?

"必然と偶然" 


 それでは次のキーワードは
我々は、完全に定められた人生というショウを見せられている観客である。
我々は、限られた範囲での偶然の連続による人生というショウを見せられている観客である。

というものです。人生で起きることは全部運命なのか、それとも偶然なのか?だれでも一度は考える事のような気がしますがこの本ではどちらも正しいと述べられています。
 偶然や必然で物事が起ころうとも、結局は人間の進める道は一本道なので他に選べた道の可能性があったとしても精一杯道を進めという事をこの本では述べていることだと思います。

 これに関してもなるほどなぁと感心しました。
 確かにどちらでも同じことだと思います。でも私としては先ほど上で述べたように自分の好きなようにどちらかを選んでもいいと思います。
 人生は運命で決められていて、私の楽しい事辛い事は神様や世界が定めたことだと思ってもいいですし。人生は偶然の連続で、私の楽しい事辛い事はその時々の私の運の良さ悪さが、間の良さ悪さのせいであると考えてもいい。好きな方に責任転嫁した方が心の平穏を保ちやすいのではないかなぁと思います。

"総括" 


 とまぁ本の感想なのに関係ない事を書いてしまいましたが、話の内容としては難しい哲学的な内容や、歴史や政治の内容も出てきたりしますが、なるべくわかりやすく書いてあるように思います。

 ただ私はあまりあらすじを読んでから本を読んだりしないので、ビックリしたのが官能小説かと思うほど性描写があって少し面喰いましたので、これから読む方は期待したり注意したりして読んでほしいと思います。

 難しい内容ですが、本好きには読んでほしい一冊でした。

教団X [ 中村文則 ]
教団X [ 中村文則 ]


"作品解説とあらすじ" 



 この作品は2016年に刊行された森見登美彦先生の幻想小説です。

 あらすじは10年前京都の「鞍馬の火祭り」の日に突然消えてしまった長谷川さんという女性を 神隠しのように突如失踪した。そしてその後その時に居合わせていた英会話スクールの仲間たちは再び「鞍馬の火祭」に参加しようということになりその中で立ち寄った画廊で「夜行」という作品が飾ってありそれを見た一緒に来ていた人々は自分達とのつながりを感じ、「夜行」に関する思い出を話し始めるといった内容です。

 という話で構成としては第一夜の尾道から最終夜の鞍馬の五章に別れています。

 その一つ一つが英会話スクールの仲間の一人一人が「夜行」に関する思い出話をしていくといったものです。
しかもその一つ一つが怪奇小説や幻想小説を思わせるような、深く暗い闇を思わせるような内容ばかりでした。

"ホラー風味の異色作" 



 私自身、森見先生の本は読んできていたつもりでしたが、以前のものとは全く異質で面喰いました(とはいってもきつねのはなしはまだ読んでいませんが……)。

 以前の四畳半神話体系や夜は短し歩けよ乙女、それから有頂天家族など京都を舞台にして不思議で幻想的それに笑えたり泣けたりくらい話だったりしたのですが、この作品では一様に暗い物語の中を登場人物たちが恐る恐る進んでいくといった感じで完璧に意表を突かれました。

 ホラーというほどではありませんでしたが登場人物たちが闇に飲まれていく様は十分恐怖を良い起こすもので、良く言えば新境地で驚き悪く言えば期待外れといった感じでした。

"この世界はつねに夜" 



 それはともかく私はこの本を読んでいると昔子供の頃に、夜の森の中を肝試しで一人で歩いた時の事を思い出します。
 森の中は葉の揺れる音と風の音しか聞こえず、周囲は真っ暗で恐怖を覚えた私は逃げかえり戻ったキャンプ場の明かりを見た時の安堵感に似たそんな感じを受けました。

 つまりこの本は森見先生の過去作を考えて読むと面喰いますが、途中からこの物語の世界に引き込まれるような感じがするような物語だと思います。
 ほの暗い感じの物語なので好き嫌いはあるかと思いますが、気になれば読んでみてもいいかもしれません。

夜行 [ 森見 登美彦 ]
夜行 [ 森見 登美彦 ]
  



この本は十角館の殺人などの綾辻行人先生が2006年に発表した、ホラー小説です。

この作者の本は他にもいくつか読んでいますが、どれもホラー色というか身近な恐怖といった感じの作品が多いような気がします。

それでこの本のあらすじですが、主人公の母親は若年性の痴呆になってしまい、彼女は子供の頃に経験した恐ろしい記憶、凄まじい閃光、バッタの飛ぶ音、などに恐怖するようになる。主人公の波多野森吾はその病気が遺伝性かもしれないと知り恐怖するようになる。凄まじい閃光、バッタの飛ぶ音とはいったい何なのか、といったはなしです。

それにしても全体の暗い雰囲気といったらないです。

そもそも主人公が暗い性格で、なんに対してもマイナス思考とった具合で読んでいるほうもなんか暗くなります。ですがまあこの作品自体がホラーなのであっているといったらあっていますが。

この作品の良いところは、やはり次第次第に追い込まれていく主人公で母親の過去の謎や不治の病の進行、周囲で起きる小学生を狙った殺人事件などいろいろな要素が次々に起こっていくのが恐怖感を増加させている。

最終的な展開や結末は少し残念でしたが、ホラーものとしては結構面白かったです。

痴呆症やアルツハイマーなどの知識も書いてあり参考にもなりました。

ホラーとしてよりもなんか読んだ後少し暗い気持ちになりましたが面白い作品でした、ホラーとかが好きな人にはお勧めです。

最後の記憶 (角川文庫)
綾辻 行人
KADOKAWA / 角川書店
2014-06-20


 

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