普通の人にとっては、ペダルの踏み方などどうでもいい事だと思う。しかし、この「踏む」という動作は、自転車に乗ってる間、何千、何万回も繰り返す動作である。それだけに選手にとっては、この動作の向上が「競技力に直結する」ということは想像に難くないだろう。
「ペダルの踏み方」というのは、自転車選手であれば常に考えていなくてはいけない大事なことである。

とまあ、そんなわけで、ペダルの踏み方について考えてみた。
ペダルの踏み方としてよく聞く言葉に「腰を入れて踏む」というのがある。よく聞く割に、実際どのような踏み方なのか初心者にはよくわからないものでもあると思うので、今回は、私自身の「腰踏みイメージの整理」をかねて、初心者にとってヒントになるような事を書こうと思う。

まず、「腰を入れて踏む」という事と「完全にイコール」ではないが、イメージとして説明しやすいので、「体重を乗せて踏む」という事について、書いてみたい。
(一応断っておくが、あくまでも私の中のイメージであり、人によってイメージは異なる場合もある)

はじめに、普通に立っている状態で、足元から30センチほど前方にある、「20センチぐらいの高さの台」(台のようなもの、段差でも何でもいい)に片足を乗せる動作を例に考えてみる。

1.上半身を特に動かさずに、なんとなく足を台の上に乗せるやり方
これが、自転車でいう「足だけで踏んでいる状態」で
2.まず、その場でモモを上げて、その「ヒザ」の角度を保ったまま上半身を前方に倒して台に足を乗せるやり方
これが「体重を乗せた踏み方」である。このとき、ふくらはぎや太もも辺りの筋肉はリラックスしていて、足の付け根あたりに力がかかっているのを感じるのがよい。

2つの踏み方(ここでは台に片足を乗せるだけだが)の違いがイメージできただろうか?実際に立ってやってみるとよくわかると思う。

体重を乗せるという動作は、基本的に筋肉を使う動作ではないので、足の付け根から下は、「固定しているだけでいい部分」ということになる。
簡単そうだが、実際に自転車に乗ってのペダリングでは、この感覚がわからない人も多い。

なぜだろうか?原因は2つ考えられる。
ひとつは、「(ヒザや足首などの角度を)固定する力が足りない」ということだ。足を固定する力というのは誰でも持つことが出来る「基礎的な能力」だと思う。例えば「立ち続ける」とか「歩き続ける」といった運動のイメージの延長である。

これが出来るかどうかというのは、才能や素質の問題ではなく、その部分が、「自分の体重プラスα」の重さを支え続けられるぐらい、鍛えられているかどうかの問題である。以前にも書いたが、自転車に乗ってペダルの上に立ち続けることが出来るか?という類いのことで、これができない場合「体重を乗せる」というスキル以前の問題ということになる。

そして、もうひとつの原因は、足の関節の角度と、体重をかける「方向」の問題である。細かく説明すると長くなるので今回は書かないが、大まかに書くと、「ヒザの角度や足首の角度が、自分にとって合わない角度の時にペダルに体重を乗せようとすると、力がうまくペダルに伝わらず、その逃げた力を制御するためにふくらはぎや、腿の筋肉が使われる」ということだ。

この考え方で言うと、サッカー選手やラグビー選手がグランドを走り回るとき、足は、いろんな方向からの突然の力に対応しなければならないため、たくさんの筋肉が必要であり(そのため足は太くなる)、自転車選手のペダリングは常に円であり(というかビンディングペダルをつけている以上、円でしかありえないが)力を入れる方向も一定であるので、それ以外の筋肉はいらない(そのため足は細い)ということになる。(もちろんスプリントなど例外的な事もある)

その、力を入れるタイミングや方向が一定でなかったり、力を入れたときの関節の角度が、一定ではないときは、(「立ち続ける」といった時に使う基礎的な能力以外の部分を使ってしまうため)多くの筋肉が必要であり、なおかつ疲れるのである。

「体重をうまく乗せる」とは「立つ」を例にすると、

1.普通に立つ→基礎的な筋肉のみを使うので疲れない
2.空気いすのようにして立つ→太ももの筋肉などを使うので疲れる
3.空気いすのようにして立つが、ヒザの角度はそのままに(足の付け根から上の)上体を前に倒しバランスをとる(スキーのダウンヒルのようなカッコウになる)→主に基礎的な筋肉を使うので、疲れにくい

上記の3.の状態である。

このバランスの取れた状態は、一見誰でも簡単に出来そうだが、実際に自転車に乗るときは、両足が同時に地面についているわけではない。片足ずつタイミングよく「力を乗せたり、抜いたり」を繰り返さなくてはいけないのである。
その力を乗せるタイミングは(ケイデンスが90として、だいたい)0.2秒である。これが自転車のペダリングの特徴であり「スキル」ということになると思う。