白刃きらめく恋しらべのレビュー。
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各10段階評価
シナリオ…6
キャラクター…6
絵…8
エロ…5
音楽…8
システム・演出…8
総評…6

【感想】
白刃きらめく恋しらべ、正直に言うとめくいろの続編としてみると不満点の多い作品だったかなという印象でしたね。
めくいろの続編が発表された時は嬉しかった一方、椿恋歌から短期間での公表という開発スパンの短さで若干の不安がありましたが、今回はその不安点が見事なまでに的中してしまった形でしょう。
最初の共通ルートからして嫌な予感は有ったんですが、最後までやり終えると、もう終わり?という呆気なさが一番に来る。
共通ルートがすぐに終わる一方、個別ルートもそこまで長くないので全体的に尺不足をひしひしと感じるのが大きなマイナス点ですね。
特にめくいろでは魅力の一つだった地の文での緻密な描写がごっそりと抜け落ちてしまっているのが痛い。
地の文での描写が簡略化されてしまっているせいで、めくいろ以上に何をやっているのかが分かりにくくなっているし、それが戦闘シーンでの呆気なさにも繋がってしまっている。
後は今回は刃道がメインではなく、化妖との戦いがメインという大きな違いがありますがこの辺りも物足りなさを助長している印象でしたね。
めくいろの刃道では試合形式ながらも人間相手で互いに刃を交えることで緊迫感が生まれていたのですが、今回は化妖が主な相手なので淡々と仕事をこなしているだけにしか思えなくて対して盛り上がらなかった。
化妖は呉葉や若葉丸以外基本的に喋らないので、数が多い一方であっさりとやられてしまう印象が強いんですね。
それにプラスして先ほど挙げた地の文での描写が劣化している事もあって戦闘シーンでの淡白さに繋がっている。
ただ、茉莉花ルートの終盤はそれなりに盛り上がったことを考えると、やはり人間か人間相当の知能を持った相手じゃないと戦闘シーンは面白くならないのが分かりました。
シナリオの方も全体的に最初から最後まで駆け足な印象が強いので、やっぱり色々と描写不足な感じは否めない。
既に戦闘シーンを先に挙げましたが、日常シーンでも各キャラの魅力を描写しきれてなかった印象がありますね。
やはり緻密な描写がごっそりと抜け落ちてしまっているのと、尺が短いせいで各キャラに感情移入する前に終わった感じ。
特に茉莉花は唯一最初から関係を築くのでもうちょっと尺が欲しかったなと思いました。

各個別ルート毎の感想も書きたいので、各個別ルートの感想。
まずは瑠璃ルート。
今の瑠璃を形作った過去の主人公や緋呂との出会いから描かれ、瑠璃が皆を守るために強くなっていく展開。
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過去の出会いから年月を経て強くなったと自負していた瑠璃。
しかしながら、主人公が怪我をしてしまったことで瑠璃自身が責任を感じる一方で、瑠璃が目指すべき方向を見出したのが瑠璃ルートの大まかな展開でしょうか。
自分は強いと自惚れながらも実際には人を守れるだけの強さを持っていなかった瑠璃。
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そこから方針転換して守るために強くなると決意するのが瑠璃ルートで核となるテーマでしょう。
瑠璃ルートの最初の方は瑠璃自身が自らの強さに溺れているような、そんな危うさを持ち合わせていたのでどこかで足元をすくわれる展開が来るなと思っていたのですが案外すぐに立ち直りましたね。
ただ、若葉丸が不完全な状態で蘇ってそのままラスボスになったので最後まで呆気なかったのと、個人的には瑠璃が挫折してそこから再起する展開が見たかったなと思いました。
正直、中盤から終盤辺りで守りたい人を守りきれないという現実を見せつけられた瑠璃が一度挫折して、そこからまた新たな希望を見出して立ち直る展開かと思っていたのでちょっと思っていたのと違ってました。

次に姫芽ルート。
姉の仇として化妖への復讐心に囚われ続けていた姫芽が自らの心を受け入れ、呉葉と最後の決着をつける展開ですね。
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茉莉花から緋呂の名前が出てしまったことで嘗ての姉の姿を思い出し、復讐心のままに化妖を狩り続ける姫芽。

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しかし、姫芽が生まれ持った理魂の能力に目をつけ、復讐心に囚われてしまった姫芽の心の隙間に化妖が入り込んで姫芽を乗っ取ろうとします。
化妖に乗っ取られかけながらも意識は保っていた姫芽が自らを犠牲にして終わらせようとするものの、主人公によって姉の嘗ての言葉を思い出して自らの憎しみを心から受け入れてようやく場が収まったという所でしょう。
最後の決定打になったのが、主人公のこの台詞。
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これによってようやく姫芽が平常心を取り戻して化妖を追い出したという事でしょう。
正直、姫芽ルートはここの展開が一番盛り上がった所ですね。
姫芽が自ら持つ憎しみに心から向き合えるかどうか、それが姫芽ルートの核となるテーマでも有るので中盤までで大凡やるべきことはやり終えている感じなんですよね。
最後は姫芽から逃げ出した呉葉と決着をつけて二人で歩んでいくという締め方。
姫芽ルートでは三人の中で一番日常シーンが良かった所も魅力的な所でしょうか。
姫芽に膝枕されるシーンとか姫芽ルートで一番癒やされたシーン。
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膝枕したままわらび餅を姫芽からあ〜んってされるのがもう最高ですね。
CGの構図からしてそのまま姫芽に全てを委ねてしまいそうな、そんな気さえしてくる。
後は姫芽が自分を取り戻した後、最終決戦までの僅かな平穏の間のデートも良かったですね。
自らの憎しみを受け入れた後なので、主人公とも心からデートを楽しめている感じが伝わってくるのが一番良かった所。
そして、デートが終わった後の家での姫芽からの告白がまた良かったんですね。
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ミカが生まれた理由も含めて自らの本心をありのままに話して、主人公が告白した後に姫芽もまた主人公に対して告白を返すというやり取りが良すぎ。
ここで二人がようやく心から向き合えたのが分かるし、二人の信頼関係をよく表している。
日常シーンが一番良かった事もあって、キャラとしては姫芽が一番好きかな。
ただ、姫芽ルートの問題点として、折角の血縁関係なのに緋呂さんの出番があまり無かったことが挙げられますね。
既に過去の人とは言え、姫芽が復讐心に囚われる直接の原因となった人物なのに軽く回想で触れられるだけに終わってしまったのは勿体なさすぎ。
正直、もっと緋呂さんの出番増やしてほしかったですね。
緋呂さんの最期とか結局どのルートでも詳しく書かれてないし。

最後に茉莉花ルート。
やはりメインと言うだけ有って一番力が入っているルート。
呉葉と若葉丸が完全体で揃い、化妖の総本山と決着をつける展開でしょう。
人としての呉葉を憐れんでしまった結果、呉葉自身をその身に宿してしまった茉莉花。
以降、自身の心の中で呉葉と会話を重ね、若葉丸の封印への道筋を模索していた最中に若葉丸が復活して最終的に呉葉も復活してしまうというのが茉莉花ルートの主な展開ですね。
茉莉花ルートは茉莉花と呉葉がどちらも仮面を被って偽りの自分を演じ続けてきたという点で表裏一体とも言える所が核となるテーマでしょうか。
風嶺家の長女として相応しい自分を演じ続けている内にそれがいつしか無意識でも自分を演じてしまうようになってしまった茉莉花の姿が描かれています。
同じような境遇だからこそ呉葉は茉莉花に付け入り、乗っ取ろうとしたのでしょう。
そんな自分を演じ続けた茉莉花を象徴したのが以下の台詞。
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主人公への愛ですら自分への一番の利益になるからこそというのが残酷な事実を表しています。
最終的には打算から始まった愛でも真実の愛として受け入れることでようやく茉莉花の心も晴れたということでしょう。
後、茉莉花ルートで象徴的なのが最初と最後で上手く対比になっている所ですね。

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最初の方は護衛対象として見られていて、主人公を守ろうとすることすら許されなかった茉莉花。

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それが最終決戦では主人公を守る存在となっている所が茉莉花の成長を示しています。
また、ダンスも最初の方は茉莉花がリードする形で主人公の手を取っていたのが、エピローグでは主人公がリードする本来の形で茉莉花の手を取っていた所も主人公の成長の証でもあるでしょう。
茉莉花ルートは最終決戦からエピローグまでの展開が良かったという印象ですね。
呉葉と若葉丸という二人を相手にして追い詰められながらも最後まで諦めず、若葉丸を吸収した呉葉を撃退した所は挿入歌とも合わさってそれなりに盛り上がりました。
やっぱり、ようやくまともに知能のある相手との戦闘シーンなのでそれなりに緊迫感が生まれたし、面白かった。

各ルートを振り返ると、しっかりと核となるテーマは描けている感じなんですが、やっぱり尺不足が大きな壁になってしまっている印象ですね。
もっと尺が長ければと思う所が結構有って、それが各キャラの薄さや淡白さに繋がってしまっているのが勿体ないなと思います。
また、今回は紅葉伝説が物語の核になっているんですが、紅葉伝説が物語のバックボーンとしてしっかりと描かれていないせいで呉葉と若葉丸がイマイチしょぼい印象のまま終わってしまったのも残念な所。
人々の噂が今の呉葉と若葉丸を作り上げたとさらりと書かれているので、呉葉と若葉丸が最後までよく分からない存在のままだったのが惜しい所。
紅葉伝説のバックボーンがしっかりと描かていれば呉葉と若葉丸も魅力的なキャラに仕上がった筈なんですが、それを怠ったせいで敵としてみても魅力的に感じられなかった。
ここまで来ると、椿恋歌から短期間で続編を出してしまったのは失敗だったんじゃないかという気はしますね。
設定自体は魅力的なのに、その設定が物語の方にしっかりと反映されていない。それが今回一番勿体ない所ですね。
唯一、褒めるべき部分としては、めくいろのキャラがその後どうなったかというのがそれとなく語られている所でしょうか。
主人公が前作の主人公、刀輝とも繋がりを持っているのでそこを通して今の状況が分かります。
瑠璃ルートでは、刀輝が既に恋人を持っていることが分かるので、誰とも付き合わない世界線ではなく誰かの個別ルートの後だということがそれとなく分かります。
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また、同じように折れた刃を修復した経験が過去にも有るかのような語りだったので、何となく椿ルートの後かなということも想定できますね。
他のルートでもめくいろのヒロインが過去に在籍していた形跡が残っている所もめくいろをプレイした身としては感慨深かったですね。

絵について。めくいろから引き続きの絵師ということで今回も良かったです。
キャラだけではなく、背景や武器、化妖に至るまで緻密に描かれているのが好印象。

エロシーンに関しても、やはりめくいろと比べると劣化したなという印象。
前戯がほぼ無く、本番のみのシーンばかりという構成が問題ですね。
前戯も個人的には重要な要素だと思っているので、その前戯を疎かにしてエロシーン集めましたって感じなのがちょっとダメな所でした。
おまけにあまりエロくなかったので、エロシーンは本当に一番残念な所でしたね。

音楽に関しては、今回も引き続きALNEARプロデュースということで相変わらずのクオリティの高さ。
BGMでは戦闘シーンでしっかりと盛り上げる曲を作り上げてくる所が流石ですね。
ボーカル曲もOPは元より、挿入歌が上手く場面とも相まって印象深かったです。

総合的に見ると、色々と惜しい所が目立つ作品でした。
めくいろから絵師とサウンド関連以外大幅に制作スタッフが入れ替わっていることもあって、その辺りの引き継ぎと開発スパンの短さがモロに影響してしまった形だと思いましたね。
正直、単体としてみると悪くはない出来でも、めくいろの続編としては落第点という所でしょう。