新年度になりました。
進学や就職、転職、異動などで、生活環境の変わる方も多いのではないでしょうか。
例年になく早く咲き始めた桜は、既に散り始めているところもありますが、気温の高まりとともに、新鮮な気持ちが湧いてくる時期でもあります。

さて、そんな時期柄もあってか、最近立て続けにファイナンシャルプランナー(FP)として独立を考えている方からのご質問を受ける機会がありました。そこで今回は「独立系FPの仕事」をテーマにしてみます。

■独立系FPってどういう意味?


そもそも「独立系FP」という呼び方には違和感を覚える人が多いかもしれません。他の資格ではあまり聞かない呼び方ですよね。「独立系税理士」とか「独立系弁護士」とか。

金融機関に所属していないとか、金融商品の取り扱いをメインにしていないとか、いろいろな解釈がありますが、ここでは単純に「FPと名乗って仕事を行い、その業務からの収益によって仕事や生活を成り立たせている人」と定義しておきます。

当然、FP事業をビジネスとして発展させていくには、組織化が欠かせない課題となりますが、とりあえずその前の段階、つまり個人としての独立事業者をイメージしてください。

■収益を上げる要素


FPが業務によって得る収益には、相談料や提案書の作成料のほかに、講演料や原稿の執筆料などがあります。他にも、フィンテックに関連したシステム系のアドバイスのように、FP試験では触れられないタイプのFP業務もあります。何をもってFP業務というかの議論はさておき、忘れてはならないのは、独立した以上「仕事を依頼(または紹介)してくれる相手を自分で見つける」ことが必須になることでしょう。
個別相談では、お金を払って相談してくれる人に選んでいただく必要がありますし、講演では、講演を依頼してくださる組織や、受講料を払って講演を聴きに来てくださる人が欠かせません。

独立した当初は、これまでに関わってきた人や仕事のご縁から仕事のご依頼をいただくケースが多いと思うので、「独立前の人との繋がり」は重要な要素です。また、ホームページの作成や、ブログ、メルマガ、SNS等の活用によって、自分を知ってもらう活動も欠かせませんが、その際に大切なのは「自分はお客様にどういった利益をもたらすことができるのか?」を誠実に伝えることではないでしょうか。

とにかく、お客さんに選んでもらうことができない限り、売り上げが立たず、事業の継続はおろか、そもそもの生活が成り立たないわけで、これは何もFPに限る話ではありません。
FPとしての知識や情報発信でどれだけ人に勝っているだけではダメで、大切なのは「継続して受注できる状態を築くこと」に尽きるでしょう。

■自分自身のコントロール


仕事を継続して受注する活動と同時に、もう一つ大切になるのは自分自身のコントロールでしょう。

今回の定義における「独立」では、自分を管理する人がいない状態になるのが普通です。しかも最初のころは、ひっきりなしに仕事が舞い込む状況にはならないものなので、簡単にいうと自由時間が多くなります。こうした時間を無駄に使わないためには、自分の中での就業時間をしっかりと決め、たとえ自宅にいる場合でも、その時間はすぐに人と会える状態を作っておくのが望ましいと思います。
今は、一般の会社でもカジュアルな服装が普通にありますから、必ずしもスーツを着る必要はありません。「自分にお給料を払う立場」として、自分の姿を客観的に見たときにどう感じるかを考えてみるといいかもしれません。

また、ご家族のいる方、特に小さいお子さんがいらっしゃる方は、仕事とプライベートの線引きを意識的に決めておく必要があります。小さなお子さんから見ると、家にお父さんやお母さんがいると、話しかけたくもなるでしょうし、遊んでほしくもなるでしょう。このような感情面の課題は、自分の意思だけで切り抜けるのは難しい場合もあります。自信がなければ、多少コストがかかっても仕事用のスペースを別に設けるべきかもしれません。人の意思の力をあまり過信せず、仕事に集中できる環境を作ることが大切だといえるでしょう。

また、世の中では「働き方改革」や「ワークライフバランス」という言葉が一般的になってます。これは、とても大切な要素である一方、人生における優先順位をどう考えるのかは、その人によりけりです。
「独立後1年間は1日も休まない」と決め、ハードワークを自分に課すのであれば、ワークライフバランスなど気にする必要はありませんし、「家族との時間を大切にする」ということで、家族の行事に合わせた十分な休みを取ることを選択するなら、それも全く問題ありません。

ただし、売り上げが立たなければ事業が続けられないし、生活もできません。もちろん家族を養うこともできなくなり、せっかく始めた仕事を手放さなければならないケースも起こり得ます。売り上げを立てるための仕組みは自分でしっかり組み立て、その計画を実行するためのルールをしっかり決めて、「自分の意思に頼らずとも継続できる仕組み」を作り上げることはとても大切な要素なのです。
(私もこれまでに何度も挫折を経験しています)

それと、仕事が増え始めた際に備え、自分自身の仕事のキャパシティを意識しておかなければなりません。最初のうちは、スケジュールの空白が不安なので、キャパシティを無視して多くの仕事を受けてしまいがちです。
当然、仕事には準備のための時間が不可欠ですが、スケジュールが詰まってくることで準備時間が削られ、必要なインプットも不足してしまいます。その結果、仕事の質が落ちるようなことになると、最終的には信用を無くし、仕事を失うことになりかねないのです。

ちなみに、インターネットの普及により、情報のインプットに苦労することはないと思いがちですが、本当に必要な情報は意外と見つからないものです。
一方で、一般的な情報は処理できないぐらい多くありますから、その中で本当に役に立つもの(=適切なアウトプットができるもの)を取捨選択する力はとても重要です。

その意味でも、自分が得たい情報を定期的に発信されている方のブログやメルマガ、SNSなどのチェックは欠かせない要素でしょう。その上で、情報の元ネタ(=一次情報)を必ず自分でチェックする癖をつけ、その後は直接その一次情報を見ることが大切です。

ただし、本当に大切なのは「情報」を「知識や知恵」に変えることです。
ただ受け取っただけ(=ネット上や雑誌で知っただけ)の状態では、イザという時に使うことができないので、それでは意味がありません。「自分の頭で考える」プロセスが大切になる点を意識しておきたいものです。

そんなわけで、とりあえず頭に思い浮かんだことをざっとお伝えしました。

最後に1つ。どのような仕事(あるいはプライベート)でも大切となる「コミュニケーション力」については、4月1日配信のメールマガジンで取り上げていますので、併せて参考にしていただければ幸いです。