2016年01月01日

クヌート1世(クヌーズ大王)のペニー銀貨

「ヴァイキング時代の始まりと終わり」
cnut793年に北部イングランドのリンデスファーン修道院が襲撃されたのを皮切りに、デーン系(デンマーク人)ヴァイキングによるイングランド襲来が始まった。途中、ウェセックス国王アルフレッド大王の攻勢により大きく勢力を弱めたこともあったが、体格や戦闘技術に優れたデーン人は次第にアングロサクソン人を切り崩し、着実にその支配拠点を拡大していった。
特に991年からは「立退き料」の名目で占領地域からの徴税(※デーンゲルド)を始めるとイングランド国王との対立は激化し、1002年にイングランド国王エゼルレッド2世が支払い拒否と定住デーン人(農民化した元ヴァイキングの子孫)への虐殺を行うと、これに反応したデンマーク国王スヴェン1世によるイングランド遠征が開始され、1013年にはエゼルレッド2世を破ったスヴェン1世がイングランド王位に就き、ヴァイキングによる海賊時代は幕を閉じた。

なお翌1014年に早くもスヴェン1世が死去すると、その子クヌートが王位を継承した。

(※)デーンゲルド(Danegeld)
直訳すると「デーン人への贈り物」。略奪や襲撃を止めてもらうかわりにヴァイキングに支払われた財貨のこと。最初は10,000ポンド(銀3,300kg)であったが段々と増額され、最も多い時では72,000ポンド(銀26,900kg)の高額が課され、総額では100トン以上の銀がデーン人に支払われた。


「クヌート1世のペニー銀貨」
クヌート王が発行した貨幣はペニー銀貨の1種類のみであるが、イングランドの各地で造幣された為に非常に数多くの原版が存在する。一般的な分類方法では「S-1157」「S-1158」「S-1159」「S-1160」の4種のデザインが確認されているが、同じ分類デザインであっても細部は異なっており、裏面に描かれる十字架の形状での判定が基本となる。

<S-1157>
1017年〜1023年に製造されたタイプ。裏面の長い十字架が特徴。
s1157os1157o2s1157o3s1157o4
s1157rs1157r2s1157r3s1157r4










<S-1158>
1024年〜1030年に製造されたタイプ。裏面の短い飾り十字架が特徴。
s1158os1158o2s1158o3s1158o4

s1158rs1158r2s1158r3s1158r4









<S-1159>
1029年〜1035年に製造されたタイプ。裏面の短い無地の十字架が特徴
s1159os1159o2s1159o3s1159o4





s1159rs1159r2s1159r3s1159r4






<S-1160>
クヌート王の死後に王妃エマによって製造されたタイプ。裏面の装飾された十字架が特徴。
s1160os1160r

kuro_kutushita at 00:00|PermalinkComments(0)TrackBack(0) クヌート1世 | ペニー貨幣

2015年09月27日

ジョージ3世のソブリン金貨

「前史」
George_III_(by_Allan_Ramsay)イギリスにおいて、ジョージ3世(在位:1760年10月25日 - 1820年1月29日)の治世は激動の時代と言われている。60年に及ぶその長かった在位期間中には、アメリカ独立戦争とフランス革命(ナポレオン戦争)の2つの大きな戦争を経験し、また、経済・産業面では蒸気機関の発明とそれに続く産業革命と、その後の英国のありかたを形作る重要な歴史の転換点をいくつも抱え、まさに激震する「近世」と「近代」の切替え点であった。

「デノミネーション」
Royal_Mint_London_from_1833_Schmollinger_mapナポレオン戦争による莫大な戦費により金備蓄が払底し、17年におよび本位金貨の発行が中断していた国庫であったが、いよいよ1816年から本位金貨の発行が再開されることとなった。また、長らく中断していた貨幣製造を再開するにあたり、古くなった製造設備の更新が計画され、それまでロンドン塔に置かれた工房から、北東に隣接するタワー・ヒル地区に新築された造幣局へ製造ラインが移転された。
TowerHillovなお、この設備更新にあたり、ジェームズ・ワットとマシュー・ボールトンによる蒸気式自動造幣機械が初めて導入され、職工の手作業による細微な操作が必要であったそれまでの旧式圧刻機と置き換えられた。加えて、貨幣の額面を定めずに含有貴金属の量とその時々の金価格を連動させて通用価値を決定する相場変動通貨方式を改め、金価格に影響されずに政府が額面通りの価値を保証する額面通貨方式に変更された。そしてこれに合わせ、旧貨幣であるギニー金貨は新貨幣であるソブリン金貨に置き換えられ、1ポンド(1ソブリン金貨)=20シリングに固定された。

「バラエティ」
1817 b1817 aジョージ3世のソブリン金貨の図案は1種類のみであるが、周囲の銘文(Legend)の変化により幾つかの「手替わり」が存在する。「S(pink)-3785」タイプを基本としつつ、有名なものだけで「S-3785A」「S-3785B」「S-3785C」の3つに区分され、更に「S-3785C」の中でも年号の「1820」の字体の違いにより5種類以上の亜種が確認されるなど、微細な変種も含めると限りがない。

legendバラエティの区分には、まず、表面のジョージ3世像の周辺に刻印された銘文(Legend)で判定を行う。この銘文には「Type_A」と「Type_B」の2種類が存在し、「GEORGIUS III D:G: BRITANNIAR: REX F:D: 1820」の銘文のうち、「BRITANNIAR」と「REX」の間の「:(コロン)」の字幅が薄く、続く「REX」と「F:D」の空白の幅が狭い方が「Type_A」である。なお、「S-3785」と「S-3785B」が「Type_A」であり、「S-3785A」と「S-3785C」が「Type_B」である。

「S(pink)-3785」
製造は1817年(製造枚数:3,235,000枚)、1818年(タイプA・B・Cとの合計製造枚数:2,347,000枚)、
1819年(製造枚数:3,574枚)の3年間のみである。

3785A b3785A a「S(pink)-3785A」
「Type_B」の中でも比較的ベーシックなタイプ。銘文以外では「S-3785」と変化は無い。製造は1818年のみ。



「S(pink)-3785B」
銘文は「Type_A」、ジョージ3世像の髪がより強く巻き毛になっている。製造は1818年のみであるが、現存はごくわずかのみ。

3785C Open 2 b3785C Open 2 a「S(pink)-3785C」
最もバリエーションが多いタイプ。「Type_B」の銘文のうち、年号の「1820」の字体により5種類以上に分けられる。
製造は1820年(製造枚数:932,000枚)。


<Roman I>
「1820」の「1」が、アラビア数字ではなくローマ字の「I」のように見えるタイプ。

<Open 2>
open close 2「1820」の「2」の打刻のうち、半円部分の空間が狭いもの(Closed 2)と広いもの(Open 2)に区分される。

<Large / Short date>
「1820」の全体の幅が長いもの(Large date)と短いもの(Short date)に区分される。見分け方としては、「1820」の「0」が、右隣の「F:D:」の「:」と近接しているものが「Large」であり、空間が開いている方が「Short」となる。

<Alignment date>
「1820」の並びが一直線に整っているもの(Alignment)と不均衡に傾斜しながら並んでいるものに区分される。

<Smaller 0>
「1820」の「0」が他の数字より小さくなっているもの。なお、このタイプはプルーフ貨幣のみである。

また、この他にも微細な変種が様々に存在する。ただし、いずれも貨幣規格は同じであり、重量:7.9881g、金品位:91.70%である。

kuro_kutushita at 11:08|PermalinkComments(0)TrackBack(0) ジョージ3世 | ソブリン金貨

2015年09月22日

ジョージ4世の1/2クラウン銀貨

ジョージ4世(在位:1820年1月29日 - 1830年6月26日)の1/2クラウン銀貨(ハーフ・クラウン)には次の3種類が存在する。なお、規格はいずれも重量:14.1380g、銀品位:92.50%である。


「S(pink)-3807 1st_Rev」1st b1st a
(通称:ガーニッシュ・シールド/飾り紋章盾図)
表面には月桂樹の冠を被ったジョージ4世が描かれ、裏面にはイングランドの国花であるバラ、スコットランドの国花であるアザミ、アイルランドの国花であるシャムロック(クローバー)がそれぞれ描かれている。

1820年(製造枚数不明)、1821年(製造枚数:1,435,000枚)、1823年(製造枚数:2,004,000枚/※ただし、発行前に殆どが回収された為に流通枚数はごく僅か)

1st cなお、原版が2種類あり、紋章盾の飾り枠が太いタイプ (Heavy garnishing) と細いタイプ (Lightly garnishing) が存在する。判定方法としては、盾図の左側にあるアザミで区別し、右側の葉と茎の間隔が狭い方が太枠タイプであり、間隔が広い方が細枠タイプである。



「S(pink)-3808 2nd_Rev」2nd b2nd a
(通称:ローレル・ヘッド/月桂樹の冠)
表面には月桂樹の冠を被ったジョージ4世が描かれ、裏面には王家の紋章盾図をガーダー勲章で飾ったデザインが描かれている。1823年(製造枚数不明)、1824年(製造枚数:466,000枚)


「S(pink)-3809 3rd_Rev」3rd b3rd a
(通称:ベア・ヘッド/無冠)
表面には無冠のジョージ4世が描かれ、裏面には王家の大紋章盾図が描かれている。なお、表面の彫刻はウイリアム・ワイオンが、裏面はジャン・バティスト・マーリンが担当している。1824年(製造枚数不明/ごく僅か)、1825年(製造枚数:2,259,000枚)、1826年(製造枚数:2,189,000枚)、1827年(製造無し)1828年(製造枚数:50,000枚)、1829年(製造枚数:508,000枚)



kuro_kutushita at 17:43|PermalinkComments(0)TrackBack(0) ジョージ4世 | クラウン貨

2015年06月28日

ヴィクトリア女王の1/2クラウン銀貨

今回は、ヴィクトリア女王(在位:1837年〜1901年)の1/2クラウン(ハーフ・クラウン)銀貨のうち、
「ヤングヘッド」 について紹介する。

尚、クラウン銀貨については過去記事参照。

ヴィクトリア女王のハーフ・クラウン銀貨には、その発行時期により、以下の3タイプが存在する。
1. ヤングヘッド(1839年〜1887年)
2. ジュビリーヘッド(1887年〜1893年)
3. オールドヘッド(1893年〜1901年)
また、この「ヤングヘッド」の中でも、発行時期により、更にタイプA1〜A5の5つの区分が存在する。
ただし、いずれも貨幣の規格は同じ。(重量:14.1380g、銀純度:92.50%)

<タイプA1>
typeA1-btypeA1-a発行は1839年号のプルーフ貨幣のみ。 女王の2本の髪紐(ヘッドバンド)のうち、1本(額側)は飾り紐であり、もう1本は無地の髪紐。
王立造幣局の主任彫刻師であり、原版を作成したウイリアム・ワイオンのイニシャルである「WW」がレリーフ(凸彫り)で刻印されている。発行枚数は、ごくわずか。

<タイプA2>
typeA2-btypeA2-a1839年号のプルーフ貨幣のみ。
髪紐は2本とも飾り紐。ただし模様はそれぞれ異なる。
フルネームで「WWYON」の刻印が凸彫りで彫刻されている。
発行枚数は、ごくわずか。

<タイプA3>
typeA3-btypeA3-a1839年(プルーフ貨幣と通常貨幣の両方あり)と1840年(通常貨幣の発行のみ)の2年間のみ発行。
髪紐は2本とも無地。
「WW」が凹彫りで刻印されている。
通常貨幣の発行枚数は356,000枚。 

<タイプA4>
typeA4-btypeA4-a (初期流通タイプ)
発行は1841年〜1850年(通常貨幣のみ)まで。
ただし、1850年、1853年、1862年、1864年に贈答用としてわずかにプルーフ貨幣の発行があった。
髪紐は2本とも無地。
「WW」イニシャルの刻印は無い。

<タイプA5> 
typeA5-btypeA5-a (本格流通タイプ)
発行は1874年〜1887年まで。
彫刻師ウイリアム・ワイオンが原版を手がけた<タイプA1〜A4>と異なり、デザイン及び原版は二等彫刻官(Inferior engraver)が分担当した。

kuro_kutushita at 20:56|PermalinkComments(0)TrackBack(0) クラウン貨 | ヴィクトリア

2015年02月16日

ウイリアム4世のクラウン銀貨

今回はウイリアム4世のクラウン銀貨(5シリング銀貨)とハーフ・クラウン銀貨(2シリング6ペンス銀貨)を合わせて紹介する。なお、シリング銀貨については別記事参照のこと。

「クラウン銀貨」
1831 Crown  b1831  Crown  a1830年6月、先王ジョージ4世の死去にともない、その弟であったクラレンス公爵ウイリアムがイギリス国王およびハノーファー国王(ドイツ北部にあった王国)に即位する。

なお、ウイリアム4世のクラウン銀貨については全て流通を目的としないプルーフ貨幣や試作用のパターン貨幣であり、流通用の通常貨幣の発行は無い。また、ウイリアム4世肖像の主彫刻はウイリアム・ワイオン(William Wyon)の担当によるものであるが、他の部分の彫刻は王立造幣局彫刻師の Francis Legett Chantry と Jean Baptiste Merlen の2名を加えた合作である。

<1831年号>
gold bgold a発行は贈呈用のプルーフ貨幣と、試作用のパターン貨幣(通常貨幣の規格を準用)の両方がある。国王肖像の首元には凸彫りで「W.WYON」もしくは凹彫りで「W.W」のイニシャルが刻印されたものと、刻印のないものの3種があり、また、試験的に金メッキを施したクラウン「金貨」も僅かに存在する。
発行枚数は100枚、重量:28.2760g、銀純度:92.50%

<1834年号>
ほんの僅かに発行されたもの(発行枚数不明)であり、国王像の首元には凹彫りで「W.W」のイニシャルが刻印されている。

「ハーフ・クラウン銀貨」
ww scriptww blockハーフ・クラウン銀貨の特徴は「W.W」イニシャルの種類であり、筆記体で刻印されたものとブロック体で刻印されたものの2種が存在する。
(※写真は右側が筆記体、左側がブロック体)
重量:14.1380g、銀純度:92.50%

<1831年号>
1831   half Crown  b1831   half Crown  aプルーフ貨幣のみの発行であるが、銀貨の「縁」部分は、刻印が施されたものと無地のものの2種類が存在し、また、「W.W」も Script(筆記体)と Block(ブロック体)の両方がある。


<1834年号>
1834 Half Crown  B1834 Half Crown  Aプルーフ貨幣と通常貨幣ともに発行があり、「W.W」刻印は筆記体とブロック体の両方がある。
また、プルーフ貨幣では「縁」部分に刻印が施されたものと無地のものが存在する。
発行枚数は993,000枚

<1835年号>
通常貨幣の筆記体「W.W」イニシャルのみの発行であり、発行枚数は282,000枚

<1836年号>
プルーフ貨幣と通常貨幣ともに発行があるが、「W.W」イニシャルは筆記体のみである。
発行枚数は1,589,000枚

<1837年号>
通常貨幣の筆記体「W.W」イニシャルのみの発行であり、発行枚数は151,000枚

なお、いずれの銀貨にも発行年号の数字の前には「西暦」を意味する「ANNO(※1)」の記号が付されている。
(※1) Anno Domini (主の年:キリスト生誕年の意味)の略称。

kuro_kutushita at 14:10|PermalinkComments(0)TrackBack(0) クラウン貨 | ウイリアム4世