2005年06月25日

インタビュー(1)

「小田選手、お時間少しよろしいでしょうか?」

私はモンペリエの練習場から出てくる小田選手に声をかけた。
「『サッカーダイレクト』編集部ですが、取材よろしいでしょうか?」

「ああ、いいよ」
小田選手はあっさりと了承してくれた。

「ありがとうございます。えっと、では……」
私はメモ(カンペ)と録音テープを取り出した。








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今期からキャプテンになられたそうですね。おめでとうございます。
----ありがとうございます。
今のお気持ちを聞かせてもらえませんか?
----身が引き締まる思いだ。まだまだ若輩者なので。
練習とかでは、やはり自ら声を出したり?
----いやぁ、何をしていいか分からないと言うのが本音だね(笑)。今までのチームにいたキャプテンの人たちはどちらかというとプレーで引っ張るタイプだったが、俺はどちらかと言うと口うるさく言う方だから。
一昨年まで所属していたエスパニョールのマキシ選手とか?
----そうだね。まああの人はプレーだけではなく、適切な場面で適切な指示を与えていましたが。俺はまだその両方ができていません。
キャプテンとして望む、モンペリエの今シーズンの目標は?
----もちろんリーグ優勝だ。自分たちの実力はどうあれ、優勝を目指さない選手などいないだろう?(笑)。



話は変わりますが、最近はあなたをU-22日本代表に押す声も聞かれます。この点については?
----もちろん嬉しいよ。でも実際に呼ばれたことはないし、そんな話を日本サッカー協会の方から聞いたこともない(笑)。でも招集されたら命がけで戦う心構えだけは持っている。
呼ばれたら行く準備はできている?
----そりゃあもう。
ユース世代も含めて、日本代表の試合は見て研究したりしているのですか?
----いや、それがこちら(フランス)では日本代表の試合を(テレビで)やってくれなくて。スペイン時代もそうだったけど。もっぱら、ごくたまに代理人が撮っておいてくれたのをビデオで見る程度だね。
最近はユース代表も日本代表も苦戦しています。
----中田英寿選手を中心としたシドニー五輪世代の多くが代表を引退したのが大きいかもしらない。攻撃的な中盤の選手の世代交代が上手くいっていないようだ。そろそろ俺の出番かな(爆笑)。
今年はワールドカップ本大会も開かれますが、やはり出たいですか?
----いやぁ、サッカーやってる人でワールドカップに出たくない人なんていないでしょう(笑)。
それもそうですね(笑)
----記事に書いて置いてください。『小田は常に日本サッカー協会からの電話を待っています』って(笑)



話をモンペリエに戻しましょう。エスパニョールではあなたは3-3-2-2のトップ下で起用されていました。それに対し、モンペリエでは4-4-2のサイドハーフで起用されています。違いや戸惑いはありますか?
----まずはじめに言っておきたいのは、私は子供の頃からサイドアタッカーでだった。だからサイドの方がやりやすい。でも今の(SHで起用されている)モンペリエはもちろん、エスパニョールでもプレイはすごくやりやすかった。
と言うと?
----俺は守備能力に大きな欠陥がある。でも3-3-2-2のウイングバックだと、サイドの攻守を1人でカバーしないといけないから、必然的に守備におわれることが多くなる。これは俺自身にとってもチーム全体にとってもいいこととは思えない。(エスパニョールの)監督に一度、「俺をサイドで使ってください」と頼んだことがあるんだけど、そのときも守備のことを言われて、「お前をサイドで使うなら(FWの)タムードをサイドで使う」と言われて一蹴されたよ(笑)。
では、今のモンペリエは?
----別に守備をまかせっきりにしているわけじゃないけど、俺の後ろには守備能力に優れたサイドバックがいてくれるから安心してあがれるよ。
自分の持ち味が発揮できると言うわけですね?
----ああ。それに、ディフェンシブハーフに攻撃的なサイドアタッカーの広山先輩がいてくれると言うのも大きい。俺が上がりたい絶妙なタイミングで前方へのパスをくれるし、俺が中央よりのポジションを取ったときはサイドのフォローもしてくれるし、俺へのマークが厳しい時はポジションチェンジして自分でサイドを突破してくれる。お互いの呼吸があっているので、すごくやりやすい。
なるほど。では、広山選手以外にやりやすいチームメイトは?
----やっぱりアガホワかな。パスの出し手と受け手という違いはあるけど、プレイスタイルがよく似ているからどういうパスを欲しているかがよく分かるんだ。裏に走りこみたそうにしているときはアーリークロス出して走らせたり、ドリブルで突破したい時は下がって受けさせるパスを出したりね。



プレイスタイルの話が出ましたが、理想とするプレイスタイルを教えてもらえませんか?
----サイドライン際でドリブルで果敢に勝負を挑み、ドリブル一つでサイドの攻防を完全に制して味方や観客を勇気づけ勢いづけれるウイング、かな。
ドリブルにはこだわりがあるのですね。
----俺にはそれしかできないしね(笑)。
いえいえ、そんなことはないでしょう。では、理想とするチーム像を教えてもらえませんか?
----(少し考えて)ブラジルやレアル・マドリーみたいなチームかな。相手に最大限の力を出させた上で、それ以上の力を見せ付け粉砕する、みたいなチーム。
攻撃的なチームと言うことですか?
----いや、そうじゃない。ああ、もちろん攻撃的なチームと言うことは絶対条件だが……。例えば、アルゼンチンやオランダ、クラブチームならバルセロナなどのチームは、攻撃的なチームだけど俺は好きじゃない。90分間自分たちのペースでゲームを続け、相手に何もさせないようなサッカーは嫌いなんだ。頭では「上手い!」と分かっていても、本能的な部分が受け付けなくてね(笑)。
では、本能が受け付けるチームはどういうチームなのですか?(笑)
----そうだな(少し考えて)……自分の頬を相手に出して「思いっきり殴ってみろ!」とわざと殴らせる。そして相手のその渾身の一撃に耐えて、「そんなものか!」とこちらが思いっきり殴る。そういうのを何度も何度もやって、ボロボロになってはいるが最終的にはこちらが立っている……みたいな戦い方のチームが大好きなんだ。分かりにくいかい?(笑)
ニュアンスは伝わります。『蝶のように舞い蜂のように刺す』戦い方は好きではなくて、足を止めての打ち合いが好きというわけですね?
----その通り! 相手の良さを消しあう試合より、お互いに良さを出し合う試合のほうが見るほうもやるほうも楽しいしね。しかしサッカーのインタビューとは思えない台詞だな(笑)
たしかに(笑)。では、そのようなサッカーを目指すうえで、小田選手が目指す理想的なプレイ、役割は何になるのでしょう?
----これはあくまでも俺の持論なのだが、サッカーのチームは守備の中心の王様であるGKと、攻撃の中心の王様であるFWの2人からなっている。俺たちMFは2人の王様を繋ぐ家来だ。その中でも、サイドの選手は一番下っ端の足軽歩兵かな(笑)。
これはまた斬新な考えですね。
----そうかな。いや、そうなのだろうな。酒の席で酔っ払ってこの話をチームメイトとかにすると、みんな怪訝な顔をするから(笑)。
酒と言えば、昨年の事件が
----(記者の言葉をさえぎって)こないだ誕生日を迎えてもう20才になったから問題ないよ!(大笑)
お誕生日、おめでとうございます(笑)。話を元に戻しましょうか。
----そうだね(笑)。要するに、俺たちサイドアタッカーはチームの主役ではないし、ヒーローになれる機会も少ない。でも、足軽には足軽のプライドがあって、俺たちなしではチームの攻守は上手くいかないぞ、みたいな自負がある。ドリブルで相手のサイドを蹂躙することで敵の士気を下げ、応援してくれている観客の皆のボルテージを高める。スタジアムのメインスタンドから一番近いのは俺たちサイドの選手だからね。記録に残る仕事ではなく、記憶に残る仕事をするのが俺たちの役割だと思っている。
そのためにドリブルを果敢に仕掛ける、と?
----ああ。もちろん相手をぬいてセンタリングをピタリと上げて得点に結びつく記録にも残る仕事ができれば最高なのだけど、自分の能力を考えると毎回毎回そう上手くは行かないからね(笑)。でも「小田がボールを持つと何かが起こる」みたいに思ってくれると嬉しいね。たとえそれが『ありえない』プレイを期待するものであっても、応援や期待はチーム全体の勢いになるからさ(笑)。


                                       (了)

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