先日の記事「池田信夫の脳みそが腐臭を放っている件」についてコメントでご指摘いただいた件について検討を加えてみました。

 まず低線量被曝の危険性についてですが、ご提示いただいた放影研の資料はいささか古い物のようで、その後各方面から数多くの批判を受けているものであったことがわかりました。
 放影研そのものについてもアメリカと共同設置されたもので、原子力発電所の建設推進の役割を担っている組織であるとの批判をうけている組織であることを念頭において考える必要があるようです。
 (例えばhttp://ww3.enjoy.ne.jp/~simoiti1329/images/ujinahijiyamar/5abcc.htm

 また低線量被爆については、原爆症の認定基準についての全日本民主医療機関連合会の指摘(
http://www.min-iren.gr.jp/syuppan/genki/148/genki148_5.html)や朝日新聞の報道に対する批判(http://www.inaco.co.jp/isaac/back/031/031.html)などを見れば、やはりその影響を無視する事は科学的な判断とはいえないと思います。

 この点で池田信夫は恣意的な発言をしているという事は紛れもない事実であると再認定いたしました。
 
 またDNAの損傷が次世代に引き継がれうるかという議論もいたしましたが、「これは最近の分子生物学で研究結果で分ってきた訳ですが、その修復の仮定で生まれた色んな異常な再結合が次々に受け継がれて、その結果、ガンとか、先天障害とか免疫異常、様々な病気を生み出してくる。その元が受け継がれていく、これを遺伝子の不安定性、あるいは「ミニサテライト突然変異」という風に言っている。」http://iwj.co.jp/wj/open/archives/3053)といった研究成果もあるようで、私自身もちょっと不勉強だったかなと反省しております。


 次に、池田の記述「石炭火力から出る放射性廃棄物の量は、同じ出力の原発よりはるかに多い」についてご指摘いただいた件です。この件についてはすでに他のブログで批判がされていました(http://www.anlyznews.com/2011/06/100.html)。またそのブログの中で池田の言わんとするところもようやくわかりました。「原子力発電所よりも火力発電所のほうが周辺環境に放射性物質を撒き散らしている」というのが池田の主張するところのようです。(ちなみに、このブログでも「経済学者を自称する池田信夫氏」という表現がありました。池田が似非経済学者であるという評価は他の方によってもされているようですね。)

 実際の問題として、前回の記事を執筆した折に私の知識になかったことですが、石炭中にウラン238やトリウム232が含まれるという事実があるということを確認いたしました。しかしながら上記の池田の表現が正しいのかというとこれは大いに疑問です。

 コメンターから提示いただいた資料によれば、日本の火力発電所が年間に算出する石炭灰の量は2002年度統計でクリンカ・フライアッシュ併せて600万トンです。使用する石炭の種類によっても放射性物質の含有量が異なりますが、この灰の中に最少でウラン238が0.002Bp/g、トリウム232が0.0015Bq/g、最大でウラン238が0.191Bq/g、トリウム232が0.181Bq/g含まれているとされます。池田はあたかもこれらの放射性物質を火力発電所が周辺環境に撒き散らしているかのように言う訳ですが、これらは廃棄物として管理されているものです。事故を起こした福島第一原発のように管理できない状況で放射性物質を当りかまわず撒き散らしているという状況ではありません。仮に火力発電所が爆発事故を起こしたとしても、その際に火力発電所の燃焼施設内にある石炭及び石炭灰の総量はそれほど多いものではないことを考えると、池田のこの発想は妄想に近いものといえるでしょう。 

 また通常稼動時に結果として算出される放射性物質の比較をするのであれば、異なる視点からの検討が必要となります。火力発電所で問題になっている放射性物質は石炭に含まれているウランなどが燃焼による減容によって濃縮されただけで放射能が強まるわけではありません(濃縮によって単位当りの放射線量は増えます)。しかし核分裂反応によって運転する原子炉にあっては、もとの放射能よりも強い放射能を帯びた核分裂物を作る事になります(http://www.nuketext.org/mansion.html#kesenai)。つまりただでさえ手におえない放射性物質をより危ない存在にしてしまうのが原発なのです。
 原発と石炭火力発電を同等に語ること自体が科学的な態度では無いと言わざるを得ません。

 ただし、石炭火力発電所で意図しないとはいえウランなどの濃縮が行われ、ケースによっては相当な放射線量を有している事は重要です。今後の課題として検討するべきであると考えます。