冤罪というものの悲しさを、ボブ・ディランらしい表現で綴っている名曲「ハリケーン」ですが、ボブ・ディランがハリケーンであり、「ハリケーン・カーター」を尊敬していたために、ハリケーンのような楽曲が誕生したのだ・・・というのが、歌詞を見ている限りでは多く伝わってくる楽曲となっています。

また、この楽曲は珍しくボブ・ディランの主観がまとまっているため、異色作でもある楽曲として有名です。

というのも、ボブ・ディランらしくない?と感じるような韻を踏んでいる歌詞が、これでもか!というくらいに登場するからです。本来のボブ・ディランは、シンガーソングライターとして活動しているためか、基本的にプロテスト・ソングを第一として作曲を行っています。

なので、冤罪事件についてもハリケーン・カーターの悲しみ、動向などを歌詞の中で表すものですが、「ハリケーン」ではボブ・ディランが、冤罪事件というものをどれほど忌み嫌っているのか、また、本来であればボクサーとしての栄光を掴めたはずなのに・・・という思いが多く綴られているのです。

「ハリケーン」の動画については動画サイトでも確認できるのですが、ハリケーンを歌う際は珍しく前のめりでボブディランが歌を歌っているのです。つまり、前のめり・・・になっていることで少しでも多くの人にアピールしたい、もしくは何もしないままではいられない!という気持ちが伝わってくる・・・、そのようなパワーのある歌として多くの人に強い影響を与えました。

他にも、従来のボブ・ディランでは見られないような、勢いを重視してたたみかけていくドラム、そして、悲哀さを表現し続ける悲しい音色のヴァイオリン・・・というように、本来のボブ・ディランとはかけ離れた音色などを体験できる1曲となっています。

ボブ・ディラン自体が歌詞の中に大きな意志を込められるというのは、今までに何度も知られることになった事実です。しかし、プロテスト・ソングのような訴えを中心とした歌でもないもの、それこそ一人の人物を正確に捉える楽曲が、これほど多くの人に影響を与えるというのは珍しい話です。

つまり、「ハリケーン」はボブ・ディランという人物が、幾重にも投影されている楽曲なのです。

次に歌詞を確認してみましょう。ハリケーンの歌詞では、「夜の酒場に銃声が響き、パティ・ヴァレンタインが駆けつけた」というところから、ハリケーン・カーターに起きた悲劇を細かく追いかけていくこととなります。

歌詞の中では、「女は叫ぶ「何てこと!みんな殺された」、これはハリケーンの物語、警察は彼に罪を着せた」というハッキリとした表現が使われているため、ハリケーン・カーターに起きた出来事を歌詞だけで理解するのは難しくありません。

その後、ボブ・ディランは「世界チャンピオンになれた、ミドル級1位の挑戦者、ミドル級ぐらいの人物、これがハリケーンの物語、世界チャンピオンになれたのに」といった、本来のハリケーン・カーターであれば、どれほど充実したボクサー人生を送れたか・・・という、ボブ・ディラン、ハリケーン・カーター両方の困惑までもが綴られています。