早朝6時20分、お世話になったユースホステルを後にする。天気はあまり良くない。
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6時45分頃、会津高田駅に戻る。列車は6時59分発なので10分あまり時間がある。ホームで列車を待っていると、駅の外から、自動車のドアがバタン、バタンと閉まる音が聞こえてくる。
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何だろうと思って外を見てみると、駅前に自動車が列を作っている。そして、それぞれの自動車からは高校生が降りて、ホームにやって来る。皆、この列車で通学するのだ。
それにしても毎朝、6時59分発の列車に乗るために、本人も親御さんもご苦労なことである。次の列車は8時43分発、これでは授業には間に合わないから、今度の列車に乗るしかないのだろう。

やがて列車がやって来る。会津川口を早朝5時31分に発車した会津若松行きである。列車は3両ほど繋いでいるが、車内は高校生で満席どころか通学ラッシュなので立ち席が出ている。
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高校生の通学というと賑やかな話し声を連想するが、あれは学校からの帰り道で、義務から解放されて弛緩しているからなのだろう。早朝の通学列車は大勢居たがとても静かであった。カウンターを手にした男性が乗客数を数えながら人混みをかき分けて車内を往復している。先生かと思ったがJRの職員かもしれない。

会津若松着7時22分。14分の待ち合わせで郡山行きに乗り換える。こちらは満席とはいかないが、それでも高校生があちこちに乗っている。
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朝食がわりに駅前で買ったせんべいを食べつつ、終点の郡山で水郡線に乗り換える。8時47分着。
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水郡線の列車は30分ほどの待ち合わせで9時18分に発車する。30分というとだいぶ待つようだが、このひとつ前の列車は二時間前の7時11分発、次の列車はじつに四時間半後の13時49分発だから貴重な列車である。しかし貴重だから満員というわけでもなく、発車までに乗って来た乗客はわずかに10人ほどであった。
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水郡線に乗るのは初めてだが、海を通るでなく山を越えるでなく、沿線に有名な観光地があるでもなく、路線に特急列車も走らず、何となく地味な印象を抱いていた。そうして今回実際に乗ってみて、やっぱり地味と思うのだが、まあ山だ海だ温泉だと賑やかな路線もある一方で、地味であることもひとつの個性ではある。
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45分ほど走って磐城石川で列車は10分ほど停車する。長時間停車だから対向列車待ちだろうと思っていたら、対向列車は来るには来るが、こちらの列車とほぼ同時に到着して、向こうはすぐに発車してしまう。だいぶ不公平だ。まあ急ぐ旅ではないから不公平ではあるが不満ではない。駅の外に出て体を伸ばしたりしてみる。天気はだいぶ良くなったようだ。
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磐城棚倉を過ぎ、車窓から県職員宿舎を眺め、東館ではふたたび対向列車の行き違いのため7分ほど停車する。またしても待つのはこっちで、向こうは早々に発車してしまう。やはり不公平である。
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さらに進み、列車は常陸大子に到着する。11時17分着で6分間の停車である。時刻表を見ると、水郡線では起点の郡山と終点の水戸を除けば、唯一駅弁のある駅で、「奥久慈しゃも弁当」が販売されている、と記されている。だから食べてみたかったが、時刻表の駅弁情報には今まであちこちで痛い目に逢っているので、昨晩ユースホステルから駅弁の製造元の玉屋旅館に連絡をして、ひとつ予約をお願いしていた。
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停車時間は6分あり、玉屋旅館は駅前なので引き取りに行くつもりだったのだが、旅館の方が気を利かせてホームまで持ってきてくださっていた。有難く受け取る。

駅弁を頂きつつ、地味な景色を一時間ほど眺め、12時21分に上菅谷に到着する。水郡線はここ上菅谷から常陸太田まで枝分かれしている枝線があるので、そちらに乗ることにする。12時33分発、10分ほどの待ち合わせでである。
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水郡線の水戸〜安積永盛間137.5キロに対して枝線の上菅谷〜常陸太田間は9.5キロ、距離で比べても枝線のほうが「おまけ」に見えるのだが、じつは水戸〜上菅谷〜常陸太田間の方が先に建設されているから、いわば「元祖」である。「元祖」の開業は明治32年に対して、「本体」の全通は昭和9年、つごう35年も先輩にあたるのだ。

河合ー谷河原間ではまっすぐな線路を見ることが出来る。広い地平をまっすぐに敷かれた線路を見ると大陸横断鉄道のようだ。河合から谷河原まではわずか1.5キロであるが。
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12時47分、常陸太田に到着する。
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帰りの列車を調べてみると24分後の13時11分と、その二時間後の15時12分がある。24分では短いので二時間後に戻ることに決め、駅前の観光案内所でレンタサイクルを借りる。
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レンタサイクルは知らない土地を効率よく移動するのに重宝する。レンタカーでは大げさだし、停めるのに苦労する。バスはよそ者には難しい。かつての自転車は坂道では役に立たず、歩いたほうがましだったからあまり使わなかったが、最近の電動アシストは素晴らしい。よっぽどの急坂でない限り楽に登れる。だから旅先での観光にはお勧めである。難点は酒が飲めないことだろうか。

早速、駅近に歴史を感じる建物を見つける。パチンコ屋のようだ。
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こちらは旅館である。スナックが隣接していたらしい。宿泊客は隣で飲んでから眠りに就いたのだろう。栄えていたのはいつ頃だったのだろうか。
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常陸太田駅近くには2005年3月に廃止になった日立電鉄線の常太田駅がある。廃止から3年半ほど経っていて、大部分の線路は撤去されているが、駅施設や道路に面した線路は残されていた。
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駅構内もめぼしいものは撤去されていて、あまり駅を感じさせるものは多くないが、それでも改札口の鉄格子はさすがの存在感である。
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それにしてもなぜ駅名を常北太田としたのだろう。JR常陸太田駅は道路一本を隔てた目と鼻の先である。駅名が同じなら遠方の客にもわかりやすいのに。国鉄と日立電鉄は仲が悪かったのだろうか。

太田の旧市街地はすこし高台にある。アシスト自転車なのでわけなく登る。
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立派な建物は郷土資料館に使われているようだ。説明書きによると昭和11年に町役場として建築されたらしい。資料館の中は江戸期に使われた稲作用の道具などが展示されていた。

立派な看板を並べたお店がある。薬屋だろうか。看板の文字が楽しい。
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近くに気になる建物があった。
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木で覆われていて全貌がよくわからないが、入り口付近の窓はすりガラスで目隠しされている。建物の横には煙突があり、出入口近くには「sauna dock」と書かれた目隠しが窓を覆っている。
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風俗店として使われた店ではないかと思うのだが、よくわからない。

わからないまま常陸太田に戻り、15時12分発の水戸行きに乗る。
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水戸着15時53分。16時6分発の上野行きに乗り換えれば、今回の小旅行は終わりである。下校の時刻らしく、帰りの高校生が乗り込んでくる。今朝見かけた会津の高校生たちも、帰りの列車に乗り込んでいる頃だろう。
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