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  昨日いつもの岐阜現代美術館/NBKコンサートホールで現代音楽高橋アキさんの今会場2回目のピアノリサイタルがありました。前回は丁度1年前のことでした。

 現代音楽を12月の寒い中わざわざ聴きに行くのも・・・・と思いましたが、今回はプログラムの最後にシューベルトの「さすらい人幻想曲」があったので聴きに行くことにしました。この曲は自分も学生時代に弾いた曲なので、アキさんの弾く「さすらい人幻想曲」はどんなものか興味津々でした。

プログラムは、シェーンベルグ「6つのピアノ小品」、サティ「児童記述法」「官僚的なソナチネ」など4曲、松平頼暁「ピアニストのためのアルロトロビー」、M・フェルドマン「エクステンション3」、そしてシューベルトの「さすらい人幻想曲」でした。

 サティの「官僚的なソナチネ」はとても面白かったです。原曲はピアノ初心者が必ずと言っていいほど練習するクレメンティのソナチネですが、それをサティーのウイットに富んだアレンジでとても面白い曲に仕上がっていました。 


・・・で「さすらい人」ですが、昨年感じたシューベルトと同様ことごとく甘ったるい「さすらい人」でした。曲冒頭はフォルテッシモの強烈な和音連打で始まりますが、アキさんはメゾフォルテの優しい感じで始まりました。「えっ?」という感じでした。しかもテンポは遅めでした。ためらいのあるアインザッツ、ロマン派的なアゴーギク奏法等々、いわゆるスタンダードなシューベルト弾きからするとかなり異端的な演奏に聞こえました。

 でも聴いていくうちにこういう演奏もありかな、とも思えてきました。昔チェリビダッケというドイツの指揮者がいましたが、彼の演奏をはじめて聴いた時、今までのスタンダードな演奏に安住していた我々の度肝を抜く演奏に驚いたことがあります。楽曲を音質、音色など単音のレベルから全て見直し再構成した演奏は今まで慣れ親しんだ楽曲のイメージとは別物と言っていいほどの演奏でした。

  「そこまで・・」とは言いませんが、アキさんの演奏はサティのエキスをまぶしたシューベルト、1音1音に音の意味を与えたシェーンベルクの音構成で奏でたシューベルト、そういう意味では「高橋アキ風シューベルト、現代音楽の高橋アキがシューベルトを弾くとこうなるよ・・・」と言え、とても面白いと思いました。ただ自分としては昔の演奏家リヒテルが弾くダイナミックな「さすらい人」が大好きですが・・・。

今回は、現代音楽ピアニストの高橋アキさんの凄さが随所に光る演奏だったと思います。作曲家の思想、コンセプトを凝縮した作品を、音質や音色にこだわり、研ぎ澄まされた感性で、1音1音を緻密に繊細に表現した演奏はとても聴き応えがありました。