将棋に興味はないが、将棋界は昔から興味を持って見ている。2012年に亡くなった米長邦雄永世棋聖は私と同じ山梨の出身で、将棋好きの友人や学校の先生がみな「将棋指し=米長邦雄」と認識していた印象が強いからだ。その後、米長永世棋聖は最年長で名人を取ったり、将棋連盟の会長になったり、コンピュータと対局してみたり、ようやる人だと思っていた。このコンピュータの対局で米長永世棋聖は負けた。コンピュータ将棋がトップ棋士と肩を並べるという認識が一般にも浸透したのはちょうどこの頃だったと思う。

で、タイトルの件である。
三浦弘行九段が「対局中にスマホの将棋ソフトでカンニングしていた」と濡れ衣を着せられた事件は記憶に新しい。連盟は容疑がはっきりしないまま三浦九段を出場停止処分にして竜王戦の挑戦権を奪った。事件の詳しい経緯は他に譲るが、最終的に日本将棋連盟は何の証拠も示せないまま三浦九段に謝罪するという異常な幕切れになった。落ち度のない三浦九段は一連の流れで「カンニング棋士」のイメージを持たれ、社会的に抹殺されかけた。その名誉回復は未だ道半ばだ。 

この事件で最大の落ち度があるのは間違いなく将棋連盟だ。何らの証拠もなく棋士に処分を下した責任は極めて重い。一方で、三浦九段を告発する形になった渡辺明竜王、疑惑を表明した発端とされる久保利明九段を処分してはいけない。不正を告発した人間に空振りの責任を負わせたら、これから確固とした証拠がない限り不正を追及できないことになる。
今の所、将棋連盟は役員の減給にとどめている。これは処分として全く軽すぎる。

三浦九段の名誉回復の方法としては、
・十分な地位の保全
・金銭的な補償
・連盟としての処分の撤回と書面による名誉回復の告知
・執行部の引責辞任
・名誉回復のための対局

このくらいは必要だろうと思う。引責辞任は谷川連盟会長だけでなく、できれば役員級全員が望ましい。率先して仕事した人だけが処分されて仕事をしない人間が残るのは組織が腐敗する素だ。

三浦九段の名誉回復の機会として、将棋連盟には落ち着いた頃に渡辺明竜王との対局機会を提供して欲しい。きちんと「三浦九段名誉回復対局」と称して、ノンタイトルであること以外はルールを竜王戦に揃えた七番勝負でやって欲しい。連盟として名誉回復に尽力したという証にもなる。
三浦九段は「元に戻してくれ」と言っている。竜王戦を完全にやり直すのは無理でも、近い形で対局する機会を提供するべきだ。
これは渡辺竜王にもメリットは大きい。渡辺竜王はこの騒動の大本と言っていい位置にいる。告発した責任を問うべきではないが、外部からみれば問題は多い。時系列上は順位戦で三浦九段に負けた後、竜王戦で三浦九段と対局する直前の告発であり、三浦九段との勝負を避けたようにも見える。
報道によると「タイトルを剥奪されてもいい」「指す気はない」などと、今から見ればボイコットを臭わせる発言もある。竜王が権力を使って強い挑戦者を排除したのでは、と思われても仕方ない。
こうした疑念を晴らすためにも、三浦九段と渡辺竜王に対局して欲しい。どちらが勝ってもいい結果が残るはずだ。この対局は相当に注目される。新しいスマホやカンニングに対する連盟のポリシーを周知する機会にもできるだろう。

将棋ソフトが原因で将棋連盟がここまでゴタゴタするとは、生前の米長永世棋聖も思っていなかったのではなかろうか。