きょうです。
毎日時間があっという間に過ぎていきます。
本当に速い!去年の今頃は大和西大寺きょうこころのクリニックの開院準備でおおわらわだったのですが、10月に開院してもう1年がたとうとしているのですね。この1年は濃かったです。

で、精神科医療を取り巻く状況も日々激変が続いております。

この一年の動きで言えば、これまでのがん、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病の四大疾病に精神疾患が加えられて五大疾病となったことが大きなニュースですね。

社説:5大疾病 新時代の精神科医療へ(毎日JP)

がん、脳卒中、急性心筋梗塞(こうそく)、糖尿病は国民病とも言われ、医療法に基づいて「4大疾病」に指定されている。厚生労働省はこれに精神疾患を加えて「5大疾病」とすることを決めた。(略) 精神疾患の患者数は323万人(08年調査)。がん患者の2倍以上もおり、4大疾病で最も多い糖尿病の237万人と比べても規模の大きさはずぬけている。(略) 経済活動への影響も大きい。従業員のメンタルヘルス対策に苦労していない会社はないと言われるほどだ。失業給付や医療保険の負担も年々重くなっている。3万人を超える年間自殺者の大多数は何らかの精神疾患が関係していると言われるが、国立社会保障・人口問題研究所の調査では「自殺やうつ病による社会的損失」は09年で約2・7兆円と推計されている。
 

新時代の精神科医療とは?
僕なりに考えてみました。
・疾患概念の見直し
・治療法の見直し、開発(精神療法、心理療法、薬物療法など)

この二つが軸になると思います。
順番に解説しましょう。

疾患概念の見直しは、日々行われています。
ひとつは診断基準。診断基準は現在アメリカ精神医学会のDSM-Ⅳが主に用いられていますが、これもバージョンアップを定期的に続けられています。現在、DSM-5への改定真っ只中です。
そして、疾患単位についても。
うつ病に関しても、様々な概念が提唱されるようになりました。
・内因性うつ病(古典的な、原因不明のうつですね。性格要因がとりだたされることも多かったです。それから気分の日内変動など)
・ディスチミア親和型うつ
・新型うつ
・双極Ⅱ型障害によるうつ
・適応障害によるうつ
気分の落ち込みや意欲低下、興味の喪失などがうつ状態の人に診られる症状ですが、非定型化、症状の多様化が最近特にみられます。様々な原因や疾患が隠れており、特定は容易ではありません。

治療法についても日進月歩。
精神療法で言えば、認知行動療法はすっかりおなじみになりましたね。
そして薬物療法に関しても日本での承認を目指して、日々新しい薬の開発や、臨床治験なども行われています。

僕が精神科医になったのは平成9年。1997年。
新規向精神薬世代です。ニュージェネレーション。なんかかっこいいぞw 冗談はさておき。

1996年に、日本初の非定型抗精神病薬としてリスパダールが発売されたわけですが、精神科医療が劇的な変革を迎えようとしていた時期に医師になったわけですね。

そして抗うつ薬も。うつ病治療と言えば三環形抗うつ薬が主流だった時代に、新規抗うつ薬がさっそうと登場したのです。

まずSSRIが。
デプロメール、ルボックス(フルボキサミン) 1999年5月薬価収載
パキシル(パロキセチン) 2000年11月薬価収載

SNRI
トレドミン(ミルナシプラン) 2000年9月薬価収載

この時期に、非定型抗精神病薬もどっと発売しております。
ルーラン(ペロスピロン)2001年2月
セロクエル(クエチアピン)2001年2月
ジプレキサ(オランザピン)2001年6月

本当にスゴイ時代でした。
副作用が少なく、効果も素晴らしいとの製薬会社のプロモーションも盛んであったのですが、実際過剰宣伝では無かったと思います。
前医から漫然と多剤併用療法がなされていた慢性の統合失調症患者さんたちの処方を、僕自身次々と切り替えていき、単剤化にチャレンジしました。
治療成績は結構良かったと思います。仮に効果が同等なら、単剤にしたほうが服薬コンプライアンスは上がりますし、また整理することで過剰な鎮静から解き放たれた患者さんもいました。
ただ、この鎮静から解き放たれる現象について、病棟スタッフや患者さんなどに注意を事前に喚起することが必要。元気になりすぎてその状況を「悪化」と捉えられることもあるわけです。悪化なのか、改善へのステップなのか。慎重に見極めることが必要でした。

若造の精神科医の無謀なチャレンジとも言える治療であったかもしれませんが、良い病院、良き指導医に恵まれたと思います。
当時は学会発表や症例報告、論文なども精力的に出し続けました。
自分の治療がひとりよがりでないか、きちんと発表して、専門家の皆様に検証してもらうこと、そして出来れば臨床現場にフィードバックしてもらうことを目指していました。

ただ、当時は薬物療法に傾倒しすぎていたかもしれません。薬の見極め、調整が精神科医の腕のみせどころ、なんて勘違いしていた時期もありました。精神科医としてのキャリアを積むに従い、徐々に精神療法の大切さに気付いていくわけですが。

ともかく、薬物療法の進化はまだまだ現在進行中で継続しています。最近もレクサプロという新規抗うつ薬、SSRIが発売されました。
何人かの患者さんに使用していますが、今のところパキシルやデプロメールのように胃部不快感が顕著に見られるわけでもなく、良い感じですね。最近の抗うつ薬、SNRIのサインバルタにしてもSSRIレクサプロにしても、副作用の少なさは評価できるところです。
ただ、効果がどうか、と言うところに関しては慎重に評価していく必要があるでしょう。
副作用は結構投与初期にあらわれますが、効果が現れるのは時間がかかりますから。それでも昔の三環形抗うつ薬は4週から6週とか言われていたようですので、それに比べるとずいぶん速いとは思います。SSRI、パキシルなどは、早い人なら1週間以内に効果が出現する印象です。その分、パキシルによる軽躁化などにも注意しなければいけませんが。

たまには薬の話も大切ですね。診療中にどこまで説明できているか不十分かもしれませんが、ブログや薬局さんとの連携で診療を補完していければと思います。本日はこの辺で、ではまた!
人気ブログランキングへぽちっと押していただければ嬉しいです☆