きょうです。
警察庁の速報値で、2011年の国内自殺者数が3万人を超えた、という報道がありました。

自殺者:3万人超…14年連続 11年速報値 (毎日jp)

警察庁は10日、昨年1年間の全国の自殺者は3万513人だったとする速報値を発表した。3万人を超えたのは98年から14年連続だが、10年の3万1690人を1177人(3.7%)下回った。

 自殺者の減少は2年連続で、3万1000人を下回ったのは98年以来初めて。男性は2万867人で10年より1416人少なく、女性は9646人で239人増えた。月別で最も多かったのは5月の3367人で、最も少なかったのは12月の2088人。

 都道府県別では東京都が最多で3100人。大阪府1899人、神奈川県1824人と続く。東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県は400人、宮城県は483人、福島県は525人で、3県とも10年を下回っている。ただし都道府県別は自殺者の住所でなく遺体が発見された場所で計上している。

 一方、自殺の実態を調査している内閣府によると、遺族の話や自殺場所などから震災が直接の原因とわかった自殺者の数は、分析を始めた6月から11月までに全国で49人という。内閣府自殺対策推進室は「震災の影響はじわじわと広がる可能性があり、状況を注視して対策に取り組みたい」と話している。警察庁は年度内に確定値を公表する。【鮎川耕史】


自殺者数は3万人を超える状況が続いているものの、3万1000人を割ったのは98年以来はじめてのようです。
東日本大震災など不幸な社会情勢の中、自殺者数が減ったのは意外と思われる方も多いのではないでしょうか。

しかし、今後自殺者数が減っていくのは当然と言うか必然であるようです。
ヒントは一冊の本にありました。

名著「なぜうつ病の人が増えたのか」の作者、冨高先生の新刊本です。
うつ病の常識はほんとうか 冨高辰一郎

この本は5章構成です。
また詳しく本のレビューを書くつもりですが、今回はこの書籍の第一章
「なぜ自殺者は3万を超えているのか」が非常に参考になりました。
というか、この一章だけでも一冊の本として出版できるくらいのクオリティがあると思います。

特に、自殺者数3万について、実数だけの観点から捉えるのでなく自殺率や標準化自殺率から捉えて分析されており、自分が今まで気づかなかった視点を得ることができました。

で、今後自殺者数は減っていくであろうその必然について解説していきたいのですが、そこに至るまでの前置きも素晴らしかったので、「数」については次回以降にしたいと思います。

まず今回はそこに至る前段階として、自殺報道についてもこの本に詳しく書かれていました。自殺報道については後追い自殺を増やさないためにも配慮すべきことがたくさんあります。日本では有名人の自殺があるたびに毎回同じマスメディアの間違いが繰り返されるのであらためてここに記しておきたいと思います。 
自殺の過剰な報道は、むしろ自殺を誘うほうに働く可能性が高い。これは過去の歴史や統計から実証されている。自殺の場合、センセーショナルな自殺報道やマクロの統計の数字をやみくもに連呼すると、さらなる自殺を誘発するのである。
三原山火口での連続自殺も紹介されていました。

wikipediaから。

三原山(伊豆大島)
1933年1月と2月に実践女学校の生徒が火口へ投身自殺。2件とも同じ同級生が自殺に立ち会っていたことがセンセーショナルに報道され、この年だけで944人が投身自殺した。又この女生徒の事件が高橋たか子の『誘惑者』の題材となった。

こういったセンセーショナルな自殺報道のあとに自殺者数が増加することをウェルテル効果と呼ぶ。ゲーテによって書かれた「若きウェルテルの悩み」という小説の出版後に、欧州で若者の自殺が急増したことから名づけられた。
ウェルテル効果のwikipediaページもあります。
日本では岡田有希子さんやXJAPANのhideさんのケースが有名ですね。
岡田由紀子さんの自殺はもう26年前になるのですね。。僕が高校生のときでした。始業式から帰ると自殺報道がセンセーショナルにされていて、本当にビックリしました。
たしか報知新聞や写真雑誌のエンマが遺体の写真を載せていました・・・そういうセンセーショナルな報道が、たくさんの若年者の後追い自殺の一因となったことは否定できません。幸いにも当時の僕の友人や知人にはそのような人たちはいませんでしたが。

WHOが作成した自殺予防の手引きには、一般医・プライマリケア従事者・メディア関係者向けにそれぞれ手引きが書かれています。
高橋祥友先生翻訳のリンクページを貼っておきます。
WHO による自殺予防の手引き 研究協力者:高橋祥友(防衛医科大学校・教授)

ここでは、メディア関係者向けにこのように書かれています。
 

ぜひすべきこと

・ 事実を報道する際に、精神保健の専門家と緊密に連絡を取る。
・ 自殺に関して「既遂」(completed)という言葉を用いる。「成功」(successful)という言葉は用いない。
・ 自殺に関連した事実のみを扱う。一面には掲載しない。
・ 自殺以外の他の解決法に焦点を当てる。
・ 電話相談や他の地域の援助機関に関する情報を提供する。
・ 自殺の危険因子や警戒兆候に関する情報を伝える。



してはならないこと

・ 遺体や遺書の写真を掲載する。
・ 自殺方法を詳しく報道する。
・ 単純化した原因を報道する。
・ 自殺を美化したりセンセーショナルに報道する。
・ 宗教的・文化的な固定観念を当てはめる。
・ 自殺を非難する。

岡田有希子さんの自殺に関しては、マスメディアは「してはならないこと」をしまくってましたね・・・

冨高先生の書籍では、このように書かれています。
残念ながら、自殺者数増加の要因を科学的に分析し、理解しようとする人は少ない。むしろ短絡的に自殺者数増加と目の前の社会的問題を結びつける傾向が強い。
(中略)しかしWHOも警告しているように「統計学は注意深く、そして正確に説明されなくてはならない」のだ。
そのとおりです。そして自殺者数が3万人を突破している現状を「日本では不況や震災が原因で自殺者数は増え続ける」と悲観的に捉えるのか、それとも冷静にいろんな変数から統計的に分析をして今後の対策を具体的に建設的に捉えるのか。すべきことは間違いなく後者であり、冨高先生の本ではそれが詳細につづられています。

次回以降に続きます。
とりあえず、専門家は絶対買え!(命令形w)で、一般の方にも買っていただきたい本です。

うつ病の常識はほんとうか
冨高辰一郎
本日はこの辺で、ではまた!
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