きょうです。
今日は、神戸や大阪など各地でマラソン大会が行われたようで、僕の友人知人もたくさん参加していました。去年は神戸マラソンのクォーターに出場したのですが、今年は11月の中土佐タッチエコトライアスロン大会でオフにしたので、フェイスブックやツイッターでの応援に専念しました。

で、ウォールをみていますと、女優の酒井法子さんが復帰されたようで、その話題もちらほらありました。僕もツイッターで情報発信をしたのですが、どうも彼女の復帰には否定的な意見が多かったようです。
まず、僕のツイートから。
記者会見では
 覚せい剤を断つのは難しいと聞くが、断つためにどういうことをした?
「私自身、微塵もそういった気持ちになりませんし、きっぱりと断って、まっすぐ前を向いて行きていくことしか考えてない。心配なさらず、信じていただけたら幸いです。自分の中で“断つ”ということに関して苦しんだことはない。きっぱり立ち直った。意識一つで、離れていくということは可能だと、自分自身の経験通して思う」
なかなか、微妙な記者会見だったと思うのですが。
正直、ツイッターでも否定的な意見が多かったのですが、フェイスブックで流れる専門家たちのコメントは、非常に温かいものでした。
純粋に、彼女の再生を応援する。そこには、野次馬的な分析も評論もないのです。

薬物依存の治療や支援にたずさわるのならば、必ず読まねばならない名著があります。
松本俊彦先生の、「薬物依存とアディクション精神医学」です。 

この本の序文には、こう書かれています。

 意外に知られていない、もしくは意図的に無視されていることだが、薬物依存者の多くが、孤立無援の状況で内なる「痛み」と格闘する過程で、薬物使用のコントロールを喪失している。
このことは、薬物依存者の支援とは、「薬物をやめさせることの支援」ではなく「『痛み』を抱えた個人の支援」であることを示唆している。

「痛みを抱えた個人」として、彼女の再生は果たされるのでしょうか?
また、2009年当時の記者会見の様子についても、記されています。

あの会見によって、彼女は、多くの人に「自分は依存症には至っていない」ことを印象づけるのに成功した。視点の定まらない目、こけた頬、目の下の隈、口の端からの流涎、震える手先…… もしもが多くの人が抱く薬物依存症者のイメージであるとすれば、彼女の毅然とした美しさは、それとは完全に反対のものであった。その場面をテレビ中継で見ていた筆者は、「さすが女優」と思わず唸った。

しかし、ここではっきりさせておかねばならないことがある。それは、女優自身のことはさておき、一般論としていえば、あの姿は依存症者のものとして何ら矛盾しない、ということだ。薬物依存症者の多くは、薬さえ使っていなければ、あるいは、薬が目の前になければ、普通の人である。少なくともどこかに病気を抱えている者には見えない。これが誤解を招くのだ。

たとえば、もしも将来、彼女が薬物を再使用して逮捕されるようなことがあれば、彼女が依存症である可能性をいっさい顧慮されることなく、「反省が足りない」という大バッシングの集中砲火を浴びるのでなかろうか?
そう、依存症とは目に見えない病気なのだ。

依存症とは目に見えない病気…
そして、治療者や支援者が捉われている偏見があります。罰をあたえればよい、受診して尿検査で陽性反応が出たら通報して警察にまかせればよい・・・
しかし、優先させるのは罰ではなく、治療なのです!(以下引用はすべて「薬物依存とアディクション精神医学」)

覚せい剤取締法には医師の通報義務はなく、たとえ公立病院に勤務する医師であっても、医学的治療の見地から正当な理由があれば、刑事訴訟法第239条に規定される「公務員の犯罪告発義務」には縛られない
 
彼らが薬物をしたくなった、もしくはまたしたとして、何より一番絶望しているのは彼ら自身なのです。
松本俊彦先生は、こうも書いています。

世界中で少なくとも一箇所は、正直に「使いたい」「使ってしまった」と告白できる場所がなければ、薬物依存症からの回復はできない

今回の彼女の復帰会見は、薬物依存の知識が無い世間一般に回復をアピールするには精一杯のものだったでしょう。
クスリを目の前に出されても、二度とやらない自信がある、というのはあの田代まさし氏も使った言葉です。

彼女が薬物依存症者として、いえ、痛みを抱えた一人の人間として、きちんと弱さをさらけだせる場所がどこかにあることを、願わずにはいられません。

最後にこちらも読んでください、松本俊彦先生の過去記事です。
松本俊彦先生による自殺予防研修を受けました。「自殺念慮者と自殺未遂者への対応」
松本俊彦先生の講演を聴きました!「アルコールとうつ、自殺~死のトライアングル」
本日はこの辺で、ではまた!
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