2005年05月18日

NO.1482 100円ショップ

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 藤野 滋さんから「100 円ショップはなくなる」という100 円ショップの最大
手「大創産業」の矢野博文社長のインタービューの内容をお送り頂きました。
 北から南からは、渡辺ゆうさんから書籍「サッチャー改革に学ぶ 教育正常化
への道」を紹介頂きました。
 京増弘志 PDB01260@nifty.com  http://homepage3.nifty.com/kyomasu/
  かわら版バックナンバー  http://blog.livedoor.jp/kyomasu123/
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 矢野社長は1943年広島県生まれ、67年中央大学卒業。妻の実家の養殖業を継ぐ
が、失敗。転職を繰り返す。72年雑貨の移動販売を始め、77年に大創産業を設立。
87年に店舗展開を開始。100 ショップのトップ企業へ。創業以来25年間会議
ゼロ、目標、予算、ノルマなし、経営計画もない「行き当たりばったり」の異色
の経営者です。
 しかも100 円ショップの将来に抱く危機感は、並大抵ではなく、その苦悩と
苦闘振りはひしひしと伝わってきます。

●昨年四月、総額表示の導入時には、矢野社長がマスコミを通して積極的に発言
することはなかった。100 円でやっていけるかどうか、迷いがあったのでは
ないですか。
矢野:まあね、20世紀は早く結論を出して、進んだもんが勝ったけど21世紀は
グズグズする方がええ。不透明でシミュレーション通りいかないんだから、
早く結論を出すもんが負けるんよね。
 強い哲学を持った経営者が20世紀は大成功したけど、そういう経営者は21世紀
は滅びていくよね。

●そうなんですか。
矢野:だって強い哲学を持って、自分でいいもんをどんどんつくるというのは、
食べるものが、あるいはモノが足りない時代には通用するけど、一人百色、
千色の時代になってくると弱い。同じモノを安く売るというの仕組みだけでは
生き残っていけない。
 自分の強みや哲学で大きくなって、自分の哲学で潰れていくのが20世紀と21世
紀の差。だから21世紀はそういう人じゃなくて人間性を加味した人たちが成功
していくよね。

●つまり迷いではなく、わざとグズグズしていたと。
矢野:この間経団連でトヨタの張(冨士夫社長)さんが、消費税は15%ぐらいが
適切だろうと言った。いま国が抱えている借金を返していくには、33%か36%
にしないとやっていけないと言われている。
 公務員を半分にすりゃいいが、それに手を付ける気は全くないんだから、消費
税はこの先必ず上がっていく。来年だってすでに8 %にするのか、12%か15%
にするのか微妙な問題が出ているよね。
 今までは外税じゃけ国民はみんな自分が払いよると思うとる。これが内税とな
ると、お客さんは企業が払いよると思うようになる。
 例えばガソリンだって価格の半分は揮発税をとられている。でも内税だから、
誰もなんとも思わんじゃろ。

●確かにサラリーマンの源泉徴収と同じで、税金を払っているという意識が希薄
になります。
矢野:中国がね。外税の時は消費税を上げると言ったらみんな反対した。内税に
したら誰も反対しなくなって、すぐに18%になった。で、私が最初沈黙したの
は(導入の)40日前までは、チェーン協から財務省の指針として、105 円ショ
ップにせいと言われていた。総額表示一本にしろと。100 円ショップという
名前は使ってはならない。105 円ショップにしなさいと。ところが40日ぐらい
前になってから経産省から100 円と105 円両方ともOKと言ってきた。というこ
とは、今回一気に総額表示にするのは、諸般の事情があって無理と、政治判断
が働いたに違いない。次回から次々回に変えましょうと。例えば9 %、13%、
17%という数字になったら、消費者に紛らわしいから、総額表示一本にしなさ
いと言いやすくなるよね。

●消費税のアップと総額表示は、100 円ショップの存在を許さない。
矢野:なくなる。ガソリンと酒で味をしめているから、誰がなんと言っても必ず
 総額表示一本にする。そうしたら100 円ショップはなくなる。それに今の105
円はきりがいいからやっていけると思うけど、仮に13%アップで113 円になっ
たら、もやもやしたものがお客さんに残るよね。
113 円だけど100 円ショップですよと言ったら、おかしいじゃない。そうなる
と100 円ショップや99円ショップが成立つかどうか。だったら高額の商品も
やっておかなければならない。うちら規模が大きいけ。悪うなった時にボコッ
とくるけぇ。今は8000坪の土地建物の他にもう一つ8000坪の土地を手当てして、
そこで高額の商品の実験をしている。

●すでに100 円の壁を超えた商品もかなり出ています。
矢野:環境が変わったり、劣化したら軌道修正がいるよね。成功パターンは長く
 は続かない。GMS だってそうじゃない。今のような状況になることを誰が予想
したか。すべての企業、業態に寿命がある。その寿命をどう見つけるか。
お医者さんがいないから、それが難しい。

●価格を上げた商品は成功していますか。
矢野:成功しているかしていないか、そんなもんよ、大創が潰れる時にしか分ら
ん。成功事例によって悪うなったりするんじゃけえね。ただ例えばユニクロが
フリースだけずうっとやっていたら、今のユニクロなんてないよね。
 これと同じことで、一つものではお客さんは飽きる。ちょっといい業界だとみ
ると、色んな企業が参入してくるけど、悪いとみるとパッと離れる。
100 円はもうピークを過ぎたから、お客さんはかってのようにあっとは言わん
よね。地方はどんどん撤退する。うちらでも70〜80店は撤退しているし。広域
商圏ならが別、持つよ。しかしうちらのような小商圏は難しい。

●やはりお客の飽きとの戦いがポイントに。
矢野:お客さんは飽きるんよね。100 円ショップが少ない時はそうでもないけれ
ど、増えたら飽きる。

●それには100 円の壁を超えていい商品を開発せねばならないと。
矢野:そういう格好のいいことじゃない。20世紀のように置けば売れる時代じゃ
ないわけで、お客さんに感動の同意を得なきゃいけない。で、どうするかとい
うのは、練習せにゃしょうがないよね。でも高額なんて売れっこない。でも
やらざるを得ない。今を守るために仕方なしにやっている。

●今までは100 円の価格価値にお客がついてきた。しかしこれからは商品そのも
のの価値を開発していくことに。
矢野:価格もただ安いというだけではダメ。語呂が良くないと。海外でもうまく
 いっているところは、価格のキレがいい。中途半端な価格の出るところはダメ
 だね。人の名前もそうじゃない。語呂がよくって心地よい名前にはやはり人気
が集まる。99円とか98円という価格は、安さという語呂を使っているわけ。
あっ1 円お得、100 円払っても1 円残るという。113 円では何も残らない。
語呂も悪いし、心地よさもない。

●和雑貨やアジアン風雑貨の新しい商品群の実験も始めました。
矢野:すべてのものの寿命が短い。やっているけど、もう売れん。

●小商圏対応型の商品開発で、お客の飽きに対応していかなければならない。
矢野:セブンイレブンが年に7割以上商品を入れ変えるという。それが小商圏の
 生き方。嫁さんでもいつも見てたら飽きるんじゃない。

●コンビには7割以上変えている。で、それを目指すと。
矢野:それはできない。コンビニのようにうちは食品を扱っているわけではない。
 しかも100 円とうい絶壁があるんだから。極端に言えば潰れるのを待っている。
 裁判で言えば、刑の宣告を先に延ばそうと、色んな言い逃れをしているような
 もんよ。

●しかし、それでも新しい業態の開発や、100 円の壁を超える実験は、現実にし
 ている。
矢野:カエルのようにね。ぴょんぴょん跳ねて、この壁の中におったらいかん、
いつかこの壁を超えようとはしています。そのため鍛えて鍛えて。100 円と
 いうのは、やり易い商売。だけどそのことは、物凄くやり難い商売に直結して
 いる。

●海外を含めて店数はどのくらいに。
矢野:国内は2400店ぐらい。海外は340 〜350 店。

●先ほどのお話では70〜80店撤退したとか。今後は閉店数が増える。
矢野:というか、脱皮していかないと。セブンイレブンが7 割を変えるというの
 は売れんようになって変えるんじゃないんだ。新しさに脱皮していきよるわけ。
 過去を否定することと、昨日までの成功事例否定することと、脱皮して進化し
 ていくことと、その中に生き筋というか、何とかそういものを見つけ出すしか
 方法がない。

●お客が企業の指南役。お客を見て次を考える。
矢野:モノが足りない時代には、戦略戦術でお客を引っ張ってこれたけど、モノ
 が余った、店が増えすぎた瞬間から、お客の「しもべ」になるしかないよね。
 わしはこうやるんじゃ言っても、お客さんから見放されたらどうしようもない。
 15年前に世界中で日本の消費者ほど注文の多いお客はいないと言われたけれど、
 今は店は5 倍、7 倍増えて、世界一文句の多い消費者を相手にせねばならなく
 なった。お客さんが喜ぶことを必死に追いかけるしかないよね。

●海外出店は将来に対する保険でしょう。
矢野:ではないね。日本が悪うなったから、海外で食えるようにしようなんて、
 そんなことはできっこない。何回もオファーがあったりして、仕方がないから
 出している。なるぺく出さんに越したことはないんだけれど、まあ出たら
 仕方ない。21世紀は縮み世紀じゃけんね。現場の現実をどれだけけ把握して
 後は恐れおののく力がどれだけあるか。病気になる前に、病気にならないよう
 切磋琢磨する。恐れおののく力が企業も人間も育てるわけ。

●あえて伺いますが、今年の政策は。
矢野:うちは朝礼が年3回しかない。創業から25年間会議ゼロ、目標、予算、
 ノルマを立てたことがない。経営計画もない。行き当たりばったり。
 僕はユニーの家田(美智雄前会長)さんを尊敬しているのは、あの人はいつも
 「行き当たりばったりですよ」と言っていたから。これはちゃらんぽらんの人
 が言うと軽いけど、ユニーを短期間で立て直した家田さんがおっしゃる行き当
 たりばったりは重いよね。飛び抜けた能力があるわけじゃないし、先見性なん
 か人間本来持ってないじゃけぇ。

●漠然とは分りますが、抽象的過ぎるのでは。
矢野:要するに田んぼが荒地の時、開墾するのは誰でもできる。でも開墾された
後、自分の田んぼをどう増やすかと言ったら、人の何倍も働いて、貯金をして、
 相場500 万円の土地なら700 万円で譲って下さいと、何百回もお願いするしか
 ない。それが21世紀の経営、戦略じゃない。
 働いて貯金して質素にして、でもみんな金持ちになったら、質素にできんよう
 になって、みな逆に貧乏になっていくけぇ。

●確かに。
矢野:わしゃ最初から最後まで貧乏だから。100 円ショップの親父がお抱え運転
 手を雇って、ベンツに乗ったらおかしいだろう。質素にしてきたから幸せとい
 うこともある。未上場だから株主を気にせず思い切った方向転換もできるし。
 だから、見よう見真似で成功したのはホームセンター、コンビニまで。
 100 円ショップで成功したのも単なる偶然なんじゃけ。偶然はそう何回も起き
るもんじゃない。後は自分の哲学、苦学を持ち込んで、次に生きる道を見つけ
るしかないよね。                 藤野  滋
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★〜北から南から〜
 渡辺ゆうさんから書籍「サッチャー改革に学ぶ 教育正常化への道」を紹介
頂きました。

書名:「サッチャー改革に学ぶ 教育正常化への道」
監修:中西輝政 1947年大阪生 京大院教授
   「大英帝国衰亡史」の著書で有名 米英での生活経験多い
発行:PHP研究所 2005年4月刊 1500円+税

 本書は2004年秋に自民党、民社党の若手6 人が「英国教育調査団」を結成し、
私費で渡英し、サッチャーの教育改革を調査してきた報告書。
現在日本でも子供の学力低下が叫ばれており、教育基本法(昭和22年)の改定も
話題になっており、「ゆとり教育」見直し含め時宜にあった書。

 本書には触れていないが米国もレーガン、クリントンと教育改革に着手して
変わりつつある。どうも日本とドイツが改革に遅れているようだ。
 イギリスは保守党サッチャーから現在の労働党ブレアに変わっても、この改革
の方針は受け継がれている。米国も共和党から民主党さらに再度共和党に政権が
変わっても引き継がれている。国民の基本の問題との認識が国民の意識に確立さ
れたからであろう。

 サッチャーは首相になる以前にすでに「政策研究センター」という自前のシン
クタンクを作り、いわゆるイギリス病に対する政策を検討していた。
イギリス病とは、国民が自助努力を忘れ、福祉に依存する体質になり、他人依存
の無責任社会になったことをいう。第二次世界大戦の戦勝国であるイギリスが
なぜこうなってしまったのか? 第二次大戦中チャーチルは内政は殆ど関わる
ことができず、その間にトロッキストの牛耳るインナー・ロンドン教育当局と
いう機関が1944年に教育法を出す。この頃のイギリスはアジア・アフリカの植民
地に対する反動もあり、偏向歴史教科書となり、特に奴隷貿易における人種差別
が糾弾された。20世紀の先進国の教育は個人主義、伝統破壊、物質指向のリベラ
リズムの社会主義の秘められた左派的リベラリズム運動の所産。アメリカのニュ
ーディールも同じ背景。戦後日本の教育基本法も同じ流れと言える。特に教育は
「児童中心主義」となり、子供が興味を持ちそうなことのみを教える教授法に
変わる。イギリスではそれを教育の公認機関が公認。また「人種差別はどのよう
にイギリスにやってきたのか」「我々イギリス人はアジア、アフリカの人々に
贖罪を抱くべき」「イギリスは人種差別に満ちた侵略国家」「白人文化は残虐
非道の文化」等々という歴史教科書も主流となる。内容はインド史・中南米史、
植民地支配史、イギリスの労働運動史に多くが割かれる、いわゆる自虐史観の
教科書となる。

 イギリスが大きく舵を切るきっかけは1982年のアルゼンチン政府によるフォー
クランド島占拠。これに対しサッチャーは「退却する国であることを止めました」
として国民に訴えて奪還。「国家は国民を守ってくれる」との意識を植え付けた。
その国民の意識が1988年の教育改革法に結びつく。「教育に対する最終責任は国
がとるべき!」のもとに、基礎学力(全国統一カリキュラムによる教育水準の
向上)、学校選択性(親の責任)、親と地域の参加する理事会と校長に学校予算
権と教師任免権付与(自主)の方針を打ち出す。新たに義務教育として、「宗教
(キリスト教、仏教、イスラム教、ヒンズー教、ユダヤ教、シーク教の6大宗教。
キリスト教を重視つつ、他宗教も教える、というもの)」と「情報技術」を付加
する。

 歴史教科書も具体的には奴隷貿易、大英帝国、インドの反乱等に対して「光と
闇」を記述するというバランスのとれた内容にした。ビクトリア朝(19世紀後半)
の美徳という表現で大英帝国の栄華も謳っている。
 サッチャーの教育改革は社会制度の全体改革をしつつ、国家予算を大きく教育
へ移すという形で実現させていく。

 以上が本書の紹介である。改めてサッチャーの凄さ、国家の宰相のあるべき姿
を教えられた感がある。日本の教育問題と歴史観問題をどうするかは、全く同じ
ということが判る。まさかフォークランド島奪還と、竹島(対韓国)と魚釣島
(対中国)問題でサッチャーの政策を真似るというわけにもいくまい。
日本人としての新たな知恵が必要となっているが、時の「宰相」が問題。それに
してもサッチャーの決断とスピードには感心させられます。
                          渡辺 猷拝

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この記事へのコメント
京増さん、
ダイソー社長の話はなかなか興味深いですね。
私のブログで紹介させて頂きます。
Posted by 唐澤 豊 at 2005年05月22日 07:07