カフェと本なしでは一日もいられない。 : June 2010

June 29, 201011:38

カテゴリ: 田辺聖子; Cafe 時間

『ユリイカ』2010年7月号　田辺聖子特集号　言葉とこころの美しさ。

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『ユリイカ』2010年7月号(青土社)

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田辺邸の写真も

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Prinzで日曜日のランチ　洋書を眺めながら。

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Prinzのランチのスターター　豆のスープは夏の味がしました。

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午後、久しぶりのCafe Dojiでのお茶時間。

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バリコピのコンデンスミルクの甘さがとろ～り。たまには甘い珈琲もいいものです。

『ユリイカ』(2010年7月号)が届いた。今号の特集は「田辺聖子」さんである。長谷川洋子さんのコラージュ･イラストの表紙からは、オーデコロンの香りがほんのりたちのぼって来るようで、ページを開くときの気分は、その壜のふたをあける瞬間のようなときめきに満ちている。
ページを開いてみると、特集の冒頭の対談「田辺聖子×宮本輝」が実に面白い。
『源氏物語』についてのやりとりの中で、『源氏物語』を面白いと思うようになったのは60歳を過ぎてからで、50代までは「光源氏ってこいつなんやねん。勝手に自分で光っとれ」という感じだったと宮本輝さんが言うのがおかしく、物語の中に出てくる女性では誰が好きか、という氏の質問に対して、明確な答えを避けた田辺聖子さんが逆にその問いを宮本輝さんにふり、「男はやっぱり紫の上でしょうね」と答えた氏に対し、「あんな出来すぎたのはアカン」と田辺聖子さんが言い──。
言葉のやりとりに大阪弁のリズムと面白さがあり、ライブトークをきいているような楽しさがある。そして、深い。対談の中に出てきた「７０言葉」(70では70歳なりの言葉が出てくるという意味)などは、しっかりメモしてしまった。
ポプラ文庫『おそすぎますか?』の「あとがきにかえて　夕立のあとの虹のように」の中に、
「人生って、誰かがほんのちょっとの冗談を言って、それでみんながわっと笑うというような一瞬が、とても人間の慰めになる。それからほんの少しレンズをずらすと、目の前にまったく違う光景が入って来るというような」
という田辺聖子さんのメッセージがあるが、まさしくそんな感じ。楽しくてわっと笑って、でも、レンズをずらすとそこにはたくさんのエッセンスのきらめきがある。おっ、と思い、あっ、と分るものがある。
田辺聖子さんのエッセンスをたっぷりとつめて出来上がった『ユリイカ』7月号。(＊私もこの号の中で、インタビュー、アンソロジー選などを担当させていただきました)。
ここから田辺聖子さんの作品世界に興味を持つ人たち、その作品を読み継いで行って下さる人たちが数多く生まれますように。

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June 09, 201015:23

カテゴリ: 田辺聖子; 心ときめくもの

「人生のなつかしさはゴテゴテにある」──『乗り換えの多い旅』より

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『乗り換えの多い旅』田辺聖子著・暮しの手帖社

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アーティーチョークがそろそろ食べごろに。

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ゼラニウムの花がハッピーに咲いてます。

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ラヴェンダーも気持ちよさそうに咲き。

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原種のカーネーションも次々に開花中。

恵文社一乗寺店に納品に行った際、レジのカウンターに『乗り換えの多い旅』(田辺聖子著)の暮しの手帖社版があるのを発見。新たに入荷したものだそうだ。私もこの暮しの手帖社版は持っている。文庫にもなっているが、長く読みつがれて来たこの本が、恵文社のドアを開けて入ってくる誰かに読み継がれて行くのだと思うと、何だか嬉しい。私自身、何度も読み返し、何度も味わった一冊だからだ。
『ユリイカ』の田辺聖子さん特集号(6月28日発売予定)の仕事が一段落したこともあって、今朝は『乗り換えの多い旅』を読みながら、久しぶりにゆっくりとした仕事前のひとときを過ごした。
この本は冒頭から「私のスクラップブックから」というそそられるタイトルである。ちょっと目次を書き抜いてみる。

目次
私のスクラップブックから / 女の自然 / シンプル対ゴテゴテ/ 町を走る女たち / 老いをすてきに /　毎年、桜に思うこと / Tシャツと私 / レマルクとシャクナゲ / 乾盃の音頭とり / 過ぎた小さなことども / 老いの先達 / 子供が叱られるとき / ヨメ飢饉について/ 髪を洗う / 人の思い入れについて / 「好きゃねん大阪」について / 家刀自パワー / 乗り換えの多い旅 / 変わり身 / 若者は変ってゆく / 西郷サンと煙草 / 世間とちがう歌 / 老いの現場報告 / 「へーえ」の銀婚 / むかし子供のはるあき日記 / あとがき

なるほどそうだなぁと、深く、しみじみ納得したのは、表題にもなった「乗り換えの多い旅」だが(ここからのフレーズは『老いてこそ上機嫌』(海竜社刊)でもふんだんに使わせていただいた)、かなり気に入って、我が家でのアワ・ブームとなったのは「シンプル対ゴテゴテ」であり、この中の「もう、ようわかったよってに……」という言葉である。これは、「好意に対するに感謝で応じつつ、しかもそれを、辞退せざるを得ない心苦しさ、お詫び、そんなものをふくめた」味わい深い言葉なのだが、実際、知っておくと便利なことこの上ない。
来客があるとき、田辺聖子さんは、テーブルの真ん中に花を飾り、そのまわりにご馳走を並べる。すると、客人が座に着くが早いか、旦那さまは言う。「それ取ってしまえ」「邪魔になっていかん」と。だが、田辺聖子さんは書く。

“ 私は甚だ不本意である。四方から見て美しいように一本一本挿しこんでいった苦心の作品を「取ってしまえ」とは、ミもフタもないではないか。──と、こういう風に、相手にムッとさせるようでは、とてものことに人生の達人たる器量はない。”

“「邪魔になっていかん」
という一刀両断の表現は、オトナの文化とは思えない。そこへくると、「あのなあ、よう、わかったよってに、この花、のけてもらわれへんやろか」
という懇切ていねいな会話こそ、オトナの文化だという気がする。”

“ 「邪魔になる」の代りに「もう、ようわかったよってに」などといって相手をも楽しませる、「コトバのゴテゴテ」も、人生の面白さみたいな気がする。”

我が家では、no thank you.と言いたいときに「もう、ようわかったよってに……。でもね」と(なるべく)会話を続けるようにしているのだが、人生の面白さを増すのにかなり効き目がある。「この電車は喧嘩行き～!」てな時に、新しい乗りものと新しい行先に上手に乗り換えて行くことが出来るのである。

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June 03, 201017:45

カテゴリ: 田辺聖子; 熊井明子

自分のために、ホントに好きなこと、したいことを持つ。

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ピンク色のアジサイが満開です。

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アーティチョークには5つ、実がついています。

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植えっぱなしなのに、たくさんのイチゴが実をつけました。

『ユリイカ』7月号は田辺聖子さんの特集である。この特集の中でいくつかの仕事をさせていただいたので、机の上に田辺聖子さんの本を並べ、仕事をしつつ、読み耽りつつ、のここ数日である。
全集、単行本、文庫本･･････様々な高さ、様々な幅で並んだ田辺本を前にして、よくもまあ、これだけ読んだものだなあ、とあきれたり、感心したり。
背表紙からはいろいろなことが思い出される。ストーリー、主人公の名前、お気に入りのフレーズ、その本を読み耽った時間のこと、「あの頃」の自分。
熊井明子さんの『本棚からの贈りもの』の第四章の扉の裏に、
「夢中になって読んでいると、本の中から著者の声が聞こえ、ほほえみが見える。文字を通じての確かな出会い──それだけでもいい。でも、会えば一層、世界は広がる」
とある。私自身、仕事を通してだが、田辺聖子さんに何度かお目にかかって、一層田辺作品が身近になり、楽しみ方の幅が広がったように思う。主人公の大阪弁に田辺聖子さんの声やイントネーションが重ねたり、チャーミングな主人公に、田辺聖子さんの笑顔や仕草を思い出したり──。
お目にかかって一層世界が広がった一冊といえば、『古典の森へ』だろうか。この本は、田辺聖子さんが古典の周辺についておしゃべりをし、そのおしゃべりを工藤直子さんが書きとめて出来上がったものである。

「古典には、面白いはなしが沢山ありますから、お若いかたも、なじんでみられると、きっと楽しいと思いますよ。これから、ぽちぽち、お茶での飲みながら、古典のおしゃべりしましょうか。私も浅学ながら古典、大好きなのですよ。だから、お若いかたに<こんなに面白い古典があるのよ> って伝えたい気持ちもあって、よく、古典に関するエッセイや、小説、書いてるのですけど」

こんな言葉で始まる古典の森への入り口。時にユーモアもまじえながらの楽しいおしゃべりを聞いているような心地よさにつられて読み進めば、古典の森はまるでディズニーランドのような楽しさである。
古典から横道にそれて、『古事記』からタカラヅカ、『堤中納言物語』から父親が買ってくれたフランス人形、『伊勢物語』から旅、『枕草子』からレースのひらひら、『蜻蛉日記』から台所、『平家物語』からお化粧･･････そんな風に話題が広がってゆくのも楽しい。そして気がつけば、千数百年の時空をロマンティックにこえているのである。
夢中になって読み耽り、本を閉じると、

「ひとってねえ、いくつになっても、だれのタメでもなく自分のために、ホントに好きなことしたいこと、持ってるのがいいのとちがいますか」─「『古事記』とわたし』

こんなメッセージの数々が、薫物の残り香のように馥郁と心に香るのである。

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カフェと本なしでは一日もいられない。

June 2010

『ユリイカ』2010年7月号 田辺聖子特集号 言葉とこころの美しさ。

「人生のなつかしさはゴテゴテにある」──『乗り換えの多い旅』より

自分のために、ホントに好きなこと、したいことを持つ。

『ユリイカ』2010年7月号　田辺聖子特集号　言葉とこころの美しさ。