小学校-中学校の「アクティブ・ラーニング」/【主対深】(主体的・対話的で深い学び)の授業づくり

小中が校で研修講師をしている梶浦真です。日々の授業研究から感じたことを綴ります。

主に公立の小中学校で校内研修講師 https://researchmap.jp/read0141080/ として、先生方と勉強をさせていただいています。アクティブ・ラーニングのブログは2014年4月より開始。日々授業や教室で起きている様々な課題、喜びや成果を共有しつつ、教師と子ども双方にとって充実感ある授業づくりを目指します。先生方の問題意識と、子どもの姿に学ぶ毎日です。先生と子どもの双方が元気になる授業、響室づくりを考えます。

282.アクティブ・ラーニングと授業実践―省察的実践

1.静的な学びと動的な学びの質を上げる

 活動的な側面を含む授業、子供の活動が多く含まれる授業は増えこそすれ減っては行かないであろう。子供の主体的な活動に任せる部分が充実するということは、子供が自分の能力を発揮しながら学ぶ場が増えることを意味する。「活能的」に潜在的に持っている能力を発揮する学びを通して、子供は能力を伸ばしていく。子供の能力には受動的かつ内省的な「静かな能力」と、発言をしたり行動をしたりする「動的な能力」がある。

 「静的な能力」と「動的な能力」は、二分できるものではない。書籍や資料を読むという学習では、静的な側面が強い。しかし、目で文字を追ったり、指でページをめくったりする身体活動も若干は伴うことが普通だ。また、資料の内容を解釈しようとする内的な精神活動が活発に機能しているという状態もある。動的な能力を発揮する学習では、説明や対話等を通して、情報を外に表現しつつ学ぶ活動が中心となる。学びの「静と動」を組み合わせて、双方の学習の質を充実させて行くことが、子供の能力を伸ばしていく学びを生む。コンピテンシーを【使った】学びである。
 【この授業で子供にどの様な能力を発揮させようとしているのか】という、子供の学ぶ姿を基盤に据えた授業デザインが必要であろう。コンピテンシー・ベース時代の授業術では、子供の姿に根付いた授業イメージ力がより強く求められる。

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2.動的な学びの指導技能は【授業監督力】

 動的な学びの主役は子供である。子供が話し合う、子供が議論をする、子供が確かめ合う、子供が考えを創り合うという部分をより充実させていくことが、【主対深】の視点からの授業改善につながる。子供を主役にするには、子供を学びの主役として活躍させることができる教師の監督的能力が必要となる。演劇において監督は舞台に出演はしない。表舞台には表れないが、役者が活躍する構成や振り付けという「下地」を描く。

 子供の学びにおいても、「この子供たちにどの様な活躍をさせたいのか=どの様な能力を発揮させたいのか」という、授業監督能力がものをいう。監督と言っても、上からの権力で管理するだけではなく、舞台の下から眺めていても子供が主役を演じて行ける様な、厳しくも温かい監督性を備えることが大事であろう。

3.動的な学びのデザイン能力は実践的実践と省察的実践から生まれる

 子供が主役となる動的な学びは、説明や解説を中心とした静的な授業力とは異なる指導力が求められる。子供が主役となる場を増やすのであるから、当然短時間で明瞭に説明する能力は最重要になる。そのうえで、子供の活動を「見たてる能力」「見つける能力」「見守る能力」が求められる。

 では、どの様にしたらこの様な「動的な学びを実践する能力」を磨くことができるのであろうか。AL型の授業づくりに関する書籍を読んだり、教育学の書籍を読んだりすることにも意味がある。しかし、座学で静的な学習に加えて、日々の実践や校内研修を通して、実践を素材にした実技性を持つ動的な学びも大事だ。医学書を読んで医学の知識を完璧に覚えたとしても、手術の実技を実習的に経験しなければ「手術」という動的な能力は伸びない。
 授業という場を支える監督としての教師の指導技能も、実践とその省察を通した自覚的改善を必要とする。子供が活躍するであろう授業のシナリオを構想して、実際に子供にそのシナリオを子供に演じてもらう。そして、その授業の場で現れた子供の能力や意欲の流れを読む。授業中に子供の活躍を読む「実践中の省察」と、「実践後の実践省察」を組み合わせて行く活動で動的な授業術を自覚的に磨く。

4.若手の教師も動的な指導力-監督能力は磨くことができる

 実際に授業を実践し、その授業を省察していく省察的学習の継続が、指導技能を伸ばす。こうした実践と省察を通した実践力の向上はどの教師にも期待できる。省察的実践家(D.ショーン)やALCTモデル(コルトハーヘン)等は実践省察の重要性を再認識させてくれる。実践の省察を通した「センス・メーキング」が教師のアイディンティティを構築していくのだ。実践を通した学びは大事だが、どの様な実践を通したかが問われる。省察的実践の積み重ねは若い教師にもかならずプラスの効果をもたらすはずだ。

 新人や若手の教師が授業力を向上させていく過程には、いくつかの共通点がある。

新採用時から高い授業実践技能を持った教師はいない(元塾講師など例外はある)

②授業実践技能の熟達にはある程度長期間の時間を必要とする

③指導技能の熟達には、時間の経過だけでなく熟達に向けた意欲と工夫を必要とする

④指導技能の熟達は、誰にでも、いつでも起こすことができる

⑤指導技能の熟達には、同僚や先輩、あるいは異分野で活躍する他者との対話や協働がよい刺激になる場合が多い。

⑥指導技能が高い教師は、よい仲間を持ち、学校の内外で学び続けていることが多い

 これらは、筆者の研修実務経験から実感することだ。日々の目先の仕事に追われて焦ることもあろう。目先の仕事は目先の仕事として大事であり。そうした目先の仕事も「省察的」に考察してみることで、新たな気づきが生まれることがある。

 動的な授業の指導技能は、「実践×省察×継続・協働」によって、子供の姿を見とりつつ活かす。特に協働的省察は若手とベテラン、異なる専門性を交流させつつ組織そのものの学ぶ文化を生み出してく上でも欠くことができないであろう。

 

281・小平奈緒・羽生結弦の金メダルと「目的」を持った学び

1・成功に必要な努力と成功ができる努力
 羽生の金メダルが、日本中に感動を与えている。人並外れた努力、精神力は私の様な凡人の想像が及ぶところではない。かつて、スポーツ・フィッシングの日本チャンピオンとなった経歴を持つ、大塚茂氏にインタビューをしたことがある。氏いわく「トップを狙うプロは、誰でも狂人的な努力をしている。よって、相手の隠れた努力を知った時にも、更に自分の方が努力をしているという実感を持てるだけの努力が必要。そして、もっと大事なことは、結果が出せる練習の方法を工夫し続けることだ」という。

2・練習の量と質

 かつて 、五木寛之氏が「天才にはいろいろな天才がいる。努力が天才を創るということもあるが、努力の天才もいるという気がする」と講演で話していたことがある。何かの分野でトップクラスの成功を収めるにはどうしたらいいのか。熟達化研究の第一人者と言われるフロリダ大学のエリクソンの説として広く知られているのが「一万時間の法則」だ。
 何か特定の分野で、卓越した技能を獲得するには最低でも一万時間以上の練習時間を必要とするという説だ。ノービスがエキスパートになるには長時間の練習が必要だという。この説には賛否もあるし、実際にはこの論を支える様々な他の要素もある。「一万時間」という量的な側面だけが高度な熟達化を支えている訳ではない。ただ、「一万時間」という量的な部分は目標に掲げやすいのであろう。

3・指導者という熟達化の要素

 エリクソンは時間的な要素以外にも、「よい指導者に恵まれること」「練習方法を工夫していること」等が高度な熟達化を支えているという。「よい指導者」という社会的な要素が重要だということは、ブライアン・オーサー氏(キム・ヨナ/羽生/フェルナンデスのコーチ)の活躍を見ても明らかだ。よい師に恵まれる、よい師を選ぶということも「熟達化」には大きな影響を与える。
 小平奈緒選手のコーチである結城匡啓氏(信州大学教授/スポーツ科学者)は長野オリンピックで金メダルの清水宏保選手を育てたコーチとしても知られている。最先端の計測・診断機器・理論に基づいた「熟慮された練習」と「コーチへの厚い信頼」が小平選手を金メダルに導いたと言ってよいだろう。

 私自身も岩上進氏、藤井均氏、嶋野道弘氏や倉澤庄次郎氏等から受けた影響が自分の成長につながっていると感じる(私はエキスパートではないが)。

4・「工夫された練習」という視点

 もう一つ注目したい点が「工夫された練習」という視点である。人間の能力は環境や負荷との相互関係の中で伸びる。従って、長時間練習をするという精神主義的な視点だけでなく、質の高い練習をするということが大事になる。自分の弱点を克服する練習、自分の得意を伸ばす練習、新しい能力を磨く練習、身に付いた能力を違った環境で発揮する練習などは、何かの分野で熟達する上で非常に重要な要素である。

  その中でも特に着目したい点が、Deliberate practice(熟慮された練習)とPurposeful practice(目的を持った練習)という点だ。エリクソンは、以下の様なPurposeful practice(目的を持った練習)が必要だと指摘している

Ⅰ・Purposeful practice has well-defined, specific goals.

 目的のある練習は明確で具体的な目標が設定されている。

Ⅱ・Purposeful practice is focused.

 目的のある練習には集中がある。

Ⅲ・Purposeful practice involves feedback.

 目的のある練習はフィードバックを含んでいる

Ⅳ・ Purposeful practice requires getting out of one’s comfort zone.

 目的のある練習は自分の快適な状況から抜け出すことが必要だ

 5・「目的」は学びや努力の道しるべ 

 スポーツや楽器の練習だけでなく、学習や教師の指導技能向上にも同様の側面があるのではないか。人の脳にとって「目的」はあらゆる思考や活動を導く主体的活動の原動力となる。Purposeful(目的)の語源は「前に+置く」という意味を持つ。方法や手段は「目的」に導かれてこそ、有効な試行錯誤をしてゆくことができる。
  「目的意識」「目標知識」を明確化する。そして、「目的知」を具体化するために「方法的知識」「内容的知識」が選択される。
「目的を創造する能力」はコンピタンスを磨く上で従来以上に重視されてもよい気がする。そして、目的までの達成度や練習方法の修正をするためには「省察的実践」という振り返りも不可欠だ。
 さて、筆者も本日で53歳を迎えた。人生の終焉を見据えて「目的」を磨き続けていきたい。

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280.「わかる学び」から「わかり合う学び」へ

1.理解からより深い理解へ

 「分かる→話す→身につく」。これは、ある大手学習塾のTVコマーシャルにおけるキャッチ・フレーズだ。学習塾の伝統的なキャッチと言えば、「個別指導」「やる気にさせる」「身につく」が御三家であろう。個別指導は、その子の学力に見合った指導をしてくれるという、個に応じる指導イメージを喚起する表現。「やる気にさせる」は意欲を高めることができれば、子供が自主的に学ぶようになるというイメージを喚起する。「身につく」は学習塾だけでなく、英語などの語学や専門学校などの技能系を習得する学校でもキャッチに使われる表現だ。

2.話すという情報の外化が持つ学習効果

 情報を発信することは、情報を受け取ること以上に認知的な負荷が大きくかかる。よい文章をインプットしてよいと感じることはできても、よい文章を書いてアウトプットすることは難しい。知っている事柄であっても、話すというアウトプットを通す過程で思考力が働き、より深い次元の理解につながって行く。表面的な「理解(わかる)」を子供自身に表現(話す)させる過程を通す学びによって、「身につく(より深い理解)」につなげて行こうとする。「分かる→話す→身につく」にはこうした学習モデルが潜んでいる。心理学者の桐原葆見(68年没)は「教育の目的は知識の習得にあらず。実践できる様にすることだ」と主張していた。ここでも理解を超えた、「身につく能力」の重要性が指摘されている。知識を使える形で身に付けるというコンピテンシー・ベースの考え方である。

.表現の形骸化を超えた深い説明

 この「話させる学習」は旧ソビエトの学習心理学でも重視された時代がある。子供は学習の中で様々な体験や経験を通して学ぶ。その学びを、子供の中で一般化させて定着させようとする指導が「今日分かったこと、学んだことを最後に子供に話させる」という指導だ。得に算数的活動の様に活動や具体物を操作させる学びでは、活動を知識として一般化する目的から、今日の活動を授業最終場面で説明させる指導が大事だと言われた時代がある。

 しかし、この方法が子供の思いを度外視して、方法として一般化していくとこの説明は子供にとっての決まりきった手順の一つになってしまう。「分かる→話す→身につく」という認知過程のモデルには一理がある。しかし、「分かりたくなる→話したくなる→自然と実力に結び付く」という、子供の主体性を最大限に生かした上での表現が大事になる。

4.子供は主張の交換を通して学びを磨き合う

 特に、算数活動や理科の実験などでは、わかってから話すのではなく、「わかりつつ話す。話しつつわかる。」という学習過程での「表現」が重要な意味を持つ。

 実験の手順や今やっていることを理解しつつ、実況中継的に周囲に〈つぶやきかける子〉。その子に対して〈問いを投げかける子〉。「本当はこうなんじゃないの?」と〈推論する子〉。やがて、僕の方がいい方法だよ、私の方法が正解だよ、どうして?、「だって、○○だから」と具体物や実験器具を実際に動かしながら主張を戦わせる。そうした、「わかりつつ話し合う、個が応じ合う学び」の中で、子供らしい考え方が生まれたり、新しい考えに発展したりしていく。「わかりつつ話し合う」という部分の充実は、これからの授業改善で目指すべき学ぶ子供の姿だと言えるだろう。この部分がイメージできない授業では、対話的で深い学びにはならない。知識をいかに教えるかというコンテンツ・ベース的指導力に加え、子供が考え合いたくなる場を設定するコンピテンシー・ベース時代の指導能力がより重い意味を持つようになってきている。
 「わからないから教える」ことも必要だが、同時に「子供自身がわかりつつ学ぶ」という学びをより大事にしたい。「わかる学び」に閉じない「わかり合う学び」の充実が、【主対深の学び】を実現して行くのだ。

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