小学校-中学校の「アクティブ・ラーニング」/学びと実践の充実を目指す【振り返りの指導】と【授業実践】

小中学校で校内研修講師をしている梶浦真です。日々の授業研究から感じたことを綴ります。

主に公立の小中学校で校内研修講師 https://researchmap.jp/read0141080/ として、先生方と勉強をさせていただいています。アクティブ・ラーニングのブログは2014年4月より開始。日々授業や教室で起きている様々な課題、喜びや成果を共有しつつ、教師と子ども双方にとって充実感ある授業づくりを目指します。昨今は【振り返り指導】の在り方を中心に授業のリデザインを研究。先生方の問題意識と、子どもの姿に学ぶ毎日です。先生と子どもの双方が元気になる授業、響室づくりを考えます。

Authentic Reflection(本格的な振り返り)のススメ

授業改善研究会の授業分析に学ぶ―自分との対話に耐えるということ―

 

1.子どもを読み解く「分厚い記述」

今年も「子どもらしさに学ぶ」の第30集が届いた。この研究会は静岡県東部に本拠を置き、教員から管理職、行政職、時には大学の研究者を招いて共同で授業分析を行う。この研究会の授業分析の特徴は「子ども一人に関する分厚い記述」を基本にしながら、実際の授業の逐語記録を手掛かりにして授業とその子を読み解いていくという点にある。

 今時、文字記録なんぞを分析して何がわかるのか?という疑問の声も聞こえて来そうだ。しかし、この会が30年も続いているということは、こうしたアナログな授業記録の分析から得られる情報が教師にとって魅力的であるということの証だと言える。魅力や「教育的利益」を得られない会であれば、そこにお金と時間をかけて教師が集まってくる筈がない。

 

①一人の子どもに観察資源を集中的に投下し、その子のあらゆるエピソードや行動、発言をできる限り記録する。ヒト、モノ、コト、トキなど様々な要素と子どもの現れを関連付けて記録しておく。

②授業の逐語記録をとる。一回の授業だけではなく、継続して記録をとり、その子の変化やこだわり、気づきや人間関係を追う。それは、学級の子どもだけでなく、家族やその他の人物との関係にまで及ぶ。

③会員で授業記録を共有して、読み込み合い、その子が発達課題を克服してより自分らしく個性的に成長できるための教育的方策を探る。同時に、その子を含めたクラス全体が育つ方法も同時に探る。

④その子、その教師、その教室、その教材の可能性を、子どもの現状と実態から読み解いていく。そして、これからの授業のリデザイン(仕立て直し)の具体案と観を言語化し、明確化していく。

 他にも、この会の授業分析の特徴は多々ある。しかし、一貫しているのは教師が見取った子どもの事実に基づいて、その子の未来と教師を含む学級の未来に向かう「開前策」を明らかにして行く点にある。一人の教師の実践を教師が協働的に振り返ることによって、その子とその学級のwell-beingに繋がる道を探して行く。そうした営みの集大成が「子どもらしさに学ぶ」という実践分析記録として、年に一度冊子にまとめられる(写真がそれ)。

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 この冊子は各教師による実践の「振り返り分析」になっている。教師や子どもの困りごとや教育的課題の改善、子どもの育ちを促す為にどの様な「見立て仕掛け手立て」を講じたか。その結果、子どもの顕れがどう変化したのか、その変化はどの様な要因によって生れたと考えられるのか、より望ましい変化に向けてどの様な展望を持ったか。そうした授業実践、教育実践を振り返ることによって、書き手の教師自身が実践のこれからに対する希望や意味を見出していることが「子どもらしさに学ぶ」を通して見えてくる。

 昨今の教育界では「コンピテンシー・ベイス」という言葉が頻繁に聞かれる。未来に必要な能力に関する研究はOECDをはじめ様々な機関で取り組まれているが、そのほとんどに「対話や協働」に関する能力が挙げられている。対話と教育というとソクラテスやP.フレイレを想起するが、教師にとって「自己との対話に耐える能力」が極めて重要な能力なのではないだろうか。

 自分との対話に耐えられない者、そこから逃避する者には得られない「気づき」を得ることができる。その「気づき」は教師を次の実践、子どもと向き合うエネルギーを与えてくれる。興味深い点は、そうしたポジティブなエネルギーは実践を振り返った本人だけでなく、振り返りを読んだ教師や、協働的に振り返る実践に参加した教師にも返ってくる。

 

3.「Authentic Reflection」の持つ教育的効果

 「Authentic Reflection(本格的な振り返り)」。授業改善研究会に参加したり「子どもらしさに学ぶ」を読んだりして、頭に浮かんだ言葉がこれだ。Authenticは「真正の」と訳されることが多いが、ここでは「本格的」という言葉をあてたいと思う。本格的振り返りとは


・振り返り当事者の切実性が高い

・事実や状況の記述に基づき、根拠・論拠を明らかにする意図を持つ

・当事者が自己の実践に対し意味や価値を見出そうとしている

・問題の解決や自己の技能の熟達化を目指そうとしている

・実践そのものの改善を目指す必然的な過程として振り返っている

という様な要素を持った振り返りを指す。

ちなみに「Authentic Reflection」という教育用語は無い様だ。ネットで検索しても、ごくまれに表現の一部として使われる程度だ。ちなみに指導要領解説の英語版解説では「深い学び」をAuthentic Learningと訳している。となれば、深く本格的な振り返りを「Authentic Reflection」と表現しても問題はないだろう。

 

4.子どもの変容を捉え、教師も変容する「共変容」を生む実践の振り返り

「子どもらしさに学ぶ」からは、教師が自己との厳しくも充実した対話を通して「本格的に振り返ること」の重要性を感じる。専門家としての熟達のプロセスとして/自らにエネルギーを補給する行為として/仲間と視野を広げ合い深め合う情報交換・共有の場として「授業改善研究会」が機能し、「子どもらしさに学ぶ」に結晶化されている。

こうした「Authentic Reflection」によって得られるメリットは複数ある。しかし、実践者にとって最もうれしいことは「子どもの伸び、育ち、肯定的な変化」がより明確に発見できる点にある。例えば、他人の気持ちや意図をくみ取ることが苦手な「その子」が、授業の中で突破的な進歩を見せることがある。「大造じいさんとがん」を読み解く中で以下の様に発言したという。


【僕は今もう一回、心の中でじいさんの言葉を読んでみたけれどね、「、」の位置がおかしいんだよ。卑怯なやりかたではなく、堂々とした戦いなら「おれたちは、また堂々と・・・」になるんだよ。でも。「おれたちはまた、堂々と」になっている。だから、今までの戦い方は卑怯で反省してて、でも今でも戦っていたから「また」がついているだけ。大造じいさんは今度こそは堂々と戦いたかったんだよ。だから、こう言った】

という様に、他者の意図や気持ちを汲み取ることが苦手な子が、授業の中で物語-ひとを読み解いていく学びによって、他者の気持ちを解釈できる様になっていく。授業の中でこうした顕れを流してしまうことなく記録し、実践を振り返って更に次の実践へとつなげて行く。こうした営みによって、子どもと教師双方が「成長的共変容」を実現して行く。

 年に一度講師としてこの会にお呼びいただいて約10年となる。この会に参加した講師も実践を通した厳しい授業検討に参加する中で、意識、知識が変容をして行く。子どもの変化を見取り、よりよい実践を構想して行く充実感、成長感は参加するものを病みつきにする魅力を持っている。AIが躍進する時代だからこそ、人が直に人を見取って価値づけ合う経験はより重要な価値を持つ様になるだろう。直の学び合いの価値を教えてくれる役割も「子どもらしさに学ぶ」は持っている。

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デューイにとって、振り返りは不可⽋です。それは、過去の経験を分析して、将来の結果、つまり学習に向けられた考えや行動を知るプロセスで構成されます。個⼈が否定的な結果ではなく、肯定的な将来の結果を望んでいることを経験から得られた事実とするならば、振り返りは、学術的またはその他のあらゆるタイプのカリキュラムの明⽰的な要素でなければなりません。

Stirling Leonard Perry2016),Authentic Reflection for Experiential Learning at İnternational Schools

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 肯定的な変容を生む「Authentic Reflection」は、教師にも子どもにも前向きなるエネルギーを与えてくれるのである。


1.非認知能力への着目
 近年「非認知能力の育成」が教育界の話題の一つになっている。かつてから、IQ(知能指数)よりもEQ(心の知能指数)が大事であるとか、「目に見えない学力」が重要であるという類似の論は沢山あった。しかし、ジェームズ・ヘックマンの研究が多くの書籍で紹介され、OECDも「社会情緒的コンピテンス育成」の重要性を指摘。また、何十年間にもわたる子どもの追跡研究などの成果によって「非認知的能力育成」への関心が一層高まっている。
 学力の三要素の一つである「学びに向かう力・人間性」などは「非認知能力」に近い能力・心理的特性であると見てよいであろう。心理学では性格の個性を構成する五つの因子と呼ばれている『BIG5』「外向性」「情緒安定性」[開放性]「勤勉性」「協調性」とも重なる部分があると言われる(OECD)にも類似点がある。

2.幼児期以降も伸びが期待できる「非認知能力」
 「非認知能力」には多様な要素があり、研究者によってその種類は異なる。OECDでは「目標の達成に向かう力」「他者と協力できる力」「情動を制御する力」という三つの要素に分けて、「社会情緒的能力」と呼ばれている。とりわけ幼児教育で真っ先に注目されたことから、幼児の内だけ育つものというイメージが強い。特に幼児教育関係の書籍やネットサイトで取りあげられていることが多い。「自信」や「粘り強さ」などは、幼少期から身につけることができれば、学業に直結した「認知的能力」を生み出すことにも繋がる。ある意味では、能力を生みだして行く能力が「非認知能力」の持つ力だと言えるであろう。
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 しかし、これまでの研究によれば、「非認知能力」は幼児の時期以外でも育つ可能性があるという。絶対音感の様に4歳まででなければ絶対に育たないという臨界(敏感期・クリティカル・エイジ)を持った能力とは異なる。児童期、思春期、青年期でも「非認知能力」を伸ばせる可能性がある。企業でも生産性向上を目指して、「非認知能力」の育成に取り組むケースが出てきている。ここでは詳しくは触れないが、学歴や就職試験の成績が社会に出てからの業績を保証しないという、マクレランドのコンピテンシー研究にも類似点があると言える。

3.非認知能力を伸ばす「振り返り学習」
 これまで、「振り返り学習」のターゲットはその多くが「認知的能力」に関わる部分であった。学力の向上や、思考力・表現力の向上などがそれだ。しかし、「非認知能力」の育成についても「振り返り学習」は有効性を持つ可能性があるのではないだろうか。子どもの振り返りが深まったり広がったりしていくと、粘り強さや自己肯定感の高まり、仲間と共感・協働することの意味や意義に気が付いていくことがある。
「私が3年生で学んだことは、友だちが大事だということです。遊ぶだけでなく、教え合ったり助け合ったりして、本当に友達が大事だと感じました」
「私が4年生で成長した点は、あきらめないで最後までやるということです。総合の資料づくりが途中で適当になりそうだったのを最後までまとめることができました。長い本をよむのも苦手でしたが、難しい本も最後まで読めるようになりました。これからは、なんでも最後までがんばりたいと思います。」

4.子どもが自らの「非認知能力」に気づく「振り返り」

 上記は、非認知的能力の伸びに子ども自身が気付いた事例だ。教科学習の中、あるいは特別活動や学校生活の中にも「非認知的気づき」につながる学習体験はある筈だ。直接点数にはつながらなくても、子どもの充実感や達成感、仲間や教師との共感体験を「振り返って」実感していく学び。教師が「評価の対象とする」というだけでなく、子どもが自分自身や仲間のよさ・価値を実感的に評価していく学びとして、意識的に設定してみてはいかがだろうか。自他との関りを通して社会的に成長して行く自分を、自認/他認する学びとなる。
 育ちの質的な側面を子どもと共有しながら「非認知能力」を伸ばしていく上でも役立ちそうである。

学校DX時代こそ「子どもと基本を見据えた」学級づくりを!

「学級づくり365日のICT活用術 宗實 直樹 著 明治図書 刊」

 

.質の高い学級づくりの具体化とICTno
活用

「学級経営力」「教科指導力」「教育相談力」の三つが教師の指導力の三本柱だと言われることがある。教科指導力は一般的には「授業力」と重なる部分が多い。しかし、授業を支えている「学級」という学びの土台が、子どもの育ちに大きく影響することは間違いない。ところがこの「学級づくり」はなかなかの難物でもある。子どもの個性差、集団としてのまとまりや活性度、学年によって多様な手法を講じて行く必要がある。勿論、教師の経験値や子ども観、指導観によっても具体的な学級づくりの方法は変わってくる。

 しかし、長く同じ学校に伺っていると、常に質の高い学級づくりができている学級と、そうではない学級があることに気づく。卒業しても子どもの心に良き思い出として残り、質の高い原体験として記憶に残る学級。そんな学級づくりはどの様にして具体化していくのであろうか。それでなくても難しい学級づくりが、オンライン等による非接触化によって、更に難しくなっているという声も聞く。

 

2.学校DX化次代の「学級づくり」

昨今、急速に学級づくりのICT化が始まっている。コロナ禍によってやむを得なくそうなったという場合もある。これはある意味で消極的、代替え療法的な活用だ。一方で一人一台端末次代の到来を積極的に活用して行こうというスタンスもある。筆者が知る限り、オンラインを見据えた対面学習と、対面学習を生かしたオンライン学習を上手く組み合わせると、従来以上に子どもの主体的な学習態度を引き出せる可能性が高いと感じる。では、実際の学級づくりではどのような時期に、どの様なツールを使い、どの様な活動を仕掛けて行けばいいのだろうか。こうした疑問の「基本」「見本」「手本」になる本が登場した。「学級づくり365日のICT活用術 宗實 直樹 著 明治図書 刊」がその本だ。

 

3.子どもを中心に据えたICT時代の学級づくり

最初の学級開き以前の「プレ知識」に始まり、4月か~3月までの1年間ICTを活用し、どの様に子どもに関わり、子どもと子どもを関わらせ、その様子から子どもの実体を捉えて指導に生かしていくのかが具体的な事例で示されている。授業での活用は勿論、特活・学級活動での活用、かかり活動や班活動での活用、雨の日やふり返り活動での活用など、「その手があったか」と気が付く読者も多いだろう。決して、高度なICT活用の方法を駆使しているわけではない。あくまでも「子ども中心の使用法」にこだわっていることを感じる。

 

4. 学習ICT化次代を積極的に生きる教師に向けた応援の書

 「具体的な事例」というと実践家はすぐに参考にしたくなるものだが、本書では要所々々に具体例を支える「考え方」が示されている。宗實氏自身の考えもあれば、優れた先達の指導知を紹介している部分もある。いてして、よい学級づくりができる教師には共通点があるように感じる。
①鋭い子ども洞察力を持つ
②子どもの「捉え―促し―捉えなおし」に長ける
③柔軟性を持ち多様な状況に対応する
④子どもと共にプロの学び手として熟達する意欲を持つ
⑤抽象的な観と持ちつつそれを実践の中で洗練させていこうとしている、がそれだ。

 この様に書くと「高邁なこと」をせねばならぬように感じるかもしれない。しかし、本書に紹介されている実践を自ら実践し、この本の内容と重ねて行った時、自然と「学級づくりに長じた指導力」が付いて行くと感じる。学習ICT化次代を積極的に生きる教師に向けた、応援の書とも言える本である。

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