小学校-中学校の「アクティブ・ラーニング」/【主対深】(主体的・対話的で深い学び)の授業づくり

小中学校で校内研修講師をしている梶浦真です。日々の授業研究から感じたことを綴ります。

主に公立の小中学校で校内研修講師 https://researchmap.jp/read0141080/ として、先生方と勉強をさせていただいています。アクティブ・ラーニングのブログは2014年4月より開始。日々授業や教室で起きている様々な課題、喜びや成果を共有しつつ、教師と子ども双方にとって充実感ある授業づくりを目指します。先生方の問題意識と、子どもの姿に学ぶ毎日です。先生と子どもの双方が元気になる授業、響室づくりを考えます。

AL時代の「振り返り指導」入門 12版発行 

1.椙田萬理子先生の授業と「振り返り」

初めて「振り返り学習」に関心を持ったのは、奈良女子大学附属小の椙田学級での活動だった。授業ではなく、朝の会で「昨日あったことや思ったことを友達に話してみよう」というテーマでの話し合い。子どもたちは、友達のお兄さんと遊んだことや、昨晩見た夢の話し、犬に追いかけられた話しなどを友達に話して行く。
 そこで驚いたことは、子どもの思考力・表現力が高いことである。単純に自分の体験を思い出して話すのではない。その時見たこと、やったこと、感じたことに加え、今はどう考えているのか、どんな事に気がついたのか、意味づけをしながら表現をしていく。
「友達のお兄さんと遊んでもらったが、机の上に受験の参考書が沢山あった。中学生になると、受験勉強で大変なんだと思う。自分も中学生になったら同じになるのだろうか。中学生になってから焦るのではなく、今から準備をした方がいいのかもしれないと思い始めました。楽しかったけれど、お兄さんには迷惑だったかもしれない」という様に、体験を思い出すだけでなく、価値づけをしながら話していく。
 時間を置いて振り返り、言語化するという活動はかなりの学習効果を持つと感じた事に始まる。

 2.山本K先生の授業と「振り返り」

静岡県の山本K先生の授業も興味深い授業であった。あえて授業を子ども達に任せて「自習」とした国語の授業。授業の残り5分で教室に戻り、「今日は研究会でみんなに授業任せちゃった。ごめんね」とK先生が語りかけると、子ども達の「振り返りの嵐」が始まった。
 「先生あのね!」の後に続いて出て来た言葉は、どの様な学習活動の様子だったのか、誰がどの様な意見を述べたのか、課題探究の中で見つけたことや、発言者か偏らずに話し合いのルールを守れたことなどなど。どんなに充実した授業だったのかをK先生に評価して欲しくてうずうずしていたのだろう。「先生、あのね」「先生、それからね」と授業の振り返り報告はヒートアップ。歓喜と熱気と、子ども達のドヤ顔が教室を埋め尽くした。
 これは毎回できる芸当ではないが、そこまで学級と個を育てた成果である。そういえば奈良女の椙田学級の授業も、教師の口出し無しで終わる授業があった。伸ばし方によっては、主体的・対話的な学びを実践できる力を子どもは身につける可能性があるということだろう。

 3.充実した授業は「子ども自身」の振り返り欲求が高い?

 その後も「質の高い学び、手応えを感じた学びは、子どもが自然と振り返りたくなるものだ」と感じる授業も沢山拝見した。「今日の授業は、○○について考えたけど、最初は全然わからなかった。ユウトさんの言ったことを斑で話し合って行ったら、だんだん問題の意味が見えてきた。文章題を考える時は数の意味を見つけて行くことと、考える順番が大事だってわかってきた。この、考え方は他の問題でも使えそうな気がする」という様に、学びを抽象化・一般化する振り返りが生まれることもある。充実した授業では、子どもたちが自主的に学びを振り返って充実感を再生産したくなるのだろう。

『能動的学習の実施比率が上がれば、その活動を子ども自身が振り返って意味づけし、主体性の高い学びを生み出す必要があるのではないか』。そんな思いから書いた本が「アクティブ・ラーニング時代の『振り返り指導』入門」であった。

 

4.ロングセラー化に感謝

活動的な学習では、活動への参加を調整するためにかなりの能力を使用する。問題を頭の中に置きながら、周囲の状況や人とのやりとり、教科によっては実験や実技的な部分にも頭を使いながら学ぶことになる。いろいろな部分に「思考タスク」が発生し、それらを処理しながら学ぶ中で、更に自分の学びをモニタリングして評価までするというのは難しい。子どもの目や耳は外に向いていることが多い。そのため、アクションの後で別の時間をとって、リアクションの中で体験や活動を整理、意味づけし、【より高い次元で自分化する】総合と創造の場が必要になる。
 外側に向けていた耳や目が掴んだ情報を資源にして、子どもが内省的に自分の内側にある知識や思いに目を向ける。そして、それを表言していく。そこに、思考や理解や気づきの実感が生まれていく。故に、実り多きアクティブ・ラーニングを実践するためには「振り返り指導」が従来以上に重要となる。

この本がロングセラー化しているのは、子どもの学びの質を高めようとする教師が増えているからであろう。コロナ禍によって、カリキュラムは圧縮化・過密化し、更にリモート授業やタブレットによる個別最適化の学習等、「学習の複々線化」が進んでいる。分散した学びを自己の中に統合ししつつ積み重ねて行く上でも、「振り返り学習」が持つ実利性は上がって行くであろう。変化が速く大きい社会だからこそ、体験や学びを振り返って知識や技能を高め深めていくことが大事になるのではないか。履修主義に走る〈前のめり学習〉に陥りやすい今だからこそ、知識定着の「率」と「質」を上げる振り返りの工夫が必要だ

この本が、子どもの振り返り力を育てるきっかけになれば幸いだ。


第12版 発行しました

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★書評★

「講師を生きる」ということ

『講師2.0』梶谷 佳 希 - 宇佐美 輝  共著

       変革時代の教師像

 


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 『人生は自分探しの旅である』。かつて、中教審答申でこの表現が用いられたことがある(平成8年)。この言葉を聞いた時、私自身はちょっとした疑問を感じた。そんなことをする時間があるのならば、「自分づくり」に専念した方がいいのではないかと感じたのだ。自分を創り、創った新しい自分を見つけて行く。さらに、そこから新たな自分を創って行く。生やさしいことではないかもしれない。しかし、自分で自分の生き方を選択し、自分の生き方や生き様に意味を見つけることができれば、生きることの充実感をより強く感じることができるのではないだろうか。

 だが、職種や業種、雇用の形態によって「自分創り」の進め方も変わる。正規雇用か非正規雇用かフリーランスか等によって、社会の中での立ち位置が変われば、その環境×自分の能力・個性の活かし方も変わって来るだろう。

 教師の世界も同じだ。教師といっても正規採用の先生もいれば、非正規雇用の先生もいる。非正規と言っても、臨採、非常勤、常勤など、立場は微妙に違ってくる。小中学校の場合は今世紀に入って以降、非正規で働く「講師」の割合は増え続けている。では、学校の中で「講師として生きる」とうことは、どの様な意味を持つのであろうか。

『講師2.0』(梶谷 佳希 宇佐美 輝 共著)は実際に講師として学校で働く二人の若い先生が、自分創りの物語と教師として生きる現実から、教師社会の在り方に一石を投じる内容になっている。筆者も長年校内研修に関わっているが、「講師」の置かれている立場は厳しいと感じることが多い。雑用を多く任される、本業とはあまり関係のない仕事をさせられる、等はよく聞く話だ。では、講師は非正規だから、授業や学級経営が下手で、教師としての専門性が低いのかというと、一概にそうとは言えない。実際に自分が伺った学校の中でも、正規雇用の教師より授業や学級経営などが上手い先生は何人もいた。逆に、あまりに上手すぎると「組織は和が大切だから、学年は横並びでお願いしますよ」と管理職から圧力がかかることもある。これでは、「講師」と言う立場で働く教師は救われない。実力があっても「おまけ教員」としての地位しか与えられない。

 そうした現状にある「講師としての生き方」について、自らの生き方や事実を赤裸々に語り、新しい時代の講師の生き方や、学校の組織文化の在り方を問うのがこの本だ。単に、「講師の立場の向上」や「処遇の改善を求める」浅い批判を主張している訳ではない。講師として生きる生き方や、授業実践の工夫、自分との向き合い方が生々しく表現されている。現在、教師の一割弱が「講師」として働いている。そして、その比率は年々増加している。また、「フリーランス」として活躍する教師が登場してきたり、教師の終身雇用制度も不安定で流動的な傾向を増したり、教師社会も益々変化を速めて行くと予想される。そんな近未来の教師の生き方を考える上でも、若手教師には参考になるところが多いだろう。

 尚、この本は学校の「講師」は勿論、現在非正規雇用で働く若人に広く読まれる価値があると感じる。若手が妙に目立つと、細かな部分の上げ足をとって喜ぶ者もいるが、そうした器の小さい者は相手にしなければよい。大事なことは「現実の中で自分創りをし、生きる意味を創造していくこと」なのだから。そんな創造的な生き方を模索する人に、勇気を与えてくれる一冊だ。教師の世界とて、いつまで終身雇用制度が続くかはわからない(国の財政逼迫やAIの驚異的な進化などによって)。そうした、不安定な時代を生きるこれからの教師が考えておくべきことが示されている稀有な本だ。
 蛇足ではあるが、この本の企画・出版は全国的に名を知られる実践家S先生の後進育てに関する、強い思いがあって実現した。後進を育てる意思を具体で示されたS先生の生き方からも学ぶところがある。(楽学)

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347・コロナ以降の授業力(オンラインとオフライン)

1・時代に対応した「教師の資質・能力」
 コロナウィルスが及ぼした社会の変化は、学校の授業デザインにも変化を及ぼし始めている。授業や教育の変化というと、「変わる」「変わらない」という二者択一の議論に陥りやすい。しかし、今回の状況下で「変わらない」という見方をする人は少ないだろう。

①教育の中には、変わる面と、変わらない面がある。

②積極的に変えるべき部分と、軽々しく変えてはいけない部分がある。

③現実に授業のデザインや実践方法が変わった学校(教師)とそうではない学校(教師)がある。

 という質の異なるパラーメーターで授業づくりを捉えて行くべきだ。教養審第 1 次答申(1997)の『新たな時代に向けた教員養成の改善方策について』においても、

1.いつの時代にも求められる資質能力

2.今後特に教員に求められる具体的資質能力

・変化の時代を生きる社会人に求められる資質能力

・地球的視野に立って行動するための資質能力

・教員の職務から必然的に求められる資質能力

と言う様に、「いつの時代にも求められる」という本質的側面と、今後の変化に対応する資質・能力という二つの時間性で教師の資質・能力が捉えている。

 2.コロナで加速する「資質・能力」の実装

 このコロナ禍の来襲以前から、「新しい時代に必要な教師の資質・能力」が国政レベルでも問題視されてきた。「これからの時代に求められる資質・能力と、それを培う教育、 教師の在り方について (教育再生会議・第七次提言)」や「今後の教員養成・免許制度の在り方について(中教審答申)」「教育公務員特例法等の一部改正」等も、キャリアや立場に応じた「資質・能力」を教師に求めていると言えるだろう。
 社会の変化に対応して「学び続ける教師」を育成するための「アクティブ・ラーニング型教員研修プログラム」が広まっている。これも、社会の変化に対応した指導の資質・能力を高めて行こうとする考え方に立っている。
この方向性が「コロナ」によって、急速かつ現実的に学校に迫って来ている。変化へ対応するだけでなく、どれだけ機敏に対応するか、その危機感を持てるか、優先順位を見極める判断力も求められる様になっている。

3.これまでの指導力とこれからの指導力

 これまでの時代に必要な「教師の資質・能力」と、これからの時代に必要なそれとでは何か違いがあるのだろうか。

 最近何人かの先生や学校から「コロナ時代の授業実践情報」が送られてくる。ここで授業を拝見して感じることは「伝統的なオフライン授業」と「次世代型のオンライン授業」では、必要な授業スキルの共通点と相違点の双方がある、と言うことだ。

 オンライン授業であっても、端的で整理された説明力や教材選択力は従来の授業と同等以上に重要になる。録画をして配信をするオンデマンド型では猶更のことだ。双方向対話型のリモート型対話授業でも、限られた条件の中で「子どもの考えを汲み取って全体に返したり、子どもの迷いを読み取って応答をしたりしていく指導力」はオフライン授業と同様に大事になる。
 オンデマンド型の配信授業では、子どもに考えさせる「間」のとり方なども更にシビアになる。子どもの頭の働く過程を創造しながら、適切な「間」をとる授業スキルが必要だ。
 ZOOM等を使用したオンライン授業で、形式的には対話的になっていても、授業内容が対話的になっていないのでは録画再生の一方向化型授業と同じになってしまう。生の授業では対話的な深い学びができないのに、オンライン授業になったらできた、ということにはならないだろう。テレワークによってオンラインで文書が入力できるのは、オフライン状態で文書が書けるという土台があってのことだ。
 これは、「オフラインであれオンラインであれ共通となる土台の指導技術」があるということを意味する。個人的な感想だが、オンライン授業の方がよりシビアに子どもの反応として現れる様に感じる。土台の力の違いが、オンラインというシステムを介することで、増幅されてしまう様に感じる。オンライン授業でも、能動的な深い学び(AL)を組み立てることができるのは、子どもを受け止めて応じる力や、学級を意識して個に応じる指導力が土台にあってのことだ

 4.新たな時代における授業スキル

 一方で、「オフライン授業で実践を重ねている学校・教師」には、オンラインという新たな環境下で実践を重ねるほどにノウハウが蓄積されて行くと感じる。

①デジタル機器の操作技能の側面(設定の仕方やトラブルの回避方法などの実技的習得)

②デジタル機器の組み合や、アプリケーションのより効果的な活用方法

③子どもの学習成果や評価等を、より効果的かつ合理的に行う方法の発見

④データダイエットなど、新たな課題への対応方法の工夫

⑤生で対面した時にどの様にオンライン授業を生かすかという「見立て・目あて・手立て」の構想
⑥生で対面した時の状況を予測しての、オンラインでの学級経営力
⑦画面の向こう側にいる可能性がある保護者までを想定した授業術
など、オンライン型に必要となる授業スキルは確実に存在する。

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 私自身がZOOMやteamsといった、オンライン会議システムで勉強会や研究会を開いてみて、これが使えるか使えないかで、学びの広がりが変わることを実感している。オンラインで議論と交流を深め、直接会う必要ができたならば会う。実社会の学びでも、基本として生の対話に耐える能力があった上で、オンライン交流が更に生きるということである。
5.子どもが生きる時代は「テレワーク」の時代
 更には、リモートで行う協働的な学習では、子どもがオンラインでの協調的な課題解決をしていく姿を見る。回数を重ねるごとに、多様な教科での学習を進める毎に、子どものオンライン協働学習能力の高まりが見える。それが「早く、本当にみんなと会って、一緒に勉強したい!」という、意欲の向上も生んで行く。

 子どもが社会に出て行く頃にはテレワークで高度な問題解決をしなければならない時代が来る。そうした時代に対応するにもOnline collaborative learning(テレラーニング)に必要な能力を育てておくことは極めて重要になるだろう。

 

 但し、オンラインとオフラインは相互補完的に機能する。どちらか一方だけではより複雑で現実的な問題解決は不可能だ。特に、幼児~初等教育では「生の対話と協働」を通して、社会性を持った学力を育てておくことは大切だ。それ故に、「オフラインとオンラインのバランスを保って子どもの能力を育てていく、高次なバランス型指導力」が一層求められる様になるだろう。先進校はそのノウハウを自校で磨き続けると共に、そのノウハウを他校とも共有し、子どもの未来を拓く手助けをして欲しいものだ。

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