アクティブラーニングの教科書的な定義は


 
「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。 学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である

≪新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて-生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ-(答申)≫中央教育審議会「用語集」


だと紹介した。この定義を要素に分解すると次のようになる。


①教師の一方的な講義形式ではない

②学習者が受け身(パッシブ)ではなく、内的動機に基づいて学んでいる

③個々の知識の集積だけでなく、活用的な知能の育成を目指す

④対人的な相互活動の中で、知識を確かめ合ったり、創り合ったり、修正し合ったりする活動を通して学ぶ

という四点である。

更に少々具体化すると、

①は教師の説明量は勿論だが、説明の質が重要になることを意味している。内容や知識の解説だけでなく、学習者が考えたくなる様な情報を明瞭に説明できていることが大事だ。


②は、授業中の子どもの表情を見ればわかる。させられている活動なのか、自分でしていると言う充実感をもって学習しているのかということだ。


③知識の積み重ねも大事だが、提案する、評価する、質問する、新しい考えを出す、より大きな疑問や本質的な問を出す、という様な活動があるか。


④課題や資料の中や社会の中にある知識を、自分と相手の間で交換-比較-創造的に用いるということ。私が知っていること考えていることを他者と交流する場があり、思考・表現・判断・創造の場があること。

 
 こうした学習状況の充実に向かっていれば、それは形式がどうであれ「アクティブ・ラーニング」に向かっていると考えていいだろう。大事な点は4人グループかディベートかという様な活動の社会的形態ではない。
学習者脳が自発的な活動状態になっているかどうかということだ。



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 学習の活動と自律性の関係には、上記の様な相関がある。たとえ、教師の説明による学習であっても「聞きたい、考えたい」という知的欲求に基づいて聞いている場合は、能動的な聞きだ。それは、活動としては静的に見えるが、脳の前向きな思考スイッチはONになっていると言える。


 アクティブ・ラーニングは欠くことができない今後の学習要素である。しかし、対話や協働という形式だけに着目したのでは、活動あって学び無しと言われることになる。


 また、インプットの学習が悪いのではなく、アウトプットを意識したインプットを充実させることが、全ての授業改善で必要になる。テストの上でアウトプットさせることだけでなく、学習の中や生活の中でアウトプットさせる場を経験する。そのアウトプット体験の積み重ねによって、能動的な知性が伸びる。まずインプットありきではなく、今持っている子どもの知をアウトプットさせる学習から構想することが大事であろう。
 さもなくば、教える側の一人よがりなインプットや、インプットしてからでなければアウトプットできないという「教える側の理論」が優位になってしまう。これでは、学習は受動的な活動から脱して行けなくなる。

 子どもは知識を受け取り貯め込む行き止まりの知識袋ではなない。子どもの中にある知識袋の出口を緩め、出し合った知識を使いあって課題に取り組む過程を通して、リアルで実践力ある汎用的能力が育つのだ。