先日、という記事を書きました。
引用文献1(主引例)と、引用文献2以下(副引例)の考え方をご説明しました。
以下では、これに関連する事項を、2つほどご紹介します。

(1)引用文献2以下に対する直接的な反論は、必ずしも有効でないという考え方

上記記事で、意見書での主張は、引用文献1に対するものが中心になると述べました。
主張するボリュームはともかく、ストーリーとしては、引用文献1に対するものを中心に記載します。
意見書は、進歩性を否定する論理(引用文献1に記載の発明から見た容易性)に反論するものだからです。
引用文献2以下に対しては、真っ向から反論しても、必ずしも有効ではありません。

極端な例を挙げます。
審査官が、引用文献2以下の認定を誤って提示したとしましょう。
(これ幸いにと)意見書にて、引用文献2以下が妥当でない点を、強く主張したとしましょう。

しかし、審査官側は、そのことを意見書で咎められたとしても、
①次の拒絶理由通知で、他の引用文献に差し替えることが可能です。
②理論上は、拒絶査定することもできます。

特に②については、微妙に感じるかも知れません。
しかし、引用文献1(引用発明)が変わらずに拒絶理由を構築できるのであれば、拒絶理由を解消したとは言えません。
つまり、本願発明が引用発明1に基づいて容易に発明できるという点は、なんら変わっていません。
そこで、ただちに拒絶査定することもできます。

★なお、①の拒絶理由は、理論上、最後の拒絶理由にはならないこともあわせてご理解ください。
引用文献1が変わらなければ、拒絶理由も変わらず、「補正によって生じた拒絶理由」にはならないからです。
(さらに補足すれば、いわゆるシフト補正を厳密に解釈すると、第29条第2項で最後の拒絶理由となることはあり得ないとも言えます。シフト補正の運用は変わりましたし、この点については、機会があれば別途触れてみます。)

とは言え、このようなケースで、②のような拒絶査定をすることは、少ないでしょう。
実務上は、再度、「最初の」拒絶理由が通知されるでしょう。
ただ、場合によっては、さらに引用文献(副引例)が追加された上で、最初に提示した引用文献(副引例)も必ずしも間違っていない、ということで、拒絶査定することはあり得ると思います。


(2)「引用文献の組み合わせ」という表現について

主に出願人側において、「引用文献を『組み合わせて』本願発明とすることは容易」という表現がされることがあります。
しかし、まれに誤った用い方がされているように思います。

例えば、本願発明を、「送信機Aと受信機Bからなる伝送システムC」としましょう。


このとき、送信機が記載された引用文献1と、受信機が記載された引用文献2が提示されて、本願発明は容易と認定されることは少ないと思います。
これだと、「送信機」から「伝送システム」が容易であるというロジックになり、やや論理が飛躍します。

通常は、伝送システムの発明が記載された文献が、引用文献1になります。
送信機や受信機そのものが何ら変哲のない、ありふれた伝送システムであっても構いません。

そして、その引用発明の伝送システムにおいて、送信機と受信機を、送信機Aと受信機Bに置換することが容易である、というロジックを組み立てます。
容易であることの証拠として、送信機Aを開示する引用文献(副引例)と、送信機Bを開示する引用文献(副引例)が提示されるわけです。
このような考え方を、「本願発明とベースが同じものを主引例(引用文献1)にする」などと言います。

以上、何かのお役に立てば幸いです。
最後までお読みくださりありがとうございました。

東雲特許事務所【東京都港区新橋】【東京都北区田端】
弁理士(特許庁審査官 経験者) 田村誠治


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