九州合同法律事務所

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医療基本法制定に向けた院内集会のご案内


 5月16日17時から、参議院議員会館1階講堂で、医療基本法制定に向けた院内集会を開催いたします。
 医療問題、患者の権利に関心のある方は、是非、ご参加下さい!


180516院内集会

 医療基本法については、このブログでも何度か取り上げてきました。患者の権利法制定運動から、医療基本法制定運動への流れについては、九州・山口医療問題研究会福岡県弁護団のブログ記事「医療基本法を知っていますか」及び「患者の権利と医療基本法」を参照いただければ幸いです。続きを読む

医療事故紛争解決事例4〜病理組織検査が3年以上にわたって放置されたケース

 Aさんは20代半ばで潰瘍性大腸炎を発症し、30代初めから、手術を繰り返してきました。はじめは結腸摘出、回腸人工肛門造設術、次に残存結腸切除、J型回腸嚢・肛門吻合術。この回腸嚢の狭窄による排便障害が増悪し、回腸嚢−肛門切断、単孔式回腸人工肛門造設術が施行されたのは、49歳の時です。
 このあたり、聞き慣れない言葉のオンパレードかと思いますが、本筋にはさして関わりませんので、気にせずに読み飛ばしていただいて結構です。
 この手術前の説明は以下のようなものでした。

 人工肛門造設のみの方が負担は軽いが、その場合、残った回腸嚢から粘液の排出が続き、可能性は低いが癌を合併するリスクもある。回腸嚢−肛門切断術も併せて行えば、出血量も多くなり、骨盤内の操作によって術後の排尿障害や性機能障害のリスクもあるが、術後は肛門部の症状はなくなり、当然、癌のリスクも消える。

 このような説明を受けて、Aさんは、回腸嚢—肛門切断術も併せて行うことを選びました。
 
 しかし、この手術の後、Aさんは断続的な会陰創部の疼痛、滲出液の排出等に苦しみ、3年間に5回の入院治療を余儀なくされました。
 6回目の入院の際に、会陰部胼胝状肉芽腫切除、会陰部膿瘍ドレナージが実施されました。そして、この手術で採取された標本の病理組織検査の結果、癌が発見されました。手術後のカルテには、「仙骨前面の残存した膿瘍が、難治性瘻孔の原因と思われた/難治性であったことは癌のためと考える」との記載が残っています。つまり、術前の予測に反して、Aさんが3年間にわたって会陰部の症状に苦しんだのは、そこに癌があったためだ、という意味だと思われます。

29512894_1575132355917997_993006486321269716_n 約1ヶ月後に、この癌を切除するための手術が行われました。腹会陰式肛門切断術、尾骨合併切除、精嚢切除、回腸部分切除。この時点では、前立腺や仙骨への癌の浸潤はありませんでした。

 では、この癌はいつからそこにあったのか。
 実は、3年半前の回腸嚢−肛門切断術の際には、その癌はすでに存在していました。続きを読む

医療事故紛争解決事例3〜エコー検査を施行したものの肝癌を見逃したケース

 2回にわたって肺癌の発見・治療が遅れたケースを扱ってきましたが、今回は肝細胞癌です。

 患者は73歳の男性で、現役のタクシー運転手でした。
 4年前に地域のA総合病院でC型肝炎と診断され、近所のBクリニックにそのフォローのために通院していました。診療内容は、強力ミノファーゲン投与による肝庇護療法と、1〜2ヶ月に一度の肝機能検査、年1〜2回の腫瘍マーカー(AFP)と腹部エコーです。
 ある日、患者は右季肋部の激しい痛みを訴えて、Bクリニックを受診、そこからA総合病院を紹介されました。A総合病院での診断は、肝細胞癌の破裂。癌の大きさは約13センチに達していました。
 既に積極的な治療方法はなく、患者はその4か月後に死亡しました。

 日本肝臓学会「肝癌診療ガイドライン」のサーベイランスアルゴリズムによれば、B型肝炎、C型肝炎、肝硬変のいずれかがあれば、高危険群として、6ヶ月毎の超音波検査、6ヶ月毎の腫瘍マーカー検査(AFP/PIVCA−Ⅱ/AFP−L)が推奨されています。B型肝硬変あるいはC型肝硬変がある場合、超高危険群として、3〜4ヶ月毎の超音波検査、3〜4ヶ月毎の腫瘍マーカー、6〜12ヶ月毎のCT/MRI検査が推奨されます。
 本件の患者は高危険群であり、一応、推奨されるサーベイランスが実施されていたようにもみえます。その結果は、いずれも肝細胞癌を疑わせるものではありませんでした。
 患者は、13センチの肝細胞癌が発見される約1ヶ月前にも、Bクリニックで腹部エコー検査をしているのです。
 そのエコーで、この癌は診断できなかったのでしょうか。続きを読む

腹部大動脈瘤破裂の見逃し〜広島高裁で逆転勝訴

 昨日、広島高裁で言い渡しを受けた判決のご報告です。担当は緒方、久保井、小林。

医療過誤2審逆転 病院に支払い
山口 NEWS WEB 02月16日 20時40分
 7年前、腰の痛みなどを訴え、山口県立総合医療センターを受診した山口市の男性が帰宅後に腹部の大動脈瘤破裂が原因で死亡したのは、医師が必要な検査などを怠ったのが原因だとして遺族が賠償を求めた裁判で、広島高等裁判所は、1審の判決を変更して病院側の過失を認め、およそ3300万円の支払いを命じました。
 7年前、山口市の69歳の男性が腰の痛みや低血圧、それにおう吐などの症状を訴え山口県立総合医療センターを受診しましたが、帰宅後に症状が急変し、腹部の大動脈瘤破裂が原因で死亡しました。
 男性の妻ら遺族3人は医師が必要な検査などを怠ったのが原因だとして病院側に5700万円の賠償を求め、1審の山口地方裁判所はおととし、訴えを退ける判決を言い渡し、遺族が控訴していました。
 16日の2審の判決で、広島高等裁判所の野々上友之裁判長は「男性は、症状から、病院を受診した時点で腹部大動脈瘤が破裂していたと認めるのが合理的だ」と指摘しました。
 その上で「医師が症状を掘り下げて聞き取り、検討していれば、CT検査を行って発見することができた」などとして、1審の判決を変更して病院側の過失を認め、およそ3300万円の支払いを命じました。
 判決について山口県立総合医療センターは「敗訴したという連絡は受けたが、判決文が届いていないので内容を精査した上で今後の対応を検討したい」としています。
 原告の1人で、男性の次女は「いい判決が下り、本当によかったです。父は病院にとっては大勢いる患者の1人ですが、家族にとってはたった1人の人です。父は帰ってはきませんが、これを機に、病院は患者を大切にしてもらいたい」と話していました。
続きを読む

医療事故紛争解決事例2〜CT画像の評価を誤り肺癌の治療が遅れたケース

 前回の医療事故紛争解決事例1は、単純X線画像の異常陰影の評価を誤ってCTを撮影せず、肺癌の診断が遅れたケースでした。単純X線で肺癌を疑ってCTを撮影すべきか否かが問題になった事案は他にも経験していますし、裁判例もいくつかあるようです。
 しかし、肺癌診療において、CT画像の評価が問題になったケースは、比較的珍しいのではないかと思います。

 患者は68歳の男性です。もともと、腹部大動脈瘤の経過観察のために、定期的にA病院で胸腹部CTを撮影していたのですが、2013年3月に撮影したCTで左肺にスリガラス様の異常陰影が認められました(画像②)。そこで、1年前のCTをチェックしてみると、やはり同じ部位に小さな異常陰影が存在しており(画像①)、1年間で倍以上に大きくなっていることが分かりました。
 肺癌疑いで喀痰細胞診を行ったところ、偽陽性(クラスⅢ)。
 担当医は、気管支鏡検査等のより専門的な検査の必要性を考慮し、患者をB病院に紹介しました。
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 患者がB病院を受診したのは約2か月後のことです。B病院の担当医は、改めて胸部CTを撮影(画像③)し、COP(特発性器質化肺炎)の疑いとして、3か月後の受診を指示しました。
 COPがどういう病気なのかということを分かりやすく説明したものを見つけることができていないのですが、細菌性ではない非結核性の炎症で、原因が特定できない(特発性)病気、ということになりましょうか。
 患者は、A病院で、「肺癌の疑いで気管支鏡検査が必要かもしれない」との説明を受けています。そのことは、当然、B病院の担当医に告げました。
「気管支鏡検査の必要はないのでしょうか?」
 それに対し担当医は、「気管支鏡を入れて細胞を採りますか? 痛いですよ」というだけで、特に検査を勧めることはありませんでした。患者は、「そうか、気管支鏡検査は受けなくていいのか」と、ほっとしたそうです。
 カルテには、そういうやりとりは記載されていません。「気管支鏡検査は本人が拒絶」と記録されているだけです。
 3か月後、患者はB病院を受診し、CTを撮影しますが、著変なし。
 しかし、翌2014年5月のA病院定期受診の際に撮影されたCT(画像④)では、左肺の異常陰影は明らかに拡大しており、再度、A病院からB病院へ、肺癌の疑いで紹介されることになりました。
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 結局、その年の7月に、B病院で、左下葉切除及びリンパ節郭清術が実施されました。術後診断は、腫瘍径6.5㎝でT2b、リンパ節転移なし、遠隔転移なしのステージⅡAでした。続きを読む
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