昨日アップした「医療事故に係る調査の仕組み等に関する基本的なあり方」については、厚労省のHPからダウンロードしたペーパーを読んだ段階で書いたものだったのですが、その朝の毎日新聞を読むと、ちょっと勇み足だったようです。

<医療版事故調査制度>院内調査に外部医師
毎日新聞 5月29日(水)22時45分配信
 診療行為中に起きた予期せぬ死亡事故の原因を究明する「医療版事故調査制度」の概要が29日、固まった。国内すべての病院や診療所に対し、第三者の立場で原因を調べる民間の事故調査機関に死亡事故を届け出たうえで、院内調査と結果の報告を義務付ける。院内調査に原則外部の医師を入れて客観性を担保するが、遺族が調査結果に納得できない場合は事故調が直接調べることも可能になる。

 もともとのペーパーの「院内事故調査のあり方について」という項目は、昨日のブロクでお知らせしたとおり、「診療行為に関連した死亡事例が発生した場合、医療機関は院内に事故調査委員会を設置するものとする。その際、必要に応じて外部の支援を求めることができる。なお、中立性・透明性・公正性の観点から外部の支援を受けることが望ましいとの意見があることに留意して、医療機関は対応することが必要である」というものだったのですが、29日の検討部会ではこの部分の修正が議論されたようです。

 院内調査に納得できず、事故調に調査を申請した遺族は費用を払う必要がある。口火を切ったのは弁護士委員だった。「遺族に負担を求めるなら、まず院内調査が客観的なものでなければならないはずだ。」当初から外部のチェックをいれるべきだとの意見だった。
 予定の2時間を超えて会議は続き、大学病院の院長も「私たちの病院でも外部の専門家に入ってもらうことがある」と発言。他の委員からも「信頼がここまで傷ついているのに、外部も入らない院内調査で社会の納得が得られるのか」と厳しい意見が相次いだ。
 医師である委員が、「医療機関の自主性が損なわれる」「院内調査で本当のことを言わなくなる」と反論したが、明確な反論は1人だけ。最後は、「原則として外部の医療専門家の支援を受ける」ことに決まった。

 口火を切った弁護士委員というのは、名古屋の加藤良夫弁護士です。東京の鈴木利廣弁護士、昨年亡くなった池永満弁護士とともに、医療過誤訴訟の草分け的存在で、医療事故情報センターを設立し、初代理事長を務めた方です。加藤先生の土俵際での踏ん張りで、「院内調査に外部医師」の原則が残ったと言えるかもしれません。
 それは大きな成果だと思いますし、だからこそ昨日に続いてブログを更新しているのですが、しかし、外部の関与が「医療専門家」に限定されていることについてはやはり残念です。
 産科医療補償制度の原因分析委員会は、各部会に2人づつ弁護士が配置されています。それぞれ、医療側、患者側の代理人として医療事故紛争に携わった経験の豊富な弁護士です。日本医療安全調査機構の、診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業でも、評価委員会には法律関係者が含まれることになっています。こういった第三者機関による調査の場合でも、医療関係者だけではなく、法律家を含む構成として、偏った調査にならないよう配慮しているのです。個別の医療機関の問題としてではなく、医療界全体の問題として、調査の社会的信頼の確保が図られているともいえます。

 院内事故調査委員会が作成した報告書は、第三者機関の確認・分析の対象となります。
 結局のところ、この事故調査システムが社会的信頼を確保できるかどうかは、第三者機関の働き方次第ということになるのかもしれません。