ひととせに ふたたびも来ぬ 春なれば いとなく今日は 花をこそみれ (平兼盛)

桜1

 春だというのに、新型コロナウイルスのお蔭で、鬱々とした日々が続きますね。

 この問題に関しては、マスメディアでもネットでも、ほんとうに多種多様な情報が飛び交っています。感染力はどのくらいなのか、致死率はどのくらいなのか、マスクに予防効果はあるのか、学校は再開すべきか、PCR検査の対象は広げるべきか、効果的な薬はあるのか、自粛による経済の打撃はいかほどか……なるほどと膝を打つものから、眉に唾をつけたくなるものまで。
 わたしには、お互いに矛盾するように思える医学的意見のどちらが正しいかを判断する知識はありませんし、この事態においてどのような経済施策をとるべきかについてコメントする立場にもありません。
 しかし、政府による強力な私権制限を求めるような論調が強まっているのは気になります。HIV問題やハンセン病問題に関わってきたわたしには、病気より怖ろしいのは、病気を過度に怖れる人間の心だという感覚が根深くあります。その怖れが権力を動かすこと、あるいは権力がその怖れに便乗することを、わたしは深く怖れます。
 このウイルスと社会との関係は、そう短期間に折り合いがつくものでなさそうです。さまざまな意見はありますが、その点については、おそらくコンセンサスが成立しているのではないでしょうか。であればなおさら、長いつきあいを見据えた冷静な議論が望まれます。

 さて、久しぶりの事件報告です。
 
女児脳損傷で福岡大病院に賠償命令 術後の低血糖見逃す 福岡地裁
2020/3/28 6:00 西日本新聞

 福岡大病院の術後ミスにより生後8カ月だった女児の脳が損傷したとして、両親らが病院側に計約6千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福岡地裁は27日、病院の過失と脳損傷との因果関係を認め、計880万円の賠償を命じた。
 判決によると、女児は生まれつきミルクなどをうまく飲み込めない障害があり、2013年4月、同病院で症状を改善するための手術を受けた。術後の血糖値が乳児の基準値に比べて大幅に低下していたが、病院側は正常化させる措置をとらなかった。女児は昨年10月に亡くなったという。

 松葉佐隆之裁判長は、術後の採血から17時間以上、低血糖状態に気付かなかったことを病院側の過失と認定。「低血糖と無関係の要因によって脳に損傷が生じた可能性は乏しい」として、因果関係を否定する病院側の主張を退けた。

 賠償額については慰謝料の一部を認めたものの、入院費用などは「過失がなかった場合も退院可能な状態になるには長期間を要した」として認めなかった。

 病院側は「現時点では判決文の内容を確認していないためコメントできない」としている。

 手術直後の採血での血糖値は14㎎/dℓ。これに翌朝まで気づかなかった過失について、病院は積極的には争いませんでした。
 最大の争点は、低血糖と脳障害との因果関係です。病院側は、手術翌日夕方に容態が急変するまで、女児に低血糖の症状がみられなかったことなどを根拠に、女児の脳障害は低血糖とは無関係で、先天的な疾患によるものと主張しました。これに対して判決は、翌日午前中の血液検査で、CK—BBの著明な増多がみられており、低血糖が継続していた時間帯と、脳損傷が判明した時間は近接していると考えられることなどから、因果関係を肯定して病院の責任を認めたものです。

 判決が確定して事件が終了したら、改めて詳しく説明させていただきます。


 道とほみ 行きては見ねど 桜花 心をやりて 今日はくらしつ (平兼盛)

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(小林)