九州合同法律事務所

福岡市東区馬出1−10−2メディカルセンタービル九大病院前6F
医療事故の患者側代理人の仕事が中心です。
事務所の詳細は九州合同法律事務所HP

事件報告

術後低血糖見逃し事件、双方控訴せず確定

 前回のエントリーで紹介した福岡大学病院の術後低血糖見逃し事件は、双方とも控訴せず、1審判決が確定しました。遅ればせながら、確定を機に事案の詳細を報告いたします。
 例によって、事実関係については当事者間に争いのあるものも含まれていること、その記述に含まれる医学的知見は、私たち弁護士がこの事件を扱う中で収集したものであり、専門的な意味での正確性が担保されているものではないことにご留意下さい。

事案の概要

 Aさんは、市内の産科クリニックで生まれ、出生後すぐに、喉頭の狭窄音と陥没呼吸が見られたために大学病院に緊急搬送されました。大学病院では、嚥下障害、低緊張、驚愕反応等から先天性代謝異常や神経伝達物質の異常を疑って各種検査が行われましたが、原因は特定できませんでした。
 生後8ヶ月目に、嚥下障害及び胃食道逆流症に対して、腹腔鏡下噴門造設術+胃瘻造設術が行われました。
 手術終了直後の午後2時40分に採取された血液は、血糖値14という著明な低血糖を示していましたが、病院スタッフはこの異常に気づかず、低血糖に対して何の処置も行ないませんでいた。
 手術の翌朝午前8時の採血では、血糖値は23であり、スタッフもこの時点で低血糖に気付きました。この時点からブドウ糖の補給が開始され、午前11時の採血では血糖値110にまで回復しました。
 しかし、この午前11時時点の血液生化学検査では、CK値3820という異常高値が示されていました。アイソザイムの結果は、CK-BB29%というちょっと見たことのないような異常を示しています。
 同日午後7時頃、スタッフが採血のためにAさんを観察したところ、自発呼吸がほぼ消失しており、気管内挿管が行われました。午後9時12分に撮影された頭部CTでは、基底核、視床の一部をのぞく脳全体のびまん性の低吸収、脳腫脹によるくも膜下腔の顕著な狭小化が認められ、急性低酸素脳症、急性虚血性変化が示唆される所見とされています。
 その後、Aさんはほぼ脳死状態となり、6年半後に亡くなりました。

せせらぎ
続きを読む

女児脳損傷で福岡大病院に賠償命令 術後の低血糖見逃す

 ひととせに ふたたびも来ぬ 春なれば いとなく今日は 花をこそみれ (平兼盛)

桜1

 春だというのに、新型コロナウイルスのお蔭で、鬱々とした日々が続きますね。

 この問題に関しては、マスメディアでもネットでも、ほんとうに多種多様な情報が飛び交っています。感染力はどのくらいなのか、致死率はどのくらいなのか、マスクに予防効果はあるのか、学校は再開すべきか、PCR検査の対象は広げるべきか、効果的な薬はあるのか、自粛による経済の打撃はいかほどか……なるほどと膝を打つものから、眉に唾をつけたくなるものまで。
 わたしには、お互いに矛盾するように思える医学的意見のどちらが正しいかを判断する知識はありませんし、この事態においてどのような経済施策をとるべきかについてコメントする立場にもありません。
 しかし、政府による強力な私権制限を求めるような論調が強まっているのは気になります。HIV問題やハンセン病問題に関わってきたわたしには、病気より怖ろしいのは、病気を過度に怖れる人間の心だという感覚が根深くあります。その怖れが権力を動かすこと、あるいは権力がその怖れに便乗することを、わたしは深く怖れます。
 このウイルスと社会との関係は、そう短期間に折り合いがつくものでなさそうです。さまざまな意見はありますが、その点については、おそらくコンセンサスが成立しているのではないでしょうか。であればなおさら、長いつきあいを見据えた冷静な議論が望まれます。

 さて、久しぶりの事件報告です。
 
女児脳損傷で福岡大病院に賠償命令 術後の低血糖見逃す 福岡地裁
2020/3/28 6:00 西日本新聞

 福岡大病院の術後ミスにより生後8カ月だった女児の脳が損傷したとして、両親らが病院側に計約6千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福岡地裁は27日、病院の過失と脳損傷との因果関係を認め、計880万円の賠償を命じた。続きを読む

控訴断念〜新しい段階に入ったハンセン病問題

 ハンセン病患者の家族に対する国の責任を認めた6月28日の熊本地裁判決は、国の控訴断念によって確定、本日、内閣総理大臣談話が発表されました。

「苦痛と苦難におわび」ハンセン病家族に首相談話 原告以外にも補償検討
毎日新聞2019年7月12日 11時00分
 政府は12日、ハンセン病元患者の家族への賠償を国に命じた熊本地裁判決の控訴見送りに関し、安倍晋三首相の談話と政府声明を持ち回り閣議で決定した。首相談話は、患者や元患者、家族への「おわび」を明記。確定判決に基づく賠償を速やかに履行し、訴訟への参加、不参加を問わず、家族を対象とした補償制度を早急に検討すると表明した。首相が家族と直接面会する方針も示した。
 首相談話は「かつてとられた施設入所政策の下で、患者・元患者のみならず、家族にも社会で極めて厳しい偏見、差別が存在したことは厳然たる事実」と表明。そのうえで「事実を深刻に受け止め、家族が強いられてきた苦痛と苦難に対し、政府として改めて深く反省し、心からおわび申し上げる」と述べた。今後の対応として「関係省庁が連携・協力し、人権啓発、人権教育などの普及啓発活動の強化に取り組む」とした。【髙橋克哉】


 前回のエントリー「熊本地裁、ハンセン病家族訴訟で国の責任を認める〜より一層のご支援を!」でも触れましたが、今回の判決は、国の作為義務が1996年3月のらい予防法法廃止のみによって果たされたとは言えないとして、2001年末までの作為義務違反を認めたこと、その義務違反の主体として、厚生大臣ないし厚生労働大臣のみならず法務大臣及び文部大臣ないし文部科学大臣の責任を認めたことは、2001年判決と比べても大きく踏み込んだものです。このあたりについては、国は政府声明で異論を表明していますが、なにはともあれ、家族の被害を認めて謝罪の意を表明したこと、未提訴の被害者をも対象者に含めた補償制度の創設及び関係省庁が連携した啓発活動の強化を謳ったこの首相談話を高く評価したいと思います。

厚労省前
続きを読む

熊本地裁、ハンセン病家族訴訟で国の責任を認める〜より一層のご支援を!

 このブログでたびたび支援をお願いしてきたハンセン病家族訴訟、一昨日、熊本地裁で判決が言い渡されました。

ハンセン病家族訴訟 国の責任認め初の判決 熊本地裁
毎日新聞2019年6月28日 14時09分
 約90年に及んだハンセン病患者への隔離政策により家族も深刻な差別を受けたとして、元患者家族561人が、国に1人当たり550万円の損害賠償と謝罪を求めた集団訴訟の判決で、熊本地裁は28日、国の責任を認め、原告541人に対し、1人当たり33万~143万円(総額3億7656万円)を支払うよう命じた。元患者の家族による集団訴訟の判決は初めて。
 遠藤浩太郎裁判長(佐藤道恵裁判長代読)は「隔離政策により、家族が国民から差別を受ける一種の社会構造を形成し、差別被害を発生させた。家族間の交流を阻み、家族関係の形成も阻害させた。原告らは人格形成に必要な最低限度の社会生活を喪失した」と指摘した。
 2001年の同地裁判決は隔離政策を違憲とし、元患者への国の賠償責任を認定。国は控訴を断念して元患者に謝罪し補償や生活支援を講じたが、家族は救済対象から外された。今回の裁判では隔離政策が生んだ偏見や差別について、家族に対しても国の責任を問えるかどうかが最大の争点だった。
原告は16年2月にまず59人が提訴し、追加提訴を経て561人に拡大。居住地は北海道から沖縄まで全国に及び、年齢も20~90代と幅広いが、差別被害を恐れて大半は匿名で裁判に加わった。
 原告一人一人は、学校でのいじめや患者の家族であることを理由とした離婚、地域社会からの排除など異なる差別被害を受けてきた。そのため、裁判で家族側は、さまざまな場面で差別される立場に置かれたことが患者家族共通の被害と主張。国は隔離政策によって原因を作ったのに、現在まで謝罪や被害回復の責任を怠り、違法だと訴えた。
 一方、国は「ハンセン病を巡る差別は隔離政策以前からあった」と指摘。隔離対象ではなかった家族に対しては直接的に偏見や差別を作り出したとも言えず、国は法的責任を負わないとして請求棄却を求めていた。【清水晃平】


勝訴続きを読む

ハンセン病家族訴訟結審、5月31日判決へ!(その3)

 さて、3回にわたり綴ってまいりました結審期日の報告、終了後の報告集会の模様をご紹介します。
IMG_5088

【報告集会】
 午後6時半から、県立劇場で報告集会が開催されました。
 この会場にも、椅子を追加するほどの方が集まって下さいました。
 まず、支援の会の事務局長伊藤京子さんから、10万筆を目標に行ってきた署名活動についての報告がありました。12月18日に3回目の署名提出を行い、新たに2万7344人分の署名を提出、総計11万6079名分の提出となったことが報告され、大きな拍手をもって迎えられました。
 また、この集会では、3名の原告が、それぞれ30分ほど自身の被害と、この訴訟に寄せる思いを語りました。いずれも、胸に迫るもので、詳しくご紹介したいところですが、簡単に。
続きを読む
九州合同法律事務所
〒812-0054
福岡市東区馬出1丁目10番2号
メディカルセンタービル九大病院前6F
TEL092-641-2007
FAX092-641-5707
小林 洋二(41期)
久保井 摂(41期)
安倍 久美子(52期)
緒方 枝里(62期)
高木 士郎(64期)
弁護士髙木士郎(64期)
記事検索
月別アーカイブ
ギャラリー
  • 医療事故紛争解決事例17〜大動脈解離の見逃し①
  • 医療事故紛争解決事例17〜大動脈解離の見逃し①
  • 術後低血糖見逃し事件、双方控訴せず確定
  • 女児脳損傷で福岡大病院に賠償命令 術後の低血糖見逃す
  • 女児脳損傷で福岡大病院に賠償命令 術後の低血糖見逃す
  • 新たな年に寄せて
  • 医療事故:高齢者死亡の医療事故の慰謝料は低額でよいなんてことがあるの?
  • 中村哲さんを悼む
  • 医療事故紛争解決事例16〜腸閉塞に対する手術が遅れ短腸症候群となってしまった事例
  • 医療事故紛争解決事例15〜腸閉塞を見逃して死亡に至ったケース
  • 同性婚:日本での実現はいつ? エヴァンさん講演会
  • 同性婚:日本での実現はいつ? エヴァンさん講演会
  • 医療事故紛争解決事例14〜メッケル憩室炎を見逃して死亡に至ったケース
  • 控訴断念〜新しい段階に入ったハンセン病問題
  • 控訴断念〜新しい段階に入ったハンセン病問題
プロフィール

kyushugodolo

QRコード
QRコード