2017年08月

[オペラ] R・シュトラウス「バラの騎士」(2017/08 METライブビューイング)

 2017/8/27 メト・ライブビューイング・アンコール2017より、3か月ほど前の、2017年5月13日に上演された、R・シュトラウスの歌劇「バラの騎士」の公演を、東銀座の東劇へ聴きに行きました。その感想・レビュー。
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<目次>
【2】演奏のレビュー・感想
 ※  ※  ※ 

【1】「コミカル」なオペラ

 最近は、だいぶ見方が変わってきましたが、私はオペラが好きなのですが、基本恋愛場面にはそれほど興味はなく、劇的な場面、外連味のある場面そして、喜劇的な場面が多い作品の方が好みです。
 プッチーニでいえば、「ラ・ボエーム」や「蝶々夫人」よりも、「トスカ」「トゥーランドット」の方が数段すきですし、ワーグナーの作品も、「さまよえるオランダ人」「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の方が、「タンホイザー」や「ワルキューレ」等よりも好きです。

 その意味において、R・シュトラウスのオペラで好きになったオペラは、「サロメ」(「エレクトラ」も、と言いたいところですが、なぜかそれほどまでではない)で、「バラの騎士」に関しては、「「サロメ」や「エレクトラ」で、あれほど大胆で、前衛的な音楽が聴けたのに、なぜこんな保守的な恋愛オペラを書いてしまったのだろう」と、結構長い間、少し不満でした。

 それゆえ、このオペラを聴いて、最初どこが好きになったかというと、圧倒的に、第2幕、特にオックス男爵が登場してからの場面です。このオペラを聴き始めたのは、20代中盤位からだったと思いますが、その時の印象は、「コミカルなオペラ」としてこの作品が好きでした。
 すなわち、2幕で、ちょっと傷つけられただけで、大げさに騒ぎ、その後、「マリアンデル」という女性から手紙をもらうと、ケガも忘れて、有頂天になり、ワルツを口ずさむ、オックス男爵がなんとも喜劇的で見ていて面白かったです。この一連は、バス歌手の「腕の見せどころ」かと思います。

 その後、実際の舞台でこの作品を見て、この作品は、実は元帥夫人、マルシャリンの心の襞や時の移ろい・「あらゆることに終わりがあること」の感傷にたいする心情にその味わいがあることが理解できました。この辺が、ホフマンスタールという一流文学者との共作である所以かな、と感心したことを覚えています。

 以前、書かせてもらいましたが、このオペラは、その意味で、現在は、「愛」と「滑稽」と「感傷」が程よくまじりあっている、R・シュトラウスの傑作であると思ってしますし、それなりに鑑賞できるようになったと思っています。しかし突き詰めると私は、今でもこのオペラの「滑稽」の部分が一番好きだし、楽しみにしていると感じています。それが、ちょうど好きな声質の「バス」と「バリトン」が基本受け持っていることも、そのような聴き方をしてしまっている要因の一つかもしれません。

 ちなみに、イタリア・オペラでは、喜劇的なバス歌手が活躍するオペラが、ロッシーニなどを中心に案外ありますが、ドイツ・オペラではそれほど数が多くないのでは、と思います。私が知らないだけかもしれませんが。このR・シュトラウスの「バラの騎士」のオックス男爵の他、思いつくものは、モーツアルトの「後宮からの逃走」のオスミン(「ドン・ジョヴァンニ」のレポレッロはイタリア語だから不適格)と、ロルティングの「皇帝と船大工」です。 ロルツィングには、もっとバスが活躍する作品があるのかもしれませんが、勉強不足です。
   ※    ※    ※

 さて、今回のメトロポリタン歌劇場の「ばらの騎士」の公演は、長年メトをささえ、名マルシャリンといわれてきたルネ・フレミングのこの役の引退公演だそうです。 同じくオクタヴィアンを演じる、エリーナ・ガランチャも、この公演を最後にズボン役(女性が歌う男性役)を引退するとこのことです。
 メトの公演、そしてこの二人の公演であれば、まず間違いないだろう、そして指揮が先日、日本でも素晴らしい公演を聴かせてくれたセバスティアン・ヴァイグレとくれば、演奏にはまず問題がなく、あとは、オックスのギュンター・グロイスベック(この人も、日本の「ローエングリン」のハインリヒ王で素晴らしかったが、喜劇物はどうか?)と、舞台がどのような物だろう、などとの期待・予想をしながら、今年5回目となる、夏のメト・ライブビューイング・アンコール編を観に行きました。
  

【2】演奏のレビュー・感想

 さて、当日は、日曜午後の公演なので、やはりそこそこの人が入っていました。
 私は、以前に予約したので、前よりの通路沿いに座ることができたのですが、やはり、横にだいぶ人が来ている状態です。
 13:30からの開始、各10分の休憩を入れて、4時間半の上演時間なので、終了は18:00ですが、あっという間に過ぎてしまいました。

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 今回の感想ですが、まず、圧倒的にオクタヴィアンのエリーナ・ガランチャが男前!歌も、安定した歌いぶりで、力強い処、しっとりとしたところともに巧みな表現、しっかりしていて文句なしの演奏です。 
 そしてそれ以上に、ビジュアルおよび男性の演技、男性が女性を演じる演技(ややこしいですが)が実に素晴らしく、全く非の打ちようがない、それは素晴らしいオクタヴィアンです。メトでは、こんなに素晴らしいものが観ることができるのかと思うと、羨ましい限りです。
 個人的に、エレーナ・ガランチャを生で聞いたことがあったかを調べてみたら、2003年に、新国立劇場の「ホフマン物語」で聴いていていました。その時のメモにも「その中でも一番すばらしい」と書いているので、なぜ覚えていなかったかが不思議です。この公演で、ズボン役は引退とのことですが、何らかの公演でもう一度聞いてみたいです。 

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 マルシャリンのレネ・フレミングもしっとりとした、「時が過ぎることの残酷さに半ば諦めながらもしっかりと向き合う」優しく気丈な女性を素晴らしく演じています。この方は、声が非常にきめが細かく、丁寧で優しい歌声で、知的かつ繊細な歌唱をする人で、ビュアで気品ある役には最適なソプラノだと思います。この人は昔聞いたことを覚えています。個人の記録では、25年以上前、1991年にヒューストンで、ジュリアス・ルーデル指揮のドボルザーク「ルサルカ」、1992年にダラスで、チャイコフスキーの「エフゲニ・オネーギン」で見ていました。「ルサルカ」のコメントで、「とても魅力的で素晴らしいソプラノ」と書いていますし、今回聴いても、その思いは変わりませんでした。
 
 しかしながら、この辺は完全に好みの領域で言えば、私のマルシャリン像が、フレミングの演じるような「理想的な女性」ではなく、その一面もあるが、とは言え自分も結局アバンチュールを楽しむ、「貴族的」な冷たさも持つ女性、なので、その意味では、フレミングの演技は、多少「良い人」過ぎかな、と少し感じます。贅沢すぎる発言とわかっていますが。

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 私が大好きなオックス役のギュンター・グロイスベックは、新国立劇場で、2012年の「ローエングリン」のハインリヒ王で印象的だったのでよく覚えていました。先日観た、メトの「タンホイザー」や、今年の「ニュルンベルグのマイスタージンガー」(BSで放送していました)にも出演し、ワーグナー歌手の印象が強いですが、この役も実にうまい。早口なのですが、深い声は変わらず、低い声の響きも十分。舞台姿も軍服がとても格好いい。オックスも、本来30代の「貴族」であるべきで、だらしない中年男ではない、というのが個人のイメージです。最近はそのような演出も多く、納得する舞台も多いのですが、この舞台もとても魅力的なオックス男爵です。
 幕間のインタビューでは、グロイスベックがオックス像につき「かれは経済問題を抱えており、見かけより深刻な状況に置かれている」という解釈。正直音楽だけ聴いていると、そんな気はしないのですが、そういう見方で再度見ると、オックス像もまた変わるかも知れません。

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 ソフィーのエリン・モーリーも、とても澄んだ声のソプラノで、歌には文句ありません。
 あとは例によって趣味の問題で、ゾフィーの人物像が、少し私と違うのが、逆にここまで舞台が完璧になると残念になるくらいです。この人物像は、私は保守的で、「深窓の令嬢」。もっと主体性を持った人間だ、という主張は受け入れるつもりですが、今回の上演は、「ちゃきちゃきのアメリカ娘」の様に見えてしまい、それはやりすぎか、というのが感想です。

 ファーニナルのマーカス・ブルックという人は初めて聞きましたが、喜劇的なこの役をやはりきちんとこなし、好印象。イタリア人歌手を演じた、マシュー・ポレンザーニは、エンリコ・カルーソー風のメイクが楽しかったです。

 ちなみに、ポレンザーニは、この「バラの騎士」のホスト役を務めていました。
 最初に、「メトの総監督ゲルフ氏は、私が1幕でしか出番がないので、今回、有効活用ということで、私をホスト役に任命しました。総監督の効率的な運営方法には感心します」と挨拶したのが、個人的にはとてもウィットの聞いたコメントと思い、面白く関心しました。ただ、ホスト役はメイクを落とした背広姿ですが、カーテンコールはメイク姿らしく、何度かメイクしなおしをしたらしいので、その点は非効率的だったのかもしれませんが。
 ※   ※   ※

 歌手陣は上記のように万全の布陣ですが、ロバート・カーソンの演出はというと、まずこれもメトらしく豪華。入り口とその中身が見える二重構造の舞台も素晴らしい作りですし、外に出るのに、4つもの扉を開ける必要ある、豪華な家を再現できる舞台の奥行き、高さに改めてびっくりします。
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 (一幕の場面は、まずは部屋の外で演じられ、その後部屋の中へと舞台転換します。3幕も同じ方式でした)
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(2幕のバラの騎士の登場。ファーニナルの家は機能的でした。)

 また、驚いたのは、3幕で、これは居酒屋ではなく、完全に娼館として描かれていました。
豪華な中にも、いかがわしさが満載です。3幕は、普通「はじらうマリアンデル(変装したオクタヴィアン)に、強引にせまるオックス男爵」として描かれるのが普通ですが、今回の演出は逆で、オクタヴィアンの方が、積極的にオックスを誘い、オックスの方がたじたじとなっている演出でした。考えてみれば、オクタヴィアンはオックスを窮地に追い込みたいので、このように主導権を握って追い込む演出もありかな、と思いました。

 さらに、この舞台は豪華なだけではなく、読み替えやメッセージも感じられました。
まず舞台は、この曲が作られた20世紀初頭。オックスは軍服を着ていて、オクタヴィアン、元帥夫人の夫も軍人として描かれています。ファーニナルの家には、大砲や機関銃がならんでおり、ファーニナルが武器商人として財を成したことを暗示しているのではないかと思います。 
 
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 (オックスと家臣。軍服姿が格好いいです。)

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 (第二幕。ファーニナルの家には、大砲などが並べてあります)
 
 これは、最後の最後、いつもは、黒人の少年召使モハメットが「ハンカチを取りに戻る」という洒落た落ちで終わるエンディングが、この演出では、青年召使モハメットは酒に酔って現れ、背後に、武器を手にした人々が蜂起しているような絵で終わります。幸せの裏側で、きな臭い世界が始まるという暗示なのでしょうか。少し衝撃的な終わり方です。
 本来は、このような演出は個人的にあまり好きでないはずですが、この舞台では、それまでがあまりに豪華な作りで堪能させてくれたのを、最後の一瞬にちょっとひっくり返すような手法に、良い意味で意表を突かれ、不意を突かれる感じも少し心地よかったです。
  ※    ※    ※

 二期会の「バラの騎士」で素晴らしい演奏をきかせてくれたセバスティアン・ヴァイグレの指揮も文句なし。インタヴューで「振れば振るほど、作品の理解が高まる」と言っていたので、メトの後で日本に来てくれたことに感謝です。

 再三思いますが、これほどハイレベルな舞台になると、私の鑑賞力では、本来「素晴らしい演奏に驚嘆している」という感想以外何者でもなくなります。あとは好みの問題。、ただその意味でもこの演奏は、DVDなどがでたら、ガランチャとグロイスベックを観るため、買い求めたいな、と思える素晴らしい演奏でした。 メト・ライブビューイングには、すっかりはまってしまっています。

【3】キャスト&スタッフ

指揮:セバスティアン・ヴァイグレ 
演出:ロバート・カーセン

出演:
マルシャリン:ルネ・フレミング(S)
オクタヴィアン:エリーナ・ガランチャ(Ms)
ゾフィー:エリン・モーリー(S)
オックス男爵:ギュンター・グロイスベック(Bs)
ファーニナル:マーカス・ブルック(Br)
イタリア人歌手:マシュー・ポレンザーニ(T)

上映時間
:4時間24分(休憩2回)[ MET上演日 2017年5月13日 ]
言語
:ドイツ語


[オペラ] ギルバート&サリヴァン「ミカド」 (2017/08 びわ湖ホール)

 2017/8/26 びわ湖ホールの地域招聘オペラ公演、ギルバート&サリヴァンのオペラ「ミカド」を、初台にある新国立劇場・中劇場に聴きに行きました。その感想・レビュー。
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<目次>
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【1】海外における日本のイメージ

 日本を舞台にしたオペラ作品は、プッチーニの「蝶々夫人」が一番有名ですが、その他にもマスカーニの「イリス」やサン=サーンスの「黄色い王女」などがあります。それは、その当時の19世紀後半に起こった「ジャポニズム運動」の影響と関係があることは、以前、マスカーニの「イリス」を聴くときに少し調べて書いてみました。
 簡単に繰り返すと、19世紀中頃の万国博覧会(国際博覧会)へ出品をきっかけに、葛飾北斎や喜多川歌麿の浮世絵などが、フランス印象派の画家たちに影響を与え、「神秘の国・日本」を憧れ、模倣する運動が起きたのがジャポニズムです。
 
 当時のジャポニズムは、おおむねは、不思議な絵を描く未知の国日本、に対する憧れがメインであったとおもいます。しかし、想像ですが、このギルバート&サリヴァンのオペラ「ミカド」という作品は、日本にあこがれて作成されたというよりも、ジャポニズムの流れに乗って、舞台を日本にしておきながら、多くは自国の社会や政治を見立てで皮肉るような意図で書かれていると思います。

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(「トプシー・ターヴィー」という映画のシーン。「三人の女学生」。この映画は、ギルバートとサリヴァンが、1884年から1885年までの15か月間で『ミカド』を完成させる過程が描かれているそうです。当時の「日本のイメージ」はこのようなものでしょうか?)

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(The Mikado, Melbourne 2011 (Opera Australia)。同じ場面ですが、日本らしさを醸し出しながら、別物に仕上がってします)

 ミカドやティティプー(秩父)という名称が使われていたり、日本的な曲も使われて雰囲気は出ていますが、肝心の人名が、ヤムヤムとかココとか、ナンキ・プーとかプーバーとか全く日本的ではありません。(これらの名前は、Wikipediaによると、英語の幼児語とのことです)

 また、このオペラでは、日本は、「すぐに死刑にする国」というイメージになってしますが、これも日本の君主に準じてすぐハラキリをする風習などを英国的感覚でとらえた結果なのでしょう。それ自身は、誤解があると思いますが、これも決して日本を野蛮な国と貶めるというより、そのような想定の架空の国をもって、自国の政治風刺をしようとした趣旨だと想像します。

 しかし、この曲が作られてあと、徐々に世界が国際化に向かっていくと、何も知らない頃より摩擦が起こるがゆえに、その初期には、様々な人種差別が問題になるようになってきました。
 日本人は、暫くの間、「エコノミック・アニマル」とよばれ、「眼鏡・出っ歯・低身長」、「カメラを首にかけた、背広姿」等に描かれて、揶揄されていた時代もあったと思います。

 欧米人が日本人/東洋人を演じる場合、意図的か否かわかりにくいですが、当時は、これらの「特徴」を多少デフォルメして表現することも、結構行われていました。有名な「ティファニーで朝食を」の映画でも、日本人として、先のような、「眼鏡・出っ歯・低身長」で、「RとLの発音がままならない」のような表現がされています。このように、欧米人が東洋人を演じることは、「イエローフェイス」と言うらしいのですが、それは「東洋人差別」にもつながる言葉でもあるらしいです。 (黒人の場合は、「ブラックフェイス」という。おそらく日本でも昔、ある種の差別表現がなされていたと思います)

 さて、この「ミカド」というオペラは、「蝶々夫人」等と違い、話の内容が荒唐無稽であり、本来は自国風刺とは思いますが、「皮肉に笑い飛ばす」内容も多い作品です。それゆえ、ある意味演じ方によっては、「日本の天皇制を馬鹿にする作品」「日本人を笑いものにする作品」と仕立て上げる、または見ている方がそう取ってしまうことも起こりかねない作品となってしまいました。

 事実、1900年の初頭、日本の皇室の方がイギリスを訪問した際、イギリス政府は気を使い、上演されていた『ミカド』を6週間にわたり禁止したそうです。また、最近でも2015年のニューヨークでの「ミカド」の公演が、イエローフェースの問題で、上演中止となったという記事をインターネットでみました。 
 
 この辺は、受け取る側の感情を十分に考慮しなくては、たとえ上演する側にそのような意図がなくても、「そのつもりはなかった」では済まないことも多い、微妙な問題なのかとも思います。しかし、それゆえにこの作品があまり上演されないとしたら、少し残念なことでした。

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(1982年 Stanford Festivalの公演。1幕の楽しい3重唱。これも、当時、「日本」をイメージした、ある種コテコテの日本の描き方です。でも歌は抜群に楽しい)

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(1992 Buxtonの公演。同じ場面ですが、これも日本らしさを残しながらも、ウェスタン・テイストに仕上がっています)

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(1996年 New Zealand。自由奔放にアレンジされた公演。男性3重唱なのに、1人の男性の代わりに女性が3人はいっています。衣装も、ハチマキに日の丸と日本風。)

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(ENO English National Opera 2015年の公演と思います。今度は、もはや日本の影は全くない、純然たるオペレッタの世界となっています。)

 さて、私は、先週、このオペラの舞台である、架空の日本の都、Titipuのモデルになったといわれる、秩父で初めてこの楽しいオペレッタを見てきましたが、実に愉快な作品で、面白い曲がいろいろあります。 荒唐無稽な話の筋はオペラに付き物で、もともとあまり細部にこだわらないたちなので、このような曲は個人的には大歓迎です。
 楽しかった秩父オペラの印象もまた十分残っていますが、今度は3月にヘビー級なワーグナーの楽劇「ラインの黄金」で素晴らしい舞台を見せてくれた「びわ湖ホール」が、今度は正反対の軽妙洒脱なこのオペレッタをどのように見せてくれるか、楽しみにして新国立劇場へ向かいました。

【2】 当日の演奏とレビュー

 8/26(土)の公演は、いつもより少し遅く16:00の始まりでした。
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 タイムスケジュールは、上記のように、最初に演出家の中村敬一氏のプレトークがあり、そのあと音楽という割り当てでした。会場は、1階は、8割程度の入りでしょうか、やはり知名度が低い、それもコミックオペラということが影響しているのでしょうか、もったいない。あと、正直、少し高い(安い席が少ない?)ので、もっと安い席を増やしてもらいたいです。
 (びわ湖では、5,000円均一みたいでしたが、新国立劇場は、ほとんどの席が、10,000円なのでは??? 遠征して見せてもらうので多少は仕方ない気もしますが)

 演出の中村敬一氏の話は、イギリスのコミック・オペラの伝統(乞食オペラ、のちにクルト・ヴァイルにより「三文オペラ」につながる)や、ジャポニズム、サヴォイ・ホテルとの関係、物語のあらすじ等を簡潔に紹介してくれたもので、多くの人が初めて見るであろうこのオペラの理解を深める話でした。
 私は、いろいろ調べていたのですが、それでも、このサリヴァンのオペラの特色として、「ペッパーポット・ソング」(風刺のきいた歌。この中では、ココの「処刑人のリスト」等の歌)や、「パターソング」(早口の歌。【1】で写真に乗せた、男性3重唱等)の特色があることを知りました。このオペラ、調べるとまたいろいろな背景がありそうで、その意味でも興味あるオペラです。
 ※   ※   ※

 演奏は、やはり楽しく、私はすっかりこの「オペラ」が好きになってしまいました。
 わかりやすい音楽が、実に親しみやすく、ウキウキと聴くことができます。
 先週の秩父の演奏も素晴らしかったですが、この「びわ湖ホール」の舞台もさまざまな工夫がこらされていて、楽しいものでした。
 ただ、この作品本来の「風刺精神」を期待すると、その視点からみると少し物足りないのかもしれませんが、純粋に楽しい舞台と美しい音楽を楽しめる公演だったと思います。

 舞台は、歌舞伎調の絵がかかれた枠取りの中に、背景が、日本紹介のHPのようになっていて、背景が様々な日本の名所を紹介するような感じとなっています。浅草雷門や、吉祥寺(の案内)、清水寺や最後には大阪等が様々に変わる、「日本紹介」のような舞台になっています。
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 (以下、ゲネプロ時の写真等をお借りしました。1幕末のカティーシャ登場の場面) 
 衣装は、ミカドやカティーシャ、大臣たちは、平安調の衣服。若いナンキプーは、ジーンズ姿のシンガーソングライター、ヤムヤム他女子学生は、髪の毛をそめて、ハイカラ風な衣装で、見た目にもとても鮮やかで、ポップな色合いで、楽しいこのオペラにマッチしています。

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 ナンキプー(二塚直紀 )は、秩父では流しの歌歌いでしたが、こちらではシンガーソングライター。冒頭の歌、「我こそきままなシンガーソングライター」は、メリハリの利いた歌いぶりでした。ちょっと太い声の感じのテノールです。(最初、バリトンの方かと思った。)

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 左から、ピープピー(藤村江李奈)、ヤムヤム(飯嶋幸子)、ピッティシング(山際きみ佳)の女学生3人娘の歌は、この公演では、「私ら 生意気イケイケJK(女子高生)」と紹介されていました。その後も演技もすべてJK風。「キャピキャピ」とした雰囲気がしっかり伝わります。

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 左から、ココ(迎 肇聡)、プーバー(竹内直紀)、ピシュタッシュ(五島真澄)。【1】でも紹介している、コミカルな3重唱「自慢の誉れ」の場面。とてもアンサンブルが整っていました。ただ、これに関しては、整い過ぎていたかも知れません。とても好きな場面だったので、アンコールしてもらいたかったです。

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 右:ミカド(松森 治 )と左:カティーシャ(吉川秋穂)。ミカドの登場の歌「こんなヒューマンなミカドはいないよ」という、暴君丸出しの歌を太い声で歌います。これも、解説にあるところの「ペッパーポット・ソング」なのでしょう。

 カティーシャは、基本的に「古典音楽」の台詞・音楽が与えられており、これも何かのパロディなのでしょう、このオペラに有って、少し調子はずれになる所が、逆にとても印象的です。
 ちなみに、上の雷門の写真の1幕末の場面で、カティーシャに黙るように命じる「まじない」の言葉が、「鬼、ビックリ、シャックリ」という言葉で意味不明なのですが、秩父の公演でも確か同じ言葉だったと思います。昔からの訳詞なのでしょうか?)
 (→疑問形で書きましたが、その後気になって調べたら、何と、これはもとの英語にある台詞。”O ni! bikkuri shakkuri to!”が原語です。「日本語的」言葉ということで、明治 4 年ごろに流行した「びっくりしゃっくり節」をもとにしているとのことです。このオペラ、本当に興味深いです。)

 最終場面は、大阪らしいのですが、出演者全員の衣装がガラッと変わって、これもとても面白かったです。合唱の女性はバニーガール風、男性はモーニング姿、出演者は、阪神ファンやたこ焼き屋の娘さんなどに扮します。ミカドは、グリコのランナーなのでしょうか? 正直、意図はよくわからないのですが、意表を突くものであり、目に楽しいものでした。
  ※    ※    ※

 音楽は、園田隆一郎の指揮のもと、歌手の皆さんの歌や合唱、踊りも、すべてとてもアンサンブルの良さを感じました。「びわ湖ホール声楽アンサンブル」の公演なので、当たり前なのかもしれませんが、全体が一丸となっていて、美しく、ワクワクする生気溢れる音楽を感じます。
 特に印象的だったのが、2幕の5人~6人で「マドリガル」の歌を歌う部分。とても均質にまとまって美しい音楽で、拍手も多かったと思います。

 最初にも少し述べましたが、もともと持っていたであろう、劇の「風刺」の部分は、今の話題の言葉、「忖度」とか「このハゲ~」という部分で、少しあったかと思いますが、それほど重視しているとは思えませんでした。
 むしろ、この音楽の持つ美しさと楽しさをきちんと伝えることをメインにした演奏と感じました。その意味で、この優しい音楽(聴きながら口ずさめるようなメロディが多い)を、確かな音楽・歌唱・アンサンブルで楽しめた公演でした。

 なかなか聞く機会のないこの「ミカド」という作品を2週にわたって観ることができたのはとても貴重な経験です。それに、なによりも音楽が愉快で親しみやすく、また背景もいろいろ興味深く、すっかり大好きなオペラになってしまいました。
 このような喜劇作品の方が、シリアスな悲劇作品より実は上演するのが難しいのではないかと思います。しかし、秩父やびわ湖の公演も是非再演してほしいですし、また別の所でも、是非この楽しいオペラを上演してほしいです。

【3】 キャスト・スタッフ

<スタッフ>
指 揮:園田隆一郎
演出・訳詞:中村敬一
美 術:増田寿子
照 明:山本英明
衣 裳:下斗米雪子
振 付:佐藤ミツル
音 響:押谷征仁(滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール)
舞台監督:牧野 優(滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール)

<キャスト>
びわ湖ホール声楽アンサンブル

ミカド:松森 治
*ナンキプー:二塚直紀
*ココ:迎 肇聡
*プーバー:竹内直紀
*ピシュタッシュ:五島真澄
ヤムヤム:飯嶋幸子
ピッティシング:藤村江李奈
ピープボー:山際きみ佳
カティーシャ:吉川秋穂
貴族・市民:平尾 悠、溝越美詩、益田早織、吉川秋穂、川野貴之、島影聖人、増田貴寛、内山建人、宮城島 康 ほか
* びわ湖ホール声楽アンサンブル・ソロ登録メンバー

管弦楽日本センチュリー交響楽団

[海外旅行] マレーシア旅行 ①(準備・移動他)

 2017/8/11~8/17の日程で、夏休みにマレーシアへ行き、マラッカとクアラルンプールの2都市を巡りました。備忘も兼ね、旅行の準備・移動方法、観光、宿屋食事などについて数回にわけて記録してみます。初回の今回は、簡単に旅の準備・移動方法について記します。
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(マラッカにあるムルデカ広場&メガモール近くにあった展示。多くの人がこの前で写真を撮っていました。マレーシアの旗がたくさん飾ってありました)

<目次>
【1】マレーシアへの移動
【2】国内(都市間)の移動
【3】都市内の移動
【4】付録:SIM事情

<関連記事>
 ※   ※   ※

【1】マレーシアへの移動

 今回の旅行は、航空会社は、JAL(実際はマレーシア航空の運航)を利用、サイトで予約しました。往復が70,000円弱でした。
 クアラルンプールへの往復は、格安航空会社のAirAsia等が便を出していて、往復30,000円代で行けるのですが、20Kgまでの荷物を追加したり、座席指定をしたりすると、50,000円近くになります。個人的に、JALはマイレージを貯めていて、持っているeポイントが使えたり、ラウンジも使えるので、少し高いですが、今回はこちらを選択しました。

 マレーシア・エアラインとのコードシェアなので、チェックインは、マレーシア航空のカウンターで行いましたが、成田ではチェックイン時に案内もあり、問題なくJALのラウンジを使わせてもらいました。食べ物も充実していて、一日中いても飽きない設備です。

 帰りのクアラルンプールでは、マレーシア航空の職員に「JALのラウンジが使えますか?」と聴いても、要領を得た回答を得られませんでした(当たった職員があまりものを知らなさそうでした)。ただ、チケットには、JALのグローバル会員である旨が印刷されていたので、HPでラウンジの位置を確認し、そこを訪問すると、問題なく入れてもらえました。
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 (クアラルンプールのラウンジ内部。実際はキャセイ・パシフィック航空のラウンジです)

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(パソコンが数台置かれていて、PCを楽しむには充実しています。ただ、最近はみんなスマホをもっているので、あまり利用している人はいません。成田のJALのラウンジは、とても広く、マッサージチェアーや、シャワーなど充実していますが、クアラルンプール(KL)では、そこまでの設備ではないです)

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 (簡単な食事もできます。このほかに、麵もありましたが、こちらもJALの成田程はバラエティに富んでいないかと思います。とはいえ、のんびりできるので文句は言えません)

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 クアラルンプール国際空港はとても広く、近代的な空港です。「森の中の空港、空港の中の森」をコンセプトに、黒川紀章が全体計画を設計したとのことです。通常KLIAと略されます。この他にLCC専門のターミナルがあり、こちらはKLIA2と呼ばれています。この2つは移動に時間がかかり、KLIAエクスプレスまたはKLIAトランジットという電車で移動、またはバスで移動することになります。ともに有料みたいです。(バスターミナルでは値段が書かれていたが、ひょっとしたら無料のバスもあるかも知れません。)

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 私は、空港から直接バスで、マラッカへ向かったのですが、バス乗り場はわかりにくかったです。
到着する階は、3階となりますが、そこから2階へエレベータ等で降りた後、案内に従い左手に行き、暫く歩いた後、更に1階におりたところにバス乗り場があります。KLIA2へのバスもそこにありました。

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 KLIAエクスプレスまたは、KLIAトランジットという電車で、KLIA2やクアラルンプール中心地のKLセントラルなどへ向かう場合は、このエレベータで1階に下ると、乗り場に着くと思います。(利用していないので、少し想像ですが)
 KLセントラルまで片道55RM。日本円で、1,500円位とちょっと高めですが、マレーシア市内は朝夕の渋滞がすごいので、何より時間が読めるのが便利です。
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 (これは、KLIAトランジット。後述予定の「ピンク・モスク」へ行くときに利用しました。KLIAトランジットは、その他数駅に停まって、空港へ行きます。KLIAエクスプレスは、KLセントラルからKLIAまでノンストップです。)
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 (KLIAトランジット内部。乗ったときはタイミングの問題か、あまり人がいない状態でした)

 ちなみに、地球の歩き方情報ですが、バスは片道10RM、鉄道の1/5です。時間も1時間が目安ですが、前述のように渋滞に引っかかると1.5時間位になると思います。

 タクシーで市内までいくと、100RM位。二人で移動するなら鉄道と同じぐらいです。荷物をもって、KLセントラルへ移動する必要がないのがメリットです。時間に余裕があり、人数・荷物が多い時はタクシーの方がいいかもしれません。ちなみに、今回私は、市内(モノレールのBuit Nanas近く)から、タクシーで空港に向かいましたが、18:00に出て、ちょうど1時間半の19:30に着きました。110RM(固定値)でした。

【2】国内(都市間)の移動

 今回の私の移動は、「KLIA空港」→「マラッカ」→「クアラルンプール」→「KLIA空港」という簡単なものでした。最後の「クアラルンプール」→「KLIA空港」は、タクシーをつかったので、ここでは、「KLIA空港」→「マラッカ」と「マラッカ」→「クアラルンプール」について述べます。

①「KLIA空港」→「マラッカ」
 日本から予約して、Transnational社のバスを予約しました。
 予約したサイトは、Easybook.comというサイトです。
 
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 Topページです。
 片道か往復かを選び、FromをKLIA、ToをMelaka(マラッカ)を入れ、日付をいれて、右にあるSearch for Bus をクリックします。

Book2
 すると、その日のKLIA(クアラルンプール国際空港)からMelaka行きのバスの情報の一覧が出てきます。その中で、自分の都合のいい時間のものを選びます。私は、飛行機が朝の5時ごろ到着予定だったので、ちょっと余裕を見て朝の7時半のものを選びました。

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 右に橙色で 「Select Seat」と、その下に、「More Detail」というボタンがありますが、MoreDetailの方に乗り場案内などがあります。KLIAの場合は、乗り場が、KLIAかKLIA2かで違うので、少し気を付けてください。
 Select Seatで、席を選び、その次のページで、個人情報とクレジットカード番号を入れます。
 その際、あまり良く見ずに、日本でもよくある「保険に入るか?」を規定値のYesのまま決済して、ちょっとお値段が上がったので、決済した後で失敗したと思いました。Chubb何とかという保険会社ですが、自己責任で検討が必要です。

 決済が完了すると、e-Mailが送られてくるので、印刷して持っていくと話が早いです。
 前述したように、Transnational社は、案内がなくKLIAの乗り場がわかりにくかったのですが、他のバスと同じターミナルで、係員らしき人に聞くと、乗り場を教えてくれます。
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(バス乗り場はこんな雰囲気で、いきなりローカル色が濃いです。)

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(バス内部。2-2の座席ですが、結構広めで、座るのに楽な作りになっています)

 通常は2時間半位で着くとあったのですが、交通渋滞があったのか、なかなか車が動かない時があり、途中休憩1回はさみ、3時間強かかったと思います。多少、渋滞を抜けられないのか、大きくUターンなどして、どのように運転しているか不明な所もありましたが、危険な所はなく、11時ごろ無事マラッカへ到着です。


②「マラッカ」→「クアラルンプール」
 マラッカのバスは、マラッカから少し離れた、「マラッカ・セントラル・バスターミナル」というところから発着します。
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(マラッカ・セントラル。「セントラル」は、Centralではなく、Sentralとつづられているところに少し親近感があります。マラッカの中心地までは、タクシーで行きも帰りも20RMでした。ある程度固定していると思います。)

 ここから、クアラルンプールの市内へ移動するときは、直接窓口でチケットを買いました。
 ネットでは、KKKL社という所が評判がよさそうでしたので、そこにしました。移動には何の問題もありませんでした。片道14RM位だったと思います。
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 (KKKL社のバス。外観。先ほどのEasybook.comには、なぜか出てきません。予約をするときは、KKKL社のサイトで行う必要があるみたいです。)

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 座席全体を映せませんでしたが、シートは2-1の3列シートで、空港からのバスよりも余裕があります。全般にバスは快適です。

 12:30発のバスに乗ったのですが、15:00頃にクアラルンプールのバスターミナル、TBSターミナルに着きます。このターミナルは、空港並みにきれいなターミナルでとても近代的なのでびっくりしました。
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(TBSバスターミナル内部。通り過ぎただけですが、とても近代的で清潔なイメージです)

【3】都市内の移動

 都市内(マラッカ内、KL内)の移動は、ガイドブックなどに乗っている方が詳しいと思いますが、以下気の付いたことだけ。

<マラッカ>
 鉄道の類はありません。
 バスはあるのでしょうけれども、よくわからないので乗りませんでした。
 よって、もっぱらタクシーを資料しましたが、市内からバスターミナルまでは、20RM、市内一乗りは、大体10~20RMが相場と思います。

<クアラルンプール>
 鉄道の類は、LRT、モノレール、KTMコミューター(郊外電車)等があり、KLセントラルを起点にして、多方面に伸びています。

KL
 詳しくは、KLセントラルの電車のHPが見やすいです。「地球の歩き方」にも同じものがありますが、2016年度版には、上記の9の緑色のMRTというものはなかったです。 一種の地下鉄で、私が乗ったときはとてもきれいで空いていました。ブキッ・ビンタンからセントラル・マーケットに行くときはこの線が便利です。(KLセントラルにも歩いて行けるみたい)

 コメントとしては、8番のモノレールを多く使ったのですが、このモノレールはとても車両が短く、いつも混んでいるイメージです。大きな荷物があるときは避けた方がいいかもしれません。

 バスは、無料バスのGOKL CityBusのGreen Lineで、Bukit Nanas近くからKLCCまで行きました。無料なのが助かりますが、市内は昼でも結構渋滞していて、それなりの時間がかかります。電車があるところはそれで移動する方が時間の節約になるかな、という感覚です。

【4】付録:SIM&WIFI事情

 マレーシアの空港でもSIMを買うことができます。
 SIMフリーの携帯を持っていれば、簡単に入手することができます。入手するのに、パスポートの提示等面倒なことはありませんでした。

 私は、空港の出国手続きを済ませて、出口を出て、左手に行ったところにあった、SIMカードを売っているところが数か所あります。時間が早かった(5時ごろ)のですが、空いているところがあったのでここで入手しました。U-Mobleというところ。後で調べたら、マレーシアで4番目の会社だそうです。
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   買って、SIMを交換して、交換したSIMを親切に、無くならないように、カードに張り付けてくれます。(写真は、昔行った台湾旅行の時のSIMが張り付いています)
 
 細かいことを忘れましたが、5日で2Gが25RM、10日で10Gが、55RMだったと思います。 
 私は、ホテルでWifiも使えるので、2Gの方にしました。Wifiは、ホテルの他、大きなモールやちょっとした店でも飛ばしているところが多いので、正解だったと思います。
  
 U-Mobileは、だいたいどこでもつながるのですが、ただ時々速度が遅いことがありました。 
 それは端末のせいなのか、設定のせいなのか不明。端末を変えたらつながりやすくなったので、設定のせいかもしれません。

[オペラ] ワーグナー「タンホイザー」(2017/08 METライブビューイング)

 2017/8/19 メト・ライブビューイング・アンコールの公演から、ワーグナー作曲の歌劇「タンホイザー」の公演を観に、銀座・東劇に行きました。夏休み4つ目の公演となります。その感想・レビュー。
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<目次>
 ※  ※  ※ 

【1】禁断のオペラ

 「タンホイザー」は、ワーグナーの5番目のオペラで、まだ、後期のオペラのように、作品が重量級になる少し手前の作品です。「さまよえるオランダ人」「タンホイザー」「ローエングリン」の3作品は、「楽劇」ではなく、「歌劇」として聴くことのできる作品ですが、「ローエングリン」が多少楽劇に足を踏み入れすぎ、一方「オランダ人」はあまりに歌謡的で、ヒロインの魅力も少ないのに比べ、この「タンホイザー」はワーグナーの「歌劇」作品として、とてもバランスが取れているのではないかと思います。

 音楽も、序曲、第2幕のエリザベートのアリア、歌合戦の「大行進曲」、第3幕のヴォルフラムの「夕星の歌」など親しみやすい音楽に溢れていると思います。

 しかし、このタイトルを聴くと、私は少年時代に読んだ「百科事典」での解説を思い出してしまいます。

 その「百科事典」は、動物や植物、美術や歴史など、各冊ごとにジャンルが分かれていました。
 「音楽」の本には、青少年向けにいろいろな音楽が紹介されていて、その中で「オペラ」の代表の一つとして、この曲を紹介していました。

 確かに、前述のように、音楽は親しみやすく、わかりやすいもので、紹介すべきものとわかります。
 ところが、厄介なことに、この作品は、「オペラ」であるので、物語の筋を持っています。
 「百科事典」としては、青少年に、この筋を紹介しなくてはならなかったです。
 
 大人向けに表現するのであれば、たとえば「官能的な愛の享楽にふけった男が、一人の女性エリーザベトによる真実の愛と祈りによって、神に対する回心に至るという啓蒙的、教訓的ドラマ」とあっさり述べることができますが、青少年向けに「官能的な愛の享楽」の説明が難しかったのだと思います。

 今、現物がここにないので、どんな表現だったか覚えていませんが、「不健全な世界」とか「不誠実な愛の世界」とか書かれていたのではないかと記憶しています。

 おそらく、どんな表現をもっても、青少年に分かりやすく解説することは不可能なのでしょうが、それゆえに、青少年側では、そこになにか、タブーを感じ、かえって興味をそそられてしまいます。すなわち、その解説を読んだ私は、「タンホイザー」というオペラは何かいかがわしい「禁断の」側面をもっているものと認識していました。

 その後、別の入り口から、主としてイタリア・オペラから、オペラが好きなった私ですが、この「タンホイザー」というオペラは、どうもこのころの記憶のせいか、少し「いかがわしい」作品というイメージを持ってしまってします。事実、1幕冒頭のヴェーヌスの場面は、演出ではとてもエロティックな場合があります。今では逆にそれも嬉しいですが...
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(今回のメトの公演の1幕のヴェーヌスの場。目を楽しませてくれます) 

 この作品は、本来「真実の愛と祈りによる救済」を描いた作品と言われています。しかし、私はいつも「知らなくていい世界(禁断の世界)を知ってしまった人間の不幸」を描いた作品、と感じてしまいます。そして、オペラの魅力(特にワーグナーの魅力)なども、一種の「禁断の世界」で、はまったら抜けられなくなるところは、ある意味「禁断の世界」という点で共通しているのかな、と思います。現在の所、それ故に身を亡ぼすほどにまでは至っていないのが幸いですが。
 ※    ※    ※

 閑話休題、前述のように「タンホイザー」は、聴きやすい音楽にもあふれていますが、その反面やはりワーグナーならではの「重さ」も十分兼ね備えています。特にタイトルロールのタンホイザーを歌うテノールにはとても負担のかかる作品かと思います。 
 秋に、バイエルン国立歌劇場の「タンホイザー」の来日公演の安いチケットが手に入ったので、聴きに行く予定ですが、今回、メトの公演で、昨年に惜しくも亡くなったヨハン・ボータがタイトルロールを歌う公演を見つけたので、聞き比べのつもりも少し持ち、この公演を聴きに行きました。

【2】演奏のレビュー・感想

 夏休みの4つ目の公演なので、鑑賞もだいぶ慣れました。
 この日は、夏の土曜の午後ということもあってか、今までの中で一番混んでいました。
 前回、前の方の中央寄りに座ると、大体隣は空席、と書いたのですが、今回は、きちんととなりも3人ほどいる状態。
 平日の夜遅くに見ることが多かったのですが、休日の午後などは盛況な様です。

 15:00はじまりなので、10分前から席に着き、少しパンなどを食べ腹ごしらえをして、上演を待ちました。
 ※   ※   ※
 さすが、メトロポリタン歌劇場の放送用公演。この「タンホイザー」の公演も他と同じように実に素晴らしい公演でした。すべてのキャストが素晴らしく、舞台も伝統的で安心できるもの、指揮は個人的に名指揮者と思うレヴァインのもので、ほぼ完璧な公演です。特に、タンホイザー役のヨハン・ボータは、昨年亡くなってしまったのですが、この公演では、実に素晴らしい演奏で、その早世が実に惜しまれます。

 演出は、オットー・シェンク。この人の、「ニーベルングの指環」を見たことがありますが、実に原作に忠実で、かつ豪華。以前も少し書きましたが、ちょっと前までのアメリカ人の好んで見ていた演出です。いや、今もこのような演出を好む人が多いのではないでしょうか、この公演のMET上演日は2015年10月31日ですが、2年前でもこのような伝統的な舞台が上がっていることがメトらしいです。

 個人の好みで言えば、もちろん文句なし。逆にここまで徹底して原作に忠実な舞台を作り出そうという努力は素晴らしいと思ってします。2幕などは、メトらしくとても豪華な舞台、衣装もきらびやかで、このオペラの「本当の姿」を見ている気になります。
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 (第二幕、背中を向けているのは、領主ヘルマンとエリーザベト姫)

 前述のように、メトの歌手なのでほぼ全員基本水準以上ですが、今回のキャストは、それぞれにはまり役で、ほぼこれも文句なしです。

 まず、タンホイザー役のヨハン・ボータですが、力強く、良く伸びる英雄的な声が実に立派です。まさに「ヘルデン・テノール(英雄的なテノール)」という感じ。二幕後半の嘆きの声も、鋭く決まっていますし、最後の「ローマ語り」も素晴らしい語り口です。
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 どこかでヨハン・ボータを聴いていないか、自分のメモを調べてみたのですが、なんと2回聞いていました。ジュネーヴの「イドメネオ」(1994年)とロンドンでの「トスカ」(1995年)。「イドメネオ」はモーツアルトのオペラで、残念ながらモーツアルト嫌いの私は、曲が退屈だったことしか覚えていません。「トスカ」はメモによると、ジュゼッペ・ジャコミーニの代役で登場したらしいのですが、この日のキャストの中で一番素晴らしかったと書いていました。もう一度聞いてみたかったです。返す、ご冥福を祈ります。

 エリザベートのエヴァ=マリア・ヴェストブルックは、舞台姿も美しく、理想的なエリザベートではないでしょうか?二幕の冒頭の喜びに満ちたアリアから、終盤で、タンホイザーをかばう懇願、そして終幕での祈りと、さまざまな感情をとても豊かな歌と演技で表現していました。 
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 ヴェーヌズのミシェル・デ・ヤングも、たっぷりとしてメゾの声で、声もセクシーですし、舞台姿も美しかったです。おみ足がとてもすらっと美しく。
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 ペーター・マッテイのヴォルフラムも真摯で、まじめ、かつ叶わぬ恋や友情への苦悩なども秘めた歌が胸を打ちます。二幕の、歌合戦の歌も説得力がありますし、「夕星の歌」は実に感動的です。是非実演で一度聞いてみたいです。この方の歌う「オネーギン」も聴きに行きたいな、と思っています。
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 ギュンター・グロイスベックは、新国立劇場の「ローエングリン」のハインリッヒ王の素晴らしい歌唱が記憶に残っていますが、この「タンホイザー」の領主ヘルマンも、同じように威厳にみち、堂々たる歌唱です。
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 その他の歌手もしっかりしており、特に1幕末に出てくる牧童(中国人のリン・ファンという人?)の澄んだ声や、ビテロフルの硬い声も印象的でした。

 さらに合唱が素晴らしい。ワーグナー作品の初期の作品は、どれも合唱が活躍するのですが、メトロポリタン歌劇場合唱団も、実に充実しています。ライブ・ビューイングの中で合唱指揮のM・パランボのインタビューがありましたが、連日、様々な言語で演奏するのが日常だそうです。舞台裏の苦労や、指揮者の思いなどを知ることができるのも、ライブ・ビューイングならではと感じます。

 レヴァインについては、前回の「シモン・ボッカネグラ」で書いた思いと同じです。オペラをわかりやすく、楽しく見せてくれるのに、レヴァインに勝る人はいないと思っていますが、ワーグナーでも同じと思います。少し遅いかな、と感じるところが無きにしも非ずですが、音楽が実に自然に流れるという点で、安心して聞ける演奏です。
 
 メトロポリタン歌劇場の公演は高水準で、これも以前に書いたように、一般的なレベルから言うとほぼ文句はなく、あとは好みで好き嫌いを言うくらいになりますが、その意味においても、この「タンホイザー」の公演は、演出・歌手すべてが好みの素晴らしい上演だと思います。(私はドイツ系に甘いのかもしれませんが)
  ※   ※   ※

 割安となる4回券を買ったのですが、あっという間に4作品見てしまいました。
 どうしようかと迷いましたが、結局、更にもう一つ4回券を買ってしまいました。
 今のところ、「バラの騎士」「パルジファル」「オネーギン」を観に行きたいと思ってしますが、あと一つ何にするか悩みます。イタリアオペラの「トゥーランドット」「アイーダ」等のスタンダード作品も何も考えず楽しみたいし、「遥かなる愛」とか「テンペスト」という新作オペラも聴いてみたいです。結構はまってしまいました。「禁断の世界」だったかも。この4回券で間に合うかが心配です。

【3】キャスト&スタッフ

指揮:ジェイムズ・レヴァイン 
演出:オットー・シェンク

出演:
 タンホイザー:ヨハン・ボータ
 ウォルフラム:ペーター・マッテイ
 エリーザベト:エヴァ=マリア・ヴェストブルック
 ヴェーヌズ:ミシェル・デ・ヤング
 領主ヘルマン:ギュンター・グロイスベック

[ MET上演日 2015年10月31日 ]

[オペラ] ギルバート&サリヴァン「ミカド」 (2017/08 ちちぶオペラ)

 2017/8/20 秩父にある、秩父宮記念市民会館 大ホール「フォレスタ」で、英国のギルバートが台本を書き、サリヴァンが作曲した、オペラ「ミカド」の公演を聴きに行きました。秩父宮記念市民会館のこけら落とし公演となります。その感想・レビュー。
Mikado-Chi
<目次>
 ※   ※   ※

【1】「秩父」のオペラ

 このオペラは、通常、「ギルバート・アンド・サリヴァンによる(By Gilbert and Sullivan ) 」と紹介されますが、これは、台本のウィリアム・S・ギルバート(1836年–1911年)と作曲家のアーサー・サリヴァン(1842年–1900年)が共同して様々なオペラを14曲ほど作曲したため、コンビ名で呼ばれるのが一般となっています。
ギルバートサリヴァン
 また、「オペラ」と言いますが、通常のオペラとは少し違い、オペレッタまたはミュージカルに近い、英国式のコミック・オペラであり、この2人のコンビの作品のため建てられた劇場名(サヴォイ劇場)にちなみ、サヴォイ・オペラとも呼ばれます。

 珍しいオペラで、私も初めて聞くのですが、どういうわけか、続く時は集中し、20日に秩父での上演の後、26日には、新国立劇場・中劇場で、びわ湖ホールによる公演が続きます。

 秩父オペラがこの「ミカド」を取り上げたのは、この作品が、原題を、Mikado, or town of Titipu、ミカドまたは、Titipuの町というもので、舞台の町の名がTitipu、ティティプすなわち「秩父」だから、という説明が「ちちぶオペラ」のHPにありました。 
 「1991年に永六輔氏がラジオで、「イギリスのオペラに『ミカド』と言うのがあるが、”Town of Titipu”という副題がついている、これは秩父のことではないのか?」とコメントし、それに聴いた有志の方が上演までこぎつけたというからすごいものです。今まで、2001、2003、2006、2011と上演され、2006年には本場イギリスで、日本語で上演されたそうです。

 Titipuは、日本の首都ということになっていますが、これが本当に秩父のことかということは、調べてみると、かなり可能性のある話らしいです。

①「ミカド」が初演された1885年当時、東京や京都といった地名はイギリスであまり知られていなかった。故に、ティティプーという奇妙な名も特に違和感なく受け入れられた。
② 1884年に起きた秩父事件(秩父郡の農民が政府に対して起こした武装蜂起事件)が、イギリスの新聞、The Timesに乗った。その時の町の名前の表記は、ヘボン式のChichibuではなく、内閣訓令式という表記のTitibuだった。
③ 明治期日本の主要輸出品に絹糸があった。高品質な秩父絹は、欧米、特にフランスのリオンを中心とする絹市場でその価値を認められ、ヨーロッパの絹織物の原料として輸出されるようになる。 そこに、Titibu, Japan と書かれているものがあり、目に留まるものだった。
  
 秩父って、案外有名だったのですね。 
 私は、秩父には、何回か行ったことはありますが、この地がオペラと関係があるとは全く知りませんでした。昨年、たまたま「秩父ミューズパーク」という所で、「ラ・ボエーム」の公演があることを知って観に行き、この公演のことも知りました。(今見ると、前回も秩父オペラと「ミカド」の関係をこの記事でも書いていました!1年もたったので少し忘れていました。)

 今回の上演は、前述したように、新設された秩父宮記念市民会館のこけら落とし公演で、「秩父オペラ」の原点の公演とのこと。HPに「歌舞伎や秩父銘仙や秩父屋台囃子等々、秩父らしさを取り入れながら、しかし今までの公演とは違う新たな舞台を創りたい。」とありますので、地域色も豊かなオペラになると思います。
 
 初めて見るオペラですが、気楽に見ることのできる作品と思っています。 
 ゆかりの地でどんなオペラが見られるか、とても楽しみにして、「秩父」へ向かいました。

<補足~秩父情報>
※秩父銘仙
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 「秩父銘仙館」のHPからお借りしました。秩父は山に囲まれた地形で、稲作に向かないことから養蚕業が盛んだったとのこと。その生糸が輸出され、先のTitibuの名前を海外に知らしめたのですが、逆に輸出に向かない規格外の繭を使った「太織」と呼ばれる野良着が、のちに「秩父銘仙」と名前を替え、華やかなデザインの織物になったそうです。

※秩父夜祭と秩父屋台囃子
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 秩父市の12月の名物、秩父神社の例大祭「秩父夜祭」は、京都祇園祭、飛騨高山祭と共に日本三大曳山祭の1つと言われています。江戸時代の寛文年間(1661~72)には祭りが存在していたという記録があり、300年余りの歴史があります。
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 秩父屋台囃子は、埼玉県秩父地方に広く分布し、それぞれの地区で古くから伝承され、その祭礼で演奏されてきた祭り囃子。「秩父夜祭」に、笠鉾・屋台を曳行する6つの屋台町(中近、下郷、宮地、上町、中町、本町)に伝えられているとのことです。

※秩父名物
 個人的な「秩父名物」は、「豚味噌丼」です。
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 「野さか」というお店が有名で、行ったら食べたいけど、いつも行列ができています。明日もよほど早く起きればたべられるかもしれませんが。11:00~15:00営業ですが、通常15:00頃はもう売り切れています。(2,3年前の私の記憶ですが)
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 「みそポテト」も捨てがたいです。 

【2】 当日の演奏とレビュー

 落成記念の会場、秩父宮記念市民会館は、西武秩父駅を出て、歩いて5分位、結構近くにあります。
西武秩父の駅を背にして、市役所の右横(右奥)になります。
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 開演が14:00、開場は、13:30なので、13:00頃西武秩父の駅に着き、少し駅前でぶらぶらした後、13:25頃着いたのですが、なぜか長蛇の列。指定席だから並ばなくてもいいのですが、すごい多くの人がいました。
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 これは、会場前の写真で、この後、係の人が出てきて、13時30分を少し過ぎたところで入場開始となりましたが、私が入れたのは、40分過ぎでした。こんなに多くの人が来ているとは思いませんでした。(チケットが完売だとは聞いていましたが)
 ちなみに、写真の左にある「ポテくまくん」は、秩父市のゆるキャラだそうで、現在全国9位だそうです。インターネットの投票で順位の更新をめざす呼びかけもあり、秩父市の職員の方も熱心です。

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 新しい施設らしく、どこもきれいです。大ホール、フォレスタは、最大座席1007人。1Fは、横が35~40人程の列が20列ほどあります。2Fもあり、これも同程度の席数が8列ほどです。私は、1Fの右30番台の列に座ったのですが、舞台は問題なく見ることができました。

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 これは、2Fから見た図。幕にかかれているのは、秩父夜祭の風景でしょう。ちなみに秩父夜祭は、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産へに登録されたそうです。楽団が舞台前方に入っています。
 ※   ※   ※
 14:00に開演となりましたが、最初に秩父市長が挨拶。落成の記念公演であることと、秩父とこの「ミカド」のオペラの関係を簡単に述べて挨拶。その後、演出・指揮の細岡雅哉氏が登場し、出演者の緊張をほぐすよう、気楽な気持ちで見てほしいという口上の後、開幕です。

 序曲が始まると思いきや、最初は、秩父屋台囃子の力強い演奏。秩父夜祭の華やかさを再現。実は、そこで、今回恋仲となる二人はこの秩父夜祭で出会った、という想定。今回の上演は、当然ですが、舞台は「秩父」なので、若者は「西武池袋線」でこの地にやってきて、最後に二人は「秩父神社」で式を挙げるなど、究極の地域密着オペラです。ちなみに、今回の出演者のほとんどが、秩父か、その近隣の横瀬出身か、その関係者とのことです。

 それらも含め、とても楽しく、愉快なオペラであり、「秩父宮記念市民会館」のこけら落とし公演にふさわしいものであったと思います。日本語公演ということもあって、とても分かりやすく、台詞も多いので喜劇舞台としても楽しめました。公演が1日だけというのは、少しもったいない気もします。

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 まず、舞台と衣装ですが、参考のため上の写真を、HPから過去のものをお借りしました。

 舞台は、上の舞台が少し変形・洗練されていると思います。
 写真では左奥に見える橋が、中央にあり、丸橋の入り口が舞台に向かっている舞台です。
 ミカドの登場などは、橋を渡って舞台中央奥から登場できるので、舞台のつくりとしては、今回見た方が見栄えが良いかな、と思いました。

 衣装は、写真とほとんど同じと思います。基本は日本の伝統衣装ですが、多少時代がバラバラ。
 真ん中の「2本の角」を出しているのがミカド、その右横がヤムヤムというヒロイン、更にその右がナンキプーという若者(流しの歌歌い、実は皇太子、でも少し「足りない」?人間)、ミカドの左がカティシャというナンキプーの婚約者、その右がココというヤムヤムの婚約者(最終的には、秩父夜祭で見初めあったヤムヤムとナンキプー、および残りのカティシャとココが結ばれる)です。
 基本、江戸時代のような服装ですが、ここに写っていないプーバーという人物が、少し変わった、平安時代のような衣装。顔も白塗りで、ちょっと時代があっていない感じがまた面白かったです。ピシュタシュという役も、顔は白塗りで、「奴」のような衣装。ミスマッチ感がありますが、面白く楽しめます。
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(左の黄色い服がピシュタシュ、真ん中の黒い服がフーバー、右の緑と茶色の男性は、ナンキプーの「流し」の時の服です)
 
 女性の服には、秩父銘仙が使われているのかもしれませんが、正直私にはよくわからず。
 しかし、舞台はとてもカラフルで華やか、衣装も含めて「とてもきれいで洗練されている舞台だな」という印象です。

 演奏に関しては、とてもリラックスでき楽しめる工夫に富んでいました。
 冒頭の秩父屋台囃子のあと、序曲が始まるのですが、プロジェクションで、演奏者の紹介、通常の顔と役の顔(男性は変顔が多い)、舞台稽古の様子などが映し出されます。

 サリヴァンの歌は、しっとりと歌うところもあるのですが、その辺は、多くは、ナンキプーやヤムヤムに割り当てられていたかもしれません。ナンキプーの羽山晃生は、テノールよりの声でちょっと甘めな歌を、ヤムヤムの薗田真木子も、きれいなソプラノでチャーミングな歌を聴かせてくれます。芝居では、ナンキプーは少し脳が弱い感じが結構はまっていましたし、ヤムヤムは台詞の地声も明るく跳ねるようで、これまた魅力的です。

 ミカドは、2幕から登場しますが、鹿野由之は、役達者な歌いっぷりです。一幕の最後で唐突にでてきたカティシャは、不思議な存在でしたが、2幕でのモーツアルトのアリアのような歌も立派ですし、ココとのやり取りも笑えました。
 ヤムヤムの友達となる、ピティシンの齋藤雅代とピープブーの山口由里子も、うまくヤムヤムとからみ、「かしまし3人娘」として、登場の場面から舞台を盛り上げていました。

 面白かったのは、法務大臣ココ、なんでも大臣プーバー、助役ピシュタシュの3人組。中でも、佐藤健太のプーバーは、歌声は、バリトンかと思うのですが、地声が、甲高い声で「おかま」口調(公家口調?)なのが、とても笑えました。水野洋助のココも、巧みな表情で喜劇的役割をしっかりこなしながら、やはりバリトンに近い声で、2幕のカティシャへの求愛の歌などが印象的。富田駿愛のピシュタシュも、わかりやすい声で、劇をしっかり進行しており、この3人が1幕の後半で歌う三重唱は、早口で面白い曲であると同時に、最後の部分をアンコールを5回!ぐらい位繰り返してくれ、とても楽しかったです。

 そして、このオペラは、コミック・オペラの特徴なのか、歌唱に、合唱が絡むことも多く、歌いながら、踊りながら、演技をしながらの合唱がとても楽しい音楽を作り上げていました。特に女性がでてきて、笠などを回しながら舞台を回る姿は、華やかさを増していました。
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 更に、舞台を華やかにしていたのは、ダンサーたちの活躍もあると思います。
 冒頭の部分では、舞台狭しとバク転をする女性なども登場して、これも舞台の見ごたえをまし、特に最初の部分なので、これから始まる舞台全体への期待も高まらせてくれました。

 始めてみるオペラではありましたが、そのようなことを意識せず、十分楽しめる公演でした。
 日本語上演ということもあり、台詞もわかりやすく、時事ネタもあり、オペラであるということを意識せずに、楽しめる上演でした。

 また、その視点からは、ある意味私の予想よりもとても洗練されていて、上品な舞台でした。細岡雅哉氏の音楽も、個人的にはもう少しテンポを速めてくれても、という所もありました。舞台を秩父に置き換えた日本語公演だったので、多少換骨奪胎された部分もあったのかと思います。もともとの私の想像では、もっと「ぶっ飛んだ」、トンデモJapanな世界が出てくるのかと思いましたが、さすがに、日本で日本を演じるのに、それは想像しすぎだったかもしれません。

 予習のためにCDを買ったのですが、まだ聴いていません。これらが、英語で歌われると、またイメージが違うのかもしれず、聴いてみなくては、と思っています。また偶然にも、来週、前述したように、新国立劇場で再度この「ミカド」が上演されるので、これまた聴き比べをするのも楽しみにしています。
 

【3】 付録:秩父「祭の湯」

 付録になりますが、西武秩父駅を出ると、「祭の湯」という温泉施設があります。
 これもできたのが、今年2017年4月で、最近のこと。
 入浴施設の他、土産物店や、フードコートも併設されています。
 始まるまでの時間、「味噌ポテト」をつまみながら、ぶらぶらし、帰りがけに「炙り豚みそ丼」を食べて帰りました。

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 「西武秩父」の駅を出ると、駅を背にして、すぐ左手に入り口があります。

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 入ってすぐは、物産エリア「秩父みやげ市」があります。「秩父の特産品や限定商品をはじめ、和洋菓子、地酒、雑貨など、おみやげにピッタリの品を多数取りそろえています。」とのこと

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 奥には、酒匠屋台という日本酒の飲み比べができるところがあります。三種類の秩父地酒の飲み比べが500円とありました。

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 その奥は、フードコートになっています。「呑喰処 祭の宴」という名前です。

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 休日ということもあってか、昼頃に行ったときは満席状態でした。

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 10件程の店が入っています。
 タコ焼きやみそポテトなどのおやつ、わらじかつ丼、炙り豚みそ丼、ラーメン、クルミそば、焼肉などの食事をするところ、デザートやジェラートの店があります。

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 みそポテトは、200円。その他、みそポテトフライが380円等。(おやつ本舗)
 その他、「お祭りたい焼き」 小倉・秩父味噌あん各200円等も人気があるみたいです。

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 こちらは、「丼屋 炙り」での、「炙り豚味噌丼」大 1,100円。(普通は950円) とろろ付きです。ほんのり味噌が聴いた豚がおいしかったです。テイクアウト用の弁当も950円で売っていました。

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 その奥に、「祭の湯」の入浴エリアがあります。
 「露天風呂をはじめ、高濃度人工炭酸泉やシルク湯、岩盤浴などもご用意。週末は、朝までごゆっくりおやすみいただけます。」とのこと。入館料が、980円(週末は1,080円)とちょっと高め。今回はそもそもが暑いのと時間がないのでパスしました。冬にのんびり来てみたいです。

【4】 キャスト・スタッフ

指揮・演出 : 細岡雅哉
演   奏 :  ちちぶオペラ楽団

 <キャスト>
ナンキプー:  羽山晃生
ミカド  : 鹿野由之
ココ   : 水野洋助
ヤムヤム : 薗田真木子
カティシャ:  諸 静子
プーバー :  佐藤健太
ピシュタシュ: 富田駿愛
ピティシン:  齋藤雅代
ピープブー:  山口由里子

合   唱: ちちぶオペラ合唱団
ダンス助演:  スタジオFITS

スタッフ
舞台監督: 友井玄男
照明  : 佐藤雅子
振付  : 野口菜美
演出助手: 磯田直子
衣装  : 未定
メイク : 坂上芳子
美術  : 造型太郎(有)花工場
大道具 : 彩ハウス(株)いのうえ工務店

主   催   秩父市・ちちぶオペラ実行委員会
後   援   近隣自治体及び教育委員会
秩父観光協会 秩父商工会議所 西武鉄道(株)秩父鉄道(株)ほか

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